不動産トラブル事例|営業担当者が押さえておきたい対処法とポイント
2026年01月23日
不動産取引では、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
契約書の不備や説明不足、瑕疵の見落とし等が主な原因です。
本記事で、実際に起こりやすい不動産トラブルの例と、営業がおさえたいポイントをわかりやすく解説しましょう。
不動産トラブルの現状と営業への影響

不動産取引は権利関係の調整等が複雑であり、慎重に対応してもトラブルと切り離せない側面があります。
不動産営業において、現場での小さなミスや説明不足は、ブランドイメージの毀損や成約率の低下、さらには行政処分や損害賠償責任に発展するリスクと背中合わせです。
トラブルが発生した際は適切に対処し、損害を最小限に抑えることが求められます。
トラブルが発生した場合は適切に対処し、損害を最小限に抑えましょう。
不動産トラブルのタイプ解説【10選】

不動産営業の現場で実際に多発している代表的なトラブルを、実例や背景とともに解説いたします。
①重要事項説明の不備・説明不足
不動産取引の「重要事項説明」は宅建業法で義務付けられている重要なプロセスの一つです。
説明内容の不足や誤解を招く表現、顧客の理解不足が原因で「聞いていなかった」「説明が違っていた」といったトラブルが起こりえます。
稀ではありますが、登記名義人以外と売買契約を結び、移転登記ができなかったケースや、周辺の建築計画を説明しないまま契約に至ったケースも見受けられます。
とくに、顧客が権利関係の複雑さを十分に理解していないことに営業側が気づかず、そのまま契約を進めてしまうようなケースには注意が必要です。
契約の相手方がポイントを理解したことを確認しながら進めましょう。
②手付解除に関する誤解
契約解除の条件や違約金についてもご注意を。
契約締結後、買主が一方的に契約を解除する場合は、手付金を放棄することで可能です。
この場合、買主側は支払済みの手付金を放棄します。また、売主が一方的に契約を解除する場合は、売主側は受領済み手付金の倍額を返還する必要があります(いずれも履行に着手する前までに行うこと)。
こうしたルールについても、あらかじめ明確に説明しましょう。
③仲介手数料・報酬トラブル
仲介手数料の上限を超えた請求や、広告費・コンサル料等名目を変えた追加請求はトラブルの原因です。
2024年の法改正で、主に空き家バンク等に掲載される低価格物件(いわゆる「低廉な空き家」)の報酬規程に関し、売買価格が800万円以下であれば最大33万円(税込)の報酬請求が可能になりました。
宅建業者にとって有利な改正だからこそ良心的な取引が大切とも言えます。
報酬の根拠を説明し、信頼度の高い取引を心がけましょう。
④媒介契約書・売買契約書の記載ミス
契約書の記載ミス・説明不足は、後々大きなトラブルを生みます。
小さな見落としであっても損害賠償や契約解除といった重大な事態に発展しかねません。
契約内容を正しく説明し、書面に不備がないよう十分に注意してください。
⑤瑕疵(物理的・環境的・心理的)に関するトラブル
建物の雨漏りや傾き、地中障害物、周辺環境の問題(騒音・悪臭・嫌悪施設)等にもご注意を。
物理的・環境的・心理的瑕疵についての説明不足や売主による告知義務違反はトラブルの原因になりえます。
中古住宅購入後に天井から水漏れが発生し、損害賠償請求に発展したケースや、近隣に暴力団事務所や墓地があることを説明せず、契約後に発覚したケース等もあります。
物件の状態に加え、近隣の情報も事前に入手しておきましょう。
⑥境界未確定・土地の権利関係
土地や戸建ての売買の場合、境界が確定していない場合や、権利関係に不明点がある場合もご注意ください。
隣地との境界トラブルや所有権をめぐる争いに発展することがあり、後々のトラブルの火種となりかねません。
特に、借地や底地といった権利関係が複雑な土地では、慎重な確認が不可欠です。
こうした場合に有効なのが筆界特定制度です。筆界特定制度とは、土地が登記された際にその範囲を区画するものとして定められた線(筆界)について、筆界特定登記官が公的に明らかにする制度です。
この制度の活用で、公的な判断として筆界を明確にできます。
境界未確定の土地を扱う際には、安易に話を進めず、必要に応じて筆界特定制度の活用を提案するなどし、将来の紛争リスクを見据えた対応を心がけましょう。
⑦設備・残置物・管理規約の説明不足
マンションの管理規約や住宅設備の有無・状態についての説明等が不十分だと、クレームや契約解除につながるおそれがあります。
「ペット可だと思っていたのに禁止だった」「エアコンが設置されていると思ったのに撤去されていた」等、思い込みとのギャップがトラブルを招くケースもあります。
現地調査を徹底し、現況に基づいた正確な説明を心がけましょう。
⑧住宅ローン・資金計画のトラブル
ローン特約を付けずに契約を進めた結果、ローン審査に通らず契約が白紙となり、トラブルに発展するケースもあります。
自己資金の準備が不明確なまま契約に至った場合も、支払不能等の問題が生じやすいものです。
資金計画が難しい場合は、ローンのシミュレーション表を用いて丁寧に説明しましょう。
⑨手付金・中間金等の返還問題
手付金や中間金を支払った後に業者が倒産したり、返還の条件が不明確だったために返金されなかったといったトラブルもあります。
解約時の返還条件や支払先が契約書に明記されていない場合、返金交渉が難航し、損失を被るおそれがあります。
金銭の授受に関する条件は、金額・支払日・返還条件を含めて契約書に明確に記載し、必ず書面での合意を取りましょう。
⑩誇大広告・説明の誤認
物件の広告や営業時のセールストークで事実と異なる表現を使用した場合、「実際の物件が説明と違う」とクレームになるケースがあります。
日当たり抜群・静かな住環境・人気エリアといった表現は、主観的な印象に過ぎない場合や根拠が乏しい場合には誤解を招きやすい傾向があります。
現地の状況や第三者の評価、地図・日照データ等、裏付けとなる情報を事前に確認し、誇張や誤認表示とならないよう、気を付けましょう。
不動産トラブルを防ぐポイント【6選】

