「耐震」とは|不動産営業がおさえたいポイント
2026年07月31日
地震が多い日本において、建物の耐震性は不動産選びの重要な判断基準です。
購入者や入居者が安心して暮らせるかどうかに直結するため、不動産営業においても正しく理解しておくことが欠かせません。
本記事では、営業の現場で役立つ「耐震」の基本知識と、提案に生かせるポイントをわかりやすく解説します。
「耐震」の知識が不動産営業にとって重要な理由

空き家・築古物件の取引増加
2024年7月1日施行の低廉な空家等の売買取引における報酬規定の改正により、売買価格800万円以下の物件に対する仲介手数料の上限が引き上げられました。
宅建業者は売主・買主の双方からそれぞれ最大33万円(税込)、合計66万円まで受領可能となり、この法改正を背景に、中古住宅の取引が活発化する見込みです。
しかし物件の中には、耐震基準を満たさないものもあります。耐震補強などをあわせて提案し、安全な取引を心がけましょう。
旧耐震基準で建てられた物件の取引に注意
耐震性を考慮しない物件提案は、契約後のトラブルにもつながります。こと地震リスクの高い日本において「安全性」は価格や立地と同様に重要なポイント。
一般財団法人日本建築防災協会の耐震支援ポータルサイトに、一般の方向けの耐震診断・耐震改修に関するパンフレットが多数紹介されています。
これらの資料をダウンロードし、提案時に活用してはいかがでしょう。

◆参考情報:
誰でもできる我が家の耐震診断|一般財団法人日本建築防災協会
不動産営業が知っておくべき耐震の種類と違い
耐震性能は建物の安全性を大きく左右するため、構造の違いを正しく理解することが重要です。ここでは、耐震・制振・免震の3つの構造の特長をわかりやすく解説します。
耐震構造・制振(制震)構造・免震構造の違い
耐震構造・制震構造・免震構造の違いを簡単に解説いたします。
| 耐震構造 | 制振(制震)構造 | 免震構造 | |
|---|---|---|---|
| 建物の加速度 | 加速度は、上階ほど大きい | 加速度は耐震構造と免震構造の間の値 | 免震装置で地盤からの揺れを伝わりにくくし、加速度は各階とも小さい |
| 地震エネルギーの吸収 | 構造を損傷させて、エネルギーを吸収 | 主に各層のダンパーでエネルギーを吸収 | 主にダンパーでエネルギーを吸収 |
| 構造躯体等の損傷 | 大地震時は、構造躯体等の損傷を許容せざるを得ない | 構造躯体等の損傷を少なくできる | 構造躯体等の損傷が少ない(免震層の変形は大きい) |
出典:賃貸不動産管理の知識と実務 令和7(2025)年度版(大成出版社)より引用
※2026年4月15日に「賃貸不動産管理の知識と実務令和8(2026)年度版」が発売されています。
- 耐震構造は建物自体を強く造り、地震の揺れに耐えられるよう設計。柱や壁で力を受け止め、倒壊を防止します。
- 制振(制震)構造は、建物内部にダンパーなどの装置を設置し、地震の揺れを吸収・緩和。建物の損傷をおさえ、繰り返しの揺れにも強いのが特長です。
- 免震構造は、建物と地盤の間に免震装置を設置し、地震の揺れを建物に直接伝えにくくする構造。揺れの影響を大幅に軽減でき、家具の転倒や建物の損傷も抑制できます。
「旧耐震基準」「新耐震基準」とは
「旧耐震基準」とは、1981年5月31日以前に適用されていた建築基準法に基づく耐震設計の基準です。
この基準では、震度5程度の中規模地震を想定しており、大規模地震に対しては十分な耐震性能を確保していません。
旧耐震基準で建てられた建物は、倒壊リスクが高いとされ、1981年6月1日以降に建設された「新耐震基準」の建物と大きな差があります。
現在では、旧耐震の建物に対して耐震診断や補強工事を行うケースも増加しています。国土交通省のPDF資料を活用し、顧客に説明できるよう知識を整理しましょう。
「耐震診断」の方法

