【注目】空家措置法が2023年12月に改正|不動産会社が押さえるべき変更点とは?
2025年12月26日

少子化による人口減少は、今や国の最重要課題のひとつです。
人口が減少すれば、居住者のいない空き家が自然と増加し、不動産業界にとっても空き家問題は深刻なテーマとなっています。
こうした状況を受け、国は空き家対策として関連法の整備を進めており、2023年12月には「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家措置法)」が改正され、施行されました。
本記事では、空き家問題の現状や課題にあらためて焦点を当てるとともに、改正された空家措置法のポイントをわかりやすく解説します。
法改正の全体像を把握したい方や、改正後の制度を踏まえて不動産関連事業を展開したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
なぜ空家措置法を改正することになったのか|背景を解説

空家措置法が改正された背景には「使用目的のない空き家」の急増があります。
国土交通省のデータによると、1998年から2018年の20年間で、使用目的のない空き家はおよそ1.9倍に増加。
今後もこの増加傾向が続くと見込まれており、空き家問題への早急な対応が求められています。
なお、空家措置法はもともと2014年に制定された法律ですが、従来のように「特定空家」として分類された後に対応するというスタンスでは限界があると判断され、今回の法改正に至ったという経緯があります。
具体的にどこが変わるの?空家措置法の改正のポイント

今回の改正では、大きく分けて以下3つの柱が設けられています。
- 空き家の活用促進(活用拡大)
- 適切な管理の確保
- 特定空家の除去等に関する対応強化
このあと、それぞれの改正点について詳しく見ていきましょう。
1. 活用拡大|空き家を地域資源として活用しやすく
まず注目すべきは、空き家の有効活用を後押しするために新たに創設された「空家等活用促進区域」の制度です。
この区域は市街地中心部や地域再生の拠点となるエリアに設定され、市区町村が主体となって活用方針を示すことができます。区域内では用途変更や建て替えなどをスムーズに進められるよう支援が行われます。
また、所有者が不在である空き家の処分についても制度が整備されました。市区町村が裁判所に請求することで「財産管理人」を選任し、所有者に代わって空き家を処分できるようになりました。さらに「空家等管理活用支援法人」が新たに設立され、自治体や空き家所有者に対する支援体制がより強化されています。
2. 管理の確保|新たに「管理不全空家」区分を追加
改正により追加された「管理不全空家」という新たな区分も大きなポイントです。
従来は「特定空家」のみに対応していましたが、特定空家となる前段階の状態にある空き家も、管理不全空家として市区町村が指導・勧告できるようになりました。これにより、問題の深刻化を未然に防ぐ体制が整えられています。
さらに、勧告を受けた空き家については「住宅用地特例」が解除され、固定資産税の優遇措置が適用されなくなります。また、空き家の所有者に代わって建物を管理する「管理不全建物管理人」の選任を、市区町村が裁判所に請求できる制度も追加。
加えて、電力会社などのインフラ事業者に対して、物件の所有者情報の提供を要請できるようになり、空き家の所有者特定がよりスムーズに行えるようになります。
3. 特定空家の除去等|緊急時の代執行がスムーズに
特定空家に関する対応では、老朽化が著しく危険な空き家に対して、迅速に対応できるよう代執行の手続きを円滑化する措置が講じられました。
通常の代執行では命令を出して一定期間の猶予を与えた後に実施されますが、屋根の崩落など緊急性が高い場合には、直ちに代執行に移ることが可能になります。
また、相続放棄や所有者不明の空き家についても、自治体が裁判所に「財産管理人」の選任を請求し、修繕や除去などの対応がとれるようになりました。本来であれば所有者に付与される報告徴収権も、状況に応じて市区町村が取得できるようになり、より柔軟な対応が可能となっています。
空家措置法の改正に伴い国が掲げる目標と効果

空家措置法の改正にあたり、国は以下のような数値目標を掲げています。
- 空家等活用促進区域の指定数:施行後5年間で100区域
- 空家等管理活用支援法人の指定数:施行後5年間で120法人
- 市区町村によって管理・維持された管理不全空家・特定空家の件数:施行後5年間で15万件
これらの目標からも、2028年末までに空き家の管理体制や所有者支援の仕組みを全国的に整備する方針が読み取れます。不動産会社や解体業者など、空き家に関わる多くの事業者にとっても、今回の法改正は無視できない影響を及ぼすことになるでしょう。
空家措置法の改正に伴い不動産会社に求められる対応

