不動産会社の運転資金の目安は?資金調達の方法も紹介


2024年02月19日

不動産会社の運転資金の目安
不動産会社の経営には、開業資金だけでなくオフィスの家賃や従業員の給与といった運転資金も必要です。運転資金は会社運営の潤滑油です。会社経営を円滑に進めるためには早め早めに準備しておくことに越したことはありません。

そこで今回は、不動産会社を運営するために必要な運転資金の目安を解説します。資金調達や上手な資金繰りの方法もいくつか紹介しているので、不動産会社の運転資金について関心がある方はぜひ参考にしてみてください。

不動産会社の経営に必要な運転資金|一体いくら必要か?

不動産会社の経営に必要な運転資金
運転資金とは、会社経営を継続的に安定させるために必要な資金のことです。事業規模や事業内容によって必要な運転資金は大きく異なりますが、一般的には月の総売上高の最低3ヶ月分が目安とされています。月の総売上高が100万円になると見込まれる場合、運転資金は最低300万円が必要という計算です。

今後開業する予定で月の総売上高がまだわからない場合は、事業計画書や見込みの資金繰り表を作成し、おおよその総売上高の金額を算出してみましょう。利益の落ち込みや不測の事態に陥っても、会社を廃業しなくて済むように余裕のある資金準備が重要です。

不動産会社の運転資金の算出方法

不動産会社の運転資金の算出方法
不動産会社の事業内容や事業規模により、運転資金は数百万円から1,000万円以上必要になることが見込まれます。不動産会社の運転資金にかかる主な費用項目は、以下の通りです。

  • 1.オフィスに関わる費用
  • 2.広告宣伝費
  • 3.不動産の仕入れ費用
  • 4.従業員の給料
  • 5.自分の生活費

各費用がいくらぐらい必要かを概算し、計画的に運転資金を準備しましょう。
それぞれの金額の算出方法や目安について、以下に詳しく解説します。

1.オフィスに関わる費用

多くの不動産会社は、店舗やオフィスビルの一室を借りて、業務を行っています。備品の購入費のように初期投資だけで支払いが完了するものもあれば、家賃や電気代のように毎月発生し、支払いが必要な費用もあるため、運転資金を計算するときは毎月かかる経費を考慮しておきましょう。

  • オフィスの家賃
  • 水道光熱費
  • 通信費

オフィスの家賃は立地や広さ(大きさ)、水道光熱費は地域、通信費は使用する通信機器の数や使用頻度によって異なります。自社オフィスに関わる費用はいくらなのか、賃貸契約書や電力会社が用意しているシミュレーターなどを使って確認してみてください。

2.広告宣伝費

不動産会社の利益を上げるには、広告宣伝が欠かせません。チラシを作成したり、不動産ポータルサイトに物件情報を掲載するなど、具体的に計画している方も多いでしょう。不動産会社の広告宣伝費の目安を、広告種類ごとにまとめてみました。

  • ポスターの作成(100部):5万~10万円
  • チラシの作成(A4サイズを5,000部):5万~15万円
  • 不動産ポータルサイトへの掲載:月額1万円~

ポスターやチラシの作成を制作会社や印刷会社に依頼すると、10万円を超える費用が発生するケースもよくあります。ただし自社でWordやPhotoshopなど、専門ソフトを使ってデザインから印刷まで行えば、大幅にコストを削減することが可能です。

不動産ポータルサイトには月額制のプランだけでなく、問い合わせが発生したり、契約が成立したりすることで初めて料金が発生するものなど、課金体系はさまざまです。広告宣伝は定期的に行う必要があるため、運転資金に必要な経費として広告宣伝費は必ず計上しておきましょう。

3.不動産の仕入れ費用

不動産の売買事業を展開する場合は、仕入れ費用も用意しなければなりません。不動産の仕入れ費用は、物件1件につき数百万円から数千万円必要なケースがあります。自己資本だけで仕入れ費用の全額を賄うのは難しいケースもあるため、金融機関からの融資を検討するのが一般的です。

また、仕入れた不動産を売却できるまでは、管理維持費がかかります。不動産を仕入れた後も、管理を委託している会社への報酬・建物のメンテナンス・税金などがかかることも留意しておきましょう。

4.従業員の給料

従業員を雇う場合は、給料を用意する必要があります。国税庁が発表した「民間給与実態統計調査」によると、2022年の不動産業の平均給与は414万7,000円でした。

賞与を考慮せず単純に12ヶ月で割ると、毎月約34万5,600円の給与費用が発生します。従業員を3人雇う場合は、「約34万5,600円×3人×3ヶ月分」で約311万400円を運転資金として準備しなければなりません。
労働基準法第24条では、毎月1回以上のペースで給料を従業員に直接支払うことが規定されています。給与は従業員の生活に直結する大切なものなので、運転資金にしっかりと含めるようにしましょう。

