不動産業の開業に必要な資格とおすすめ資格8選!資格要らずの事業も紹介
2024年05月02日
不動産業を開業するとき、業務内容によっては資格が必要な場合があります。あるいは、資格保有者の配置を法律で定めているケースもあるため、不動産業の開業にあたり、取得が必要な資格を知っておくことはとても大切です。
本記事では不動産業を開業する際に必須の資格と、必須ではないが取得しておくと便利な資格をまとめて紹介します。不動産業の開業に必要な資格を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
未経験でも不動産業の開業はできるの?
未経験でも、不動産業を開業することは可能です。
ただし、未経験の場合、不動産に関する知識不足や人脈の乏しさなどが課題になる可能性があります。不動産業界には専門用語や手続きが数多く存在しますし、情報収集・共有や顧客の紹介といった恩恵を受けるためにも同業者との関わりは必要不可欠です。開業する前から勉強したり、業界交流会に足を運んだりして、少しずつ準備を進めておきましょう。
宅建業を開業するには「宅地建物取引士」の資格が必要
不動産業には、宅地建物取引業や不動産管理業などさまざまな業態があります。そのうち宅地建物取引業(以下、宅建業)を営む際は、事務所の従業員5人につき1人以上の専任の宅建士を配置することが義務付けられています。
宅建業に含まれている業務内容は、自社が保有する不動産の売買、売買契約・賃貸契約の仲介などです。特に不動産仲介業は多くの会社が行っているため、不動産業で開業する際は宅地建物取引業の資格が必須と言っても過言ではないでしょう。
「宅地建物取引士」の資格が必須である理由
宅建業の仕事のなかには、宅地建物取引士の資格を持っている人のみが遂行できるものが含まれています。宅地建物取引士の主な独占業務は、以下の3つです。
- 1.重要事項の説明
- 2.重要事項説明書への記名
- 3.契約書への記名
どの業務も、顧客からの信頼を得たり会社の利益を上げたりするためにとても重要です。宅地建物取引士がいないと、業務に支障が出たり、そもそも開業できない可能性もあります。従業員の人数に応じて、宅地建物取引士をきちんと配置するようにしましょう。
「宅地建物取引士」の試験概要・取得方法
不動産業でほぼ必要不可欠な宅地建物取引士の資格を取得するには、どうしたらよいのでしょうか?試験概要と取得方法を下の表にまとめたので、確認してみましょう。
「登録講習機関」という、国土交通省に登録されている団体の講習の修了試験に合格した方は、3年以内に宅地建物取引士の試験を受験すれば一部の問題が免除されます。問題数を45問に減らせるので、興味のある方は受講を検討してみてください。
開業できない!?「宅地建物取引士」合格後の注意点
「宅地建物取引士の試験に合格すれば、すぐに開業したり宅建士の仕事をしたりできるのでは?」と思いがちですが、実際は違います。試験を受験した都道府県に届け出を提出し、登録手続きが完了してようやく宅地建物取引士として働けるようになります。
登録するには2年以上の実務経験を積むか、指定された講習を全て修了する必要があります。宅地建物取引士の試験に合格したその日から実務に携われるわけではないので、注意しましょう。
「宅地建物取引業免許」との違いに要注意!
不動産業を開業するときは、「宅地建物取引業免許」も必要です。「宅地建物取引士」と響きが似ており混同しやすいため、違いを理解しておきましょう。
宅地建物取引業免許はほぼ全ての不動産業で必要ですし、宅地建物取引士の資格は仲介業等を営むときに欠かせません。免許と資格はお互いになくてはならない存在と言えます。
不動産業で開業するとき持っておくと便利なおすすめ資格8選
宅地建物取引士以外にも、開業のために取得しておくと便利な資格は多くあります。展開したい事業に合わせて他の資格も取得しておくと、他社との差別化や顧客からの信頼度アップにつながるでしょう。今回紹介する資格は以下の8つです。
- 1.マンション管理士
- 2.不動産鑑定士
- 3.土地家屋調査士
- 4.賃貸不動産経営管理士
- 5.管理業務主任者
- 6.司法書士
- 7.住宅ローンアドバイザー
- 8.ファイナンシャルプランナー
それぞれの資格について詳しく解説します。
1.マンション管理士
マンション管理士は、アパートやマンションの運営をサポートするときに役立つ資格です。物件の管理・維持のほか、居住環境を改善するためのアドバイスをしたり、コンサルタントのような役割を担うこともあります。
試験範囲はマンションの構造・設備から、民法・借地借家法・被災マンション法といった各種法令まで多岐にわたるので、しっかりと準備して試験にのぞみましょう。マンション管理は一度依頼を引き受けると、継続契約のケースがほとんどなので、安定した収益の獲得に効果が期待できます。
