省エネ基準適合が住宅ローン減税の利用条件に!令和6年以降の【変更点】を解説


2024年02月19日

省エネ基準適合が住宅ローン減税の利用条件
住宅の購入は、数千万円もする一生に一度の大きな買い物です。資金面の負担を少しでも減らすため、減税制度や補助金制度の利用を希望する方も多いでしょう。

今回取り上げる「住宅ローン減税」も、利用を希望する方が多い制度のひとつです。1972(昭和47)年の制度開始から時代の流れに合わせて改革が行われており、2024(令和6)年以降は省エネ基準に適合しない新築住宅については減税措置を受けられなくなります。

本記事では住宅ローン減税の概要や2024(令和6)年以降の変化、そして減税措置を利用するための必要書類などをまとめて解説します。

住宅ローン減税の概要

住宅ローン減税の概要
住宅ローン減税とは、住宅ローンを組んで住宅を購入した人が対象となる制度です。一定の条件を満たすと、年末時点の住宅ローン残高に0.7%をかけた金額が、所得税等から控除できます(一部翌年の住民税から控除/※上限9万7,500円)。

例えば2023(令和5)年末の住宅ローン残債が2,000万円だった場合、14万円が控除できるわけです。税額控除の対象期間は最大13年間です。

ただし、2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅でこの住宅ローン減税を受ける場合、省エネ性能が必須要件となります。制度改革前後の適用条件や借入限度額などの違いを、以下の表にまとめてみました。
制度改革前後の適用条件や借入限度額などの違い
例外として新築住宅の「その他の住宅」については、2023年末までに建築確認を受けていれば省エネ基準に適合していなくても、住宅ローン控除を受けることが可能です。ただし、借入金の上限額は2,000万円に減額されることを留意しておきましょう。

なお「省エネ基準を満たした住宅」とは、省エネ性能に応じて長期優良住宅・低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅の3種類に分類されます。ZEH水準とは、省エネ基準より強化されている高断熱基準のことです。省エネ基準とZEH水準の違いを、以下の表にまとめてみました。
省エネ基準とZEH水準の違い
断熱性は地域によって異なる基準値が設けられているため、物件を建てるエリアの値を確認した上で、設計・工事に取り掛かることが大切です。1・2地域は札幌等、5・6・7地域は東京等と、数字が大きくなるほど温かい地域を指します。外皮平均熱貫流率(UA)は、数値が小さくなるほど断熱性が高くなります。

基本的に省エネ性能が高いほど建築コストが増える分、借入限度額も高くなると考えて良いでしょう。省エネ性能の高さと、それに応じた工事内容・工事費等は、実際の建築にあたる工務店などと相談しながら決定することをおすすめします。

省エネ基準導入の背景

住宅ローン減税に省エネ基準が導入された背景には、世界的な課題になっている地球温暖化があります。日本では菅義偉前首相が、2030年度に排出される温室効果ガスを2013年度と比較して46%削減すること、2050年までのカーボンニュートラル達成を表明しました。日本国内でも、環境問題に対応するための法律や助成金制度などの整備が進められています。

しかし、経済産業省資源エネルギー庁が発表した「総合エネルギー統計」によると、産業部門は少しずつエネルギー使用量を削減していったのに対し、1995(平成7)年から2020(令和2)までの25年間、家庭部門はおよそ1,800~2,200PJの間を推移し、エネルギー使用量は高止まりしている状況でした。

このような状況を受け、2021(令和3)年10月の「エネルギー基本計画」では以下のような事柄が閣議決定されました。

  • 2023年には6割の新築戸建住宅で太陽光発電設備を設置する
  • 省エネルギー基準の適合義務付け等の規制措置を強化する
  • 長期優良住宅の認定基準の見直しを行う
  • 新築住宅の販売・賃貸時は省エネルギー性能の表示の義務化を目指す
  • 2050年には住宅・建築物における太陽光発電設備の設置を一般的にする

