第54回 全国不動産会議 石川県大会 開催レポート


第54回 全国不動産会議 石川県大会

伝統・文化・食 「本物への挑戦!」

来まっし、観まっし、食べまっし

 (公社)全日本不動産協会と(公社)不動産保証協会は、11月8日(木)、石川県立音楽堂にて第54回全国不動産会議石川県大会を開催。今大会は、「伝統・文化・食『本物への挑戦!』来まっし、観まっし、食べまっし」をテーマに、全国から会員ら約1,500人が参加しました。
 石川県中小企業団体中央会会長の山出保氏は、「伝統と文化のまちづくり」について記念講演を行い、『生涯活躍のまち』構想の現状と課題」をテーマにした調査研究発表では、地域における行政と不動産業の役割について意見交換が行われました。
 その後の交流会では、金沢素囃子や御陣乗太鼓などが披露され、会員同士の交流を深めました。

【開会式】

 第54回全国不動産会議石川県大会は、木ノ内諭全日・教育研修委員長の開会の挨拶によって幕が開きました。冒頭の挨拶では、田井仁石川県本部長が「平成27年に開業した北陸新幹線は好調な利用状況で、これは金沢を中心に伝統や文化、食に対し、本物への挑戦を地道に継続してきた結果と考えている。皆様には金沢の美しい自然、伝統文化に触れていただきたい」と歓迎の意を表しました。
 続いて、原嶋和利理事長が壇上に立ち、「人口減少、少子高齢化社会が進むなか、不動産業を取り巻く環境が大きく変化している。今後は、既存住宅市場の活性化など不動産業界が直面するさまざまな課題解決に向けて、行政と連携をはかりながらしっかりと取り組んでいきたい」と挨拶しました。

 

 また、安倍首相からは「内閣で取り組んでいる『人づくり改革』『働き方改革』『地方創生』『力強い経済』において、企業、人々が持てる力を発揮するための舞台となるのが不動産であり、住宅に他ならない。日本が持つ潜在力を引き出し、白うさぎのように躍動する社会に向けて活躍されることを祈念する」とメッセージが寄せられました。

 次に来賓代表として、石井啓一国土交通大臣代理の北村知久国土交通省大臣官房建設流通政策審議官、谷本正憲石川県知事、丸口邦雄金沢市副市長、衆議院議員の井上信治全日本不動産政策推進議員連盟事務局長の挨拶の後、祝電を披露。最後に田井石川県本部長から原嶋理事長を通して、次回開催県である高知県の清水正博本部長に大会旗が引き渡されました。

 

【記念講演】

伝統と文化のまちづくり <講師>山出保氏(石川県中小企業団体中央会会長/前金沢市長)

 金沢市に生まれ、金沢市長として5期20年在職した山出保氏が、金沢の伝統とまちづくりについて講演しました。まちづくりにおいて、新しく近代化する地域と、守っていく地域とを分けることの必要性や、エリア全体として町家や茶屋街などを残すことへの取組みなどについて説明。
 また、文化の保護・育成においては、「金沢には職人大学校があり、皆さんの力を借りて、町家の再生・活用を推進すべく文化的な価値を付加して、移住・定住を促していきたい」と話し、金沢の歴史や成り立ち、魅力を含めて紹介しました。

 

【調査研究発表】

「生涯活躍のまち」構想の現状と課題 ~地域における行政と不動産業の役割~

 コーディネーターに南泰裕氏、上記6名の方をパネリストに迎え、「生涯活躍のまち」構想の現状と課題について調査研究発表が行われました。
 最初に第一部基調報告として、南氏が「生涯活躍のまち」構想の背景(図表1)を示し、推進する上での具体的な施策や課題、行政と不動産会社との連携および協力の必要性を説明しました。その後、南氏の話を前提に、石浦裕治氏が金澤町家の保全と活用における市の取組みを紹介。金澤町家が1年に100棟ずつ壊されている現状を踏まえ、オーナーとユーザーをマッチングさせる金澤町家情報バンク(図表2)の開設と、市で改修費などを助成する「まちなか空き家活用促進補助金」「郊外部移住者空き家活用促進補助金」等について説明しました。
 さらに姥浦道生氏が、町家を改修した事例をもとに、「人口減少下の生涯活躍のまちと不動産業」について説明。これからのまちづくりには、高齢者がまちと積極的にかかわることが重要と強調し、「空き家の増加と市街地の空洞化の抑制には、既存の市街地に多様な魅力をつくることが求められ、そのためには、住民と行政、建築会社だけでなく、不動産会社の協力も必要である。地権者に積極的に働きかけ、まちと一体となって地域の価値向上につなげていくために、地権者の相談相手になって、ビジネスチャンスにしてほしい」と述べました。

