不動産仲介業で売上が減少する理由はなぜ?原因と対策を解説


2023年12月19日

不動産仲介業で売上が減少する理由はなぜ?原因と対策を解説
不動産仲介業の会社経営にあたり、安定した売上を得ることはとても大切です。しかしながら、会社によっては客足が遠のき、売上減少や収支の悪化に頭を悩ませる経営者がいるのも事実。売上が減ってしまうのには、なにか理由があるのでしょうか。

そこで今回は、不動産仲介業における売上減少の原因と、売上減少を防ぐ対策について解説します。頼りになる相談先も紹介しているので、自社の経営状況が気になっている方はぜひ最後までご覧ください。

不動産仲介業全体の売上傾向は?市場の現状を解説

不動産仲介業全体の売上傾向は?市場の現状を解説
財務省が発表した令和4年度の年次別法人企業統計調査の結果概要によると、令和4年度の不動産業全体の売上高はおよそ46兆円でした。新型コロナウイルスの影響で売上が減少した年もありましたが、平成30~令和3年度までの売上高もそれぞれ45兆円前後で安定しており、不動産業界自体は比較的大きな市場であることがわかります。

また、不動産仲介業のみに絞っても売上は4兆円以上あり、不動産業界の売上のうち約10%を占めています。総務省の統計では日本国内の住宅は6,240万7,000戸あるため、取り扱う物件もたくさん存在すると考えてよいでしょう。中小規模の会社も多数参入している業界ですので、会社の方針や工夫次第で十分利益を上げられる市場環境と言えます。

不動産仲介業で売上が減少する理由

不動産仲介業で売上が減少する理由
不動産仲介業に限らず会社の売上が減少するときは、何かしらの理由があるはずです。売上減少の原因をあらかじめ把握しておくことで、先手を打って対策できます。まずは、不動産仲介業で売上が減少する理由を確認してみましょう。

人材不足

不動産仲介業の売上が減少する理由のひとつとして、人材不足が挙げられます。不動産仲介業の仕事には広告・顧客とのやり取り・書類の作成・査定などさまざまなものがあり、契約を1つ結ぶだけでも多くの時間が必要です。

そこで人手が不足していると、対応できる業務量に限りがあり、それが原因で売上が伸びにくくなる可能性もあります。自社の取り巻く状況を把握し、適切な人数で会社を運営することが大切です。

認知度の低さ

会社自体の認知度の低さも、売上が減少する原因のひとつと考えられます。開業当初は頑張って宣伝していたけれど、現在はあまり広告活動をしていなかったり、広告を出す間隔が空いたりはしていないでしょうか。

近年は情報の流れが早いため、自社の宣伝を後回しにしていると、顧客の目がすぐに他社へ向いてしまう可能性もあります。まめに自社を宣伝し、多くの人に認知してもらうことが重要です。

接客態度やサービスの質に問題がある

店舗スタッフの接客態度や会社が用意しているサービスの質に問題があり、客足が遠のいている可能性も考えられます。「対応が雑だった」「安心して取り引きできなかった」といった口コミが経営者や社員の知らないうちに広がり、会社にマイナスイメージが付いている場合があります。一度口コミサイトやGoogleマップの自社の口コミを確認してみるのも良いかもしれません。

売上が減少する不動産仲介業の会社の特徴・共通点は?

売上が減少する不動産仲介業の会社の特徴・共通点は?
売上が減少する不動産仲介業の会社には、ある程度の共通点や特徴があります。主なものは、以下の4つです。

  • 1.掲載する広告の頻度が月によって違う
  • 2.ミーティングの回数が少ない
  • 3.店舗や事務所が整理整頓されていない
  • 4.申込後のキャンセルが多い

以下、各項目について詳しく解説します。自社に当てはまるものがないか想像しながらチェックしてみましょう。

1.掲載する広告の頻度が月によって違う

安定した頻度で自社の広告を掲載していない不動産仲介業の会社は、売上が減少しやすい傾向にあります。なぜなら時間が経過するにつれて情報の新しさが損なわれ、広告を見た人からの反響が減りやすいからです。

広告を見た人は、「新しい情報の方が実際に取り引きするイメージが湧きやすい」「情報が古いと、今もこの広告の通りなのか不安になる」といった感情を抱くかもしれません。近年は情報の流れが早く、広告宣伝を怠るとすぐに他社の広告が前面に出やすい状況であるため、コンスタントに広告を掲載することはとても重要です。

2.ミーティングの回数が少ない

社内ミーティングの回数が少ないのも、売上が減りやすい不動産会社の特徴のひとつです。日々行う朝礼やミーティングは、会社の方針や売上、その日の接客予定数などをスタッフ全員で共有する大切な時間です。ミーティングが少ないと社員の意識統一や、日常業務の連携が難しくなり、業務効率の低下やサービスの質のバラつきにつながるかもしれません。

会社の方針と社員の意識が一致しないと、方向性の違いによるスタッフの離職が発生することも…。サービスの質のバラつきは口コミで広がるケースもあるため、ミーティングを密に行うことが大切です。