住宅の省エネ性能を向上させようと国が動いているとはいえ、やはり環境に配慮した設備を導入するにはそれなりのコストがかかります。そこで国や自治体は、環境に優しい住宅を新築もしくはリフォームする方に向けた補助金制度や、税制優遇措置などを設けました。住宅ローン減税に省エネ基準を導入したのも、こうした一連の地球温暖化対策のためといえます。

住宅・建築分野における2050年までの省エネ対策の流れ

地球温暖化対策の一環として住宅ローン減税でも省エネ基準への適合を義務付けるのに合わせ、住宅・建築分野ではさまざまな省エネ対策の推進が行われています。2022(令和4)年の法改正以降に実施される、住宅・建築分野における新築住宅の省エネ対策の流れを、以下の表にまとめました。
住宅・建築分野における新築住宅の省エネ対策の流れ
既存住宅に関しては、改修等に使用する建材の省エネ基準を強化したり、補助金・融資などを総動員して省エネリフォームを推進したりしています。2019(令和元)年度時点の住宅における省エネ基準の適合率は81%、そのうちZEH水準を満たしているのは14%、ZEB水準は26%です。

住宅・建築分野で特に注目したいのは、2025(令和7)年4月から実施予定である、すべての新築住宅・非住宅に対する省エネ基準への適合の義務化です。今後、建物の建て替えや新築の際は、設定基準のクリアが一般的になることが予想されます。基準をクリアするには太陽光発電の導入や断熱材の使用などが必須になる可能性があるため、施工方法の見直しや物件購入者への説明など、さまざまな準備が必要となるでしょう。

住宅ローン減税のための必要書類

住宅ローン減税のための必要書類
住宅ローン減税を利用するには、管轄の税務署で確定申告の手続きが必要です。確定申告をする際は、専用書類を作成し、提出しなければなりません。省エネ基準に適合する住宅の場合は、省エネ基準を満たしていることを証明する書類の用意も忘れずに準備しましょう。省エネ基準によって準備する書類の種類も異なるので、以下の表で確認してください。
省エネ基準によって準備する書類の種類
ZEH水準省エネ住宅を建築する場合、共通の7種類とZEH水準省エネ住宅の1種類の、合計8種類の書類を準備することになります。ZEH水準省エネ住宅と省エネ基準適合住宅は、準備する書類は同じですが、適用条件が異なるため、建築士等の確認を忘れないようにしましょう。

確定申告の期間は、毎年2月16日から3月15日までの約1ヶ月間です。2024(令和6)年分の所得に対する確定申告は、翌年2025(令和7)年の2月16日(日)から3月15日(日)の間に行うことになります。必要書類をすべて準備するには少々時間がかかるため、早め早めに必要情報の収集と書類の作成が重要です。

まとめ:今後の住宅は「省エネ基準のクリア」がより必須になる

今後の住宅は「省エネ基準のクリア」がより必須になる
ほとんどの人はローンを組んで住宅を購入するのではないでしょうか。ローン残高の0.7%の金額を所得税から控除できる住宅ローン減税は、購入者の税金の負担を軽減し、住宅購入へのハードルを下げる制度です。

2024(令和6)年以降は、住宅ローン減税の利用条件として省エネ基準に適合することが必須になりました。地球温暖化対策の一環として、省エネ性能を備えた住宅建築の促進が、今回の制度改正の背景にあります。

地球温暖化への対策は世界的な動きであるため、環境を重視する住環境の整備の流れは今後一層加速することが予想されます。建築・不動産業界を含むさまざまな分野で2050年のカーボンニュートラル実現のため、今後もさまざまな省エネ対策が進められるでしょう。

不動産に関するご相談は「全日本不動産協会」へ

「全日本不動産協会」は、中小規模の不動産会社で構成されている公益社団法人です。法人のマークにウサギが描かれていることから、「ウサギ」「ウサギマーク」の愛称で親しまれています。

「全日本不動産協会」では、不動産会社を経営している方・不動産業に携わっている方に向けた相談窓口を設けております。不動産実務をはじめ、不動産業に関わることなら何でも相談可能です。

地方本部でも、会員の方からの相談に定期または不定期にて応じております。不動産会社の経営に関する相談は「全日本不動産協会」にお声がけください。



閉じる