不動産業の開業におすすめの助成金6選|資金面の不安を払拭しよう


2024年05月02日

不動産業の開業におすすめの助成金6選
開業する際は開業資金が必要です。不動産業も例外ではなく、数百万円から1,000万円以上の資金が必要になるケースがよくあります。

しかし、何百万円もの資金を自分の貯蓄だけで賄うのはとても大変です。自治体や支援団体などから、助成金を受け取ることはできないかと考えている方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、不動産業で開業するときに使える助成金を6種類紹介します。資金調達する際の注意点や開業の流れも解説しているので、ぜひ最後までお読みください。

不動産業を開業するときにかかる費用の総額と内訳

不動産業を開業するときにかかる費用の総額と内訳
開業するときの費用は、保証協会に加入しているか否かで大きく異なります。保証協会に加入すると、本来なら1,000万円かかる営業保証金が60万円で済みます。加入した場合としていない場合の総額と内訳の目安を、以下の表にまとめてみました。
不動産業を開業するときにかかる費用の総額と内訳(表)
保証協会に加入した上で開業するとき、営業保証金の代わりに納付するものを弁済業務保証金分担金と言います。営業保証金の供託宅地建物取引業法第25条で義務付けられています。1,000万円を用意するのが難しいときは、保証協会への加入も検討してみましょう。

「補助金」と「助成金」の違いを把握しておこう

「補助金」と「助成金」の違い
「補助金」と「助成金」はどちらも資金援助が受けられるイメージを抱きやすいため、よく混同される言葉です。しかし実際は、目的や管轄などが異なります。資金を調達する前に、「補助金」と「助成金」の違いを把握しておきましょう。
「補助金」と「助成金」の違い(線表)
助成金と補助金を比較すると、審査を通過しやすいのは助成金です。補助金は事業をサポートするために設けられているぶん、予算や定員が設定されていたり、提出書類の内容を厳格に確認されたりします。不動産業で開業する際は、まずは助成金の利用を検討してみましょう。

不動産業の開業で活用できる助成金・補助金

不動産業の開業で活用できる助成金・補助金
開業する際に活用できる助成金・補助金制度は多くあります。主なものは、以下の6つです。

  • 1.IT導入補助金
  • 2.小規模事業者持続化補助金
  • 3.事業再構築補助金
  • 4.教育訓練給付制度
  • 5.キャリアアップ助成金
  • 6.住宅セーフティネット制度

以下、各制度の内容を確認してみましょう。

1.IT導入補助金

IT導入補助金は、業務の効率化やDXなどのため、ITツールを導入する企業に向けた助成金制度です。勤怠管理システム・顧客管理システム・セキュリティ対策などで利用できます。
1.IT導入補助金
IT導入補助金は、通常枠やセキュリティ対策推進枠などいくつかの枠が設けられています。上限額・補助率・申請期間は枠によって異なるので、申請前にしっかり確認するようにしましょう。

2.小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、日本各地にある商工会議所が管轄するエリアで事業を展開している、小規模事業者に向けた制度です。中小企業基本法第2条第5項によると、従業員数20名以下の事業者が、小規模事業者に該当します。
2.小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金で受け取った補助金は、販路の拡大や業務効率化のために使用できます。新規顧客を開拓したり、管理システムを導入したりする場合は利用を検討してみてください。

3.事業再構築補助金

事業再構築補助金は、新型コロナウイルスの影響を受けた事業者をサポートするための補助金制度です。事業転換、業態転換、新分野展開などのために利用できます。
3.事業再構築補助金
上限額と補助率は、事業者の規模や申請する内容によって異なります。コロナ禍からの回復を目的とした補助金なので、すでに他の事業を展開しており、その他に不動産関係の事業を行おうと考えている方に向けた制度と言えます。

