不動産業界でも注目が集まるChatGPT|役立つ活用法や注意点を解説


2023年12月19日

ChatGPT
2022年11月に公開され、瞬く間に世界中で話題となったChatGPT。社内業務の効率化を進めたり、顧客サービスを充実させたりするため、ChatGPTを導入する企業が国内外で増加しています。

不動産業界でも、すでにお客様からの問い合わせ対応や物件探しのサポートなど、さまざまな場面でChatGPTが使われているようです。そこで今回は不動産業界におけるChatGPTの7つの活用法と、導入時の注意点や実際の導入事例などを紹介します。

活用する不動産会社が増加中!「ChatGPT」とは?

「ChatGPT」とは?
ChatGPTとは、2022年11月に公開されたAIによるチャットサービスです。人工知能を研究・開発しているアメリカの企業「OpenAI」によって開発されました。公開当初から回答精度の高さが話題となり、世界中の企業で導入する動きが進んでいます。

従来のAIチャットとの最大の違いは、その柔軟性の高さです。従来のAIチャットは単調なやり取りになりがちだったのに対し、ChatGPTは文脈や感情を考慮した文章を作成し、まるで本当に人間と会話しているような自然さがあります。2023年3月には公開当初のものからアップデートしたChatGPT4.0もリリースされ、さらなる利用シーンの増加が見込まれるAIツールです。

不動産会社でChatGPTを活用するメリット

ChatGPTを活用するメリット
こちらから何か言葉を打ち込むと、すぐに返答してくれるChatGPT。すでに導入している企業もたくさんありますが、実際のところどのような点が便利なのでしょうか。ここでは、不動産業界においてChatGPTを活用するメリットを紹介します。

業務を効率的に進められる

不動産会社では、契約書類や資料の作成、顧客対応などさまざまな業務が発生します。人の手でもできる作業ですが、やはり1人でこなせる量には限界があるはずです。

そこで便利なのがChatGPT。使い方次第でChatGPTは文章の作成だけでなく、情報収集や企画の提案などさまざまな業務を代行させられます。

今までゼロから人間が行っていた業務の一部をAIに任せられるため、業務の効率化を図れます。空いた時間を他のことに充てて業績アップを狙ったり、勤務時間を短縮して私生活を充実させたりもできるでしょう。

人手不足を解消できる

ChatGPTは、導入の仕方によっては自動応答システムとして利用したり、相談相手として活用したりできます。顧客からの問い合わせ対応、物件の検索・提案なども任せられるため、少ない人数でも十分業務が回るようになります。

国土交通省の発表によると、不動産会社の社長の平均年齢は平均61.7歳。後継者不足率は70%近くにもなっており、特に後継者や若い世代の不足が喫緊の課題です。ChatGPTなら幅広い業務に対応できますから、人手不足解消にも効果が期待されています。

営業活動のサポート

ChatGPTは、独創性や説得力を備えたオリジナリティのある文章を作成できます。営業活動において重要な物件の広告文や、顧客に送るメールの文面の作成も任せられるため、営業スタッフのサポート役として役立つでしょう。

質問の仕方や、質問の軌道修正の方法を工夫すると、本物の人と会話するような感覚で企画・戦略を練ったり、情報を集めたりもできるようになります。

顧客サービスの質・顧客満足度を向上させられる

ChatGPTは何度もやり取りすることで、利用者にマッチした情報や文章を提供する機能を備えています。営業担当者の経験も組み合わせることで、より顧客に適した物件やサービスを紹介できるようになります。

また、ChatGPTは24時間いつでも利用可能です。自社サイトにChatGPTを組み込んだ応答システムを取り入れることで、24時間対応のカスタマーサービスや、パーソナライズ化した情報提供も可能になるでしょう。いつでも使用でき、個々の顧客にぴったりの情報を提供することで、顧客満足度の向上も期待できます。

見込み客の獲得

不動産業界において、「物件を借りたいけれど、希望物件や利用する不動産会社が決まっていない」といった見込み客の獲得はとても重要です。見込み客が理想とする物件を提示することで、契約をつなげようとする場面もあるでしょう。

