【23年12月】空家措置法の改正法が施行|変更点や対応を解説
2024年06月24日
少子化に伴う人口減少は、国の最重要課題のひとつです。住む人が減ると必然的に空き家は増えるため、不動産業界にとって空き家問題は重要なキーワードと言えます。国も空き家対策としてさまざまな法律を制定・改正しており、2023年末には空家措置法が改正されました。
本記事では空き家問題の現状と課題を改めてクローズアップし、その上で空家措置法の改正の概要をポイントごとに解説します。法改正の全体像を掴みたい方や、改正後の法律の下でどのように事業を展開すればよいか検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
なぜ空家措置法が改正されたのか?|背景を解説
空家措置法が改正されるに至った背景に、使用目的のない空き家の急増があります。国土交通省の発表によると、1998年から2018年の20年間で、使用目的のない空き家は約1.9倍に増加しました。そして今後もさらに空き家の急増が予想されています。
空家措置法自体は2014年に制定されましたが、物件が将来的に「特定空家」という区分になってから対応するのでは限界がある(遅い)と判断され、法律の改正に至りました。
具体的にどこが変わったか?空家措置法の改正のポイント
空家措置法の改正のポイントは、
- 活用拡大
- 管理の確保
- 特定空家の除去等
以上、3点です。
それぞれについて、以下の見出しで詳しく解説します。
1.活用拡大
空き家の活用拡大として、「空家等活用促進区域」を創設し、用途の変更や建替えを推し進められるようになりました。空家等活用促進区域は市街地の中心や地域再生拠点などに設定され、市区町村が主体となって活用方針を示します。自治体は空き家の所有者に連絡し、有効活用するよう求めることが可能になります。
他にも所有者不在の空き家を処分するため、所有者の代わりに処分を行う「財産管理人」の選出を市区町村が裁判所に請求できるようになりました。空家等管理活用支援法人も新たに設立し、自治体や空き家の所有者へのサポート体制が整備されます。
2.管理の確保
空き家の管理の確保で注目したいのが、「管理不全空家」という区分の追加です。改正前は「特定空家」のみでした。改正後は放置し続けると特定空家になり得る空き家を対象に、「管理不全空家」として指定し、市区町村が指導・勧告できるようになりました。勧告を受けた空き家は住居として利用するのが難しいと判断され、固定資産税の住宅用地特例が解除されます。
この他、空き家の所有者の代わりに建物を管理する「管理不全建物管理人」の選出を市区町村長が裁判所に請求でき、電力会社等にある物件の所有者情報を提供するよう自治体が要請できるようになりました。電力会社等にある情報を参照することで、所有者の把握がスムーズになることが期待されています。
3.特定空家の除去等
特定空家の除去等では、代執行の円滑化が盛り込まれました。通常の代執行では命令を出して一定の猶予を経た後に代執行を行います。今後は屋根が崩落しかけるなどの緊急時には、速やかに代執行に取り掛かれるようになります。
また、相続放棄や所有者不明・不在の空き家への対応として、市区町村が裁判所に「財産管理人」の選出を請求し、修理や処分ができるようにもなりました。また特定空家の所有者に対する「報告徴収権」を市区町村長に付与することで、特定空家への勧告・命令等を円滑に行うことも可能となりました。
国は改正後の目標・効果も定めている
空家措置法の改正に伴い、国は下記3つの目標・効果を定めました。
- 空家等活用促進区域の数:施行後5年間で100区域
- 空家等管理活用支援法人の指定数:施行後5年間で120法人
- 市区町村の取り組みによって管理・維持された管理不全空家・特定空家の数:施行後5年間で15万物件
このことからも、国は2028年末を目途に、空き家の管理体制や自治体・所有者のサポート体制を順次整えようとしているのが伺えます。空き家の管理・維持促進のため、不動産会社や解体業者といった関係各所にも、空家措置法の改正が影響を及ぼす可能性が大いにあると言えるでしょう。
空家措置法の改正に伴い不動産会社に求められる対応
事業内容によっては、空き家の取引や、今後空き家になる可能性がある物件の相談の受け付けを実施している不動産会社もあるでしょう。顧客が不当な不利益を被ったり、トラブルに巻き込まれたりしないよう、適切に法律の説明をするのは重要な業務のひとつです。ここでは、空家措置法の改正に伴い不動産会社に求められる対応を4つほど紹介します。
1.顧客に対する「空家措置法」の説明
