広域交付制度ってどんな制度?概要・メリット・注意点などを詳しく解説


2026年10月21日

2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。義務化に伴い、相続手続きに関するルールも大きく変わります。ルールが変化するなかで、本記事のメインテーマである「広域交付制度」も新たに開始されました。

この制度をうまく活用すると、相続手続きをよりスムーズに進められるため、利用希望者が大幅に増加することが見込まれます。

そこで今回は、広域交付制度の概要や手続きの流れ、注意点などを解説します。相続に関連する業務に携わっている方や、広域交付制度についてその概要を確認したい方は、ぜひ最後までご覧ください。

相続登記の義務化と広域交付制度が始まる背景

相続登記の義務化と広域交付制度が始まった背景には、人口減少等により所有者不明の土地が増加した現状があります。義務化以前は相続登記の期限がなく、土地を相続したものの登記については後回しになったまま忘れられたり、そのまま放置されたりして、所有者不明の土地が発生しやすい状況でした。

しかし放置を続けた結果、有効活用できない土地が増える上、手入れができず景観も悪化するなど、問題が多発していました。そこで、2024年4月1日から相続登記を義務化することで所有者を明確にし、土地を無駄なく活用する方向へ法律を整備したのです。

相続登記を済ませる期限は、相続人が相続の開始があったことを知った日から3年以内です。起算日は相続開始日ではなく、相続人が所有権の相続を知った日と設定されています。

例えば、相続開始日が2020年1月31日、相続人が所有権の相続を知った日が2023年6月30日の場合、相続登記の期限は2026年6月30日となります。正当な理由があり3年以内での手続き完了が難しいときは、期限の延長が可能です。

とはいえ、相続登記は用意する書類の多さ、手続きの煩雑などの理由で、期限までに相続登記するのが難しいという課題がありました。

広域交付制度は、「戸籍の収集」を、従来よりスムーズに行うためにできたものです。この制度を利用すると、戸籍をまとめて取得することが可能になるため、手続きの負担を軽減し、相続登記を期限内に完了させやすくなります。

なぜ相続手続きに戸籍謄本の取得が必要なのか

戸籍謄本とは、戸籍に記載されている人たちの「出生事項」「婚姻事項」といった身分事項を証明する公的な書類です。相続手続きの際は、相続人が誰なのかを確定させたり、亡くなった方の不動産の名義を変更する相続登記のためなどに使用します。

相続登記の際は、亡くなった方の出生から死亡まですべての情報を用意しなければなりません。必要であれば、亡くなった本人だけでなく、配偶者や両親・祖父母の戸籍謄本を取得する場合もあります。

家族や親戚の記憶を頼りにすると認識のズレや、連絡を取っていない人も相続人に含まれる可能性があります。トラブルの発生を防ぎ、誰が相続人なのかを明確にするため、相続登記において戸籍謄本はとても重要な書類です。

今までの戸籍謄本取得の流れ

相続手続きで使用する戸籍謄本は、最後の本籍地で最新のものを取得します。本籍地と居住地が一致していれば役所の窓口などで受け取れますが、本籍地は長野県、居住地は東京都のように本籍地と居住地が異なる場合、今までは本籍地の役所へ専用の書類や定額小為替を郵送し戸籍謄本を取り寄せていました。

郵送では、戸籍謄本が本籍地の役所から送られるのに1週間以上かかるケースもよくあります。マイナンバーカードを持っている方はコンビニからでも即日で交付ができますが、端末操作の難しさなどが課題でした。

このように、相続登記に戸籍謄本は重要であるものの、実際に取得するためにかなりの手間と時間がかかってしまいます。

戸籍法の改正により「広域交付制度」がスタート!従来との変更点を解説

広域交付制度が開始する前は、本籍地と居住地が異なる場合、手続きを郵送で行う必要がありました。しかし広域交付制度のスタートにより、どの本籍地の戸籍謄本であっても、最寄りの役所で一括請求できるようになりました。

例えば居住地が東京都台東区、本籍地が福岡県福岡市博多区の場合、台東区役所の窓口から戸籍謄本を取り寄せることができます。広域交付制度を利用すると、申請した戸籍謄本は基本的にはすぐに交付されるため、従来のように返送されるのを待たずに済みます。