3.店舗や事務所が整理整頓されていない

店舗や事務所が整理整頓されていないと、売上が減るケースもあります。具体的には、机や棚に書類が山積みになっていたり、パソコンに保存しているファイルが整理整頓されていないケースなどが挙げられます。会社で使うものや情報が整理されていないと、必要な時に探すにも時間がかかるため、業務効率が低下しやすいものです。

また書類の収納場所のような簡単なルールが徹底できていない会社の中には、業務ルールも徹底されておらず、個人の判断に任せきりのところもあるようです。こうした社内統制の乱れは、サービスの質のバラつきにもつながります。顧客によっては「人によって対応が違う」と不安を抱いてしまい、利用を避けるようになるかもしれません。

4.申込後のキャンセルが多い

理由にもよりますが、申込後のキャンセルの数が増えるのも、会社の売上が減少する兆候である場合があります。社員による強引な勧誘、ヒアリングが円滑に進まない、申込後のフォローが手薄であるといったことが、キャンセルの原因になっているのです。

もちろんキャンセル理由のなかには、家庭の事情や他社との契約の締結などもあり、100%会社が悪いとは言い切れません。とはいえキャンセルの数が増えるのには何かしらの理由があると考えられるので、社員が働く様子を確認したり、顧客へのアンケートを実施したりして、原因を探ってみると良いでしょう。

不動産仲介業の売上減少を防ぐ対策法を8つ紹介

不動産仲介業の売上減少を防ぐ対策法を8つ紹介

売上の低下は放置していると悪化の一途を辿りますが、しっかりと原因を分析したうえで対策すると、十分防ぐことができます。不動産仲介業の売上減少を防ぐ対策法として挙げられるのは、以下の8つです。

  • 1.人材の採用・確保
  • 2.社内での意識やマニュアルの統一
  • 3.事務所内を整理して業務を円滑に進められるようにする
  • 4.自社の強みを最大限活かして売上に繋げる戦略を練る
  • 5.業務を効率化できるツールを導入する
  • 6.顧客に気付いてもらえるよう自社を広告・宣伝し続ける
  • 7インターネット上のコンテンツを積極的に活用する
  • 8.客単価を上げる

いくつか組み合わせれば売上減少を防ぐだけでなく、売上の増加も期待できます。以下、それぞれの方法について、詳しく解説します。

1.人材の採用・確保

人材の採用・確保は、不動産仲介業の売上減少を防ぐ有効な対策です。特に、人手不足により業務に支障が出ていたり、対応できる案件数が限られたりしている会社には効果が期待できます。即戦力を求めるなら、経験者を対象とした中途採用がおすすめです。

仕事を教えて長期間勤務してもらうことを前提とするなら、未経験や新卒を採用するのも良いでしょう。会社独自の採用サイトを開設したり、求人情報サイトに自社の情報を掲載したりしてみてください。

2.社内での意識やマニュアルの統一

顧客離れによる売上減少を防ぎたい場合は、社内の意識やマニュアルを統一することをおすすめします。会社で働く人たちの意識が統一されると、会社が掲げるビジョン・方向に向けて社員一丸となって活動できるため、社員ごとの接客態度のバラつきが自然と小さくなるものです。

また、マニュアルを統一することで会社全体のサービス水準を一定レベルで保つことができます。人材育成や教育研修に要する時間の短縮にもつながるため、コストダウン効果も期待できます。

3.事務所内を整理して業務を円滑に進められるようにする

仕事に必要な書類や資料を探すのに手間がかかっていると感じるときは、事務所内を整理整頓するのもおすすめです。探し物を早く見つけられるようになると、今まで探し物をしていた時間を仕事に充てられるようになります。

無駄な時間を省くことでより多くの案件を受注したり、手厚いサービスを実施したりできるようになるため、売上の回復が見込めるでしょう。書類の種類ごとにバインダーの色を変える、PC上のデータの分類先を決める、書類を保管する専用スペースを設けるなど、さまざまな対処法があります。

4.自社の強みを最大限活かして売上に繋げる戦略を練る

ありきたりな広告・宣伝だと、中堅や中小規模の不動産仲介業者は、資金力がある大手企業に遅れを取ってしまうかもしれません。広告宣伝費として使える予算が限られているなかで売上に繋げるには、自社の強みを活かした広告戦略を練ることが大切です。

地域密着型の会社であれば特定の地域については大手より多くの情報を得られるでしょうし、家族向けのおすすめ物件を取り扱っている会社は子育て世帯をターゲットにできるかもしれません。自社の強みを分析し、ターゲットを絞るなどの戦略を見直すことは、売上の回復に効果的です。

5.業務を効率化できるツールを導入する

人手不足の影響で売上が伸び悩んでいる場合は、業務を効率化できるツールを導入するのもひとつの手段です。業務の効率化により、受注できる案件数が増やせます。

顧客情報や営業タスクを一括で管理できる「顧客管理システム」や、問い合わせ対応を任せられるAIなど、現在はさまざまなツールが存在します。初期費用がかかることと、社員がツールを使いこなすには少し時間を要することに留意しつつ、計画的に社内に導入しましょう。

