不動産売買仲介とはどのような仕事?業務内容や成功のコツを解説


2025年05月08日

不動産売買仲介とはどのような仕事?業務内容や成功のコツを解説

不動産業界には、物件の賃貸や売買の仲介、不動産の開発・管理などさまざまな仕事があります。仕事の種類によって業務内容や求められるスキルは異なるため、それぞれに応じた知識を身につけることが大切です。

本記事では数ある不動産業務のうち、不動産売買の仲介業について解説します。具体的な業務内容、1日の業務スケジュールの流れ、成功させるコツなどをまとめています。これから不動産業界に関わる方はぜひ参考にしてみてください。

不動産売買仲介とはどのような仕事なのか

不動産売買仲介とはどのような仕事なのか

不動産売買仲介とは、不動産を売りたい人と買いたい人の間を取り持ち、スムーズに売買契約が進むようサポートする仕事です。物件の所有者から依頼を受けて、購入希望者を探したり、逆に買主(購入希望者)からの依頼で要望に合う不動産を探したりもします。主な収入源は、売主と買主から受け取る仲介手数料です。

売買契約の手続きのほか、状況によっては売主と買主の間で発生したトラブルへの対処を行うこともあります。お客様に納得できる売買取引をしてもらえるよう、不動産だけでなく法律や契約手続きなどさまざまな知識が求められる仕事です。

「不動産賃貸仲介」との違い

不動産「売買」仲介と不動産「賃貸」仲介では、仕事で関わる人、営業のしやすさ、手数料などに違いがあります。不動産売買仲介では不動産の売主と買主の間を取り持つのに対し、不動産賃貸仲介では主に物件のオーナー(大家)と入居希望者と関わることになります。

賃貸物件は進学・就職・転勤などで遠方に住んでいる方も物件を探すため、不動産賃貸仲介の場合はインターネット経由の問い合わせが多いのも特徴です。一方、不動産売買仲介では長く住み続けることを想定し、現地まで足を運ぶお客様が多い傾向にあります。

また、賃貸契約は売買契約より資金面のハードルが低いため、売買より問い合わせ数が多く、営業として多くの場数を踏むことが可能です。営業に不安がある人や未経験者でも、不動産賃貸仲介なら比較的取り組みやすいでしょう。

「不動産販売」との違い

不動産売買仲介は不動産の売主と購入希望者の取り引きをサポートするのに対し、不動産販売では自社が所有する物件を販売する点で両者に大きな違いがあります。収入源も異なり、不動産売買仲介は仲介手数料、不動産販売は売却益が収入源になります。

不動産売買仲介では住居に住まなくなった人が「売りたい」と思った物件を「
中古物件」として売買し、不動産販売ではデベロッパーやハウスメーカーが建てた「新築物件」を販売するのが一般的です。不動産販売は物件が売れないと在庫を抱えることになるため、リスク管理の点からは不動産売買仲介の方が取り組みやすいと言えるでしょう。

「不動産買取」との違い

不動産売買仲介業とよく比較されるのが「不動産買取業」です。どちらも不動産の売買に関わるビジネスですが、実はビジネスモデルや収益の仕組み、リスクの大きさなどに大きな違いがあります。

不動産売買仲介業は、売主と買主の間に立ち、不動産の売買契約をサポートする仕事です。取引が成立すると「仲介手数料」が収益となります。あくまで「仲介」が役割であり、自社で不動産を買い取ることはありません。

一方、不動産買取業は、自社で不動産を直接買い取り、その後に別の買主へ転売するビジネスモデルです。いわば「仕入れて売る」物販型のスタイルであり、仲介ではなく転売による利益(売却益)を狙います。

また、不動産売買仲介業は、法律で仲介手数料の上限が定められているため、1件あたりの収益は比較的安定しています。一方、不動産買取業は、仕入れと販売価格の差が利益となるため、リフォームやリノベーションを行い、物件の価値を高めて販売するケースが多いのが特徴です。

ビジネスリスクの点でも違いがあります。不動産売買仲介業は、成果報酬型のビジネスであるため、契約が成立しなければ収益は発生しませんが、在庫を抱えるリスクはありません。一方、不動産買取業は、自社で不動産を買い取るため、売れ残りや値下げによる損失リスクを常に抱えることになります。

不動産売買仲介に携わる人の年収はいくら?日本人全体の平均年収との違いを紹介

不動産売買仲介に携わる人の年収はいくら?

