【必読】不動産業の開業前に読んでおきたい!一人起業のトリセツ


2023年06月01日

不動産開業前に読んでおきたい!一人起業のトリセツ
不動産業界で働きながら、いつか独立開業を目指している人は多くいます。

中でも「一人で起業に挑戦する」となると「何を・どこから・どうしたらいいか」など、いろいろ不安もあるかと思います。

そもそも、不動産会社を一人で起業して成功することは可能なのでしょうか。

そこで今回のコラムでは、一人で始める不動産会社をテーマに解説していきます。本コラムを読むことで、不動産会社を一人で起業してみるイメージがつかめるはずです。ぜひ最後までお読みください。

※注意:
不動産業の開業の形態はさまざまですが、今回は不動産会社(仲介業)をメインにお話をすすめます。

不動産会社の起業は一人でもできる?

不動産屋の起業は一人でもできる?
不動産業を開業するにあたり、まずは「一人ではじめる」ことを検討している方もいるでしょう。

とはいえ、一人起業となると会社員と違いすべて自分で決める必要があるため、開業へのハードルが高いようにも思えます。

さて、不動産会社を一人で起業することは可能なのでしょうか。

不動産会社の一人起業は十分可能

結論からいえば、一人起業は十分可能といえます。現在開業している不動産会社(仲介業)は、実は従業員5人以下の小さな会社がほとんどです。

公益財団法人不動産流通推進センターが発行する「不動産業統計集」(2020年)によると、国内全産業の1事業所あたりの平均従業者数は10.6人。一方、不動産代理業・仲介業では1事業所あたりの平均が4.5人となっています。

統計データからみても、不動産業を開業するのに会社の規模はそれほど必要ないことがわかります。街の不動産会社の多くは、地域に特化した事業を展開することが多いため、小さな規模で起業するほうがリスクなく、営業の生産性を高めることが可能です。

本当に一人起業のリスクはないのか?

不動産会社を一人で始めることはそれほど珍しくないことがわかりました。とはいえ、一人で起業するがゆえに、リスクがあるのもまた事実です。

一人起業にはどんなリスクがあるのでしょうか。

1:不動産業の開業には「資格」が必要

開業するためには、条件として宅建士の「必置義務」があるのはご存知でしょうか。宅建士には、重要事項の説明や、契約書の取り扱いの際に宅建士しかできない「独占業務」があります。

ですので、一人で起業する場合は宅建士の資格取得は必須です。例えば、異業者から参入し不動産業を開業したいが、自身で宅建士の資格を保有していない場合、宅建士の資格を有する従業員を設置する必要があります。

自身が宅建士の資格がなくても従業員を雇うことで開業は可能ですが、不動産業の経営者が宅建士であることは、社会的信用を得る上で重要です。

宅建試験のための勉強時間は、最低300時間程度が必要といわれています。不動産業の開業を目指す場合、早い段階から計画的に宅建士の資格取得を目指し、準備をはじめましょう。

2:不動産業界は「人脈」が必要

不動産業界で成功するポイントは、人と人のつながり(人脈)が重要といわれています。特に「物件情報」や「お客様との接点作り」には人脈が不可欠です。

地元で不動産会社を開業する場合は、「深く+狭く+濃い」人脈作りを意識して開拓をすすめていきましょう。こうした人脈作りが強固になれば、それが一つの経営資産となります。例えば、以前の顧客が別の顧客を紹介してくれたり、物件の売買を依頼してくれたりなど、独自のルートでの集客が期待できます。

一人で起業する場合、これまで働いていた会社の知名度や取引先とのつながりを利用できなくなり、新たに一人で集客しなければなりません。

全日本不動産協会などが主催するイベントやセミナーに参加することで、縦横の人とのつながりができるので積極的に活用しましょう。

一人起業では、こうした人脈を開拓する努力を日頃から継続して行うことが重要です。

3:ノウハウ・情報収集する「努力」が必要

手続き上、一人で起業することは難しくありません。一方、一人で起業し、安定的に売上を上げ、事業を軌道に乗せるのは簡単ではありません。

一人起業の場合は、誰にも干渉されず自由にできる反面、営業スキル・ノウハウは一個人に依存することになります。つまり「会社の看板無しに一人で売上を上げる自信があるか」をシビアに問われるのです。

普段から不動産業界の関連情報や、売上UPに必要なノウハウを積極的に収集しましょう。会社員時代と違い、すべては自己責任です。自分で考えて、自分から行動するマインドセットが重要です。