4.教育訓練給付制度

教育訓練給付制度は、厚生労働省が実施している給付金制度です。働く人たちのキャリア形成や能力開発をサポートし、雇用の安定と就職の促進を目的としています。国が指定している資格を取得する場合、受験に必要な金額の一部に対して給付金が支給されます。不動産業なら、宅地建物取引士試験が給付の対象です。
4.教育訓練給付制度
上限額と補助率は教育訓練制度の種類によって異なるので、詳しくはハローワーク等に尋ねてみましょう。MOS・司法書士・日商簿記など、会社の業務や経営に役立ちそうな資格も給付対象です。

5.キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、非正規雇用で働く人が企業内でキャリアアップできる取り組みを促進するために設けられた制度です。開業した初期は非正規雇用で社員を雇い、経営が安定したら正社員化することを考えている方には検討の価値があります。
5.キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、申請要件を満たすだけでも半年かかります。審査結果が分かるまでにはさらに時間を要するため、スケジュールに余裕を持って利用計画を立てましょう。

6.住宅セーフティネット制度

住宅セーフティネット制度とは、低所得世帯や高齢者など住宅の確保に配慮が必要な方に向けて住宅を貸し出すときに活用できる制度です。入居者が居住しやすいよう、賃貸物件を改修するときに利用できます。
6.住宅セーフティネット制度
住宅セーフティネット制度を利用して改修した住宅は、入居者を住宅確保要配慮者に限定した登録住宅として10年間運用することが求められます。不動産賃貸業での開業を考えている方は、ぜひ検討してみてください。

申請のタイミングは要確認!期限が設けられているものもある

申請のタイミングは要確認
助成金・補助金によっては、申請の受付期間が設定されているものもあります。年に数回しか申請を受け付けてもらえないものから、随時申請を受け付けているものまで、制度によってさまざまです。

うっかりしていると、次の受付期間まで数ヶ月待つことになる可能性もあります。助成金・補助金の利用を検討するときは、申請期限からスケジュールを逆算し、計画的に準備を進めるようにしましょう。

開業資金の不安を減らす方法

開業資金の不安を減らす方法
助成金制度を利用すると、開業資金を抑えることができます。しかし、資金面の課題は開業するタイミングだけで終わるものではありません。開業した後、事業を軌道に乗せ、収入や利益を安定させることも大切です。

開業するときに、以下のようなことも行っておくとより資金面の不安を取り除けるでしょう。

  • 開業後の運営資金を準備しておく
  • 「資金繰り表」を作成しておく
  • 資金管理は「不動産テック」や「会計ソフト」を活用する

それぞれの対策について、さらに掘り下げて解説します。

開業後の運営資金を準備しておく

開業するときは、どうしても開業資金に意識が向きやすくなりますが、実際は、開業してからもさまざまな費用がかかるため、事前に運転資金もある程度準備しておくことが大切です。

事務所の毎月の家賃や光熱費、顧客とやり取りするときの通信費、スタッフを雇う場合は人件費も必要です。賃貸業を営む場合は、物件の維持費と管理費もかかるかもしれません。半年間は収入がなくても会社を運営できるよう、できるだけ運転資金を確保しておきましょう。

「資金繰り表」を作成しておく

「資金繰り表」とは、一定期間の収入と支出の予想をまとめた表のことです。毎月必要な資金と利益や、資金が不足しそうなタイミングを可視化できるため、計画的な会社の運営に必要なものです。

簡単なものなら、ExcelやGoogleスプレッドシートを使って自分で作れます。本格的なものが欲しい場合は、税理士や公認会計士といった専門家に依頼することをおすすめします。

資金管理は「不動産テック」や「会計ソフト」を活用する

「不動産テック」とは、賃貸管理システム・顧客情報管理システム・物件情報サイトといった、ITツールやインターネットサービスです。管理システムを導入すればそのぶん人件費を削減できますし、自社の物件情報サイトを用意しておくと広告の手間を削減することも可能となります。

