不動産業界で独立した人の年収はいくら?気になるテーマを調べてみました
2024年02月19日
不動産業界で独立開業を検討する際に、一体どのくらい稼げるのか、収入面を気にする人も多いかと思います。いろいろ調べていると「不動産会社は儲かりやすい」という声も散見されますが、本当なのでしょうか?
そこで本記事では、不動産会社を設立し、独立開業した人の年収について解説していきます。不動産会社の主な収入源や、独立した後さらに収入を増やす方法もいくつか紹介しています。不動産会社の経営者さんの年収が気になる方や、今後独立を計画している方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
不動産業界で独立した人の年収を試算してみる
不動産会社を設立し、独立開業した人の年収は、事業規模・資本金・事業内容・地域などによって大きく異なります。今回は資本金1,000万円未満の不動産会社を経営する人の年収を概算として試算してみました。今回、参考にした資料は、公益財団法人不動産流通推進センターが発行した「2023不動産業統計集(9月期改訂)」です。
こちらの「2023不動産業統計集」によると、令和3年度、資本金1,000万円未満の不動産会社の就業人数は49万6,252人、売上高は7兆7065億7千万円でした。これを1人分に換算すると、約1,553万円です。
ただし不動産会社を経営する場合、売上高からオフィスの賃料や融資の返済などの経費(運転資金)を支払う必要があります。多めに見積もって年間750万円の経費がかかると仮定すると、不動産業界で独立した人の年収は803万円となります。(※あくまで概算です)
不動産会社に勤めるサラリーマンと比べると高い?低い?
国税庁が発表した民間給与実態統計調査の結果によると、不動産会社に勤めている人の2022年の平均年収は414万7,000円でした。調査対象となったすべての業界の平均年収が389万6,000円ですので、不動産業界は平均より年収レベルが高い業界であるといえます。
不動産会社を設立した人(経営者)の年収の目安と比べてみるとどうでしょう。前項で試算した不動産会社の経営者の年収目安は803万円ですので、不動産業で独立開業した場合、サラリーマン時代と比べ相対的に2倍近くの年収を得られる可能性があるといえるでしょう。
不動産会社の主な収入源は何?
会社に勤めている間は、会社から毎月もらう基本給(給料)や、歩合制による加算額が主な収入源です。しかし独立開業して不動産会社を経営するようになると、会社から自動的に給料が支給されることはなくなり、逆に健康保険や従業員の給料を支払う立場になるため、十分な収入源の確保が急務となります。ここでは、不動産会社の主な収入源を3つ紹介します。
1.仲介手数料
多くの不動産会社は仲介業を営んでおり、仲介手数料が主な収入源として挙げられます。不動産を売りたい人と買いたい人、物件を借りたい人と貸したい人の間を取り持ち、報酬として仲介手数料を受け取るのです。仲介手数料の上限額の算出方法を、以下の表にまとめてみました。
2.賃貸管理の手数料
不動産会社のなかには、オーナーに代わって賃貸物件の管理維持を行う、賃貸住宅管理業を営むところもあります。賃貸管理を代行する報酬として受け取る手数料も、会社にとって大切な収入源です。
一般的に、賃貸管理の手数料は家賃収入の5%くらいが目安とされています。家賃5万円、部屋数50室の物件の賃貸管理を代行する場合、手数料は5万円×50室×5%で12万5,000円です。賃貸管理の手数料は毎月一定の金額を受け取れるため、安定した収入源になります。
3.不動産売買による収入
不動産売買を事業内容とする場合は、不動産売買による収入も会社の収入源になります。仲介や賃貸との違いは、不動産売買は会社が不動産(物件)の売主になること。不動産を安い価格で仕入れ、仕入額より高い額で売却したり、安く購入した土地に建物を建てて売ったりして収益を得ます。一度の取引で数百万円から数千万円の収入を得られるビジネスモデルです。