国税庁が発表した「令和4年分民間給与実態統計調査 調査結果報告」によると、日本人全体の平均年収は457万6,000円、不動産業界のみの平均年収は456万9,000円でした。日本人全体と不動産業界の平均年収は、ほぼ同水準と言って良いでしょう。

不動産売買仲介を手掛ける企業の平均年収を口コミサイトで見てみると、三井不動産リアルティ株式会社は522万円、東急リバブル株式会社は518万円でした。会社によっては契約数に応じて報酬を引き上げる「インセンティブ制度」を設けているところもあるため、不動産売買仲介は成果次第で大きく稼げる可能性があります。

不動産売買仲介に携わるメリット

不動産売買仲介に携わるメリット

不動産売買仲介に携わるメリットには、次のようなものがあります。

  • リスクが比較的低い
  • 1回の取引で多額の仲介手数料を得られる
  • より多くの専門知識が身に付く
  • 人脈を築きやすい

不動産売買仲介は売主と買主を繋げる(橋渡しする)仕事です。その点、在庫を抱える必要がなく、比較的低リスクなビジネスモデルといえます。仲介手数料は取引額によって変動し、高額な取引が成立すると一度に100万円以上の収入を得ることも可能です。

不動産売買仲介は建物・法律・契約手続きなど幅広い知識が求められるため、業務経験を積みながら仕事に役立つ多くの専門知識を身に付けることができます。また、不動産売買を行う人のなかには富裕層も一定数いるため、将来独立を検討する際の顧客候補(見込み顧客)にもなるでしょう。

不動産売買仲介に携わるデメリット

不動産売買仲介に携わるデメリット

不動産売買仲介に携わるデメリットには、次のようなものがあります。

  • 成約までに時間がかかる
  • 休みが取りにくい
  • ノルマを達成するのが大変

不動産の購入は一度に数百万円から数千万円が動く大きな取引であるため、お客様も契約するか判断する際はとても慎重になります。物件の内覧や契約書の作成などさまざまな手順を踏む必要があるため、1つの契約が成立するまでに数カ月以上かかるケースが一般的です。

不動産会社の勤務形態は、多くのお客様が休みを取るタイミングで逆に働くため、土日祝日は休みにくいことも留意しておきましょう。会社によってはノルマが設けられており、プレッシャーを感じながら働くことに疲れる人もいるかもしれません。

不動産売買仲介の具体的な仕事内容を解説

不動産売買仲介の具体的な仕事内容を解説

不動産売買仲介では、お客様の対応から書類の作成までさまざまな仕事があります。不動産売買仲介の主な業務を、以下にまとめてみました。

  • お客様からの相談受付
  • 訪問査定
  • 広告・資料の作成
  • 物件の役所調査
  • 物件案内
  • 契約書類の作成
  • 契約手続き

上記のほかにも、トラブルやクレームへの対処、内覧の日程調整など実にさまざまな業務があります。仕事の多さに比例して、求められる知識や技術も多岐にわたるのが不動産売買仲介の特徴です。

【事例】不動産売買仲介で働く人の1日

【事例】不動産売買仲介で働く人の1日

不動産売買仲介では、曜日によって仕事の内容が少し異なります。月・火は書類の作成や役所の手続きといった事務作業、水は定休日、木・金で土日祝の準備、週末はお客様対応が中心になる傾向があります。業務が比較的落ち着いている1日のスケジュール例は、以下の表の通りです。

【事例】不動産売買仲介で働く人の1日(図表)

お客様からの予約が多い日は、例えば午前に1組・午後に3組のお客様をそれぞれが希望する物件へ案内したり、事務作業に取り掛かれるのが17時以降になったりと、かなり忙しくなります。不動産売買仲介では、状況に応じて柔軟にその日のスケジュールを組み立てることが大切です。

売主へ対応する流れ

売主へ対応する流れ

不動産売買仲介で働くときは、物件を売りたいと考えている「売主」と、購入する物件を探している「買主」の両方の対応をすることになります。売主の対応をするときの基本的な流れは、以下の通りです。

売却の相談を受ける

  • 1.価格査定を行う
  • 2.媒介契約を結ぶ
  • 3.物件資料の作成
  • 4.売却活動の開始
  • 5.売買契約を結ぶ
  • 6.決済・引渡し

媒介契約には売主が1社とのみ締結できる「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」と、売主が複数の不動産会社と締結できる「一般媒介契約」の大きく3種類があります。

自社との取引を成約させる点においては、「専属専任媒介契約」もしくは「専任媒介契約」が良いでしょう。

売主に「この会社と契約したい!」と思ってもらえるよう、丁寧で親切な対応を心掛けることが大切です。

補足:3種類の契約形態の違いは?

