不動産営業クロージング10の鉄則|契約率を高める実践ノウハウと注意点


2025年12月26日


不動産取引の成否を左右する重要な局面―それがクロージングです。

内見から契約締結までの過程で、顧客の不安を解消し、前向きな意思決定を後押しするこの段階は、不動産営業における“最後の勝負所”といっても過言ではありません。

本記事では、不動産営業のプロが実践するクロージングのコツや注意点、さらにスキルを磨く方法までを詳しく紹介します。

明日からすぐに活かせる実践例も盛り込みましたので、ぜひご参考にしてください。

営業の「クロージング」とは


クロージングとは、商談の終盤においてお客様の意思決定を促す一連の対応を指します。

成約だけでなく、不成立の結論もクロージングに含まれます。
重要なのは、お客様が納得して判断できるように後押しする姿勢です。

説得ではなく“支援”の意識で臨むことで、信頼関係を築いた上での意思決定につながります。

◆関連記事:

トップ営業に学ぶ!成約が取れる不動産営業のコツとは?|全日ラビー不動産コラム

不動産営業のクロージングが重要な理由


不動産営業と一口に言っても、「売買仲介」「賃貸仲介」「法人営業」などスタイルは多岐にわたります。

営業対象や価格帯、購入動機によってクロージングの難易度も異なります。

本記事では、個人のお客様を対象とした営業活動を主軸に、クロージングのコツを詳しく解説していきます。

成約までのフェーズをおさらい

まずは、不動産営業における、初回接点から成約までのフェーズを簡単におさらいします。

  1. お客様から問い合わせを受ける
  2. 希望条件を尋ねる
  3. 希望条件に沿う物件を探す
  4. 内見の案内
  5. 重要事項の説明
  6. 契約締結

賃貸営業はスピード感が命

賃貸営業においては、複数物件を比較しながら即断即決されるケースも多く、チャンスを逃さないスピードが重要です。

たとえば「即入居OK」「家賃交渉可」といった“決め手”があれば、提示のタイミング次第で成約率は大きく変わります。

さらに、成約に至らなかった場合もすぐに別案を提示できる柔軟性が求められます。

売買営業は信頼と慎重な提案がカギ

一方、売買営業は物件価格が高額になるため、意思決定には時間がかかります。

ローン審査、将来的な資産価値、税制優遇などの要素も含まれるため、正確かつ丁寧な説明が欠かせません。

<補足>売買契約のクロージング項目例:

  • 物件の価額など契約内容の確認
  • 契約の成立/不成立
  • 手付金の額や支払方法
  • 登記(所有権移転)
  • 物件引き渡し

売れる営業 vs 売れない営業


営業成績は、才能ではなく“対応の質”によって左右されることが多いです。

売れる対応
  • 返信が早い
  • 素直
  • 行動力がある
  • 物件への自信
  • 成約率が高い人を研究している
売れない対応
  • お客様の話をよく聞いていない
  • 尋問のような淡々とした接客をしている
  • アフターフォローが不足している

実際のところ、成績上位者ほど「真摯な対応」を徹底しています。

テクニック以上に、お客様との信頼関係の構築が成果に繋がるポイントです。

なお、繁忙期を過ぎた秋冬などは、お客様の行動量が減る傾向にあります。

そのため成約率が落ちても、自責思考になりすぎないことも大切です。

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不動産営業で使えるクロージングのコツ10選


ここからは、個人顧客向け営業で役立つクロージングのコツを10個紹介します。

実践で活かせる具体的なアクションとともにお届けします。

1. 譲れない条件と妥協点を明確にする

「すべて完璧な物件を探したい」というお客様も少なくありません。

だからこそ、初回来店時のヒアリングでは“譲れないポイント”と“妥協可能なポイント”を切り分けて確認しましょう。

たとえば「駅近で新築希望」という条件でも、「築5年以内であればOK」や「駅徒歩10分以内であれば大丈夫」といった現実的なラインを見つけることで、提案の幅が広がります。

<参考>お客様のご希望条件

  • 予算
  • 間取り・広さ
  • 物件の種類(アパート・マンション・戸建て)
  • 物件の築年数
  • 最寄り駅
  • 駅からの距離

2. 物件紹介の順番に工夫を

「普通の物件→やや難あり物件→本命物件」といった流れにすることで、最後に紹介する物件の印象が際立ちます。
営業現場では“記憶の新しさ”が印象形成に影響するため、最後に魅力的な物件を残しておくのは定番のテクニックです。

◆関連記事:

不動産業界で反響成約率を向上させる方法7選|契約に繋がらない方必見!|全日ラビー不動産コラム

3. 十分な情報収集で不安を払拭

お客様が不安を感じるポイントは「知らない情報があること」です。

物件のスペックだけでなく、周辺環境や商業施設、学区なども事前にチェックし、安心材料として提示しましょう。現地を下見しておくと、自信を持って説明できるため説得力も増します。