出典:国土交通省資料
耐震診断には、建物の構造に関する設計図書が欠かせません。一般診断法では、設計図書と目視でおおよその耐震性能を判断します。
精密診断法は1次から3次までありますが、耐震補強が必要な民家では資料が残っていないことも。その場合は建築士に相談し、適切な対応を確認してください。
| 1次診断 | 2次診断 | 3次診断 |
|---|---|---|
| 柱と壁の量やバランスなどから建物の耐震性を評価 | 1次診断の内容に加え、柱と壁の強度・靭性を調べ、耐震性能を評価 | 2次診断の内容に加え、梁・基礎の強度や靭性を調べ、耐震性能を評価 |
建物の耐震性を判断するには、まず建築確認日を確認し、新耐震基準かどうかを確認します。
築年数に加え確認申請日・耐震等級の有無・過去に実施された耐震診断の結果も検討材料となります。
耐震性のチェック項目がわかりやすく説明された、下記の動画も参考にしてください。
◆参考情報:
我が家の耐震性チェック|総務省消防庁
旧耐震基準の建物は、専門家による耐震診断を推奨します。診断結果によっては、耐震補強や補助金の対象にもなります。
詳細は、物件のある自治体の公式サイトをご確認ください。参考までに、東京都の場合は下記のようなポータルサイトで情報を発信しています。

◆関連情報:
東京都耐震ポータルサイト
現場で使える|耐震性能を見抜くためのチェックポイント
耐震性を確認する際は、建物だけでなく立地や構造の細部に目を向けることが大切です。ここでは、現地調査で注意すべき具体的な確認ポイントを紹介します。
目視で注意すべき構造
物件調査時には、耐震性に関わる劣化や構造的なリスクの兆候を見逃さないことが重要です。
- 基礎のひび割れ
- 外壁や内壁の亀裂
- 柱や梁の傾き
- 接合部の腐食
- 屋根のずれ
などを目視で確認してください。
一見外観が問題なさそうでも内部構造に問題があることもあります。設計図書の有無や修繕履歴などを丁寧にヒアリングし、物件の状態を正確に把握するよう努めましょう。

◆参考情報:
木造住宅の地震後の安全チェック|一般財団法人日本建築防災協会
立地の状況を調査
用途地域の区分によって、ハザードマップでの指定状況や開発履歴にも一定の傾向があります。
埋立地や旧河川跡が多い地域では、安全に関する追加確認が必要となります。各自治体の出している液状化マップなどを活用し、立地の特性を把握しましょう。

出典:東京都建設局
顧客対応編|「耐震」の質問に自信を持って答えるために
耐震性について質問を受けたとき、正確な情報と誠実な対応が信頼構築の鍵となります。ここでは、具体的な説明例や提案のコツを紹介します。
数字で安心感を与える!耐震等級と性能表示の活用

耐震等級とは、建物の地震に対する強さを3段階で示した指標で、住宅性能表示制度に基づいて評価されます。
耐震等級は地震保険の割引や住宅ローン優遇の判断基準にもなります。下記の基準適合認定建築物である表示がされている場合は、その旨もご説明ください。

出典:国土交通省資料
「この物件は大丈夫ですか?」と聞かれたときの説明トーク例
参考までに、顧客から質問を受けたときのトークの一例を紹介します。即答できないときは、確認して折り返すなど誠実な対応を心がけましょう。
【新耐震基準に適合している場合】
「こちらの物件は1982年以降に建築確認を受けており、新耐震基準に則って設計されています。震度6強〜7の地震でも倒壊しない構造とされていますので、安心材料の一つになります。」
【旧耐震だが補強・診断済み】
「築年数は旧耐震基準の時代に該当しますが、耐震診断済みで補強工事も実施されています。診断結果の報告書もございますので、詳細をご確認いただけます。」
【旧耐震で補強の有無が未確認】
「旧耐震基準で建てられた物件ですので、耐震性が心配な場合は専門家による診断をご検討いただくことをおすすめしています。将来的な補強も視野に入れると安心です。」
【木造戸建てで耐震等級をPR】
「こちらの物件は耐震等級2を取得しています。これは、建築基準法の1.25倍の耐震性能があることを示すものです。耐震性を重視される方にもおすすめです。」
【マンションでの対応】
「このマンションは2000年以降に建築されており、構造上もしっかりしたRC造(鉄筋コンクリート造)です。新耐震基準に適合しており、大規模修繕時に耐震補強の検討もなされています。」
【必要に応じて専門家を紹介】
「現時点では耐震診断のデータがありませんが、ご希望であれば提携の建築士をご紹介し、診断を手配することも可能です。購入前の安心材料としてご活用ください。」
【お客様が強く不安を感じている場合】
「ご不安なお気持ち、よくわかります。耐震については築年・構造・補強履歴など総合的に判断する必要がありますので、資料をご覧いただきながら一つずつご説明いたしますね。」
不動産営業がおさえたい契約のポイント
契約時は建物の性能やリスクを正しく伝えることが重要です。ここでは、旧耐震基準物件の注意点や告知義務のポイントを整理します。
旧耐震基準の物件の「瑕疵担保」
構造上の欠陥(瑕疵)がある場合、売主や仲介した不動産会社が責任を問われる可能性があります。
トラブルを未然に防ぐためには、リスクの事前説明と誠実な対応が不可欠です。顧客が安心して購入を決断できるよう、建物の状態を正確に把握・開示しましょう。
耐震診断の実施状況や補強履歴の有無を確認し、重要事項説明書にも正確に記載することが重要です。
物件の性能を正確に伝える
雨漏り・シロアリ・腐食・傾きなどの瑕疵、過去の火災や浸水歴、心理的瑕疵(事故物件)などは告知義務となります。
旧耐震基準の建物であることや、耐震診断未実施といった情報も、重要事項説明に含めるべき内容です。
隠ぺいや説明不足はトラブルの元となるため、正確かつ丁寧に説明してください。
40種類以上の豊富な業務支援コンテンツのある全日本不動産協会のポータルサイトもぜひご活用ください。
◆関連情報:
全日本不動産協会|ラビーネット
+αの提案力|耐震性を強みに変えるには
耐震補強やリフォームは、安全性だけでなく資産価値の向上にもつながります。ここでは、耐震性を魅力として提案するための具体的なポイントを解説します。
耐震補強済み物件の魅力を伝える
耐震補強済みの場合、構造的なリスクが軽減されている点を強調してください。
補強内容や工事時期、診断結果の提示は説得力が増し、資産価値の維持にもつながります。
「築年数は古くても安心して暮らせる家」として提案することで、他物件との差別化を図ってみてはいかがでしょう。
補強工事の費用感・期間
工事の費用は、建物の規模や補強内容によって変動します。
壁の補強や金物設置のみなら比較的低コストで済みますが、基礎や屋根を含む大規模工事では500万円を超えることもあります。
工期は1〜2週間程度の軽微な補強から、1〜2カ月以上かかる大規模工事まで幅があります。
下記のような資料で概算を把握して知識をつけた上で、建築士や業者との会話で実践的な知識をつけていきましょう。