上記で説明した3種類の契約形態の違いは以下の通りです。

1:専属専任媒介契約

1つの不動産会社とだけ契約する形態です。他の不動産会社や自分で買い手を見つけることはできません。手厚いサポートを受けられるメリットはありますが、他の会社と契約できないため、買い手の見つかる機会が少ないデメリットもあります。

2:専任媒介契約

1つの不動産会社と契約しますが、自分で買い手を見つけることはできます。一つの会社に集中したサポートを受けながら、自分でも買い手を探せる点がメリット。専属専任媒介契約ほどではありませんが、買い手の見つかる機会が限られる可能性があります。

3:一般媒介契約

複数の不動産会社と契約できます。また、自分で買い手を見つけることもできます。複数の会社を通じて、広く買い手を探せるのがメリットです。ただし、専属・専任の契約に比べ、1つの会社のサポートが手薄になります。

買主へ対応する流れ

買主へ対応する流れ

不動産売買仲介で買主へ対応する際は、希望する物件の把握や重要事項の説明など、多くの手順を踏みます。一連の流れの一例を、以下にまとめてみました。

  • 1.不動産購入の相談を受ける
  • 2.希望条件に合う物件を探す
  • 3.内覧に案内
  • 4.購入申込書の案内
  • 5.諸費用の説明
  • 6.住宅ローンの仮審査
  • 7.重要事項の説明
  • 8.売買契約の締結
  • 9.住宅ローンの本審査
  • 10.金銭消費貸借契約の締結
  • 11.決済

買主へ対応する際は、会社の窓口で不動産購入の相談を受けたり、内覧の際に物件の説明をしたりと、お客様と話す機会が多くあります。諸費用や重要事項など説明する内容も多岐にわたるため、事前準備をしっかり整えておくことが大切です。

不動産売買仲介で身につけておくと便利な技術・資格

不動産売買仲介で身につけておくと便利な技術・資格

不動産売買仲介としてお客様に「この会社・この人と契約したい」と思ってもらうためには、コミュニケーション能力の高さや接客・営業の経験は強みになるでしょう。

また、不動産系資格を取得して知識を身につけることも重要です。不動産系資格の「三冠」に数えられる宅地建物取引士・マンション管理士・管理業務主任者のほか、不動産鑑定士やファイナンシャルプランナーの資格もおすすめです。

不動産売買仲介のなかには特定の資格を持つ人しか携われない業務もあり、資格を取得することで仕事の幅が広がります。また、資格は一定の知識がある証明にもなります。お客様の安心感・信頼感にもつながるため、積極的に資格を取得すると良いでしょう。

不動産売買仲介を成功させるコツを7つ紹介

不動産売買仲介を成功させるコツを7つ紹介

不動産売買仲介は賃貸仲介と比べると問い合わせ数が少なく、大きな金額が動くぶん成約にも時間がかかります。しかし取引が完了すると、一度に数十万〜数百万円の成果をあげることが可能です。ここでは、成約を獲得する上で重要なコツを7つ紹介します。

1.「両手物件」を主に扱うようにする

「両手物件」とは、売主と買主の両方から仲介手数料を受け取ることです。不動産会社は状況に応じて、所有者からの依頼を受けて購入希望者を探す「元付」のみ、もしくは物件を探している人からの依頼を受けて不動産を探す「客付」のみを行うケースがあります。

しかし「元付」「客付」のどちらか一方だと、仲介手数料は片方からしか受け取れません。1回の取引で大きな収入を得るには「両手物件」を主に扱うことが重要です。

2.法律をきちんと守る

不動産売買仲介には、宅地建物取引業法や民法などさまざまな法律が関わります。なかには特定の資格を保有している人のみが携われる業務を定めているものもあるため、法律の知識・確認は欠かせません。

万が一法律を破ると、お客様との取引が破談したり、会社が業務停止処分を受けたりするリスクもあります。自分自身や自分と関わる人たちを守るためにも法令遵守を心掛けましょう。

3.過去の事例の研究を欠かさない

不動産の取引額は、物件の所在地・規模・間取りなど、外部要因によって大きく異なります。過去の事例研究は、適正な査定額を算出したり、相場観を身につけたりするための重要な作業です。

過不足がない適正な価格を提示し、その理由を丁寧に説明できるよう準備することで、お客様からの信頼、ひいては成約にもつながるでしょう。過去の取引事例は、不動産取引情報提供サイトREINSMarket Informationで調べることができます。

