令和7年秋頃に改正住宅セーフティネット法が施行|内容をわかりやすく解説


2025年03月13日

令和7年秋頃に改正住宅セーフティネット法が施行

令和6年5月30日に改正案が可決・成立した住宅セーフティネット法は、支援が必要な人たちの住まい探しをサポートする法律です。

本記事では、令和7年秋頃から施行予定である改正住宅セーフティネット法の概要と、不動産会社に求められることをわかりやすく解説します。

◆関連情報:
【国交省】住宅セーフティネット法等の改正法について|全日本不動産協会

「住宅セーフティネット法」とは

住宅セーフティネット法の改正で、これまで家賃滞納リスクなどを理由に賃貸借契約を敬遠されていた「住宅確保要配慮者」が賃貸住宅へ入居しやすくなります。

住宅確保要配慮者の例

  • 高齢者
  • 低額所得者
  • 子育て世帯
  • 障がい者
  • 被災者
  • ドメスティック・バイオレンス被害者 等

◆詳細資料:
住宅確保要配慮者の範囲|国土交通省

住宅セーフティネット法 改正の背景

住宅セーフティネット法 改正の背景

住宅セーフティネット法が改正された背景について、国土交通省では次のような説明をしています。

住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律について

単身世帯の増加、持ち家率の低下等が進む中、今後、高齢者、低額所得者、障害者などの住宅確保要配慮者などの賃貸住宅への居住ニーズが高まることが見込まれています。一方で、賃貸人の中には、孤独死や死亡時の残置物処理、家賃滞納等に対して懸念を持っている方が多くいます。

令和6年の通常国会において、誰もが安心して賃貸住宅に居住できる社会の実現を目指して、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)が改正されました。
改正法の施行は令和7年秋頃を予定しています。

引用元:住宅セーフティネット制度|国土交通省

改正住宅セーフティネット法の内容①‐賃貸住宅の供給増加

賃貸住宅の供給増加

次に、改正住宅セーフティネット法の内容について解説します。

ポイントは4点です。

  1. 保証会社(家賃債務保証業者)の認定制度を創設
  2. 「終身建物賃貸借」の利用促進
  3. 居住支援法人による残置物処理の推進
  4. 大家さんの不安軽減

1.保証会社(家賃債務保証業者)の認定制度を創設

住宅を借りるとき、以前は親族に保証人を頼むのが一般的でしたが、近年では保証会社(家賃債務保証業者)の利用が主流になっています。

しかし住宅確保要配慮者は、収入の不安定さや過去の信用情報などが懸念され、保証会社の審査も厳しくなる傾向がありました。
そこで改正住宅セーフティネット法では、要配慮者が利用しやすい保証会社の認定制度を創設し、家賃の滞納に困らない仕組みを整えました。

そこで改正住宅セーフティネット法では、要配慮者が利用しやすい保証会社の認定制度を創設し、家賃の滞納に困らない仕組みを整えました。

【参考:業者の登録の基準】
・暴力団員等の関与がない
・安定的に業務を運営するための財産的基礎(純資産額1,000万円以上)
・法令等遵守のための研修の実施
・業務に関する基準を規定した内部規則・組織体制の整備 等

出典:家賃債務保証業者の登録制度の概要|国土交通省

2.「終身建物賃貸借」の利用促進

「終身建物賃貸借」の利用促進

上表の通り、入居者が亡くなるまで賃貸住宅へ居住できる「終身建物賃貸借」の利用促進も盛り込まれました。

住宅確保要配慮者が賃貸住宅を終の棲家とできるのは、これまでにないメリットです。

対象は、単身もしくは配偶者または60歳以上の親族と同居する60歳以上の高齢者とされています。要件が限定されている点にご留意ください。

◆関連情報:
終身建物賃貸借契約の手引き|国土交通省

3.居住支援法人による残置物処理の推進

入居時に契約を交わすことにより、賃貸住宅で居住者が死去したあと、柔軟な残置物の撤去が可能です。

この制度により、「死亡後の残置物を考えると部屋を貸しにくい」という、大家さんの不安が軽減されるでしょう。

 近時、高齢者の単身世帯が増加している中、民間賃貸住宅等においては、相続人の有無や所在が明らかでない単身者が死亡した際の賃貸借契約の解除や居室内に残された動産(残置物)の処理への不安感から、高齢者の入居の申込みを賃貸人が拒否することがあります。

このような不安感を払拭し、単身の高齢者の居住の安定確保を図る観点から、単身の高齢者が死亡した際に契約関係及び残置物を円滑に処理できるように、今般、国土交通省及び法務省において、賃借人と受任者との間で締結する賃貸借契約の解除及び残置物の処理を内容とした死後事務委任契約等に係る「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定しました。

引用元:残置物の処理に関するモデル条約条項|国土交通省

4.大家さんの不安軽減

居住支援法人等が大家さんと連携し、入居者の安否確認・見守りや、福祉サービスへのつなぎを行う住宅入居等支援事業(居住サポート事業)制度が創設されます。

居住支援法人等が入居者の安否確認や見守りなどを行うので、単身者の入居も比較的安心できます。

◆関連情報:
住宅入居等支援事業(居住サポート事業)|国土交通省

改正住宅セーフティネット法の内容②「居住サポート住宅」制度の創設

「居住サポート住宅」制度の創設

現在の制度では、支援が必要な人向けの「セーフティネット登録住宅」が提供されています。(【参考】セーフティネット住宅情報提供システム

今回の法改正では、従来の制度に見守りなどを強化した「居住サポート住宅」認定制度が創設されます。

「居住サポート住宅」の特徴

  1. 居住支援法人等が要配慮者のニーズに応じて、安否確認・見守り・適切な福祉サービスへのつなぎを行う
  2. 生活保護受給者が入居する場合、家賃の代理納付を原則化
  3. 入居する要配慮者は認定保証業者が家賃債務保証を原則引受け