不動産トラブルの多くは、未然に抑止できる場合もあります。具体的に解説しましょう。
①気を付けるべきタイミング
- 媒介契約締結時
- 重要事項説明時
- 売買契約書締結前
- 金銭授受の場面
上記のタイミングごとに「何を確認すべきか」を明確にし、ミスを防ぎましょう。
②営業現場で使える!トラブル回避チェックリスト
- 重要事項説明書・契約書の全項目を「顧客と一緒に」確認したか
- 手数料や費用の根拠を明確に説明したか
- 境界・権利関係・設備・管理規約等、細かな事項も説明漏れがないか
- 顧客の質問・不安にすべて答えたか
- 契約解除や違約金の条件を明確に伝えたか
- 金銭授受のタイミング・返還条件を明記したか
- 必要に応じて専門家・上司に相談したか
③契約内容を徹底的に確認する
契約書や重要事項説明書は、内容の正確な理解が欠かせません。
相手方の立場に立ち、難解な部分はかみ砕いて丁寧に伝え、不明点が残らないよう配慮してください。
「わからないことをそのままにしない」「説明できないことは一旦持ち帰り、正確な情報を調べてから回答する」という誠実な対応も大切です。
④顧客にわかりやすく丁寧に説明する
専門用語を多用すると、顧客が内容を正確に理解できないことがあります。
不動産特有の言い回しや法律用語等は、噛み砕いた説明や具体例を交えて、わかりやすい表現で説明しましょう。
物件のデメリットや注意点についても、隠さず正直に伝える姿勢が顧客からの信頼につながります。
信頼関係の醸成に、小さな約束を守り、「伝えるべきことを、わかりやすく、正確に」伝える意識を持ちましょう。
⑤顧客に信頼される応対を意識する
契約を迫るのではなく顧客の判断を第一にする姿勢を見せると、誠実で顧客本位な対応を印象づけられます。
免許の有無や更新回数、宅建業者としての営業年数、過去の取引実績や地域密着での活動歴等も客観的な安心材料に。
初対面や問い合わせ段階では、専門性だけでなく「この人になら任せても大丈夫」と思ってもらえるような情報提供と態度が重要です。
⑥コンプライアンスを遵守する
宅建業法や消費者契約法、民法等、業務に関連する法令知識のアップデートも重要です。
正確な知識は、顧客の質問に対しても自信を持って説明できるだけでなく、不利な契約内容の見落としや違法な勧誘等を防ぐことにもつながります。
プロフェッショナルとしての信頼を高め、顧客に安心感を与える大きな要素ともなるでしょう。
トラブル発生時のプロフェッショナル対応術