2.不動産鑑定士
不動産鑑定士は、建物や土地の経済的価値を判定・評価するときに活用できる資格です。近年は土地の有効利用に関するコンサルティングを実施したり、金融会社・鉄道会社・商社などからのニーズが高まったりして、活躍の幅が広がっています。
不動産に価値を付ける責任は重いため、試験は一次(短答)・二次(論文)・実務実習の3段階に分けられているのが特徴です。不動産の売買契約の仲介を事業として展開する場合は、自身が鑑定士になって査定も行えます。
3.土地家屋調査士
土地家屋調査士は、不動産の登記手続きや登記に必要な調査・測量を行う専門家のことです。不動産の状態を正確に登記情報に反映し、不動産取引の安全性を確保するために活用できます。
試験科目は、不動産登記法や民法といった法令・平面測量・作図・面接などです。不動産売買を事業にする場合は登記を行う機会もあるため、取得しておいて損はない資格といえるでしょう。
4.賃貸不動産経営管理士
賃貸不動産経営管理士は、不動産所有者の資産を有効活用したり、賃貸物件に住んでいる人の安全を確保したりするために役立つ資格です。管理受託契約・金銭管理・法令・賃貸借など、賃貸物件の管理に必要な知識を幅広く問われます。
賃貸住宅管理業を営み、管理戸数が200戸以上になると、賃貸不動産経営管理士の資格が必要です。会社の事業内容や事業規模によっては開業前に取得しておいた方が良い場合もあるため、早めに対策を進めましょう。
5.管理業務主任者
管理業務主任者は、マンションを適切に管理するために活用できる資格です。マンションの管理組合と業務委託契約を結ぶときに、重要事項の説明や管理事務報告ができるようになります。
法令・管理事務・会計など幅広い知識が問われますが、マークシート方式で出題されるため比較的対策がしやすい試験といえるでしょう。マンション管理業を営む際は管理業務主任者が必要なので、事業内容に応じて受験を検討してみてください。
6.司法書士
司法書士は、登記に関する業務や供託業務を専門的に扱う資格です。不動産業なら、法務局への登記手続きや相続などに対応できます。宅地建物取引業を営む際は売買契約から登記までの一連の流れを自社ですべて担当できるようになるため、顧客満足度の向上にも効果が期待できるでしょう。
出題範囲は、民法・不動産登記法・司法書士法・供託法など全11科目。合格するのに必要な時間は約3,000時間とも言われる難しい資格なので、開業してから少しずつ勉強を進めるのもよいかもしれません。
7.住宅ローンアドバイザー
住宅ローンアドバイザーは、公正な立場でアドバイスや情報提供を行う、住宅ローンの専門家です。不動産を購入する際に住宅ローンを組む方は多いので、売買に関する事業を展開するときは特に役立ちそうです。
試験内容は、住宅ローンの基礎知識・コンプライアンス・住宅ローンの受付から完済までの実務など。試験を受験するには、指定された講座を受講する必要があります。合格通知を受け取り、登録手続きを済ませると、住宅ローンアドバイザーを名乗れるようになります。
8.ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナーは、不動産・税金・相続・社会保障など、お金に関する知識を幅広く問われる資格です。資格を取得すると、業務で住宅ローンや税金対策、資産形成などの相談に乗れるようになります。
試験は1~3級まで設けられており、現場で活かすなら2級以上の取得をおすすめします。2級を受験するには、3級の取得、ファイナンシャルプランナーとして2年以上の実務経験、AFP認定研修の受講修了のいずれかが必要です。3級は年3回試験日が設けられていますし、内容も基礎的なものが多いので、比較的手軽に取得できるでしょう。
事業内容によっては資格が要らないこともある
一口に「不動産業」と言っても、事業内容は多岐に渡ります。事業内容によって資格の要否や必要な資格が異なるので、開業前に把握しておきましょう。事業内容ごとに必要な資格を、下の表にまとめてみました。
不動産賃貸業を営む場合は、資格を取得する必要はありません。しかしお客様からすると、資格があることで安心感につながるのも事実です。余力がある方は関連する資格を取得するのもよいでしょう。
不動産業の開業で必要な資格に関するよくある質問
不動産業の開業で必要な資格について調べていると、「どんな資格があるの?」「この用語はどんな意味?」など、さまざまな疑問が浮かんでくるものです。そこで今回は、以下の3つの資格に関してよくある質問に回答します。
- 不動産関連の国家資格にはどのようなものがあるの?
- 「資格三冠」ってどういう意味?
- 資格なしで不動産仲介業を営むにはどうしたらいい?
以下、詳しい回答を確認してみましょう。
不動産関連の国家資格にはどのようなものがあるの?