 第二部のシンポジウムでは、高齢者問題をテーマに、山下慎一氏が金沢市の高齢化の状況を説明した上で、空き家などの既存施設を活用した福祉施設設置の必要性や、高橋正氏が高齢者事業、介護保険を活用して不動産事業につなげた事例を紹介。高橋氏から、既存ストックの活用時に建築確認申請や消防法・建築基準法を適合させる上で、今後の行政の対応についての質問に及ぶと、山下氏は「国の流れとして地域共生型社会を目指しているので、今後、各地域で複合施設が作られるチャンスがある」とし、各基準値が緩和され、柔軟な対応ができる時代の到来を示唆しました。石浦氏からは、空き家を福祉施設に転用する際の建築基準法改正の緩和点の説明があり、「来年の施行以降は、この改正をきっかけに、さらに空き家の転用が進むのではないか」と述べました。

 次に空き家問題をテーマに、石浦氏が金沢市の空き家数の推移(図表3)や、空き家改修等の支援制度、再生活用事例の紹介をしました。土村氏からは金沢の地域・産業振興の観点から、A(I 人工知能)などの技術革新を生かした価値創造拠点の整備や起業支援プロジェクトの説明があり、「各地域の魅力を考え、それをヒントにビジネスにつなげてほしい」という考えを述べました。
 続いて大島芳彦氏が、「空き家は地域活性化のための空間資源」をテーマに、空き家活用が地域福祉につながっていくことを説明しました。まちを1つの宿と見立て、宿泊施設と地域の日常をネットワークさせ、まちぐるみで宿泊客をもてなすことで地域価値を向上させていく「まちやど」の事例として、東京都豊島区を紹介。「民泊と違い、地域の方が参画できる場を設け、観光資源がなくても、地域の人とのコミュニケーションや日常生活を体験することに価値を見いだしていく」と、まちの既存資源を活用することの重要性を示しました。
 最後に南氏が「地域振興の観点において行政の立場から不動産会社に協力してほしい点はないか」と質問
すると、石浦氏が「金澤町家情報バンクの登録数が少ない状況なので、登録数を増やし、町家付きの土地の
売買の仲介などの相談に積極的にのっていただきたい。そして、今後の活躍を期待したい」と回答しました。

 

【閉会式】

 閉会式は、まず次回開催される高知県のPR映像の上映から始まりました。その後、清水正博高知県本部長が「高知県はカツオのたたきはもちろん、太平洋の海の幸、四国山地の山の幸など本場ならではのおいしいものがたくさんある。また四万十川や仁淀川などの美しい川や自然も皆様をお待ちしている。高知でぜひ、心の洗濯を。高知の水と空気と雰囲気がきっと皆様の心を洗濯してくれると思う」と坂本龍馬が姉の乙女に宛てた手紙のフレーズを引用し、「みんな待ちゅうきね(待ってます)」と土佐弁で呼びかけまし
た。

 最後に松永幸久全日・副理事長により大会宣言案を発表。その後、採択され、沢田光泰保証・教育研修委員長が閉会の挨拶をして、締めくくりました。

 

【交流会】

 交流会は「ホテル日航金沢」で行われ、オープニングアトラクションとして、金沢素囃子の演奏による「操り三番叟」の舞踊で参加者を出迎えました。
 最初に、大会開催に尽力した金本正吉石川県本部実行委員長が開会宣言をし、続いて原嶋和利理事長が「記念講演で金沢の歴史と文化に触れ、発表会ではまちづくり構想について学んでいただいた。石川県本部で準備された交流会で、存分に楽しんでいただきたい」と挨拶しました。
 続いて、来賓を代表して石川県議会議長作野広昭氏の挨拶後、中部・北陸地区協議会長の山田晶久氏が乾杯の音頭をとりました。

 会場では、なごやかに会員同士の歓談・交流が進むなか、輪島市名舟町に伝わる郷土芸能「御陣乗太鼓」が披露されました。太鼓がゆっくりと鳴り出し、徐々に速く、最後はダイナミックに髪を振り乱しながら響き渡るリズムは、心に深く残りました。
 最後に田井仁石川県本部長が閉会の辞を述べ、第54回全国不動産会議石川県大会が盛会にて終了しました。

※次回の第55回全国不動産会議高知県大会は、2019年10月3日となります。

 

 

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