不動産営業は非常に多忙ですが、事前に物件に関する下記の情報は最低限、収集してください。

  • 地域の特性
  • 最寄り駅からの所要時間
  • 近隣の商業施設
  • (お子さまがいる場合)学区・学校

4. メリットとデメリットはセットで伝える

お客様は“完璧な物件”を求める一方、営業から「良いことばかり言われる」と警戒してしまうこともあります。

そこで、短所も包み隠さず伝えたうえで、具体的な対応策や代替案を添えると信頼感が高まります。

  • 「日当たりはあまり良くないけれど、浴室乾燥が付いていますよ」
  • 「スーパーから少し離れていますが、宅配ボックスが大きいですしこのエリアを対象とした配送サービスはたくさんあります」

など、自分の言葉で物件の魅力を伝えましょう。

5. お客様同士で会話できる時間を設ける

グループや夫婦で来店された場合には、内見中に「ご自由にどうぞ」と声をかけて一時的に席を外すのも有効です。

プレッシャーを感じずに本音を話し合える時間をつくることで、自然な意思決定を後押しできます。

6. 「テストクロージング」で意向を確認する

たとえば「この物件、実際に住むとしたらどんなイメージが湧きますか?」という質問を挟むことで、購入意欲の度合いを把握できます。

また反応が薄ければ、方向性を見直すタイミングとして活用できます。

  • 「ここまででご質問はありますか?」
  • 「こちらの契約金額でいかがでしょう」
  • 「こちらの物件に住むときの、生活のイメージは湧きますか?」

といった、契約の意思確認に繋がる質問もおすすめです。

7.動機や優先順位を深掘りする

「予算は◯万円まで」と言われても、何にその上限が影響しているのかを掘り下げることで、他の選択肢が見えてくることもあります。

意外なところで「通勤時間を重視していた」といった新しい気づきが出ることも。

また例えば、

  • 「希望条件はこちらでよろしいでしょうか」
  • 「この物件だとこのような生活スタイルも実現できるのですが、いかがでしょう」

など、お客様のご希望を具体的に引き出す質問も効果的です。

8. ご家族や知人の同席を提案

「住宅購入は家族の一大イベント」。

この視点を忘れず、必要に応じて親御さんやパートナーの同席を勧めましょう。

信頼できる第三者の意見が、不安や迷いの解消につながります。

9. 物件での暮らしをイメージした説明をする

単なる設備紹介ではなく、具体的なライフシーンを織り交ぜて伝えると響きやすくなります。

「このキッチンなら、お子様と一緒に朝ごはんの準備が楽しめますね」など、生活をイメージできる提案を心がけましょう。

  • 「リビングでは、ご家族でゆったりとくつろぎながらテレビを楽しめます」
  • 「朝日が差し込むキッチンで、気持ちの良い朝食の準備ができます」
  • 「近くの公園はお子様の遊び場に最適です」

