重要事項説明の基礎知識|IT重説のポイントも解説
2026年01月23日
重要事項説明は不動産の売買や賃貸契約の契約締結に欠かせない手続きです。近年ではオンライン対応の手段が充実し、「IT重説(アイティーじゅうせつ)」への注目も高まっています。
本記事では、重要事項説明の基礎知識に加え、オンライン対応のポイントについても解説します。ぜひご一読ください。
※本内容は2025年3月時点の情報に基づいています。法令等については、最新の情報をご確認ください。
「重要事項説明」とは|35条書面の交付

重要事項説明とは、不動産の売買や賃貸契約を結ぶ前に、宅地建物取引士(宅建士)が買主や借主に対して、物件の権利関係、法的制限、取引条件などの重要な情報を説明する手続きです。
この際に交付される書面が「35条書面(重要事項説明書)」であり、宅建士の記名が必要です。契約前に内容を十分理解していただくことで、契約後のトラブルを未然に防ぎ、取引の安全性と公平性を確保することを目的としています。
重要事項説明|押さえたい5つのポイント

重要事項説明・書面交付制度の概要|国土交通省
重要事項説明の方法については、宅地建物取引業法でルールが定められており、国土交通省もその概要をわかりやすく解説しています。
ここでは国土交通省が公表している『重要事項説明に必要な要素』をもとに、押さえるべき5つのポイントをご紹介します。
重要事項説明時は宅建士証を提示
重要事項説明を行うことができるのは、国家資格を持つ「宅地建物取引士(宅建士)」に限られています。説明時には「宅地建物取引士証」の提示も義務づけられており、信頼性と透明性を確保することが求められます。
重要事項説明を受けるのは契約者本人
重要事項説明は、原則として不動産の購入者や借主など、契約者本人に対して行われます。そのため説明時には、相手がご本人であることを確認する必要があり、顔写真付きの身分証明書などで本人確認を行います。これは契約の当事者が物件の内容や権利関係、条件を正しく理解した上で契約を結ぶことが必要だからです。
代理人による対応も認められていますが、できる限り契約者本人が説明を受けることが望まれます。
※顔写真付きの身分証明書をお持ちでない場合の対応については、別途ご確認ください。
必要な内容を伝達
重要事項説明では、宅建士と契約者のやり取りに十分な双方向性を確保することが求められます。具体的には以下にご注意ください。
- 契約者が説明を聞き、資料を見て、内容を正しく理解しているかを確認しながら説明する
- 契約を締結するか判断できるだけの時間的な余裕を持って説明する
- 具体的かつ分かりやすく説明する
- 契約者から質問された場合、誤認や齟齬が生じないように回答する
- 契約者からの質問には必ず答える
- 宅建士と契約者の間に、取引内容の認識に齟齬があることが判明した場合、適宜重要事項説明書の訂正等を行う
宅建士による記名
重要事項説明書には、説明を行った宅地建物取引士(宅建士)の「記名」が法律で義務づけられています。これは責任の所在を明確化させるためです。
宅建士は説明内容に対して責任を持ち、万が一内容に不備や虚偽があった場合には、宅建業法に基づく処分や損害賠償の責任を負う可能性もあります。
重要事項説明の項目|契約のトラブルを抑止

重要事項説明では、契約後のトラブルを未然に防ぐため、多岐にわたる内容を詳しく説明します。
売買と貸借で異なるポイントもありますが、主な説明項目は以下の通りです。
物件に関する権利関係
- 登記された権利の種類、内容等
- 私道に関する負担
- (貸借)定期借地権または高齢者居住法の終身建物賃貸借の適用を受ける場合
物件に関する権利制限内容
- 都市計画法、建築基準法等の法令に基づく制限の概要【計327項目】※すべての項目を説明するわけではなく、物件に応じた必要な項目のみが対象となります。
- (貸借)用途その他の利用に係る制限に関する事項
物件の属性
- 飲用水・電気・ガスの供給・排水施設の整備状況またはその見通し
- 宅地造成または建物建築の工事完了時における形状、構造等(未完成物件のとき)
- 当該宅地建物が造成宅地防災区域内か否か
- 当該宅地建物が土砂災害警戒区域内か否か
- 当該宅地建物が津波災害警戒区域内か否か
- 石綿(アスベスト)使用調査結果の内容
- 耐震診断の内容
- 住宅性能評価を受けた新築住宅である場合(住宅性能評価書の交付の有無)
- (貸借)台所・浴室・便所その他の当該建物の設備の整備の状況
- (貸借)管理の委託先
取引条件(契約上の権利義務関係)
- 代金、交換差金以外に授受される金額およびその目的
- 契約の解除に関する事項
- 損害賠償額の予定または違約金に関する事項
- (貸借)契約期間および契約の更新に関する事項
- (貸借)敷金等契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項
- (貸借)契約終了時における建物の取り壊しに関する事項
取引に当たって宅地建物取引業者が講じる措置
- 手付金等の保全措置の概要(業者が自ら売主の場合)
- 支払金または預り金の保全措置の概要
- 金銭の貸借のあっせん
- 瑕疵担保責任の履行に関して講ずる措置の内容
区分所有建物の場合
- 敷地に関する権利の種類および内容
- 共有部分に関する規約等の定め
- 専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約等の定め
- 専用使用権に関する規約等の定め
- 所有者が負担すべき費用を特定の者にのみ減免する旨の規約等の定め
- 修繕積立金等に関する規約等の定め
- 通常の管理費用の額
- マンション管理の委託先
- 建物の維持修繕の実施状況の記録
宅建士試験における「3大書面」|34条・35条・37条書面