◆参考情報:
耐震改修工事費の目安|一般財団法人日本建築防災協会
「住宅ローン減税」や「自治体の補助金」も訴求ポイントに
補強済みや性能向上リフォームを施した住宅は、「住宅ローン減税」や自治体の補助金対象となる場合があり、購入者にとって大きな経済的メリットがあります。
一定の耐震基準を満たせばローン控除の適用期間が延長されるケースも。また、各自治体で補助金制度が用意されていることも多く、物件選びの判断材料として効果的に訴求できます。
耐震に関するポータルサイトで、補助金の情報をわかりやすく発信する自治体もあります。ぜひご確認ください。

◆参考情報:
東京都耐震ポータルサイト
FAQ|耐震に関するよくある質問
耐震性能は不動産取引において重要なポイントです。ここでは、営業現場で特によくいただく質問を厳選し、わかりやすく解説します。ご提案や顧客対応の参考にしてください。
Q.耐震診断は費用が高額になるのでしょうか?
A.診断の方法によって費用は大きく異なります。一般診断は数万円程度で実施可能ですが、精密診断では10万円以上かかることもあります。
自治体によっては補助金制度を設けている場合もありますので、事前に確認するのがおすすめです。
Q.耐震補強工事をすると資産価値は上がりますか?
A.耐震補強を行うことで、建物の安全性が向上するだけでなく、資産価値の維持・向上につながる場合があります。
特に新耐震基準相当の補強済みであれば、購入希望者にとって安心材料になりやすく、売却時の強みになります。
Q.旧耐震基準の物件でも住宅ローンは利用できますか?
A.旧耐震基準の物件でもローン利用は可能ですが、金融機関によっては耐震診断の実施や補強計画の提出を求められることがあります。
ローン審査が厳しくなる傾向があるため、事前相談が重要です。
Q.賃貸物件の場合、耐震診断や補強は貸主の義務ですか?
A.現行法では耐震診断・補強の実施は原則として義務ではありません。ただし、建物の安全性に問題があると判断された場合は、貸主に説明責任や対応義務が生じる可能性があります。
入居者からの要望や自治体の指導に応じて適切に対応しましょう。
Q.耐震等級はどこで確認できますか?
A.耐震等級は、設計図書や住宅性能評価書に記載されています。新築時に性能表示を取得していない場合は、耐震診断を行うことで現状の耐震性能を把握できます。
確認方法が不明な場合は、建築士や専門業者への相談をおすすめします。
不動産業開業は「全日本不動産協会」へご相談ください!
「全日本不動産協会」は、1952年10月に創立された公益社団法人です。
不動産に関するさまざまな事業を展開し、調査研究や政策の提言、会員を対象とした研修等を行っています。
全国すべての都道府県に本部をおき、2026年6月末の正会員数は38,318社と、年々増加しています。
宅建業の開業や不動産業界でのキャリアアップをお考えの方は、全日本不動産協会のサポートをぜひご活用ください。
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