4:売上の上限に限界も…

一人起業の場合、媒介契約の締結や広告の出稿、商談など、さまざまな手続きを一人で行わなければなりません。

必然的に一人で対応できる案件数には限りがあるため、目指せる売上にも限界があります。さらに開業当初は新規顧客の獲得、信頼構築まで時間がかかるため、収入も低くなる傾向があります。

まずは事業が軌道に乗るまでは、不動産業界の平均年収である約430万円(令和3年度国税庁「民間給与実態調査結果」による)を一つの目安にするのもいいでしょう。

以上、不動産会社の一人起業のリスクについて解説しました。リスクを正しく把握し、対策を練った上で正しく準備をすすめましょう。

一人で起業するメリット

不動産屋を一人で起業するメリット
次に小さな不動産会社を一人ではじめるメリットについて見ていきます。

在庫リスク無く、資金繰りが楽

仲介業の場合、賃貸でも売買の場合でも、物件の仕入れが必要ないため、在庫を抱えるリスクがありません。あくまで物件の仲介(マッチング)を取り持つビジネスモデルです。その意味では、資金ショートするリスクが少ないところはメリットといえるでしょう。

毎月発生する代表的な費用項目は

  • 事務所の家賃
  • 水道光熱費
  • 交通費
  • 広告費

などです。

一人で不動産会社をはじめる場合、本来固定費として大きな割合を占める人件費の負担がないのもメリットです。自分自身への人件費(給料)の支払いは従業員への支払いと比べて調整できます。

開業して間もない段階では、収入より支出が多くなりがちです。現金支出の最も大きなリスクである人件費をコントロールできる、一人起業の軽さが大きな強みになります。

自由度の高い働き方ができる

会社(組織)に属して働くより、圧倒的に自由度の高い働き方、稼ぎ方ができる点は一人起業のメリットです。

もちろんその分責任は増しますが、「自分の思い通りできる」点は大きな魅力といえます。自分で案件を獲得するため、仕事内容や進め方を自由に選択することも可能です。

また、ノルマは自分で決められるため、大手の不動産会社のように顧客を選ばずに大量に集客をするような必要もありません。自分の好きなテーマに絞り、強みを活かして集客できれば競合他社との差別化も図れます。

一人起業の場合、個人で動ける範囲(裁量)も大きくなるので、その分お客さまへの対応を迅速に行えることもメリットといえるでしょう。

職場の人間関係の悩みから開放される

仕事における最大のストレス(悩み)は職場の「人間関係」といわれています。一人起業の場合、職場に上司も同僚もいません。いままで職場で抱えていた人間関係の悩みから開放されます。煩わしい人間関係に悩みを持つ人にとって、一人起業は大きなメリットです。

不動産業の開業6つの流れ

不動産開業6つの流れ
次に不動産業を開業するまでの手続きの流れについて解説していきます。

1)開業前の準備

最初のステップは開業前の準備です。
以下4点を具体的に決めていきましょう。

  • 1:経営形態について
  • 2:業務形態について
  • 3:開業資金について
  • 4:営業保証金について

1:経営形態について

経営形態には、個人経営・法人経営の2つがあります。選択する形態によって、開業時にかかる手続きの内容や資金、支払いの税率などが異なります。

個人経営の場合は開業コストがあまりかからず、開業手続きも法人経営ほど手間がかかりません。

一方、個人経営は社会的信用度が低く、銀行からの融資に厳しい制限がかかることもあるのがデメリットです。また、万一倒産した場合は個人(の資産)が債務の対象になるのでリスクが高いといえるでしょう。

法人経営の場合、開業手続きに手間はかかりますが、社会的な信用が高く、税制上のメリットもあります。

そのため、全国の宅地建物取引業を行う経営者のうち約8割が法人経営の形態で不動産事業を経営しています。

2:業務形態について

開業の業務形態については、元手が不要で始めやすいといわれる仲介業(賃貸、売買)から始める方が多いようです。

不動産業の代表的な業務形態は以下の通りです。

  • 賃貸仲介業
  • 売買仲介業
  • 賃貸管理業
  • 不動産コンサルティング業
  • 不動産デベロッパー

3:開業資金について

開業費用は、保証協会に加盟した場合で400万円から1,000万円と言われています(経営形態や業種形態、開業するエリアなどにより大きく異なります)。

その他、開業後のランニングコストも毎月発生します。開業してすぐに案件が成約し、現金(収入)が入るとは限りません。開業時点で、毎月のランニングコスト×3か月分程度の現金は用意しておかないと、すぐに資金ショートに陥り事業の継続が難しくなります。