また、会社を運営するには会計関連の業務も必要不可欠です。会計ソフトを導入すると、帳簿の記帳時間を短縮したり、自社の銀行口座と連携させて入力の手間を省いたりできます。正確・迅速・低コストで会社の資金を運用するため、不動産テックや会計ソフトの導入も検討しましょう。

助成金の申請が難しい場合は「融資」も検討してみよう

助成金の申請が難しい場合は「融資」も検討
「融資」とは、事業用の資金を公的機関や金融機関から借りることです。民間でいう「ローン」のようなもので、最終的には借りた金額と利子を返済する必要があります。

開業するときは、公的機関からの融資を検討してみましょう。金融機関は会社の信用を重視しており、開業したばかりの会社や今後開業する会社にはまだ信用がないため、お金を借りるのは難しい傾向にあります。

融資を受ける際におすすめの公的機関は、日本政策金融公庫です。助成金を受け取れるか分からない時は、融資にも着目してみてください。

不動産業を開業する流れ

不動産業を開業する流れ
開業を決めてから、実際に開業するまでには約3ヶ月かかると言われています。実際は会社員として働きながら開業準備を進める方もいるでしょうし、事業の内容や規模によってはもっと時間がかかるかもしれません。

あらかじめ開業までの流れを把握し、できる範囲で準備を進められるようにしておきましょう。不動産会社を開業する流れは、以下の8ステップです。

  • 1.業態を決める
  • 2.開業資金を調達・準備する
  • 3.事務所探し
  • 4.法人の設立
  • 5.宅地建物取引士を配置する
  • 6.宅地建物取引業免許の申請
  • 7.保証協会への加入
  • 8.自社の広告・宣伝を行う

宅建業を営むときは、従業員5人につき1人の宅地建物取引士を配置しなければなりません。従業員が12人の会社の場合、宅地建物取引士は3人必要という計算になります。従業員の人数に応じて自分で資格を取得したり、資格保有者を新たに雇ったりしましょう。

■関連情報
・全日本不動産協会-開業まで流れ

個人事業主は開業後の税務署への手続きも忘れずに

開業後の税務署への手続き(個人事業主)
法人ではなく、個人事業主として不動産業を開業する場合は、開業後に「開業届」と「青色申告承認申請書」を税務署に提出するようにしましょう。開業届は、所得税法第229条により、開業してから1ヶ月以内に提出するよう定められています。開業届を出すことで、確定申告では青色申告ができるようになるので、事情がない限りは提出することをおすすめします。

青色申告では、確定申告の際に最大65万円の特別控除を受けることが可能です。節税対策にもなるので、ぜひ青色申告承認申請書の作成も検討してみてください。書類は、国税庁公式サイトからダウンロードできます。

開業に関するよくある質問

開業に関するよくある質問
不動産業の開業を検討していると、さまざまな疑問が浮かんでくるでしょう。今回は、その中から以下5つのよくある質問に回答します。

  • 1.本当に不動産業は開業しやすいの?
  • 2.1人でも開業できる?
  • 3.開業資金なしでも開業できる?
  • 4.事業再構築補助金を使って開業できる?
  • 5.宅建士資格なしでも開業できる?

疑問をひとつでも解消し、スムーズに開業しましょう。

1.本当に不動産業は開業しやすいの?

不動産業は、数ある業界のなかでも比較的開業しやすいとされています。なぜなら営業力さえあればある程度の収益が見込めて、仲介業であれば在庫を抱える心配がないからです。

特殊な技術や設備が必要でないことや、在庫品の維持管理費で予算が圧迫されにくい点が、不動産業が人気の理由です。規模は大きくなくても、「地元に根差した不動産会社」をウリにすれば十分な収入が見込めるでしょう。

ただし、「独立しやすい」と「利益を確保できる」は別物です。開業した後は十分な利益を確保し、会社の経営状況を安定・成長させるため、さらなる努力が求められます。

2.1人でも開業できる?