一方で物件を売却できないと、不動産の管理費や維持費が嵩み、会社の経営を圧迫するリスクを負うことなります。建物を新しく建てたり、リフォームしたりする場合は、予算計画を綿密に立て、しっかり戦略を練ったうえで事業展開することをおすすめします。
年収にも影響する!不動産業界で独立するときの資金
不動産会社を設立・運営するには、多額の資金が必要です。独立するための初期費用に加え、会社が営業している限り発生する運転資金も用意しなければなりません。初期費用と運転資金は会社の売上から差し引かれるため、額によっては自身の年収に大きな影響を与えることも。ここでは、不動産業界で独立するときに必要な資金について解説します。
独立開業に必要な初期費用
事業内容や開業する地域などによりますが、初期費用は400万円〜1,000万円以上が相場とされています。主な項目と内訳を、以下の表にまとめてみました。
自身の貯金だけで初期費用の全額を用意することは難しいため、独立するにあたって金融機関等からの融資を受ける場合も多くあります。借りたお金は返済しなければならないため、営業開始後は、借入金の返済として売上高から毎月一定の金額が引かれることになります。
運転資金
会社を運営している限り、オフィスの賃料、従業員の給料、広告宣伝費といった費用がかかり続けます。運転資金はこれらの費用を払えるよう、あらかじめ用意しておく資金のこと。目安として、月間総売上高の3倍以上の金額を準備すると良いとされています。
「独立直後だと月の売上高が分からない」という方もいるでしょう。独立開業時には事業計画書を作成し、必要な運転資金を概算することをおすすめします。詳細は、税理士や中小企業診断士のような専門家、商工会議所、コンサルタントなどに相談することも検討しましょう。
※全日本不動産協会では、開業前の相談を定期的に行なっております。開業予定の都道府県本部にお気軽にご相談ください。(例:「全日 ◯◯県」で検索お願いします)
独立開業して年収を増やす方法
不動産業界で独立開業すると、同じ業界で働くサラリーマンよりも2倍近い年収を得られるようになる可能性があります。ただし初期費用や運転資金に加え、出張、研修への参加、取引先との食事会といった臨時の出費が多く発生するケースがあるのも事実です。本項では不動産会社で独立し、年収UPするための方法を5つ紹介します。
1.初期費用・運転資金を節約する
初期費用と運転資金の節約は、年収を増やす方法としてもっともシンプルな方法です。初期費用が少額なら金融機関から借りるお金も少額で済みますし、運転資金を節約できたら毎月手元に残る利益を増やすこともできるでしょう。
初期費用の負担をできるだけ軽減するためには、保証協会(不動産保証協会等)への入会が必須です。不動産会社の開業にあたって本来1,000万円の営業保証金を支払うところ、保証協会へ入会すると弁済業務保証金分担金60万円で済みます。保証協会への入会費用を加算しても190万〜240万円程度であるため、大幅な費用削減が期待できます。
運転資金を節約する際は、計画的な会社運営を心掛けましょう。ターゲット層を絞り、広告宣伝費を抑える、適切な財務管理を行い、定期的に収入と支出のバランスを見直すなど、さまざまな対策を実行していきましょう。
2.効率的な集客体制を整える
少コストでお客さんをたくさん集められ売上が伸びると、その分年収も増やしやすくなります。自社ならではの強みを分析し、競合との差別化を意識したマーケティング戦略を検討して、ホームページやSNSを集客施策に活用していきましょう。
その他にもポスティング、不動産一括査定サービスへの登録、イベントの開催など、さまざまな集客方法があります。開業当初から、計画性なく、やみくもに広く宣伝すると集客コストがかかり過ぎるので注意が必要です。まずは自社が取り扱っている物件との親和性が高い顧客層に絞り、効率的な広告宣伝を意識しましょう。
■関連記事
・不動産業の集客でおすすめの方法は?集客のコツやアプリも解説
3.幅広い人脈を作る
不動産会社の経営において、不動産市場や新しい物件情報をいち早く把握することはとても大切です。個人や自社のみのリサーチでは収集できる情報量に限りがあります。業界にとらわれず幅広い人脈を作っておきましょう。
