不動産賃貸仲介とはどんな仕事?仕事内容や成功のポイントを解説
2025年05月01日
不動産業界には、新築物件の売買、賃貸物件の仲介、マンション管理、リフォームなどさまざまな業種があります。業種によって求められる知識・技術や業務内容は大きく異なるため、それぞれの違いを理解しておくことはとても大切です。
そこで本記事では数ある不動産関連の業種のうち、不動産賃貸の仲介業について解説します。仕事の内容やメリット・デメリット、1日のスケジュール例なども紹介しているので、不動産賃貸仲介の全体像を知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
不動産賃貸仲介とは
不動産賃貸仲介とは、不動産の賃貸取引が行われるときに貸主と借主の間を取り持つ業態のことです。賃貸契約には法律や契約に関する専門的な知識が必要なため、不動産会社が間に入ってサポートします。収入源は、貸主と借主からの仲介手数料です。
取り扱う物件の種類は、アパートやマンション、一戸建ての借家など多岐にわたります。お客様が満足できる物件を提案するためには、紹介できる物件の数を増やしたり不動産に関する幅広い知識を身につけたりすることが大切です。
「賃貸管理」との違い
不動産賃貸仲介では物件探しから入居までをサポートするのに対し、賃貸管理では入居から退去までをサポートする点に大きな違いがあります。管理の主な業務としては、入居者からのクレーム対応、家賃の集金、退去の立ち合いなどです。
また、管理に携わる場合は安心して物件に住める状態を保つため、設備の維持管理をしたり、工事やリフォームの提案をしたりするケースもあります。主な収入源は物件のオーナーからの管理委託費です。毎月決まった金額が支払われるため、経営を安定させるために管理事業を手掛ける不動産会社も存在します。
「不動産売買仲介」との違い
不動産「賃貸」仲介と不動産「売買」仲介では、まず取り扱う物件が異なります。不動産賃貸仲介では賃貸物件を取り扱うのに対し、不動産売買仲介では注文住宅・分譲住宅・中古物件などの売買を目的とした不動産を扱い、売却希望者と購入希望者の間を取り持ちます。
取引額や手数料も大きく異なり、いずれも不動産売買仲介の方が高額です。不動産の売買ともなると一度に数千万円以上もの金額が動きますし、取引額が高いぶん手数料も1回仲介するだけで数百万円入るケースもよくあります。
「不動産媒介」との違い
不動産媒介と不動産仲介の違いですが、媒介と仲介という言葉の意味においては違いはありません。ともに、間に入り取り持つという意味です。しかし、不動産取引では用いられる場面(使われ方)が違うので、その点だけ注意しましょう。
不動産媒介は、売主が物件を売却をする際に不動産会社と結ぶ契約のことを「媒介契約」という言葉を使います。土地や建物は売主の方が買い手を探して売却できます。しかし売りたい土地や物件を安全に取引するためには不動産や法律などの専門知識が必要です。また売主の方だけで購入希望者を探すのはとても大変です。ほとんどの売主は、不動産を売却するときに不動産会社と媒介契約を結んで買主探しや契約締結の媒介をお願いします。
一方、不動産仲介とは、不動産会社が売主(貸主)と買主(借主)の方の間に入って契約するのをサポートする役割をいいます。不動産会社は売主(貸主)だけをサポートするわけではなく、不動産の購入希望者の代わりに物件を探したり、売主(貸主)と交渉するのも役割となります。
また、取引が成立したときに不動産業者に支払う手数料のことを「仲介手数料」と言うのは前述の通りです。
媒介と仲介、その違いを簡単にまとめると以下の通りです。
- 媒介:不動産会社に売却を契約する時に使用する言葉
- 仲介:不動産会社に依頼する時に使用する言葉
下の挿絵も参考に、媒介と仲介の違いを把握しておきましょう。
◆参考:不動産媒介のイメージ
◆参考:不動産仲介のイメージ
不動産賃貸仲介のメリット
不動産賃貸仲介のメリットは、積極的な営業活動をしなくても契約に結びつきやすい点にあります。就職・進学・転勤などで生活の拠点を移し、賃貸物件への入居を希望する人は大勢いるため、見込み顧客のもとへ直接訪問したり、集客のために大規模なイベントを開催したりする必要はありません。
特に毎年1〜3月は引っ越しシーズンにあたるため、この時期は成約数アップも期待できます。一定の契約数が見込めることから、不動産業界の中でも比較的取り組みやすい事業形態と言えるでしょう。