きちんと書類を提出したり、仕事をする環境を整えたりすれば、1人でも不動産会社を開業することは可能です。自分1人ですべての業務を担当する分、仕事の進捗や会社の経営状況を把握しやすいでしょう。

ただし、宅地建物取引士の資格取得・情報収集・人脈の形成など、他の人と分担できないぶん、負担は大きくなる傾向にあります。1人では一度に担当できる案件の数にも限りがあるため、売り上げを伸ばすには業務効率化やWebサイトの有効活用など、さまざまな工夫を施すことが大切です。

3.開業資金なしでも開業できる?

開業資金なしで開業するのは、少々難しいかもしれません。自宅をオフィスとしても使用し、インターネット上だけで活動するとしても、宅地建物取引業免許の申請や、営業保証金もしくは弁済業務保証金分担金などの支払いは必要です。

融資で資金を賄うのもひとつの手段ですが、開業資金が(ある程度)準備されているときと比べると審査が通りにくい点は留意しておきましょう。

4.事業再構築補助金を使って開業できる?

事業再構築補助金は、新型コロナウイルスの影響を受けた事業者をサポートするための補助金制度です。不動産会社の開業資金としても使えるケースがあるので、気になる方は利用を検討してみても良いでしょう。建物の建築やリノベーションにかかる費用は補助対象になる可能性があるので、事業内容に応じて活用してみてください。

ただし、あまり補助金の支給が期待できないことは留意しておきましょう。事業再構築補助金では優遇する事業テーマが定められており、不動産業は含まれていません。製造業や宿泊業と比べると、新型コロナウイルスの影響を受けにくかったのも一因と考えられます。

5.宅建士資格なしでも不動産会社を開業できる?

不動産管理業もしくは不動産賃貸業なら、宅建士資格なしでも開業できます。土地や建物を取引するわけではないため、宅地建物取引士の資格の取得は求められないのです。代わりに不動産管理業では「賃貸不動産経営管理士」や「管理業務主任者」の資格が必要なケースもあるので、開業前によく確認しておきましょう。

宅地建物取引業を営む場合は、宅建士の資格取得が必要です。現在宅建士の資格を持っていない方は、勉強して取得するか、宅建士の資格保有者を雇うようにしましょう。

宅地建物取引業では、5人の従業員につき1人の割合で専任の宅建士を配置することが義務付けられています。宅建士にしかできない業務があるため、人材の採用が間に合わないときや、自分も現場に出る場合は、自ら資格を取得することをおすすめします。

まとめ:助成金を上手に活用して計画的に開業しよう

助成金を上手に活用して計画的に開業しよう
不動産業を開業するには、多額の開業資金が必要です。助成金や補助金を上手に活用して、計画的に開業しましょう。今回登場したのは、以下の6つの制度でした。

  • 1.IT導入補助金
  • 2.小規模事業者持続化補助金
  • 3.事業再構築補助金
  • 4.教育訓練給付制度
  • 5.キャリアアップ助成金
  • 6.住宅セーフティネット制度

各制度には申請期間が設けられているので、書類の提出には遅れないようにしましょう。利用できそうな制度がないときや、資金が足りない場合は融資を受けるのもひとつの手段です。開業資金をできるだけ抑えながら、納得できる方法で不動産業を開業するようにしてください。

「全日本不動産協会」は不動産業で開業する方を応援しています

「全日本不動産協会」は、中小規模の不動産会社で構成されている公益社団法人です。法人のマークにウサギが描かれていることから、「ウサギ」「ウサギマーク」の愛称で親しまれています。

当協会では不動産会社を開業する方に向けたさまざまなサポートを実施しており、円滑に手続きを進めることが可能です。開業後も、トラブル発生時や日常業務に関する相談を随時受け付けています。

定期的に各種研修やセミナーを開催し、知識や情報の共有もスムーズに。不動産業の開業を目指す方は、ぜひ「全日本不動産協会」にお声がけください。


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