など、実際の生活を想像できる言葉がおすすめです。お客様のライフスタイルに合わせた情報を伝え、物件の魅力を最大限に引き出しましょう。

10. 回答期限を共有する

「この物件は週末までに別のお客様が検討中です」など、期日を明示することで、お客様の意思決定に適度な緊張感を与えられます。

ただし、あくまで事実ベースで伝えるようにし、煽りすぎには注意しましょう。

不動産営業におけるクロージングの注意点


クロージングは営業成果に直結する大事なステップですが、やり方を間違えると逆効果になることもあります。

ここでは、特に注意すべきポイントを3つに絞って解説します。

1. 「押し売り」にならないように注意

クロージングでありがちな失敗が、強引に契約を迫ってしまうパターンです。

たとえば「このチャンスを逃すと後悔しますよ!」など、根拠が薄い煽り文句を繰り返すと、お客様は不信感を抱きやすくなります。

クロージングの本質は“決断をサポートすること”。「お客様にとって、この物件が本当に最適かどうか」を一緒に見極める姿勢が信頼に繋がります。

2. 必要以上の連絡・催促をしない

「その後いかがですか?」「ご決断いただけましたか?」という連絡も、タイミングや頻度を間違えると“しつこい営業”という印象を与えかねません。

特に連絡の目的が曖昧だったり、理由がない急かし方をすると、他社に流れるリスクも高まります。

逆に、「キャンペーン終了のご案内」や「他の内見希望が入った」など、明確な理由があるフォローは好印象につながります。

3. 宅建業法を正しく守る

営業現場でありがちな法令違反のひとつが「手付金の貸与や後払い」です。

これは宅建業法で明確に禁止されています。

たとえば、成約を取りたくて「お支払いはあとで大丈夫です」と案内してしまった場合、処分の対象になる恐れがあります。

契約の意思確認が不十分なまま特典を提示する行為も、宅建業法違反となるケースがあります。

営業成果を追い求めるあまり、法令を軽視してしまうことのないよう、常に正しい知識と意識を持って対応しましょう。

成果に繋がるクロージング技術の磨き方


「自分には営業センスがないかも…」と感じてしまう方もいるかもしれませんが、安心してください。

クロージング力は“後天的に伸ばせるスキル”です。ここでは、実践的にスキルアップできる方法を3つ紹介します。

1. ロールプレイングとフィードバックを徹底する

営業同士でロープレ(ロールプレイング)を行うことは、最も手軽かつ効果的なトレーニング方法です。

たとえば、以下のように具体的な状況を設定して行うと、実践に近い練習が可能となります。

  • 30代夫婦・新築戸建てを検討中
  • シングルマザー・学区重視
  • 初めての一人暮らし・賃貸マンション希望

ロールプレイ後は上司や先輩にフィードバックをもらいましょう。

自分では気づけなかった口癖や話の流れのズレに気づくことができます。

2. 成果を出している営業に同行する

営業が上手な人ほど、無意識に顧客の“心の声”を拾っています。

成約率が高い先輩に同行し、リアルな現場での会話や所作を観察することで、多くの学びがあります。

会話のテンポ、沈黙の使い方、質問の仕方、笑顔のタイミングなど、書籍や動画では得られない“空気感”を体感することができます。

3. 保証協会の研修・セミナーを活用する

スキルの底上げには、定期的なインプットも不可欠です。保証協会が開催する研修会やセミナーは、実務と直結した内容が多く、すぐに現場で活かせる知識が身につきます。

◆全日本不動産協会が提供している研修例:

  • 全日ステップアップトレーニング
  • 新規免許業者研修
  • ラビーネット研修会

スキルアップだけでなく、業界ネットワークづくりにも役立つ場なので、積極的に活用してみてください。

不動産営業の成果は、クロージングの工夫で大きく変わる!

不動産営業におけるクロージングは、単なる“契約の最終段階”ではありません。それまでのヒアリング、提案、信頼関係づくりの集大成として、顧客の決断を後押しする重要なプロセスです。

そしてその一つひとつに、工夫の余地があります。

「暮らしのイメージを語る」だけでも、お客様の表情が変わることがあります。

まずは、今日の内見から「1つだけでも取り入れる」と決めて実践してみましょう。

小さな改善の積み重ねが、やがて大きな成果につながります。

よくある質問(FAQ)|不動産営業のクロージングでよくある悩みを解消!

不動産営業の現場では、「どうクロージングすれば良いのか?」「どのタイミングで契約を切り出すべきか?」など、多くの営業パーソンが悩みを抱えています。

ここでは、そんなよくある疑問にお答えします。

Q1. クロージングをする最適なタイミングはいつですか?

お客様が物件に対して前向きな発言をしたときが1つのサインです。

「この間取り、理想に近いですね」「駅から近いのはやっぱり魅力ですね」といった言葉が出たら、テストクロージングで反応を探ってみましょう。

Q2. クロージングで「決め手」に欠ける場合、どうすればいい?

比較している他物件との違いや優位性を明確にしましょう。

「この物件だけ南向きです」「リノベ済で初期費用を抑えられます」など、具体的な価値提案が決断の後押しになります。

Q3. 強引な営業を避けながら、契約を後押しする方法はありますか?

「お悩みのポイントはどこでしょう?」と優しく聞くことで、お客様自身の考えが整理され、自然と背中を押せることがあります。

提案よりも“聞く姿勢”が鍵になる場面も多いです。

Q4. お客様からの返答がない時、どのくらいの頻度で連絡していい?

目安は3〜5日ごとに1回。

LINEやメールなら「情報提供」の体でさりげなく、電話は控えめに。

“連絡の理由を添える”のがポイントです。

Q5. クロージングが苦手です。営業初心者でもすぐに実践できる方法はありますか?

「質問ベースのクロージング」から始めましょう。

「この立地ならご希望に近いですか?」といった聞き方で、お客様自身が考えるきっかけになります。

プレッシャーもなく、会話の流れも自然です。

Q6. 成約率の高い営業パーソンは何が違うのですか?

ヒアリング力と提案の一貫性です。

「この条件ならこの物件」と“理由がセットになった提案”をすることで、安心して任せられると感じてもらえます。

Q7. テストクロージングで断られたらどうしたらいい?

落ち込まず、次の物件を紹介する準備を進めましょう。

「本音が聞けた」と前向きに捉えれば、リカバリー提案にもつながります。

Q8. 「他の物件も見てみたい」と言われたら引き止めるべき?

無理に引き止めるより、「比較したうえでご判断ください」と余裕のある対応を見せた方が好印象です。
その際、「比較に役立つチェックポイント」などを渡すと信頼感がアップします。

Q9. クロージングのとき、お客様に何を質問すべき?

「この条件でご家族も納得されそうですか?」など、本人とその周囲を含めた“決断の要素”を聞くのがポイントです。

「住んだ後の暮らし」への言及もおすすめです。

Q10. 長引いている商談をクロージングに持ち込むコツは?

「最新の空室状況」「キャンペーンの締切」など、行動を促す“きっかけ”を提示しましょう。

「今決めるべき理由」が明確になると、お客様の気持ちも動きやすくなります。

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「全日本不動産協会」は、1952年10月に創立された公益社団法人です。中小規模の不動産会社で構成されており、2025年10月末の正会員数は37,923社で年々増加しています。

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