出典:
住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律等の一部を改正する法律案|国土交通省

この制度により、家賃滞納リスクの低減と安定した住まいの確保が実現するでしょう。

改正住宅セーフティネット法の内容③地域のサポート体制強化

地域のサポート体制強化

改正住宅セーフティネット法では、地域の居住支援体制をこれまで以上に強化することが含まれています。

住宅と福祉を一体化した住環境の整備に加え、市区町村単位で「居住支援協議会」を設立し、空き家や空き室の有効活用を進めます。

「居住支援協議会」とは

居住支援協議会は、住宅確保要配慮者と大家さんの双方をサポートすることを目的とし

  • 地方公共団体の住宅部局や福祉部局
  • 居住支援法人
  • 不動産関係団体
  • 福祉関係団体

などで構成される団体です。

概要や設立・運営の手引きなどの詳細は下記をご参照ください。

◆関連情報:
住宅確保要配慮者居住支援協議会について|国土交通省

改正住宅セーフティネット法が目指すもの

改正住宅セーフティネット法が目指すもの

住宅セーフティネット法の改正に伴い、二つの目標が設定されました。

  1. 居住サポート住宅の供給戸数 : 施行後10年間で10万戸
  2. 居住支援協議会を設立した市区町村の人口カバー率 : 施行後10年間で9割

「2023年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)」によると、全国には空き家が900万戸(うち約443万戸は賃貸用)あります。

◆参考資料:
令和5年住宅・土地統計調査住宅数概数集計(速報集計)結果|総務省

2030年には単身高齢者世帯は900万世帯に迫ると予想されており、要配慮者が入居しやすい賃貸物件の確保が求められています。

不動産業・行政・福祉関係者で手を取り合い、地域における総合的・包括的な居住支援体制を整えていきましょう。

「改正住宅セーフティネット法」で不動産会社に求められること【4点】

「改正住宅セーフティネット法」で不動産会社に求められること【4点】

法の施行後は滞納リスクなどが軽減できるため、要配慮者を対象とした賃貸借の活発化が予想されます。

不動産会社に求められる4点を、簡単に解説しましょう。

1.「改正住宅セーフティネット法」の情報発信

支援が必要な人の入居に抵抗感を示す大家さんや、また入居を断られるのではないかと住居探しに不安を抱く住宅確保要配慮者は相当数います。

セーフティネット登録住宅や居住サポート住宅の知識を得て、地域の営業活動などで情報を発信してください。

制度の理解には、保証協会の勉強会やネットワークを積極的に活用しましょう。

◆ご入会のメリット|全日本不動産協会

2.【大家さん向け】空き物件の活用提案

大家さんへ、空き室となっている物件を要配慮者向けの住宅にするよう提案しましょう。

改正住宅セーフティネット法では、入居促進と大家さんの不安軽減が実現するよう、補助金の整備や居住支援法人のサポート範囲拡大などの措置が取られています。

ぜひ積極的に、制度の活用を提案してください。

参考:地方公共団体からの補助金制度

補助期間は原則最長10年です。ただし、補助金の総額が480万円を超えない場合、自治体の判断によって最長20年まで延長できます。

補助金申請の詳細については、お住まいの自治体へご確認ください。

3.【要配慮者向け】賃貸住宅への入居提案

改正住宅セーフティネット法により、これまで賃貸住宅を借りにくかった人も賃貸借契約を結びやすくなります。法改正後のメリットと、積極的に仲介できる住宅の存在を発信し、住まいを探す方をサポートしてください。

4.行政や地域団体と連携

行政や居住支援法人と手を取り合い、住宅確保要配慮者の住まいと空き家問題という地域の課題解決を進めましょう。

◆関連情報:
住宅確保要配慮者居住支援協議会について|国土交通省

改正住宅セーフティネット法の施行は令和7年の秋

改正住宅セーフティネット法の施行は令和7年の秋

改正住宅セーフティネット法については、月刊不動産(2024年9月)でも詳しく解説しています。

本記事と合わせ、ぜひ参考にしてください。
◆月刊不動産 2024年9月号|全日本不動産協会

法改正をきっかけに不動産業の開業を検討されるケースや、「住宅確保要配慮者のために宅建業をはじめたい」という志の高い方もいらっしゃるでしょう。

宅建業開業については、ぜひ全国47都道府県に本部を有する「全日本不動産協会」へご相談ください。

◆入会資料請求|全日本不動産協会
◆開業を目指す方へ|全日本不動産協会

不動産業開業のご相談は「全日本不動産協会」へ

「全日本不動産協会」は、中小規模の不動産会社で構成されている公益社団法人です。1952年に設立し、2025年1月末には正会員数が3万7,000社を超えました。

事業内容は不動産に関する調査研究や政策の提言、不動産流通システム「ラビーネット」の運営など多岐にわたり、会員を対象とした研修も行っています。

事業の一環として、会員からの不動産実務に関する相談も受け付けています。
◆電話相談|全日本不動産協会

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◆全日本不動産協会

 



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