空き家の売却やリフォーム、今後どのように扱えば良いか等の相談を受けたときは、必要に応じて顧客に空家措置法について説明しましょう。空家措置法の改正に伴い、一定の条件を満たした空き家については固定資産税の住宅用地特例が受けられなくなり、持ち主の税負担が大幅に増加します。
また、放置していると自治体から指導や勧告を受ける可能性があるため、早めに行動に移した方が良い旨も伝えた方が良いでしょう。口頭での説明のみだと詳細を伝えるのが難しいときは、独自に空家措置法についてまとめた説明資料を用意してみるのもおすすめです。
2.空き家対策に関する財政・金融・税制支援の紹介
顧客のなかには空き家を処分したり、その他有効活用したりしたいものの、資金面の不安があり、次の行動に移れない方もいるかもしれません。空き家に関する費用の相談を受けたときは、財政・金融・税制支援を紹介してみましょう。
多くの自治体は空き家を活用・流通させるための補助金制度を設けていますし、国は被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例として、一定の要件を満たすことで譲渡所得から最高3,000万円まで控除する制度を用意しています。
空き家の取得・リフォームを対象とした住宅ローンの金利の引き下げも実施されており、空き家対策に利用できるサポートはたくさんあります。個々の顧客に適した支援を提案できるよう、あらかじめ情報を仕入れておきましょう。
3.空き家相談への対応・専門家の紹介
顧客が「本格的に空き家の処分や活用に向けて検討したい」と要望したときに備えて、不動産会社は空き家相談への対応や専門家の紹介ができる準備を進めておくのも大切です。社内スタッフが空き家相談に応じる場合は、空き家管理士・空き家再生診断士・相続鑑定士といった資格を取得するのもひとつの手段です。
状況に応じて、司法書士や空き家コンサルティング会社、自治体の相談窓口などの専門機関を紹介するのも良いでしょう。顧客が安心して空き家の処分や有効活用できる体制を整えてみてください。
4.空き家を活用したビジネスの提案及び展開
空き家の状態を確認し、まだ使い道がありそうな場合は、取り壊し以外の選択肢を顧客に提案するのも良いでしょう。例えば立地条件が良い物件なら一度取り壊し、コインパーキングにすると顧客は収入を得られるようになります。
もしくは、自社で買い取って事業拡大に活かすのもひとつの手段です。たしかに空き家は古い建物ではありますが、工夫次第でまだ使えるケースもあるため、ビジネス用の物件として活用することも視野に入れておくことをおすすめします。
空き家を活用したビジネスを7つ紹介
一見使い道がないように思われがちな空き家。実は状態によってはまだ使えるものや、リフォームすれば魅力ある物件になるものもたくさんあります。空き家を活用したビジネスが展開できれば、顧客は資産として運用も可能です。会社が買い取れば事業規模の拡大の足がかりにできる場合もあるため、うまく空き家を活用してみましょう。ここでは、空き家を使ったビジネスを7つ紹介します。
1.賃貸物件として活用する
状態が良い空き家や、リフォームすれば使えそうな空き家は、賃貸物件として希望者に貸し出すと良いでしょう。賃貸物件にすると家賃収入を得られるほか、老朽化の進行を軽減したり、将来的に賃貸物件としての貸出を止めて、所有者自身が住むことも可能です。リフォームが難しいときは、DIY可能物件にしておくと修繕費が節約できます。
ただし住む人が見つからないと、空室のまま管理費用だけ支払い続けることになります。賃貸物件として空き家を活用する際は、需要を事前にしっかり調査しておくことが大切です。
2.購入希望者を探して売却する
住居を新築する余裕がないため中古物件を購入したい、サテライトオフィスや古民家カフェとして使いたいといった理由で、空き家を探している人は一定数存在します。不動産会社が売却希望者と購入希望者を仲介したり、一度不動産会社が買取りリフォーム後売りに出したりして、売却するのも良いでしょう。
売却希望者からすれば売却益が得られますし、不動産会社としても仲介手数料が入るため、空き家の売却は人気のビジネスモデルです。購入者希望者がすぐ見つかるかわからないときは、空き家バンクに登録するのもひとつの方法です。
3.「マイホーム借上げ制度」を利用する
「マイホーム借上げ制度」とは、一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)が用意している賃貸制度です。空き家の所有者の代わりにJTIが入居者と定期借家契約を結び、トラブル対応等を行います。空き家の所有者には毎月賃料が支払われるため、JTIと借家契約を結ぶだけで家賃収入を得ることが可能です。
