家電リサイクル法|不動産仲介・管理業でおさえたいポイントを解説
2025年04月10日
家電リサイクル法とは家電4品目(テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機、エアコン)の処分方法を定めた法律です。2024年度の賃貸不動産経営管理士試験で出題されるなど、不動産業界でも注目を集めています。
本記事では家電リサイクル法の概要と、不動産業者へ与える影響をわかりやすく解説します。
家電リサイクル法とは
家電リサイクル法の正式名称は「特定家庭用機器再商品化法」。一般家庭や事務所から排出される家電製品の処分方法や対象品目を定めた法律です。
◆関連資料:
家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)|経済産業省
家電リサイクル法|制定の背景
家電リサイクル法の目的は、処分される家電製品から有用な部品や材料をリサイクルし、廃棄物の削減と資源の有効活用を促進することです。
処分方法の規定で、不法投棄・高額請求などのトラブル抑止も期待できます。
「家電4品目」とは
家電リサイクル法は下記の「家電4品目」で、家庭用の製品を対象としています。
- エアコン
- テレビ(ブラウン管、液晶・プラズマ)
- 冷蔵庫・冷凍庫
- 洗濯機・衣類乾燥機
処分に必要なリサイクル料金は、製造メーカーによって異なります。
家電リサイクル法上の「小売業者」
家電リサイクル法では、最終的に家電4品目を販売した者が「小売業者」です。
例を挙げると、不動産管理会社が卸売業者(家電量販店や販社)から家電4品目を調達し、大家さんへ代金請求した場合、その不動産管理会社は「小売業者」と見なされます。
◆小売業者とみなされるケース
- 賃貸契約を結んだ賃借人に家電を販売
- リフォームに合わせて大家さんへエアコンを販売
- 家電付き賃貸物件の提供
- 空き家やリノベーション物件への家電提供
- サブリース物件での家電管理
※大家さんに販売店や工事業者を紹介しただけであれば、小売業者とみなされません。
小売業者とみなされたときに発生する義務
不動産業者が小売業者とみなされると、下記の義務が発生します。
- 1.排出者からの引取義務
- 2.製造業者等への引渡義務
- 3.収集運搬料金の公表義務及び収集運搬料金・リサイクル料金の応答義務
- 4.家電リサイクル券の交付・管理・保存等義務
◆家電リサイクル券
家電リサイクル券には複数の種類があります。入手しやすいものを適宜お求めください。
- 料金郵便局振込方式用の家電リサイクル券
- 料金販売店回収方式用の家電リサイクル券
- 料金管理統括業者回収方式の家電リサイクル券
- 自治体用券
◆用語解説:
家電リサイクル券とは|一般社団法人家電製品協会
廃棄物の引取・引渡しの方法
家電4品目の廃棄では、製品を回収し指定引取場所へ運搬します。引取・引渡しを他社に依頼する場合は、廃棄物の収集運搬業の許可を持つ業者へ依頼してください。
業務の再委託(依頼を受けた会社が、さらに他の業者に収集・運搬を依頼すること)が認められてない点も要注意です。
廃棄物が適切に処分されない場合、違法廃棄管理者として法的責任を問われるリスクがあります。運搬含め、信頼できる業者へ依頼しましょう。
不動産業者が家電リサイクル法と関わる例
賃貸物件の退去時
物件からの退去時、賃借人が不要な家電製品を処分することがあります。退去手続きの際に家電リサイクル法について簡単に説明し、適切な処分方法を案内してください。
物件リノベーション・解体時の廃棄
リノベーションや解体の際、家電4品目に該当する家電製品が廃棄される場合があります。
その場合は一般的な粗大ごみ回収では引き取ってもらえないことを伝え、適切な処分方法を案内しましょう。処分の流れを簡単に説明し、自治体の指定取引場所を案内すると親切です。
物件の残置物撤去と家電リサイクル法
物件退去後に残置物がある場合、大家さんや不動産業者が対応を求められます。
- 1.賃借人へ通知し、撤去を依頼
- 2.連絡が取れない場合は一定期間保管
- 3.賃借人と所有権放棄の確認が取れた場合は貸主が処分
※賃借人と連絡が取れない場合も貸主の一存で処分はできません。法的手続きが必要となります。
残置物の中に「家電4品目」があるときは家電リサイクル法に従った対応が必要です。処分費用は原則的に賃借人の負担です。しかし賃借人と連絡がついても、費用を回収できないケースは珍しくありません。
残置物撤去の取り決めは、契約書(37条書面)に「任意的記載事項」として盛り込めます。ぜひ条項を記載しましょう。
◆関連資料:
ラビーネット契約書類作成システム|全日本不動産協会
参考に、下記のコラムもぜひご一読ください。
◆関連記事:
賃借人が残した家財道具等の処置|全日本不動産協会
家電リサイクル法に従った「家電4品目」の処分
不動産業者が家電リサイクル法における小売業者とみなされ、自社で家電4品目を処分する場合、次のような流れで廃棄します。
- 1.家電リサイクル法の「家電4品目」に該当する廃棄物をまとめる
- 2.小売業者が廃棄物を回収する
- 3.小売業者が廃棄物を製造業者や指定引取場所に引き渡す
手順2と手順3に関しては外部の業者への委託も可能です。
「家電4品目」の処分を依頼できる事業者
家電リサイクル法における家電4品目の処分を依頼できる事業者は下記となります。
- 家電量販店
- 自治体の委託を受けた業者
- 自治体の指定引取場所
- 許可を受けた廃品回収業者
- 郵便局で家電リサイクル券を購入の上、指定のリサイクル業者に依頼
自治体の委託を受けている業者や指定引取場所は、各自治体の公式サイトからご確認ください。
不動産業者が家電リサイクル法に関連して確認すべき事項
家電リサイクル法に関する業務フローの見直し
サブリース(借上げ)物件を扱う場合、不動産管理会社やサブリース業者が家電の処分に関与する場面が多く、家電リサイクル法に基づいた適切な対応が求められます。
家電リサイクル券の交付手続きや廃棄物の回収・運搬の手順を整理し、従業員に伝達してください。仕事が丁寧な運搬業者を抑えることも忘れずに。
家電4品目の回収に対応している業者・指定引取場所の把握
家電4品目の回収に対応している業者や指定引取場所は自治体の公式サイトに記載があります。
自社で廃棄物を回収・運搬を行わなくても、地域ごとの業者や指定引取場所を把握しておくと業務に役立ちます。
賃借人への啓発・退去時の伝達
退去の連絡がきたときには、家電リサイクル法のポイントを説明しましょう。
賃借人が外国人の場合は、言葉や文化が違うため、ちょっとした理解の行き違いが生じやすいため、特に注意しましょう。
【番外編】2024年度賃貸不動産経営管理士試験の「家電リサイクル法」問題
さて、今回解説した「家電リサイクル法」の理解を深めるため、2024年度(平成6年度)の賃貸不動産経営管理士試験から、家電リサイクル法について出題された問題を抜粋して紹介しましょう。
問題:特定家庭用機器再商品化法に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1:賃貸管理業者が建物所有者のために共同調達組織から家庭用エアコンを調達する場合、建物所有者に当該エアコンの代金を請求しても、賃貸管理業者が小売業者となることはない。
- 2:賃貸管理業者が小売業者に該当する場合、賃貸管理業者は建物所有者から排出される家庭用エアコンを引き取って、製造業者等へ引き渡さなければならず、当該収集運搬業務を第三者に委託することができない。
- 3:賃貸管理業者が小売業者に該当する場合、賃貸管理業者は建物所有者から排出される家庭用エアコンの指定引取場所までの収集運搬に要する料金について、建物所有者からの求めに応じて応答する義務があるだけでなく、収集運搬料金を事前に公表する義務もある。
- 4:賃借人が賃貸人の承諾を得て、家電量販店から家庭用エアコンを購入し、賃貸物件に設置した後、退去時に賃借人が当該エアコンを廃棄する場合、賃貸管理業者は小売業者に該当し、賃借人から当該エアコンを引き取らなければならない。
※一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協会の令和6年度過去問題より抜粋
解答
正解は「3」です。
家電リサイクル法のポイントを抑えていれば、消去法で解ける問題とわかります。
※家電リサイクル法を理解する上で経済産業省のYoutube動画を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
【まとめ】不動産業者は契約書(37条書面)から「家電リサイクル法」を意識!
家電リサイクル法は不動産業者と関係が深い法律です。入居時の契約書(37条書面)に残置物撤去の条項を盛り込み、事前に対策しましょう。
◆関連資料:
ラビーネット契約書類作成システム|全日本不動産協会
地域の不動産業者のネットワークがあれば、信頼できる運搬業者や廃棄物処理業者の情報も入手しやすくなります。横のつながり作りにぜひ、全日本不動産協会をご活用ください。
残置物の廃棄に関する関連記事もおすすめです。
◆関連記事:
高齢者の入居を促進する、残置物処理等に関する「モデル契約条項」とは|月刊不動産2024年9月号掲載
【国交省】残置物の処理等に関するモデル契約条項の活用ガイドブックの作成について|全日本不動産協会
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