5.自分の生活費

会社の運転資金からは、従業員への給料だけでなく経営者自身の生活費も賄わなければなりません。広告宣伝費やオフィスの家賃などで使える資金をすべて使い切り、自分の生活が苦しくなってしまっては本末転倒です。自身の生活費の用意も忘れないようにしましょう。

経営者の報酬額は、付加価値分配比率を用いる方法や税金を考慮して算出する方法など、いくつか計算法があります。自身の裁量で経営者の報酬を決めることが難しいときは、税理士のような専門家に相談してみるのもよいでしょう。

運転資金の調達方法を紹介

運転資金の調達方法
不動産会社を経営するときは、広告宣伝費や従業員の給料などさまざまな費用が毎月かかります。必要な資金の全額を自己資本で賄えたらよいのですが、必ずしも十分な額を用意できるとは限りません。そんなときは、金融機関等から運転資金を借りるのもひとつの手段です。ここでは、運転資金の主な調達方法を3つ紹介します。

日本政策金融公庫の「新事業育成資金」を利用する

日本政策金融公庫が用意している「新事業育成資金」は、開業後おおむね7年以内の人が利用できる融資制度です。融資限度額は7億2,000万円で、運転資金として使った融資金の返済期間は7年以内(うち据置期間2年以内)と定められています。

また、女性や35歳未満・55歳以上の方は「女性、若者/シニア起業家支援資金」も利用でき、運転資金なら最大4,800万円の融資を受けられます。自社に融資される金額や年間の利率は相談の上で決定するので、興味のある方は近くの日本政策金融公庫の支店に問い合わせてみてください。

保証協会付融資で借りる

保証協会付融資とは、保証協会に債務保証をしてもらった上で、民間の金融機関に融資を依頼する方法です。保証協会付融資の活用をおすすめする理由は、創業して間もない不動産会社が金融機関に融資を申し込んでも、経営の不安定さ等の理由から十分な額を借りられないケースが多いからです。

保証協会付融資だと万が一不動産会社が借りたお金を返せなくなっても、保証協会が代わりに借りたお金を支払ってくれます。金融機関としては貸したお金がしっかり返ってくるため、創業したばかりの不動産会社にも運転資金を貸しやすくなるのです。

納税資金・賞与資金の融資を受ける

納税資金や賞与資金の融資は短期融資に分類されており、比較的受けやすいとされています。納税資金や賞与資金は、次の納税や賞与のタイミングが来る約6ヶ月間で返済を完了させるのが基本です。

金融機関としては早い段階で貸したお金が返ってきますし、用途を確認しやすいため、創業間もない不動産会社にも融資しやすいのだと考えられます。運転資金の一部を融資でカバーできるため、納税資金や賞与資金を金融機関から借りてみるのもひとつの方法でしょう。

銀行から運転資金の融資を受けるのは難しい

銀行から運転資金の融資を受けるのは難しい
開業したばかりの不動産会社は、銀行から運転資金を借りるのが難しい傾向にあります。創業して間もない会社は経営が安定していないケースも多く、銀行にとっては信用が不足しており、貸したお金を返してもらえないリスクが大きくなりやすいためです。

また、融資によって得たお金は売上が少ないときの運転資金や他の事業への補填として使われる場合があることを、銀行側は知っています。融資を申し込むことは経営状況が思わしくなく、融資金額を回収できるか分からない状況であると判断される可能性があることも留意しておきましょう。

銀行から運転資金の融資を受けられない場合は…

自社だけで銀行から不動産会社の運転資金を借りるのが難しい場合は、保証会社付融資を利用するのが良いでしょう。もし借りたお金を自分の会社が返せなくなっても、代わりに保証会社が返済して銀行側には損失が出ないようになっているため、銀行としてもお金を貸しやすくなります。

どうしても銀行から運転資金を借りたい場合は、安定した経営状況が続いていることをアピールした上で、「手元流動性を高めたい」とその理由を伝えてみましょう。原則として、銀行は不要不急の融資は行いませんが、経営が安定している会社には融資に応じる可能性はあります。
また、経営が安定している不動産会社には「うちの銀行の融資制度を使いませんか?」と銀行側から融資の提案がやって来ることもあります。経営が安定すればするほど資金の調達方法の幅が広がるので、まずは会社の事業を軌道に乗せることが何より重要です。