空き家の取引や、今後空き家となる可能性がある物件の相談に対応する不動産会社も多いはずです。法改正により顧客が不利益を被らないようにするためには、的確な情報提供とサポートが求められます。以下では、不動産会社が押さえておきたい4つの対応ポイントを紹介します。
1. 顧客に対する「空家措置法」の説明
空き家の売却やリフォーム、今後の活用について相談を受けた際は、必要に応じて空家措置法の改正内容について丁寧に説明しましょう。
とくに、一定の条件を満たした空き家が固定資産税の住宅用地特例の対象外となる点は、税負担の面でも大きなインパクトがあります。
また、放置によって自治体からの指導・勧告を受けるリスクがあることも、早めに顧客へ伝えておくことが重要です。口頭での説明が難しいときには、自社でまとめた資料を活用するのも効果的です。
2. 空き家対策に関する財政・金融・税制支援の紹介
「活用したいが資金面が不安…」という顧客に対しては、活用支援制度を紹介できるよう準備しておくと安心です。
多くの自治体では、空き家の流通促進や活用を目的とした補助金制度を設けています。
加えて、国では相続した空き家を売却する際に最大3,000万円の特別控除が適用される特例も設けています。住宅ローンの金利優遇やリフォーム費用支援なども活用可能な場合があるため、あらかじめ情報を整理し、顧客にとって最適な選択肢を提案できるよう備えておきましょう。
3. 空き家相談への対応・専門家の紹介
本格的に空き家活用を検討する顧客に備えて、社内対応の体制を整えるとともに、外部の専門家との連携も視野に入れておきたいところです。
空き家管理士・空き家再生診断士・相続鑑定士などの有資格者が社内にいれば、より信頼性の高い相談対応が可能になります。
状況に応じて、司法書士や空き家コンサルティング会社、自治体の相談窓口などを紹介することで、スムーズな問題解決をサポートできます。
4. 空き家を活用したビジネスの提案及び展開
賃貸住宅化やシェアハウス、民泊・宿泊施設への転用、テレワーク向けオフィス化など幅広い用途が期待できます。
また、不動産会社が自社で買い取ってリノベーション事業に活かすなど、空き家を事業資源として展開することも可能です。空き家=老朽物件と決めつけず、ポテンシャルを見極めながら顧客にとって最適な活用方法を提案していく姿勢が求められます。
空き家を活用したビジネス7選|再生の可能性は意外と豊富