重要事項説明は、毎年10月に実施される宅地建物取引士試験で出題される「宅建業法」の頻出分野の一つです。
その中でも、重要事項説明で使用する「35条書面」は、不動産取引において特に重要な書類です。これに「34条書面(媒介契約書)」「37条書面(契約書)」を加えた3種類が、宅建業法における「3大書面」と呼ばれています。
これらは目的、交付のタイミング、記載内容が異なるため、混同しないよう注意が必要です。
34条書面(媒介契約書)
不動産会社が売主や買主などから媒介(仲介)を依頼された際に交付する書面で、宅地建物取引業法第34条に基づいて作成されます。書面には媒介の内容、報酬額、契約期間、解除条件などが記載され、依頼者と仲介業者の間でトラブルが起きないようにする役割があります。
35条書面(重要事項説明書)
35条書面は「重要事項説明書」と呼ばれ、不動産の売買や賃貸契約の前に、宅建士が契約の相手方に対して物件の権利関係や法令上の制限、インフラ状況などを説明する際に交付する書面です。宅建士の記名が必要で、内容を正確に理解してもらうことが目的です。
37条書面(契約書)
37条書面は、不動産の売買や賃貸契約が成立した後に交付されるもので、多くの場合は「契約書」を兼ねています。契約の当事者や物件の内容、代金、賃料、引渡し時期、特約事項など、契約内容を明確に記載し、書面で残すことでトラブル防止につながります。
IT重説(オンライン重説)のポイント

令和4年5月の制度改正で、オンラインで重要事項説明を行うIT重説(ITを活用した重要事項説明)も可能になりました。
IT重説は、対面で行うのが原則だった重要事項説明を、パソコンやスマートフォンを通じてオンラインで実施できる仕組みです。IT重説の基本的な仕組みや活用時のポイントについて解説します。
※図面等の提示がある場合には、画面の小さいスマホの場合は視認性に十分注意が必要なため、できる限りパソコンを推奨します。
※IT重説を実施している途中で、何らかの理由で映像の視認や音声の聞き取りに支障が生じた場合は中断してください。再開はトラブル事象の解決後に実施する必要があります。
事前準備
事前準備
重要事項説明書を事前に電子交付(要承諾)または郵送し、手元にある状態で開始します。
本人確認
開始時に宅建士がカメラ越しに宅建士証を提示します。
双方向性
常に双方向で音声・映像がやり取りできる環境で行います。
機材・環境
機材に関しては、パソコン等のカメラとマイクが正常に動作するかをチェックしましょう。必要に応じてイヤホンやヘッドセットを使用して、クリアな音声で話せるようにするのもポイントです。ネット回線やWi-Fiを整備して、安定したインターネット環境を用意してください。
書面交付
IT重説の実施に先立ち、宅建士が記名した35条書面(重要事項説明書)および説明に必要なその他の資料を相手方に事前送付する必要があります。相手の承諾を得ている場合は、要件が定められた電子書面での交付も可能です。
アプリ・ツールの選定・テスト
買主や借主の希望に合わせて、Zoom、Microsoft Teams、Google Meetなど(いずれも無料のWeb会議ツール)、契約者が利用しやすいオンライン会議ツールやアプリを選びましょう。必要に応じてツールの使用方法を事前に案内することで、アプリやツールを使い慣れていないお客様もスムーズに説明を受けられます。
実施時のポイント

本人確認
お客様とのミーティングを開始したら、初めに顔写真付き身分証明書(運転免許証、パスポート、マイナンバーカード等)を画面越しに提示してもらい、本人確認を行います。事前に録画の許可を得て、録画機能による本人確認の証拠を残すのも忘れずに。
画面共有
重要事項説明が始まったら画面共有をして、重要事項説明書をお互いの画面に表示しながら項目ごとにわかりやすく説明します。大切な箇所にハイライトを入れたり、マーカーを引いたりと、視覚的に伝わりやすい工夫をすると良いでしょう。
理解度の確認
「ここまでの内容でご質問はありますか?」と、定期的に確認しながら説明を進めることも大切です。契約条件、解約条項、特約といった重要なポイントは特に注意を促し、お客様が理解できているかこまめに確認しましょう。
通信トラブル時の対応
IT重説をしていると、通信トラブルが発生するケースがあります。通信が切れた場合に備え、事前に電話やメールといった連絡手段を決めておきましょう。途中で音声や映像が乱れた場合は一度説明を止めて確認し、機器のトラブルが解消した後に再説明してください。
説明後の手続き

電子署名・契約書の送付
IT重説で署名捺印をするときは、改変防止措置やタイムスタンプ機能がある電子契約サービスを活用して、契約書への電子署名を行います。重要事項説明書(35条書面)の交付は、事前に相手方と確認した方法(電子メール送付、電子契約システム等からのダウンロード方式、CD-ROM等の電磁的記録媒体の手渡しまたは郵送)で交付しましょう。
録画データの保管・共有
説明内容や質疑応答の履歴を記録することで、後日のトラブルに備えられます。重要事項説明の様子は録画データとして保管してください。
IT重説の実施前は、国土交通省の情報も合わせてご確認ください。
重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明実施マニュアル|国土交通省
重要事項説明は法令の解釈・アップデートが大切

重要事項説明は信頼関係を築く大切な手続きです。専門的な内容を噛み砕いて説明することで、お客様の不安や疑問を解消し、スムーズな契約につながります。
不動産や法律に不慣れなお客様にとっては、専門用語が難しく感じられることも多いため、丁寧で親切な説明が求められます。
説明を行う立場としては、常に知識のアップデートを心がけるとともに、伝え方にも工夫をこらしましょう。
お客様が安心して契約に進めるように、常に「相手の目線」に立って対応することを意識してください。
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