事業継続にもっとも重要なのは現金、資金繰りです。開業当初は特に経営が安定しないので、余裕をもって資金繰り計画を立てるようにしましょう。

4:営業保証金について

営業保証金は、不動産会社が営業を開始する前に供託所に供託する金銭のことです。営業保証金の概要、および供託手続きについて解説します。

●供託は義務
営業保証金の供託は、宅地建物取引業法により義務付けられています。消費者保護の観点から、取引の相手方が損失を受けた場合、弁済するために必要となります。

●供託金は事務所の数だけ必要
複数の支店がある場合、本店で1000万円、支店ごとに500万円の供託金が必要です。ただし、協会に加入した場合は本店で60万円、支店ごとに30万円の弁済業務保証金分担金を納付すれば免除になります。

●手続きは3ヶ月以内
免許年月日から3ヶ月以内に供託手続きをし、免許権者への届出を完了しないと、免許が取り消されてしまう場合があります。

2)事務所の設置と会社の設立

開業するためには、事務所の設置が必須です。ただ事務所を用意すればいいわけではなく、専用出入り口や独立した事務所スペースの設置が義務付けられ、事務所のあり方は宅地建物取引業免許の取得条件として、不動産経営に相応しい形を整えなければなりません。

また、事務所の立地も集客に大きく影響するため、慎重に選ぶようにしましょう。

法人として起業する場合、『会社法』に基づいて会社を設立します。会社の設立には、行政書士や司法書士などの専門家に手続きを委託するのが一般的です。

手続きの流れ、会社設立にあたり準備するべきものなどは、会社設立を委託する専門家によく相談し、確認しましょう。

3)宅地建物取引士の設置

開業には専任の「宅地建物取引士」を、5人に1人以上の割合で設置することが法律で義務付けられています。

宅地建物取引士の資格は、法律にのっとった公正・公平な取引がなされているかをチェックする国家資格です。

宅建業務には、消費者への重要事項説明や37条書面への記名・押印など、宅建士だけが独占で行える業務があります。

一人で起業する場合、本人が宅建士資格を保有し、自らが宅建業務に従事するのであれば、専任の宅建士であるとみなされます。

4)免許の申請

「宅地建物取引業免許」は、宅地建物取引業を営むために必要な免許です。

免許取得には以下3点の条件をクリアする必要があります。

  • 1:欠格事由に該当しないこと
  • 2:事務所の形態を整えていること
  • 3:宅地建物取引士を設置していること

実際の免許申請は、事務所の設置場所に応じて、国土交通大臣または都道府県知事に申請します。

5)協会への加入

開業する際は、保証協会に加入しましょう。協会への入会申込みは、免許申請後であれば免許が交付される前でも可能です。

協会へ加入するメリットは、
・営業保証金が免除される
・会員支援システム「ラビーネット」を利用できる
・豊富な研修・セミナーへ参加できる
など、数多くあり、開業前だけではなく開業後もさまざまなサポートを受けることができます。

一人起業の場合は、情報収集や業界特有のノウハウ、何より人脈の構築(つながり)の点でハンデがあります。協会に加入し、サービスを積極的に活用すれば、一人起業ならではの不安や課題の解消に役立つでしょう。

お客様のニーズに見合う物件が自分のリストにない場合は、他の会員に紹介したり、逆にお客様を紹介してもらえたり、会員同士で支え合うことも可能です(不動産業は人脈が重要といわれる所以です)。

また、会員同士で物件情報を交換し合えばお客様の満足度も上がり、ビジネスのチャンスも広がります。

◆不動産業の開業は全日本不動産協会へ!