不動産賃貸仲介のデメリット
不動産賃貸仲介のデメリットは、仲介手数料の単価が低いことです。賃貸物件を仲介する際、貸主・借主に請求できる仲介手数料の上限は法律で決められており、1ヶ月分の家賃の1.1倍以内とされています。
1ヶ月の家賃が8万円の物件を仲介した場合、請求できる仲介手数料の上限は8万8,000円以内です。1回の成約で数百万円の仲介手数料を受け取れる不動産売買仲介と比べると、物足りなく感じるかもしれません。
また、繁忙期である1〜3月はかなり忙しくなります。1人で複数人のお客様を同時進行で担当したり、お客様の都合に合わせて対応するため出勤日が不規則になったりする可能性もあります。体力勝負な側面があるのも、不動産賃貸仲介の難点と言えるでしょう。
不動産賃貸仲介に携わる人の平均年収の目安として、不動産賃貸仲介事業を展開している会社の収入事情を紹介します。東急リバブル株式会社の平均年収は519万円、三井不動産株式会社は846万円です。令和4年の日本の平均給与は458万円であるため、不動産賃貸仲介は比較的稼げる業種と言えるでしょう。
ただし不動産賃貸仲介を手掛けている会社のなかにはインセンティブ制度を導入し、成約数が多いほど給料も増える給与形態のところもあります。基本給を低く設定している場合もあるため、本人の努力によるところも大きい点には注意が必要です。
不動産賃貸仲介の仕事内容
不動産賃貸仲介の仕事には、主に事務作業と営業活動の2種類があります。事務作業担当と営業活動担当が明確に分かれていたり、社員全員で両方の仕事に取り組んだりと、会社によって役割分担の仕方は異なります。不動産賃貸仲介ではどのような仕事をするのか、詳しく確認してみましょう。
事務作業
不動産賃貸仲介の事務作業の内容としては、次のようなものがあります。
- 自社サイトや物件情報サイトへの物件情報の掲載
- 取り扱い物件の空室確認
- 契約関係書類の作成
- 顧客管理システムの運用
- データの集積・活用
- お客様アンケートの実施・集計・分析
スムーズかつ正確に仕事を進めたり、成約数増加に向けて適切に対応したりするために重要な仕事が事務作業に含まれています。情報に誤りがあると会社の信頼にも影響があるため、丁寧に作業することが大切です。
営業活動
不動産賃貸仲介の営業活動では、お客様と直接接する機会が多く、コミュニケーション力が求められる仕事です。主な業務内容は以下の通りです。
- 電話や来店への対応
- 賃貸物件の内見案内
- 契約手続きや書類対応
- 入居前後のフォロー対応
営業スタイルは、時期や会社の方針によって異なりますが、多くの不動産賃貸仲介会社では、お客様からのお問い合わせに対応する「インバウンド営業(反響営業)」が中心です。
特に引越し需要の高まる1〜3月の繁忙期には、スーモやホームズなどのポータルサイト経由で多くの反響があるため、積極的な訪問営業(例:オーナーへの空室対策や管理受託営業など)やイベント開催(例:学生向けイベントなど)をしなくても契約につながりやすい傾向があります。
一方で、閑散期には空室オーナーへの営業や自社物件の紹介活動など、アウトバウンド型のアプローチが必要となることもあります。
不動産賃貸仲介の仕事の流れ
動産賃貸仲介では、主に次のような流れで仕事を行います。
- 1.賃貸物件のオーナーから入居者募集の依頼を受ける
- 2.自社サイトや物件情報サイトに物件情報を掲載する
- 3.お客様からのお問い合わせ対応・内見
- 4.審査・契約関係書類の作成・重要事項の説明
- 5.契約締結
状況によっては、上記の流れのなかに今後の方針の打合せといった業務も加わります。確認漏れやミスが発生しないよう、適切なスケジュール管理が求められます。
【事例】不動産賃貸仲介で働く人の1日
不動産賃貸仲介の忙しさは、時期や日によって異なります。繁忙期は就職・卒業・入学等に向けて多くの人が移動する1〜3月で、会社によっては4月中頃まで忙しい日々が続くことも。平常時でも、平日よりは多くの人が休みである土日祝日の方が多忙である傾向にあります。
不動産賃貸仲介に携わる人の1日のスケジュールは平常時と繁忙期で大きく異なるため、それぞれ分けて紹介します。
平常時
不動産賃貸仲介に携わる人の平常時のスケジュール例は、次の通りです。
多忙な印象を持たれやすい不動産業界ですが、平常時の不動産賃貸仲介では営業時間内に仕事をすべて終わらせ、定時に退社することも可能です。早く帰宅できるため、スキルUPのためのセミナーに参加する人や、資格取得に向けて勉強する人もいます。
