民泊とは|法制度・運営のポイント・不動産業者の役割を解説


2025年03月13日

民泊とは
訪日外国人観光客の増加や空き家再活用の需要拡大により、民泊事業への注目が高まっています。
本記事では、民泊施設の法制度・運営・物件紹介のポイントをわかりやすく解説します。よくあるトラブルと対処法も紹介いたします。ぜひご一読ください。

民泊の定義|住宅を宿泊施設として活用

民泊の定義

民泊とは、個人や法人が所有する戸建住宅やマンションなどの全部もしくは一部を活用し、宿泊サービスを提供する施設です。物件を民泊として使うには下記を満たす必要があります。

・営業日数は1年間で180日以下
・台所・浴室・便所・洗面設備が備えられている
・都道府県知事等に届出
・以下のうちいずれかの居住要件を満たす家屋
-現に人の生活の本拠として使用されている家屋
-入居者の募集が行われている家屋
-随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋

届出の際は、居住要件を満たすことを証明する書類や施設の図面が必要です。

民泊運営に係る法制度

民泊運営に係る法制度

次に民泊に係る以下の法律について解説します。
・住宅宿泊事業法(民泊新法)
・特区民泊(国家戦略特別区域法)

住宅宿泊事業法(民泊新法)

住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)は、2017年6月に成立し、2018年6月15日に施行された法律です。この法律で、外国人観光客の増加や宿泊施設不足の問題に対処するために、居住用物件を宿泊施設として利用する新しい営業形態を定めました。「宿泊業」が旅館業法の対象外となる条件を明確にし、居住用の家屋を宿泊客に貸し出すこと(民泊)を許可しています。

◆関連情報:
住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?|民泊制度ポータルサイト「minpaku」

特区民泊(国家戦略特別区域法)

特区民泊は長期滞在する訪日外国人旅客の滞在を目的とし、国家戦略特別区域法に基づくエリアで運営される施設です。

国家戦略特別区域法とは、特定の地域を「国家戦略特区」に指定し、規制緩和や税制優遇を通じて経済活性化を図る法律です。

2013年に制定され、東京(東京圏特区)、大阪(関西圏特区)、福岡市、沖縄、愛知県、新潟市、北海道などが特区に指定されています。

◆関連情報:
国家戦略特区|内閣府

民泊の事業者とは

民泊の事業者とは

民泊運営には、事業者同士の連携が欠かせません。

物件オーナー、運営管理を担う住宅宿泊管理業者、予約プラットフォームを提供する仲介業者など、それぞれが重要な役割を果たします。

住宅宿泊事業者(家主)

住宅宿泊事業者とは、民泊の届出をした物件のオーナーです。住宅宿泊管理業者に登録するには、住宅の取引・管理に関する2年以上の実務経験が求められます。

実務経験がない場合は、下記のいずれかの資格が必要です。

  • 宅地建物取引士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士

家主も居住する形で運営する民泊や、家主不在の民泊でも他の住宅宿泊管理業者に管理を委託する場合は「住宅宿泊管理業者」の登録を受けなくても構いません。

住宅宿泊管理業者

住宅宿泊管理業者は、国土交通大臣の登録を受け、家主に代わって民泊施設の運営・管理を行う事業者です。

個人が登録する場合に必要な資格

  • 宅地建物取引士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士

法人が登録する場合に必要な要件

  • 宅建業者
  • マンション管理業の登録業者
  • 賃貸住宅管理業者登録制度の登録業者

管理受託契約を締結するまでに、内容及びその履行に関する事項について書面を交付する義務がある点にご留意ください。

住宅管理業者の義務

  • 信義誠実に業務を処理する原則
  • 名義貸しの禁止
  • 誇大広告の禁止
  • 不当な勧誘行為の禁止
  • 全部の再委託の禁止
  • 従業者証明書の携帯