ChatGPTは、複数回のやり取りを通じて利用者に合った情報を提供できるツールです。いくつかの質問に答えることで、利用者である顧客におすすめの物件を表示するシステムの開発や、見込み顧客の好みに合ったダイレクトメールの作成・送信など、さまざまな方法でアプローチできるようになります。

不動産会社でChatGPTを活用できる具体例を紹介

ChatGPTを活用できる具体例
前項の通り、ChatGPTには業務効率化や人手不足の解消、見込み客の獲得など、さまざまなメリットがあります。それでは、不動産会社でChatGPTを活用できるのはいったいどのような場面なのでしょうか。本記事では活用例を7つ紹介します。

市場調査等の情報収集

ChatGPTに過去の市場の動向や相場を学習させると、市場調査に必要なデータを一気に集められます。「今後の物件のトレンド予想は?」と尋ねると、集めたデータをもとに予想を提示してもらうことも可能です。今まで専門サイトで一つひとつ情報を集めたり、資料を探したりしていたものを、すべてChatGPTにワンストップで任せられます。

2023年3月にリリースされた「ChatGPT plugins」というプラグインを使うと、最新かつ正確な情報を収集して、より精度の高い回答を得ることも可能です。ChatGPTの導入により、業務の効率化や人手不足の解消も期待できます。

企画・マーケティング戦略の立案

ターゲット層や企画の目的などを具体的に入力すると、新しい企画やマーケティング戦略を生成できるのもChatGPTの特徴です。しかも単純な箇条書きではなく、企画した理由や詳しい対応方針についても提示されるため、心強い相談相手になるでしょう。

ただし、ChatGPTが生成したアイデアを何も考えずにすぐ採用するのは要注意。しっかり人の目でアイデアを精査し、市場の動向やコンプライアンスに則った企画・戦略を練るようにしましょう。

物件の広告作成

物件の広告を作るときは、紹介文やキャッチフレーズの作成、写真撮影などさまざまな作業が必要です。ChatGPTには、ターゲット層・物件の特徴・文字数の目安・広告の目的などを入力すると、オリジナルの文章を作る機能が備わっています。

「3つ提案して欲しい」と依頼すると、ChatGPTはいくつかの候補を挙げられるため、気に入ったものを選択すれば広告が完成します。文章の作成に頭を悩ませる時間が減るため、業務の効率化にもつながるでしょう。

書類やメールに記載する文章の作成

不動産会社では、売買契約書や重要事項説明書といった書類、顧客へのメールなどで文章を作成する機会が多くあります。用意しているテンプレートの数が少なかったり、顧客に合わせた内容の文章が必要だったりする場合は、毎回新しいものを作らなければなりません。

ChatGPTを使い、文章に盛り込みたい情報を箇条書き等で提示すれば、それに則した文章が生成されます。ただし誤りがあってはならないため、生成した文章は自ら確認し、情報を加えたり文章を取り除いたりする点には注意が必要です。

WebメディアやSNSに投稿するコンテンツの作成

ChatGPTには、自動で文章を生成する機能が備わっています。2023年11月時点では、無料で使えるChatGPT3.5なら約5,000文字、有料のChatGPT4.0なら約25,000文字までテキスト処理が可能です。

SNSは短文で投稿する機会が多いですし、無料版でもコンテンツ作成の補助として役立てられるでしょう。文章を最初から考える時間を省けるため、自社メディアやSNSをより円滑に運用できるようになります。

24時間迅速に対応できるサポート体制の構築

本当に人と会話しているような、自然な回答ができるのはChatGPTの強みのひとつです。自動応答チャットボットを構築し、ChatGPTを導入すると、24時間いつでも顧客の問い合わせに対応できるようになります。

いつでも疑問を解決できることや、質問内容に応じて適切な回答をもらえることにより、顧客満足度を向上させられるでしょう。人手が少ない会社でも手厚い対応ができるため、業績アップにもつながります。