こうして、戸籍謄本取得の手間と時間を大幅に軽減することで、相続登記の義務化をスムーズに行えるようになりました。

広域交付制度で取得できる書類の種類を紹介

広域交付制度は、戸籍謄本以外にもいくつかの書類を最寄りの窓口から取り寄せられます。取り寄せの対象となる書類と、対象外のものを以下の表にまとめてみました。

広域交付制度の対象の書類
  • 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
  • 除籍謄本(除籍全部事項証明書)
  • 改製原戸籍謄本(改製原戸籍全部事項証明書)
広域交付制度の対象外の書類
  • 戸籍抄本(一部事項証明書・個人事項証明書)
  • 戸籍の附票
  • コンピューター化されていない戸籍

広域交付制度対象外の書類は、従来通り本籍地の役所へ郵送での申請を行う必要があります。広域交付制度を利用する前に、自分の必要としている書類が最寄りの役所で取り寄せ可能かどうか、確認するようにしましょう。

今後どのような形で相続手続きをするようになるのか?

広域交付制度の開始により、相続手続きにも変化が予想されます。

相続手続きを完了させるには

  • 戸籍謄本の取り寄せ
  • 相続人の明確化
  • 資産の分配

などの手順が必要です。

相続人のみの力で一連の手続きを完了するのは大変なため、従来はすべて専門家が担当するのが一般的でした。

しかし今後は、戸籍謄本の取り寄せは相続人本人が行い、それ以降の手続きは専門家が担当するという分担形式での相続手続きが可能となるでしょう。専門家も依頼主の戸籍謄本を取り寄せできますが、広域交付制度では代理人が申請することはできません。

専門家が戸籍謄本の取り寄せを代行する場合は、従来通り郵送での申請が条件であるため、作業に時間がかかってしまいます。依頼主自身が手順の一部を行うことで、相続手続きのスピードを早めることが出来ます。

広域交付とコンビニ交付の違いは何?

広域交付制度と似たものに、「コンビニ交付(制度)」というものがあります。コンビニ交付も広域交付と同様、戸籍謄本の取り寄せが可能です。両者の違いを、以下の表にまとめてみました。

広域交付 コンビニ交付
対象となる証明書 戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本 戸籍謄本、住民票の写し、印鑑登録証明書など
窓口対応 役所の職員と相談しながら証明書を取得 自分で端末を操作して証明書を取得
利用条件 特になし 本籍地での事前登録をしたうえで、マイナンバーカードを所有している
実施市区町村数 約1,900市区町村
※2025年3月21日時点の情報
1,378市区町村
※2025年4月15日時点の情報

広域交付では役所の職員に直接相談ができるため、端末の操作に不慣れな方でも利用しやすいのが魅力です。コンビニ交付は役所が開いていない日でも申請できるため、平日は時間の余裕がない方も書類を取得しやすいのがメリットです。申請する際の都合に合う方法を選び、必要書類を受け取るようにしましょう。

広域交付制度を利用するメリット

広域交付制度は、居住地から離れた場所にある本籍地の役所から、戸籍謄本をはじめとした証明書を取り寄せやすくする制度です。2024年3月1日に始まったばかりの新しい仕組みで利用者の声も少ないため、この制度を具体的にどのように使うか悩む場面もあるでしょう。

ここでは、広域交付制度を利用するメリットを整理して紹介します。

1.戸籍謄本一式を集めやすくなる

広域交付制度が始まるまでは、戸籍謄本を取り寄せるには本籍地まで申請書類・定額小為替・返送用封筒などを送付する必要がありました。それが広域交付制度の創出により、近くの役所で本籍地の戸籍謄本を入手できるようになりました。

相続手続きをする際、相続人を明らかにするためには5人前後の戸籍謄本が必要なケースも頻繁にあります。多い場合は10人以上の戸籍謄本が必要な場合もあり、従来の手続き方法では全員分の申請書類を用意できるまでに、かなりの時間と手間がかかっていました。

一方広域交付制度では、最寄りの役所の窓口から本籍地の戸籍謄本を入手できるため、役所の職員の指示に従って手続きをすれば、専門知識がない方でも戸籍謄本一式を簡単に集めることができます。