1人目の入居者が決定した後は、空室の状態でも規定の賃料が契約終了時まで支払われ続けます。ただし、所有者の年齢や空き家の状態等さまざまな条件が設けられている点には注意しましょう。
4.空き家の情報を「セーフティネット住宅」に登録する
「セーフティネット住宅」とは、高齢者・障がい者・子育て世帯など住宅の確保に配慮が必要な人の入居を拒まない賃貸住宅です。一定の耐震性があることや、住宅の床面積が原則25平米以上であること等の条件を満たす物件であれば、セーフティネット住宅に登録できます。
空き家をセーフティネット住宅にするにあたってリフォームが必要なときは、専用の補助金制度の利用が可能です。入居者についても、法令主旨に則った範囲内であれば持ち主が自由に決められます。
一方、要配慮者の入居を拒まない物件として扱われるため、家賃に制限がある点は留意しましょう。家賃収入を目的とする場合は、収支を計算したうえで登録することをおすすめします。
5.サブスク住宅にする
サブスク住宅とは、毎月一定の金額を支払うと1ヶ月間はその物件に好きなだけ住めるサービスのことです。一般的な賃貸契約とは異なり手続きが簡単で、敷金・礼金といった初期費用、契約を延長する際にかかる更新料などを支払わなくて済むのが特徴です。契約の手間を気にすることなく好きな場所に住めるため、近年少しずつ人気が上昇しています。
空き家をサブスク住宅にする際は、ADDressのようなサブスク住宅サービスに登録するか、個人的に運営するかのいずれかになる場合がほとんどです。サブスク住宅サービスに登録する際は一定の条件が設けられているので、必要に応じてリフォームしたうえで審査に臨みましょう。
6.一度更地にして新しく賃貸物件を建てる
賃貸物件として貸し出したり、売却したりするのが難しい場合は、一度空き家を取り壊して新しい賃貸物件を建てるのも良いかもしれません。新しく建物を建設することで、中古ではなく新築として入居者を募集できます。新しい家は内装がきれいで設備も良いものが多いため、入居希望者が多く集まることが期待できます。
ただし空き家を取り壊して更地に戻し、その後に建物を建てるため、それなりの費用がかかる点には注意が必要です。物件の資産価値や毎月の家賃収入と、工事費や管理維持費を照らし合わせながら計画を練ることが求められます。
7.空き家を取り壊して駐車場にする
初期費用をなるべくかけずに収益化を目指す場合は、空き家を取り壊して駐車場として使うのもひとつの方法です。古くなった建物が倒壊するリスクを避けられるため、空き家に関する心配をひとつ払拭できるのがメリット。工事費や管理維持費も新築物件の建設ほどはかからないため、少額の投資で始められます。
ただし賃貸物件の運営と比べると収益性が劣り、なかなか納得できる収益を得られない可能性はあります。立地が悪く駐車場の需要が見込めない場所だと、ランニングコストすら賄えないケースもあるため、綿密な計画を立てたうえで空き家を駐車場にしましょう。
空家措置法の改正を理解し顧客に適切な案内を行おう
空家措置法の改正により、空き家の活用の幅が広がり、適切な管理がよりいっそう求められます。危険な空き家は代執行がよりスムーズにできるため、空き家の除去も以前より急速に進むはずです。
不動産会社では顧客に対し、空家措置法の改正による影響を解説した方が良い場面も増えることが予想されます。法改正の内容をしっかり理解し、顧客へ適切に案内できるよう心掛けましょう。
不動産に関するご相談は「全日本不動産協会」へ
「全日本不動産協会」は、中小規模の不動産会社で構成されている公益社団法人です。法人のマークにウサギが描かれていることから、「ウサギ」「ウサギマーク」の愛称で親しまれています。
「全日本不動産協会」では、不動産会社を経営している方・不動産業に携わっている方に向けた相談窓口を設けております。不動産実務をはじめ、不動産業に関わることなら何でも相談可能です。
地方本部でも、会員の方からの相談に定期または不定期にて応じております。不動産会社の経営に関する相談は「全日本不動産協会」にお声がけください。
カテゴリー
人気記事
-
省エネ基準適合が住宅ローン減税の利用条件に!令和6年以降の【変更点】を解説
2024年02月19日
-
【必読】不動産業の開業前に読んでおきたい!一人起業のトリセツ
2023年06月01日
-
2023年05月02日
-
2023年05月02日
-
不動産業の開業に必要な資格とおすすめ資格8選!資格要らずの事業も紹介
2024年05月02日