繁忙期
不動産賃貸仲介に携わる人の繁忙期のスケジュール例は、次の通りです。
日中はお客様対応に時間を使うため、書類の作成や整理は夕方以降になる日も少なくありません。翌日も忙しいことが分かっている場合は、前日のうちに準備を済ませます。繁忙期の間は先のことも見越して、できることから早めに準備・対応するのが大切です。
不動産賃貸仲介を成功させる方法3選
常に一定の需要があるのが魅力の不動産賃貸仲介ですが、お客様からの連絡をぼんやりと待っているだけでは成功から遠ざかってしまいます。お客様が「この会社と契約したい」と思える要素を少しでも増やし、収益をどんどん伸ばしましょう。ここでは、不動産賃貸仲介を成功させる方法を3つ紹介します。
1.賃貸仲介の依頼を1つでも多く獲得する
自社で取り扱っている物件の数が少ないと、お客様の希望に沿える物件を紹介しにくくなります。多くのお客様は複数の不動産会社を比較したうえで契約先を選ぶため、満足のいく提案ができなければ売上を逃してしまうかもしれません。
幅広いニーズに応えるため、オーナーから入居者募集の依頼を1つでも多く獲得しましょう。「レインズ」のような不動産会社向けの物件情報交換のためのネットワークシステムを活用するのもひとつの手段です。
2.お客様の話を丁寧に聞く
不動産会社を利用する多くのお客様は、店舗スタッフほど不動産の知識を豊富に持っているわけではありません。なんとなく「こんな部屋に住みたい」と想像していても、具体的に言葉にするのが難しい場合もあります。
専門用語をできるだけ避け、質問の仕方を工夫しながら、お客様の話に丁寧に耳を傾けましょう。希望条件の意図を汲み取り、お客様のニーズに合致した物件を紹介することで、成約やリピーターの獲得に繋がります。
3.資格を取得する
資格を取得するのも、不動産賃貸仲介を成功させるポイントのひとつです。資格を取得することで専門知識が身に付くだけでなく、資格取得者のみが携われる独占業務も遂行できるようになります。試験に合格したことにより自信も付くため、お客様を以前よりしっかり案内できるようにもなるでしょう。
また、お客様の視点から見ても資格を持っている人に担当してもらえると安心感があります。不動産賃貸仲介を行う際は、宅地建物取引士やマンション管理士の資格がおすすめです。
開業するなら不動産賃貸仲介がおすすめ!
国土交通省の発表によると、令和5年度の時点で、不動産業界全体の業者数が10年連続で増加しています。宅地建物取引士の登録数も近年増加傾向にあり、令和5年度の総登録者数は約118万人でした。こうした国土交通省の情報から、不動産業界では独立・開業する人が多くいることが伺えます。
もし将来的に不動産会社を開業する場合、まずは不動産賃貸仲介に取り組むと良いでしょう。需要もあり、不動産売買仲介に比べて営業力があまり身に付いていなくても収益を獲得しやすい事業形態と言えます。
いずれ大きく稼ぎたい場合は、まずは不動産賃貸仲介で経験を積み、資金を蓄えたうえで売買仲介にも取り組んでみましょう。
【不動産賃貸仲介】オーナーと入居者との橋渡し
不動産賃貸仲介とは、オーナーと入居希望者の間を取り持ち、仲介手数料で収益を得る事業形態です。進学や就職などで賃貸物件の需要は常にあるため、経営を安定させやすいのが魅力です。満足できる部屋が見つかったと喜ぶお客様の様子を見ると、仕事のやりがいにも繋がります。
不動産賃貸仲介を成功させるには、賃貸仲介の依頼をたくさん獲得し、お客様の話を丁寧に聞き取るスキルが大切です。誠実な対応を心がけ、1人でも多くのオーナーと入居者を繋げていきましょう。
不動産に関するご相談は「全日本不動産協会」へ
「全日本不動産協会」は、中小規模の不動産会社で構成されている公益社団法人です。法人のマークにウサギが描かれていることから、「ウサギ」「ウサギマーク」の愛称で親しまれています。
「全日本不動産協会」では、不動産会社を経営している方・不動産業に携わっている方に向けた相談窓口を設けております。不動産実務をはじめ、不動産業に関わることなら何でも相談可能です。
地方本部でも、会員の方からの相談に定期または不定期にて応じております。不動産会社の経営に関する相談は「全日本不動産協会」にお声がけください。
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