一見使い道がなさそうに見える空き家でも、状態や立地次第では活用の余地が大いにあります。うまく再活用できれば、顧客にとっては資産運用の選択肢となり、不動産会社にとっては事業拡大のきっかけにもなります。
ここでは、空き家を活用したビジネスの代表例を7つご紹介します。
1. 賃貸物件として活用する
状態が良好な空き家や、リフォーム次第で使用可能な物件は、賃貸住宅として貸し出すのが効果的です。
家賃収入を得られるうえ、建物を使用することで老朽化の進行も抑えられます。
居住用として難しい場合でも、DIY可能物件として貸し出せば修繕費の負担を軽減可能。ただし、借り手が見つからなければ管理費用だけがかさむため、事前の需要調査は必須です。
2. 購入希望者を探して売却する
近年では「新築には手が届かない」「古民家カフェや地方拠点にしたい」といった理由で、中古住宅を探すニーズが高まっています。
空き家をそのまま売却するほか、不動産会社が一度買い取ってリフォーム後に転売する「買取再販ビジネス」も有効な手法。買い手が見つからない場合は、空き家バンクへの登録も選択肢となります。
3. 「マイホーム借上げ制度」を利用する
一般社団法人 移住・住みかえ支援機構(JTI)が提供する「マイホーム借上げ制度」では、所有者に代わりJTIが入居者と定期借家契約を結び、家賃収入が得られます。
空室時も一定の家賃が支払われるメリットがありますが、所有者の年齢や空き家の状態など、制度利用にはいくつか条件がある点には注意が必要です。
4. 「セーフティネット住宅」に登録する
高齢者や障がい者、子育て世帯など、住宅確保に配慮が必要な人々の受け入れを目的とした「セーフティネット住宅」制度も活用のひとつです。
耐震性や面積などの条件を満たせば登録可能で、専用の補助金制度も利用できます。ただし、家賃に制限があるため、収益性とのバランスを事前にシミュレーションすることが重要です。
5. サブスク住宅として運用する
サブスクリプション型住宅とは、月額制で全国の空き家に自由に住める仕組みで、近年注目を集めています。
従来の賃貸とは異なり、敷金・礼金・更新料が不要という手軽さが魅力です。
登録には「ADDress」などの専門サービスを通す方法もあり、必要に応じてリフォームして基準をクリアすることが求められます。
6. 一度更地にして新たに賃貸物件を建設する
古い建物が活用困難な場合は、いったん取り壊して更地にして新築の賃貸物件を建てるという選択肢もあります。
新築なら設備も整っており、入居希望者が集まりやすいという利点があります。
ただし、解体費・建築費などのコストは高額になりがちなので、投資回収シミュレーションを綿密に行うことが不可欠です。
7.空き家を取り壊して駐車場に転用する
収益化への初期コストを抑えたい場合は、空き家を解体し駐車場として運用するのも有効です。
建物倒壊リスクを解消しつつ、比較的少額でスタートできます。
ただし、エリアによっては駐車場の需要が少ないこともあるため、立地条件の見極めと収支計画の検討はしっかり行いましょう。
【補足】よくある質問(FAQ)
空家措置法の改正は、不動産業者や所有者にとって影響の大きい法改正です。ここでは、実務の中でよく寄せられる質問を厳選し、わかりやすく解説します。
空き家の管理や税金に関する疑問がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
Q. 管理不全空家に指定される基準は?
管理不全空家とは、建物の管理が不十分な状態にある空き家で、将来的に「特定空家」へ移行する可能性が高いと判断された物件を指します。
たとえば、屋根や外壁の破損、雑草の繁茂、ごみの放置、近隣への悪影響などが見られる場合、市区町村が判断のうえ指定します。指定されると、指導や勧告の対象となり、早めの対応が求められます。
Q. 空き家を放置するとどうなる?
空き家を長期間放置すると、老朽化が進んで倒壊や火災などのリスクが高まるほか、害虫や不法侵入、景観悪化による地域トラブルの原因になることがあります。
さらに、空家措置法に基づいて市区町村から指導・勧告・命令を受ける可能性もあり、最悪の場合は行政代執行(強制撤去)につながるケースも。加えて、固定資産税の優遇措置が解除され、税負担が増えることにも注意が必要です。
Q. 改正後の固定資産税への影響は?
空家措置法の改正により、「管理不全空家」や「特定空家」に指定されると、これまで適用されていた住宅用地特例(固定資産税が最大6分の1になる優遇制度)が解除されます。
結果として、固定資産税が数倍に跳ね上がる可能性があります。税負担の増加を避けるためにも、早めに活用・管理の対策を講じておくことが重要です。
空家措置法の改正を正しく理解し、顧客に最適な提案を

空家措置法の改正によって、空き家の活用方法はより柔軟に、管理の責任もより明確になりました。とくに、緊急時の代執行が可能になったことや、税制上の優遇措置の見直しは、不動産実務に直結する重要なポイントです。
不動産会社としては、改正内容を正確に理解し、顧客の状況に応じたアドバイスができる体制を整えることが求められます。
空き家の適切な活用と管理を促進することで、地域社会にも貢献できるはずです。
不動産業開業のご相談は「全日本不動産協会」
「全日本不動産協会」は、1952年10月に創立された公益社団法人です。中小規模の不動産会社で構成されており、2025年10月末の正会員数は37,923社で年々増加しています。
不動産に関するさまざまな事業を展開し、調査研究や政策の提言、会員を対象とした研修などを行っています。47都道府県に本部を設置し、会員や消費者からの相談も受け付けています。
地域のネットワーク構築に、ぜひ全日本不動産協会をご活用ください。
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