物件検索の効率化

ChatGPTは、物件探しをサポートするツールとしても活用できます。「駅から〇分」「ペット可」「1LDK」といった顧客の希望を入力することで、要望に合う物件をいくつか抽出できるのです。顧客が思い描く物件を迅速に提案することで満足度を向上させられますし、店舗スタッフが物件を検索する手間も省けます。

ただし準備には少し時間が必要で、自社が取り扱っている物件の情報をあらかじめChatGPTに学習させなければなりません。導入時にはひと手間かかりますが、その先の業務をスムーズに進められるため、一考の価値はある活用法です。

不動産会社でChatGPTを導入するときの注意点

ChatGPTを導入するときの注意点
ChatGPTは営業のサポートやコンテンツ作成に役立ちますが、生成された文章をそのまま使うのは避けた方が良いでしょう。また、使い方によっては思ったような成果が得られなかったり、会社の運営に支障が出たりする可能性もあります。注意点をしっかりと把握し、適切な形でChatGPTを導入しましょう。

質問の仕方を工夫する必要がある

ChatGPTで質問する際は、5W1Hを明確にしたり(与件定義)、役割を与えたりする必要があります。役割を与えるとは、ChatGPTがベテランの不動産会社のスタッフや専門家としてふるまうようにあらかじめ指示することです。

例えば「あなたは不動産業界歴15年のベテラン営業スタッフです。賃貸契約の流れについて、初めて不動産を借りる方でも理解できるよう分かりやすく解説してください」のように、具体的に質問するのがChatGPTを使いこなすコツです。

古い情報が混ざっている可能性を留意しておく

ChatGPTは、常に最新情報をもとに文章を生成しているわけではありません。2023年11月時点では、2021年9月までの情報しか学んでいないようです。

最新かつ正確な情報が重要な不動産業界において、法改正等の影響などの反映していない情報をそのまま使うことは一大事になりかねません。ChatGPTが生成した文章には古い情報が混ざっている可能性もあることに留意し、人の目でも丁寧に確認することが求められます。

誤った情報を書き出す場合がある

ChatGPTは、インターネット上に公開されている情報をもとに文章を生成しています。インターネット上には信憑性・公平性のある情報が存在する一方、個人の主観に基づいた記事があるのも事実です。

ChatGPTが文章を生成する際に参照した情報源によっては、誤りや偏りを含んだ文章が提示されるかもしれません。生成された文章は必ず出典や根拠を確認し、自社が発する情報として適切か否かを確認する必要があります。

Webコンテンツの上位表示が難しくなるケースも

ChatGPTは、すでにインターネット上で公開されている情報をもとに文章を生成します。既存の情報を凝縮したような文章が生成されると、Google検索で上位表示されるために重要な「独自性」が損なわれ、検索順位が下がる可能性があります。

Webメディアを運営しており、自社の情報サイトやブログからの顧客の獲得を試みている場合は、SEOの運用上の課題として留意しておきましょう。ChatGPTで文章を生成した後に会社独自の情報を追記するなど、追加のSEO対策を検討してください。

顧客情報の流出には細心の注意を払う

ChatGPTに顧客の情報を書き込むと、ChatGPTのサーバーや学習モデルに保存される可能性があります。一度保存された顧客情報は、他の人がChatGPTを利用したときに表示される恐れもあります。不動産会社の顧客情報には本名や住所といった個人情報も含まれるため、ChatGPTの利用には細心の注意を払いましょう。

対策として、2023年8月にリリースされた「ChatGPT Enterprise(法人向けChatGPTサービス)」を使用するのもひとつの手段です。ChatGPT Enterpriseなら入力した情報を暗号化できるため、情報漏洩のリスクを抑えられます。

ChatGPTを導入している不動産会社の例

ChatGPTを導入している不動産会社の例
ChatGPTは、公開されてから2か月経過した2023年1月の時点で、世界中のユーザーが1億人に達したとも言われています。利用者数の急速な増加に伴い、自社サービスにChatGPTを取り入れる企業も増えてきました。ここでは、ChatGPTを導入している企業の例を3つ紹介します。