2.手続きを早く済ませられる

広域交付制度を利用すると(基本的には)戸籍謄本を数日以内に発行してもらえます。従来の手続きでは申請書類の準備から戸籍謄本を受け取るまで、約1週間以上かかっていたことを考えると、かなりのスピードアップになります。

戸籍謄本を揃える時間が短縮できるぶん、早いタイミングで相続手続きを次の段階へ進めることができます。

不動産業界における広域交付制度の利点

広域交付制度の開始により、不動産業界では相続した不動産を売買する際、契約手続きを早く進められるという利点が生まれます。従来は戸籍謄本が集まるまでの間に、お客様が他社に取られたり、お客様の意欲が低下したりと、売買契約成立にたどり着きにくい側面がありました。

広域交付制度をうまく活用すれば短い時間で戸籍謄本をすべて集め、契約に向けてすぐに動けるため、ビジネスチャンスを逃すリスクも回避できるでしょう。

お店に相談しに来たお客様の対応をする際は、広域交付制度の存在を伝えることで、手続きに関する心理的なハードルを下げることもできます。

広域交付制度を利用する際の注意点

広域交付制度はとても便利な仕組みですが、利用する際にはいくつか注意点があります。

せっかく便利な制度でも、かえって時間がかかってしまう可能性もありますので、制度の活用前に、以下の点を確認しておきましょう。

1.申請できる場所は窓口のみ

広域交付制度を利用して戸籍謄本などを取り寄せる手続きは、役所の窓口のみで行えます。申請書類を最寄りの役所に郵送したり、マイナンバーカードを持っているからとコンビニでの申請は行えないため、注意しましょう。

基本的に、申請できる日時は役所が開庁しているスケジュールと同じです。土日祝日は申請できないところもある点は留意しておきましょう。自治体によっては休日でも利用できる「証明書発行コーナー」を設けているところもあるため、一度お調べすることをおすすめします。

2.申請できるのは相続人本人のみ

広域交付制度を使用した戸籍謄本の取り寄せは、誰でもできるわけではありません。広域交付制度を使用できるのは、相続人本人のみである点にも注意しましょう。

代理人や、弁護士・司法書士・税理士といった専門家は広域交付制度を利用できません。戸籍謄本を取り寄せる際は、従来と同様に郵送で申請します。

3.取得できる戸籍謄本には制限がある

血のつながりがある家族とはいえ、広域交付制度で取得できる戸籍謄本には制限があります。広域交付制度で取得できる戸籍謄本としては、本人とその配偶者、本人の父母や祖父母などの直系尊属、本人から見た子どもや孫といった直系卑属が挙げられます。

本人の兄弟姉妹の戸籍謄本は、広域交付制度の対象外である点にも要注意です。もし本人の兄弟姉妹の戸籍謄本が必要な場合は、本籍地の市区町村へ「第三者請求」という形で、郵送で取り寄せを申請します。

4.一部の戸籍謄本は従来通りのままの可能性がある

2024年3月24日時点で日本には1,724の市区町村が存在しますが、すべての自治体が広域交付制度に対応できているわけではありません。情報のコンピューター化が完了しておらず、広域交付制度を使って申請を行った窓口まで、データを送れない場合があります。

取り寄せたい戸籍がコンピューター化されていない場合は、従来通り郵送で申請することになります。戸籍を取り寄せようと思っている自治体が広域交付制度に対応できているかは、役所の窓口等で確認できます。

戸籍の情報がコンピューター化されていないケースは、多くはありませんが念のため頭の隅に入れておきましょう。

広域交付制度の開始により相続手続きがスムーズにできるようになる

広域交付制度は、最寄りの役所の窓口から、本籍地の戸籍謄本を受け取れる仕組みです。従来のように書類や身分証明書のコピーなどを封筒に入れて郵送する手間が省けるのに加え、戸籍謄本を受け取るまでの時間を大幅に短縮できます。

役所の職員の説明を受けながら申請の手続きを進められるため、専門知識が少ない方でも利用することが可能です。

不動産会社では広域交付制度の存在をお客様に伝えることで、手続きに対する心理的なハードルを下げ、売買契約の成約まで繋げられるかもしれません。広域交付制度を上手に活用して、相続手続きをスムーズに対応していきます。

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