同じ不動産業界で働く人はもちろん、物件のオーナー、司法書士や税理士といった専門家、地元の工務店の関係者などと情報交換してみるのもおすすめです。例えば「学生向け物件を多く取り扱っているなら学校関係者との交流を深める」のように、自社の営業方針に合わせて人脈の広げ方を調整することが大切です。
4.自社ならではの専門性を持つ
国土交通省の発表によると、令和4年度末時点の宅地建物取引業者数は12万9,604社にのぼります。なかには上場している大手企業も含まれていますから、多くの競合の中から自社を見つけてもらうことは容易ではありません。やみくもに宣伝しても、思うように集客できないのが現実です。
数ある不動産会社の中から見つけてもらうには、自社ならではの専門性(ウリ)を打ち出すことがカギになります。例えば、ファミリー向けの一戸建て住宅を中心に取り扱う、特定の地域の賃貸物件をたくさん紹介できる等、自社だからこそできることを積極的にアピールできるようにしましょう。
5.集客や実務に役立つ資格を取得する
不動産業界で定番の資格である宅地建物取引士に加え、集客や実務に役立つ資格を取得するのも年収アップに有効な手段です。資格勉強で培った知識は実務に活かせますし、「こんな資格も保有している」とアピールできれば、見込み顧客から一定の信頼を得ることも可能です。
不動産業界でおすすめの資格として、管理業務主任者、司法書士、マンション管理士などが挙げられます。ほかにもさまざまな資格があるので、自社の事業内容や営業方針に合わせて取得を検討してみましょう。
1人で不動産会社を独立開業しても十分な年収を得られるのか?
不動産業界では、1人で会社を独立開業してもしっかり稼げる可能性が十分あります。従業員がいないぶん会社の利益のほとんどを手にできるため、成果次第ではサラリーマン時代の年収を超えることも可能です。
ただし、社員は自分1人しかいないことになるので、場合によってはオーバーワークになったり、契約したい人を逃してしまったりするケースもあるかもしれません。年収を増やしたい時は取扱い物件を高級住宅に絞るなどして、少ない人手で大きな利益が得られる仕組みづくりを意識しましょう。
【注意】独立しても十分な年収をすぐに得られない場合もある
独立開業すると年収が増えるといっても、それほど簡単ではないのも事実です。
実際に独立開業した人の意見を調べてみると…
- 「最初の3カ月は契約が0で売上も0円だった」
- 「オフィスの賃料や広告宣伝費でお金が必要なのに、収益がないのがストレス」
- 「会社員時代は、勤務していた会社のネームバリューで契約を取れていたんだと思う」
などの、声が多く見られました。
事業が軌道に乗るまでは、自分が納得できる額の年収を得られないかもしれないことは十分に留意しておいた方がよいでしょう。場合によってはサラリーマン時代より年収が低くなったり、途中で諦めて会社員に戻ったりする人も…。
独立開業するときは中長期的な視点で会社を経営し、小さく始めて大きく成長させることで、はじめて自身が望む年収を得られるようになります。
コツコツ会社を運営することが大切
不動産業界で独立開業に成功すれば、サラリーマン時代より高額な収入を得ることは十分可能です。
しかし、開業してすぐに儲けられる会社はほとんどありません。コツコツと会社を堅実に運営し、少しずつ成長させることで年収アップが現実のものとなります。時には先輩経営者や専門家の力も借りながら、地道に運営し続けることが重要です。
不動産に関するご相談は「全日本不動産協会
「全日本不動産協会」は、中小規模の不動産会社で構成されている公益社団法人です。法人のマークにウサギが描かれていることから、「ウサギ」「ウサギマーク」の愛称で親しまれています。
「全日本不動産協会」では、不動産会社を経営している方・不動産業に携わっている方に向けた相談窓口を設けております。不動産実務をはじめ、不動産業に関わることなら何でも相談可能です。
地方本部でも、会員の方からの相談に定期または不定期にて応じております。不動産会社の経営に関する相談は「全日本不動産協会」にお声がけください。
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