6.顧客に気付いてもらえるよう自社を広告・宣伝し続ける

自社の認知度を上げたいときは、見込み顧客に気付いてもらえるよう自社を広告・宣伝し続けることが大切です。

広告頻度を上げることで、定期的に見込み顧客の目に触れるようにして、無意識のうちに覚えてもらい、接触回数が増えるほど好感を抱きやすくなる心理的な効果も期待できます。自社がターゲットにしている客層に合わせて、情報誌に広告を掲載したり、特定のエリアにポスティングするのも有効な手段です。

7.インターネット上のコンテンツを積極的に活用する

現在はSNS・動画投稿サイト・自社が運営しているWebメディアなど、さまざまなインターネット上のコンテンツが不動産会社の広告ツールとしても使われています。インターネット上でコンテンツを展開すれば、より多くの人に自社の物件を紹介できるでしょう。

なかには1分ほどの短い動画で物件を紹介し、手軽に内覧できるよう工夫している不動産会社もあります。コンテンツを充実させるには時間を要する一方、少予算で始められるため、一考の価値がある対策法です。

8.客単価を上げる

契約数は一定の水準を保っているにも関わらず売上だけが落ちている場合は、不況や物価上昇などの影響で、売上が減少しているかもしれません。その場合は、客単価を上げて、売上を確保する方向に変えてみるのもひとつの手段です。

今まで扱っていた物件よりワンランク上のものを紹介したり、頻繁にキャンペーンを開催しているなら回数を減らしたりしてみてください。高額な物件を紹介する場合は、その物件が高額である理由を説明できるよう準備しておくと良いでしょう。

不動産仲介業で売上が減少したときの相談先

不動産仲介業で売上が減少したときの相談先
1人で悩んだり社内で話し合ったりするだけでは、売上減少を克服する有効な対策法を見つけるのが難しい場合もあります。そんなときは、外部の人・組織に相談するのもひとつの手段です。不動産仲介業者が利用できる主な相談先としては、以下の3つが挙げられます。

  • 1.商工会議所
  • 2.コンサルティング会社
  • 3.全日本不動産協会

以下、それぞれの相談先で相談できることや、相談の進め方を紹介します。

1.商工会議所

商工会議所とは、一定の区域内の商工業者によって組織されている団体のことです。経営状況やITツールの導入など、会社の運営で抱えやすいさまざまな相談に対応しています。基本的には常駐している経営指導員と話をするのですが、必要に応じて社労士・弁護士・税理士といった専門家に相談することも可能です。

商工会議所は全国に設けられており、各会議所によって担当エリアが決まっています。まずは自社があるエリアを担当している商工会議所に声を掛けてみてください。

2.コンサルティング会社

コンサルティング会社では、経営・マネジメント・実務・宣伝活動など会社の経営に関する幅広い相談ができます。会社の経営状況が軌道に乗るまで二人三脚でサポートしてもらえることもあり、心強い存在です。

なかには、不動産会社を専門としたコンサルティング会社もあります。コンサルティング料がかかる会社が多いため、無料相談会に参加したり口コミを確認したりして、契約を結ぶ前に会社をいくつか見比べてみましょう。

3.全日本不動産協会

全日本不動産協会など、不動産業界団体の利用も検討しましょう。

全日本不動産協会では、事業の一環として不動産会社を営む人に向けた相談窓口を設けています。相談できる内容は、実務・法務・税務などです。状況に応じて相談したい内容をあらかじめメモにまとめておくことをおすすめします。

全日本不動産協会は、日本全国47都道府県に「地方本部」を設けています。 自分が開業しているエリアの全日本不動産協会の「地方本部」にお問い合わせしてみてください。

■関連情報
公益社団法人 全日本不動産協会のホームページ

売上減少の防止は日々の対策が大切|不安なときは相談しよう

売上減少の防止は日々の対策が大切|不安なときは相談しよう
売上減少は、会社の経営状況に直結する重大な出来事です。しかし原因を追求して適切な対応を取れば、売上を回復させるだけでなく、伸ばすこともできます。

売上減少を防止するには、日々の対策の積み重ねがとても大切です。社内で解決するのが難しいときは、外部に相談するのもひとつの手段。売上の減少傾向が見え始めたら、できるだけ早く対策してみてください。

全日本不動産協会では不動産に関する相談を受け付けています

「全日本不動産協会」は、中小規模の不動産会社で構成されている公益社団法人です。法人のマークにウサギが描かれていることから、「ウサギ」「ウサギマーク」の愛称で親しまれています。

「全日本不動産協会」では、不動産会社を経営している方・不動産業に携わっている方に向けた相談窓口を設けております。不動産実務をはじめ、不動産業に関わることなら何でも相談可能です。

地方本部でも、会員の方からの相談に定期または不定期にて応じております。不動産会社の経営に関する相談は「全日本不動産協会」にお声がけください。



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