不動産に関する主な国家資格には、以下のようなものがあります。
- 宅地建物取引士
- マンション管理士
- 不動産鑑定士
- 土地家屋調査士
- 賃貸不動産経営管理士
- 管理業務主任者
- 司法書士
- ファイナンシャルプランナー
これらのうち土地家屋調査士と司法書士は、職務で必要な住民票や戸籍謄本の請求が認められています。責任は重大で試験の難易度も高めですが、会社の経営には役立てられるでしょう。
土地家屋調査士と司法書士に限らず、「国家資格」という肩書があると顧客の安心感や信頼感の獲得にもつながります。同業他社との差別化をするためにも、資格の取得は効果的です。
「資格三冠」ってどういう意味?
「資格三冠(トリプルクラウン)」とは、不動産業界内で特に需要がある3つの資格を指す言葉です。宅地建物取引士・マンション管理士・管理業務主任者の資格が、資格三冠に該当します。
1つ取得するだけでも十分役立つ資格ですが、2つ以上取得することで多角的な視点を持てるようになり、業務をよりスムーズに進められるでしょう。近年は賃貸不動産経営管理士も加え、「資格四冠」という言葉が使われることもあります。
資格なしで不動産仲介業を営むにはどうしたらいい?
残念ながら、資格なしで不動産仲介業を行うことはできません。不動産仲介業で開業するときは、従業員5人につき1人の資格保有者を配置するようにしましょう。
ただし「自分は資格を持っていないが、他に資格保有者を雇う場合」は、不動産仲介業でも開業は可能です。例えば従業員18人で会社をスタートさせるなら、4人の宅地建物取引士を配置しましょう。
開業の流れ
宅建業を開業するには、約2〜3カ月かかると言われています。ただし、前の職場を退職するタイミングや資格試験の勉強時間、設立する会社の事業規模によっては準備期間が長期化することも考えられます。開業までの大まかな手順を把握して、できることから取り掛かりましょう。不動産会社を設立するときの流れは以下の通りです。
- 1.事業内容・業態を決める
- 2.開業資金を調達・準備する
- 3.事務所として使う物件を探す
- 4.法人を設立する
- 5.宅地建物取引士等の資格保有者を配置する
- 6.宅地建物取引業免許を申請・取得する
- 7.保証協会に加入する
- 8.自社の広告・宣伝を実施する
不動産賃貸業や、管理戸数200戸未満の賃貸住宅管理業を営む場合は、手順5~7を省いても構いません。ほとんどの事業で宅地建物取引業免許の取得は必須なので、申請忘れには要注意です。
開業するときの費用の目安
宅建業で開業するときは、数百万円〜1,000万円以上の開業資金が必要です。特に大きな割合を占めるのが、消費者を保護するため営業開始前に支払いを求められる「営業保証金」です。本店は1,000万円、支店は1店舗ごとに500万円の供託をしなければなりません。
しかし、保証協会に加入すると、営業保証金を大幅に削減できます。本店は弁済業務保証金分担金を60万円、支店は1店舗ごとに30万円で済むのです。協会に加入するか否かで、費用の目安は大きく変わります。
線表
開業資金を自力で工面するのが難しい場合は、助成金・補助金制度に申し込んだり、融資を受けたりすることで不足分を補えます。
不動産業の開業を失敗しないようにするには
会社を辞め、多額の資金を投じて不動産業を開業することは、人生のターニングポイントとも言える大きな出来事です。開業を失敗しないようにするには、以下のポイントが大切です。
- 1.同業者との人脈を大切にする
- 2.開業後の維持費をできるだけ抑える
- 3.運転資金を確保しておく
- 4.競合他社との差別化
- 5.会社員として一度実務経験を積んでおく
経験不足が不安な場合は開業する前に一度不動産会社に転職したり、フランチャイズ契約で独立したりするのもおすすめです。会社員時代から対策できることは対応を進め、スムーズに開業できるようにしましょう。
資格取得してからが本当のスタート。勉強を継続しよう!
宅建業で必須の宅地建物取引士や、他社との差別化を図れる不動産鑑定士など、不動産に関する資格はたくさんあります。事業内容によっては特定の資格が必要な場合もあるので、開業する前に確認しておくことが大切です。
資格を取得することは、今後の成長に向けた第一歩。合格後も勉強を継続し、試験対策で身に付けた知識を実務で活かせるようにしましょう。
「全日本不動産協会」は不動産業で開業する方を応援しています
「全日本不動産協会」は、中小規模の不動産会社で構成されている公益社団法人です。法人のマークにウサギが描かれていることから、「ウサギ」「ウサギマーク」の愛称で親しまれています。
当協会では不動産会社を開業する方に向けたさまざまなサポートを実施しており、円滑に手続きを進めることが可能です。開業後も、トラブル発生時や日常業務に関する相談を随時受け付けています。
定期的に各種研修やセミナーを開催し、知識や情報の共有もスムーズに。不動産業の開業を目指す方は、ぜひ「全日本不動産協会」にお声がけください。
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