住宅宿泊仲介業者

住宅宿泊事業者は、顧客との民泊の契約締結の代理・媒介を他の業者へ委託する場合は、官公庁長官の登録を受けた在宅宿泊仲介業者または旅行業者へ委託する必要があります。

登録方法は下記をご参照ください。

◆関連情報:
住宅宿泊仲介業者として登録するには?|民泊制度ポータルサイト「minpaku」

民泊事業者の義務

民泊事業者の義務

民泊事業の運営には、届出と法令遵守が欠かせません。民泊事業者が果たすべき義務を解説します。

基本の6つの業務

民泊を運営する事業者は、6つの業務を行う必要があります。

  1. 1.宿泊者の衛生の確保
  2. 2.宿泊者の安全の確保
  3. 3.外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保
  4. 4.宿泊者名簿の備付け等
  5. 5.周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明
  6. 6.苦情等への対応

住宅宿泊管理業者に民泊の管理を委託する場合は、これらの業務は住宅宿泊管理業者の責任のもと行われます。

◆関連情報:
事業者の業務[1]|民泊制度ポータルサイト「minpaku」

標識の掲示

標識の掲示

出典:事業者の業務[2]|民泊制度ポータルサイト「minpaku」

民泊として使用している建物には、その態様によって下記の項目が記載されている標識を掲示することが義務付けられています。

  • 届出番号
  • 届出年月日
  • 住宅宿泊事業者の緊急連絡先
  • 住宅宿泊管理業者の名称
  • 住宅宿泊管理業者の登録番号
  • 住宅宿泊管理業者の名称・登録番号・緊急連絡先 等

なお標識の様式は、以下の民泊制度ポータルサイト「minpaku」からダウンロード可能です。

◆ダウンロード資料(遷移先の「様式集」にてご確認ください):
住宅宿泊事業法(関連法令・様式集)|民泊制度ポータルサイト「minpaku」

都道府県知事等への定期報告

民泊を運営する事業者は届出住宅ごとに、毎年2月・4月・6月・8月・10月・12月の15日までに、それぞれの月の前2カ月における次の項目を都道府県知事等に報告する必要があります。

  • 人を宿泊させた日数
  • 宿泊者数
  • 延べ宿泊者数
  • 国籍別の宿泊者数の内訳

定期報告は、原則として民泊制度運営システムを利用して行います。

◆関連情報:
民泊制度運営システムの利用方法|民泊制度ポータルサイト「minpaku」

不動産業者(宅建業者・不動産管理会社)と民泊

不動産業者(宅建業者・不動産管理会社)と民泊

宅建業者|民泊に適した物件の選定・提案

民泊物件の需要は、観光地や主要駅周辺のエリアに集中しています。

2024年7月より、物件価格が800万円以下の宅地建物は原則による上限を超えて媒介報酬を受領できます。

空き家の利活用と訪日外国人観光客の宿泊需要を同時に満たせるよう、観光地に近い地域の物件などは、大家さんへ民泊への転換を提案してはいかがでしょう。

管理会社|「住宅宿泊管理業者」として民泊を管理

賃貸住宅管理業者登録制度に登録している業者は、「住宅宿泊管理業者」として民泊の管理を依頼されるビジネスチャンスがあります。

民泊管理業務では、宿泊者の衛生や安全の確保、苦情対応、宿泊者名簿の作成・備え付けなどが求められます。

一般的な賃貸物件の管理とは異なる点はありますが、ぜひ積極的にチャレンジしてみてください。

民泊に適した物件とは

民泊に適した物件とは

民泊に適した物件の特徴を具体的に解説します。

アクセス良好な立地

観光地・主要駅・公共交通機関へのアクセスが良いと、宿泊先として選ばれる可能性が高まります。
利便性の高さは、旅行者の満足度を向上させ、口コミや評価にも好影響を与えます。
立地の良さはリピーターの増加や長期的な集客効果も期待できます。

建築構造

民泊では騒音トラブルが発生する可能性があるため、一般的には耐火性能が高く、防音性に優れた鉄骨造やRC造(鉄筋コンクリート造)の物件が適していると考えられます。

一方で、古民家など独自の魅力を持つ木造物件も一定の需要があります。趣のある木造物件は、鉄筋コンクリート造に比べ自己資金(頭金)が多めに必要となりますが、訪日外国人観光客には人気です。