4.競合他社との差別化を図る

国土交通省が発表した情報によると、令和5年度末の時点で宅地建物取引業者は全国に13万583社存在します。無計画な営業をしていては競合となる不動産会社のなかに埋もれてしまいます。
お客様に自社の存在を認知してもらえるよう、取り扱い物件の種類や対象地域などにこだわり、競合他社との差別化を図りましょう。契約者へのサービスやキャンペーンを充実させるほか、SNSを活用し、認知度を向上させるのもひとつの手段です。

5.お客様の希望をしっかり汲み取る

お客様の希望を把握したうえで、要望に沿う物件の紹介やサービスの提供を心掛けることも大切です。お客様の希望とズレた提案をすると「なんか違うなぁ」「もしかしてこの物件を無理やり売ろうとしている?」という邪推を生み、成約から遠ざかってしまうかもしれません。

アンケート形式で希望条件を淡々と尋ねるだけでなく、会話のなかからお客様が言語化できていない要望を汲み取り、提案することが不動産売買仲介で成功する大切なポイントです。

6.自社や店舗の情報を不動産一括査定サイトに登録する

不動産一括査定サイトとは、お客様が入力した物件の情報をもとに、条件と一致する不動産会社を複数社提案するサイトです。お客様(検索ユーザー)は提案内容に納得したら、約5〜10社へ一度に査定依頼を送れます。会社ごとに連絡を取る手間が省けるため、近年利用する方は増加傾向にあります。

自社や店舗情報をこうした不動産一括査定サイトに登録しておくと、自分からお客様を探さなくても、お客様(検索ユーザー)から査定依頼の連絡を受け取ることができるので便利です。効率よく集客できるため、不動産一括査定サイトの利用を検討してみるのも良いでしょう。

7.実務能力を向上させる姿勢を忘れない

不動産売買仲介に携わると、法律・税金・不動産などの幅広い知識のほか、お客様と円滑にコミュニケーションを進めるスキルが求められます。時には法改正を受けて、新しい情報を仕入れて実務に反映させる必要もあるでしょう。

「今のままでいい」と思ったまま、現状を改善することなく停滞してしまうと、いつの間にか時代に取り残されて契約を取りづらくなる可能性があります。不動産売買仲介で長く活躍するには、常に勉強し、実務能力を向上させることが重要です。

開業するなら「売買」仲介と「賃貸」仲介どちらが良い?

開業するなら「売買」仲介と「賃貸」仲介どちらが良い?

未経験の方や営業力に不安がある方は、賃貸仲介から始めることをおすすめします。賃貸物件は進学・就職・転勤などで常に需要があり、売買仲介ほど積極的に動かなくても一定の契約を取れる可能性が高いためです。まずは賃貸仲介で経験を積んでから、売買仲介に取り組むと良いでしょう。

営業力に自信がある方や、大きく稼ぎたい方には売買仲介がおすすめです。初めのうちは、中古物件に注目してみましょう。中古物件だと新築物件より価格が低いぶん、お客様も購入しやすいため、比較的成約に繋げやすいでしょう。中古物件の売買仲介で知識と経験を身につけてから、段階的に新築物件も取り扱っていきましょう。

不動産売買仲介は大きな利益の獲得を目指せる業態!知識と実績をどんどん積み上げよう

不動産売買仲介は大きな利益の獲得を目指せる業態!知識と実績をどんどん積み上げよう

不動産売買仲介は一度の成約で数十万円以上の大きな利益の獲得を目指せる業種です。取り扱う物件の種類やターゲット層、成約数によっては年収1,000万円を超えることも夢ではありません。

しかし不動産の売買は大きな金額が一度に動くため、お客様も契約や物件選びには慎重になり、賃貸仲介に比べ難易度が高いのも事実。知識や実績をどんどん積み上げてお客様からの信頼を獲得し、不動産売買仲介の第一線で活躍を目指しましょう!

不動産業開業のご相談は「全日本不動産協会」

「全日本不動産協会」は、1952年10月に創立された公益社団法人です。中小規模の不動産会社で構成されており、2025年2月末の正会員数は37,054社で年々増加しています。

不動産に関するさまざまな事業を展開し、調査研究や政策の提言、会員を対象とした研修などを行っています。47都道府県に本部を設置し、会員や消費者からの相談も受け付けています。

地域のネットワーク構築に、ぜひ全日本不動産協会をご活用ください。

・ご入会メリット|全日本不動産協会
・入会資料請求|全日本不動産協会



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