LIFULL HOME’Sが提供するChatGPT向けのプラグイン

大手不動産情報サイトのLIFULL HOME’Sでは、2023年6月よりChatGPT向けのプラグインの提供を開始しました。このプラグインを利用することで、ユーザーの希望に合った物件を自動でピックアップしたり、詳細な紹介文を生成したりできるようになります。

ほかにもChatGPTの機能を利用し、24時間いつでも住み替え相談ができる「AIホームズくんBETA LINE版」を2023年4月より運用しています。顧客の満足度を高めるだけでなく、従業員の負担や人手不足の影響を軽減するのに効果的な活用事例です。

ポルティ賃料査定の不動産査定サービス

家賃査定サービスを提供しているポルティ賃料査定では、2023年5月17日よりChatGPT搭載の不動産AIチャットとの連携をスタートしました。ChatGPTと連携したことで、LINEから駅名・駅距離・部屋の広さ・築年数などの条件を入力し、賃料査定を受けられるようになりました。

ChatGPTとの連携前はポルティ賃料査定のWebサイトでしか閲覧できなかった情報が、LINEでも閲覧可能となっています。ポルティ賃料査定の不動産査定サービスは、ChatGPTを導入し、自社サービスの充実化を図った典型的な事例といえるでしょう。

横山保全株式会社によるシェアハウスでの有効活用

横山保全株式会社は、アパートやシェアハウスの管理・運営を行っている不動産会社です。シェアハウスは6棟60室を運営しており、入居者からの問い合わせをChatGPTが対応するようにしました。

ChatGPT導入前もチャットボットは使用していましたが、定型文での返信になったり、スタッフが直接対応したりする場面の多い点が課題になっていました。ChatGPTを導入する際に返答内容を学習させるのに加え、口調は柔らかいニュアンスで話せるように設定し、入居者サービスの充実化を目指しています。

ChatGPTの導入について話せる相談先

ChatGPTの導入について話せる相談先
ChatGPTは2022年11月に公開された、比較的新しい生成AIです。まだ多くの会社はどのようにChatGPTを活用するか模索している段階のため、活用メソッドや相談先を見つけにくいのが現状です。

とはいえChatGPTの活用法を体系化し、相談を受け付けているところも少しずつ増加しています。不動産会社でChatGPTを導入する際は、以下のような場所へ声をかけてみるのもよいでしょう。

・ChatGPTの導入をサポートしている開発会社
・ChatGPTのカスタマイズに対応している開発会社
・ChatGPTの使い方を学べるITスクール

ChatGPTの導入に関する概要を把握したいときは、セミナーや講習会に参加するのもひとつの方法です。自社の状況と想定しているChatGPTの活用法に応じて、具体的な対応を決めましょう。

【まとめ】ChatGPTは活用次第で不動産会社でも役に立つ

ChatGPTは活用次第で不動産会社でも役に立つ
ChatGPTは、通常業務のサポートや人手不足の解消、顧客サービスの充実化などさまざまなメリットがあります。1人のスタッフがたくさんの仕事に携わる不動産会社において、ChatGPTは心強い相方にもなるでしょう。

ただし情報の信憑性や、顧客情報の保護には注意が必要です。上手にChatGPTを活用することで、業務の円滑化と会社のさらなる成長が目指せます。関心のある方は、ぜひChatGPTの導入を検討してみてください。

不動産に関するご相談は「全日本不動産協会」へ

「全日本不動産協会」は、中小規模の不動産会社で構成されている公益社団法人です。法人のマークにウサギが描かれていることから、「ウサギ」「ウサギマーク」の愛称で親しまれています。

「全日本不動産協会」では、不動産会社を経営している方・不動産業に携わっている方に向けた相談窓口を設けております。不動産実務をはじめ、不動産業に関わることなら何でも相談可能です。

地方本部でも、会員の方からの相談に定期または不定期にて応じております。不動産会社の経営に関する相談は「全日本不動産協会」にお声がけください。


カテゴリー


閉じる