全日不動産不動産協会では会員の開業前のフォロー、開業後のサポートを全力で行っています。不動産業の開業の際は、ぜひ全日本不動産協会をご活用ください。ご入会のお申込みは開業予定地の地方本部までお問合せください。

6)開業

ここまでの手続きが完了すれば、いよいよ開業です。とはいえ、開業はゴールではなく、あくまでスタート地点です。

一人起業の場合、すべて一人で判断し、行動する必要があるため不安も多いもの。前項でお伝えしたように、開業の際は協会へ加入し、開業後も積極的に協会が提供するサポートを活用していき、お客様に信頼される不動産会社を目指しましょう。

◆関連情報

より詳細な情報は、全日本不動産協会HP「開業を目指す方へ」を参考にしてください。

一人で始める小さな不動産会社の成功ポイント3選

一人で始める小さな不動産屋の成功ポイント3選
ここまでは不動産業の開業前の準備と流れについてお話しました。最後に、一人で始める小さな不動産会社の成功ポイントについて解説します。

1)不動産会社は集客が9割

一人起業に限りませんが、事業経営を安定させるためにもっとも必要かつ重要なのが集客です。

お客様を集められないと、そもそもビジネスとして成立しません。特に開業当初は知名度も実績もないため、集客が難しいのも事実です。

開業してから予想以上に集客に苦戦し、「こんなはずではなかった!」とならないよう、開業前の早い段階から集客戦略を検討し、準備をすすめましょう。

具体的な集客施策といえば、最近では
・HP集客
・SNS集客
・ポータルサイト集客
など、様々な集客手段があります。

ただ注意したいのはこれらの施策はあくまで目的ではなく手段だという点です。大事なのはどんなお客様に、どんなサービスを、どんな強み(ウリ)で提供していくのかという、これから事業展開する上での戦略(ドメイン)を定めることです。

一人起業の場合は、営業リソースも自ずと限定されます。地域やお客様ニーズを「狭く×深く×濃く」絞ることで、競合と差別化した集客戦略を立てていきましょう。

2)開業コストを軽減し資金繰りに細心の注意を払う

開業前の段階で、なるべく支出を軽減する工夫が必要です。ビジネスの源泉は現金であり、資金繰りがショートした時点で事業は倒産します。

安定した売上が上がり収益を得るまでの間は、特に資金繰りについて細心の注意を払いましょう。

開業資金で一番大きな支出は法務局に納める営業保証金(1,000万円)です。この営業保証金になるべくコスト(負担)をかけないようにすることも開業を成功させるコツといえます。

営業保証金は、協会へ加入することで免除になるのでぜひ活用したいところです。(※開業資金をできるだけおさえるには入会金最安値の全日本不動産協会がおすすめです)

一人起業では営業・接客・事務などすべての業務を1人でこなすため、負担と手間が大きくなります。効率的に一人経営を営むためには、アウトソーシングサービスの活用も検討しましょう。アウトソーシングなら経理・書類作成など特定業務だけを依頼できるため、費用を抑えながら事務時間を削り本業に専念できるのもメリットです。

3)不動産業界は人脈と信頼がモノをいう

前述のとおり、不動産業界では特に人脈と信頼がとても重要です。全日本不動産協会や、その他業界が主催するイベントやセミナーに積極的に参加し、情報交換や意見交換を行うことで、人脈をこつこつ構築していきましょう。

同業者の課題を共有し、双方が助け合う関係になれば、案件紹介など、具体的なビジネスに発展することもあるでしょう。

人脈と信頼、そして情報を多く持つ人の周囲には人が集まるものです。自分のビジネスの利益だけ考えて人脈を利用するのではなく、お互いに利益を共有できるような関係構築が人脈作りのコツです。

人脈と信頼の構築には時間がかかります。しかしその分だけ価値があり、差別化できれば無形資産となります。人脈と信頼は一朝一夕ではできません。開業前後の早い段階から、人脈と信頼作りを意識し、行動を積み重ねましょう。

以上、一人で始める小さな不動産会社、成功のコツ3選を厳選してご紹介しました。成功のコツと失敗するパターンは表裏一体です。大きな成功を狙うより、失敗しない、継続的かつ堅実な事業経営が最終的な成功につながります。

まとめ:不動産会社の起業は一人でもできる

今回は一人で始める小さな不動産会社の起業をテーマに解説しました。他の業界・業種と違って、不動産業の場合は一人で始めることが珍しくなく、起業チャンスがあることをおわかりいただけたと思います。

とはいえ、一人起業にはメリットもある反面、デメリット(ハンデ)があるのも事実です。小さな不動産会社の強みを活かしつつ、足りないところは協会へ加入し、積極的に活用することをおすすめします。

ぜひ本コラムを参考にしつつ、不動産会社の一人起業に挑戦してみてください。

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◆全日本不動産協会公式HP

https://www.zennichi.or.jp/


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