運転資金を確保するために大切なポイント

運転資金を確保するために大切なポイント
金融機関からお金を借りること以外にも、不動産会社の運転資金を確保する方法は複数あります。今回紹介するのは、以下の5つのポイントです。

  • 1.不要な備品・在庫は処分する
  • 2.会社の営業方針に則った広告展開を行う
  • 3.帳簿を丁寧につけておく
  • 4.資金繰り表を作成する
  • 5.税金対策はしっかりと行う

融資と社内での工夫を上手に組み合わせることで、計画的に資金を運用できるようになるでしょう。それぞれの方法について、詳しく紹介します。

1.不要な備品・在庫は処分する

「いつか使うかも」と残している備品や、「今後売れる可能性があるから」と保有し続けている不動産の在庫を処分することは、運転資金の確保に効果的です。不要な備品や在庫の中には、特に使う機会はないのに修繕費・維持費・管理費・税金などがかかり続けるものもあります。

一度社内の設備や保有している不動産を見直して、余分な支出を減らし、本当に必要なところに資金を充てられるようにしておきましょう。

2.会社の営業方針に則った広告展開を行う

やみくもに広告をたくさん出しているだけでは、集客効果はあまり得られないでしょう。

例えば、家族向けの不動産をたくさん扱っているならファミリー層へ、単身のビジネスマンに便利な物件を取り扱っているなら、単身世帯が多いエリアへ的を絞って広告宣伝を行いましょう。

会社の営業方針に則った広告展開をするときは、自社の強みや取り扱っている物件の種類をしっかり分析しておくことが大切です。

3.帳簿を丁寧につけておく

日頃から帳簿を丁寧につけておくことも、運転資金を確保するために有効な方法です。会社を経営するときは、仲介手数料の受け取り時やオフィスの家賃の支払いといったお金の動きを、帳簿にひとつひとつ記載する必要があります。

帳簿を普段から正確に記入し、入出金・売掛金・借入金などを明確にすることで、計画的な資金運用の下地が作れます。自社で帳簿をつけるのが難しいときや、取引の金額が大きいときは、専門の税理士事務所に依頼することも検討してみましょう。

4.資金繰り表を作成する

資金繰り表とは、一定期間の現金収入と現金支出をまとめ、現金の収支や過不足が一目で分かるようにした一覧表のことです。資金繰り表を作ると会社のお金(現金)の流れが分かりやすくなるため、現在の問題点を洗い出したり、今後資金が不足する可能性の有無を判断したりできます。

財務上、売上があっても、手元に現金がなければ、経営は成り立ちません。その意味でも、日頃から資金繰り(現金管理)には注意を払うようにしましょう。そのためにも、資金繰り表の作成・管理はとても重要です。

資金繰り表を作成する頻度の目安は、1ヶ月につき1回でよいでしょう。会社の資金の増減を毎月把握できるため、計画的な資金運用ができるようになります。資金繰り表は、Excelなどのソフトを使用すれば自作も可能です。より専門的な資金繰り表を作成したい場合は、税理士事務所に依頼することをおすすめします。

5.税金対策はしっかりと行う

会社として支払う納税額は決して少なくありません。節税対策をしっかりと行い、経営に必要な運転資金に充てられるお金をできるだけ手元に残しておきましょう。

節税対策には、事業に必要な設備投資や繰越欠損金の活用など、さまざまな方法があります。会社の事業内容や経営状況によって採るべき対策は異なるので、詳しくは税務署や税理士事務所に相談してみてください。

運転資金を十分用意して不動産業を開業しよう

運転資金を十分用意して不動産業を開業しよう
不動産会社を経営していると、開業時の初期投資の後もオフィスの家賃や広告宣伝費といったさまざまな運転資金がかかります。運転資金の目安は、月の総売上高の最低3ヶ月分とされています。自己資金だけではなく、金融機関からの融資を受けて十分な額の運転資金を準備しましょう。

融資を受ける以外にも、不要な備品・在庫の処分や資金繰り表の作成などの財務管理により、計画的な資金運用が可能になります。万全な準備で安定した会社経営を目指しましょう。

不動産に関するご相談は「全日本不動産協会」へ

「全日本不動産協会」は、中小規模の不動産会社で構成されている公益社団法人です。法人のマークにウサギが描かれていることから、「ウサギ」「ウサギマーク」の愛称で親しまれています。

「全日本不動産協会」では、不動産会社を経営している方・不動産業に携わっている方に向けた相談窓口を設けております。不動産実務をはじめ、不動産業に関わることなら何でも相談可能です。

地方本部でも、会員の方からの相談に定期または不定期にて応じております。不動産会社の経営に関する相談は「全日本不動産協会」にお声がけください。


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