万が一トラブルが発生した場合、営業が最初に取るべき行動には、どのようなものがあるでしょうか。
事実確認・書類整理
契約書や重要事項説明書、経緯を示すメールやメモ等、関係する全ての書類を整理し、確認しましょう。
「何が、いつ、誰の発言・行動で起きたのか」を時系列でまとめてください。
毎回商談の議事録を取り、認識に齟齬が起きないよう注意しましょう。
証拠確保・経緯メモの作成
現場の写真、やり取りの記録、顧客からのクレーム内容等、証拠となるものは全て集めておきます。
証拠の有無によって、事実関係の立証や責任の所在が大きく左右されるため、些細な情報でも漏れなく記録してください。
トラブルが複雑化した場合、第三者(上司・弁護士等)への説明や交渉時に大きな武器となります。
上司・専門家への相談
初動対応はスピードが命です。対応が早ければ早いほど、トラブルの拡大や損害の深刻化を防ぐことができます。
悩みを一人で抱え込まず、早い段階で上司や社内の法務担当に相談し、必要に応じて弁護士や業界団体の相談窓口といった外部の専門家の力を借りることも検討しましょう。
対応を先延ばしにしてしまうと、状況がさらに悪化し、顧客との信頼関係を損ねる結果になりかねません。
顧客への誠実な説明・初動対応
顧客対応の際は、誠意を持って現在の状況を丁寧に説明し、事実確認が取れるまでは安易な断定や約束は避けましょう。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。事実関係を確認のうえ、できるだけ早くご連絡いたします」といった言葉を伝えることで、相手の不安や不信感を和らげることができます。
まずは真摯な姿勢で耳を傾け、冷静かつ誠実に対応することが信頼回復の第一歩です。
会社の危機管理マニュアルの活用
多くの不動産会社では、トラブル対応のためのマニュアルやフローがあらかじめ整備されています。
万が一トラブルが発生した際は、社内ルールに則り、速やかに関係部署への報告・連絡・相談(ホウ・レン・ソウ)を徹底しましょう。
マニュアルを正しく活用し、組織として一貫した対応を行うことが、円滑な問題解決と顧客の信頼維持につながります。
不動産営業が知っておきたい相談・解決窓口

不動産トラブルの解決には、社内外の専門機関や相談窓口の活用が有効です。
自社で解決できない問題は、ぜひ下記の機関に相談してください。
トラブルを「信頼獲得のチャンス」に変えよう
不動産トラブルは、営業現場において避けては通れないテーマです。しかしトラブルを未然に防ぐ努力や、発生時の適切な対応は、顧客の信頼を獲得し、会社や自身の評価を高める絶好の機会でもあります。
「トラブル事例から学ぶ」姿勢を持ち、日々の自己研鑽や社内での情報共有を続けることが、プロフェッショナルな営業への第一歩です。
不動産営業として、トラブルに強い「頼れるプロ」になるために、本コラムをぜひご活用ください。
不動産トラブルのご相談は「全日本不動産協会」
「全日本不動産協会」は、1952年10月に創立された公益社団法人です。
中小規模の不動産会社で構成されており、2025年12月末の正会員数は38,101社で年々増加しています。
不動産に関するさまざまな事業を展開し、調査研究や政策の提言、会員を対象とした研修等を行っています。
47都道府県に本部を設置し、会員や消費者からの相談も受け付けています。
地域のネットワーク構築に、全日本不動産協会をご活用ください。
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