顧客のニーズを見極め、立地と物件の特性を活かした最適な提案を行いましょう。

民泊運営で大切な5つのポイント

民泊運営で大切な5つのポイント

民泊運営で抑えたい5つのポイントを解説します。

1.契約・規約の明文化

  • ハウスルールの明記
  • 罰則規定の設定
  • チェックイン拒否のルール

契約・規約の明文化は、宿泊客の行き過ぎた行動を防ぎ、民泊の運営者を守る効果が得られます。他の民泊施設のルールを参照するほか弁護士などの専門家に相談し、独自の規約を定めましょう。

2.セキュリティの強化

民泊には、国内外からさまざまな人が訪れます。セキュリティ強化の施策も検討しましょう。

  • 監視カメラの設置
  • スマートロックの導入 等

3.近隣住民との関係構築

多くの場合、民泊は近隣住民の生活の場に近接しています。事前に挨拶へ行く・説明会を開催するなどし、良好な関係を築きましょう。

地域の理解を得ることで、開業後のトラブルを未然に防ぎ、スムーズな運営につながります。

民泊は騒音などのトラブルと切り離せません。両隣のお宅には開業前に挨拶しておきましょう。

4.住宅宿泊管理業者との密な連携

民泊運営では、外国人宿泊客からさまざまな要望が寄せられます。

言語の違いや文化の違いによる誤解が生じることもあるため、事前に対応策を準備しておくことが重要です。

突発的なトラブルに迅速に対応できるよう、住宅宿泊管理業者と堅固な協力体制を構築しましょう。

5.外国語で書かれた注意喚起の案内

訪日外国人宿泊客へ施設の利用ルールを伝えることは必須です。

言語や文化の違いにより、日本の常識が伝わりにくいことがあるため、分かりやすく明確な表現を心がけましょう。

ルールや注意事項を英語・中国語で記載した案内文を用意し、客室や共有スペースの見やすい場所へ掲示してください。

民泊でよくあるトラブルと対処法

民泊でよくあるトラブルと対処法

民泊運営にはトラブルが欠かせません。よくあるトラブルと対処法を解説します。

近隣住民からのクレーム

民泊に関する近隣住民からのクレーム例として下記が挙げられます。事前に把握し、対策を講じてください。

近隣住民からのクレーム

備品や設備の破損・汚損・持ち帰り

訪日外国人宿泊客による備品の破損や汚損、無断での持ち帰りはよくあるトラブルです。

事前にハウスルールや注意事項を明示し、宿泊者にルールを理解してもらうことが重要です。

宿泊前に、破損や汚損が発生した場合の罰則規定を説明しましょう。

不審な宿泊者の対策

リーズナブルな料金でカジュアルに利用できる民泊は、不審な宿泊客の問題と切り離せません。

特に無人運営の施設では、不正利用やルール違反のリスクが高まるため、対策が不可欠です。

事前審査の強化・本人確認の徹底・信頼性の高いプラットフォームの利用などで対策しましょう。

「民泊」運営のコツ|事業者間のつながりを作ろう!

事業者間のつながりを作ろう!

民泊を利用する訪日外国人観光客の宿泊には、さまざまな課題が伴います。

適切なルール整備やサポート体制を整えることで、トラブルを防ぎ、より快適な滞在環境を提供できます。
信頼できる事業者同士が手を取り合い、地域活性を目指しましょう。

「宅建業者として民泊を開業したい」「頼れる仲間が欲しい」という方はぜひ、全国47都道府県に本部のある全日本不動産協会へご相談ください。

◆全日本不動産協会について:
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不動産業開業は「全日本不動産協会」へ

「全日本不動産協会」は、1952年10月に設立した公益社団法人です。中小規模の不動産業者で構成されており、2025年1月末には正会員数が3万7,000社を突破しました。

事業内容は不動産に関する政策の提言、不動産情報流通システム「ラビーネット」の運営、会員を対象とした教育研修など多岐に渡ります。

全国47カ所に都道府県本部を設けており、不動産事業に関する相談も受付中です。民泊の物件紹介・管理に関するご相談も、ぜひ「全日本不動産協会」までお寄せください。

◆関連情報:
全日本不動産協会|ホームページ



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