不動産売買契約書に貼る収入印紙とは|印紙税額と契約書作成時のポイント
2026年10月06日
印紙税とは、契約書や領収書といった「課税文書」にかかる税金です。不動産売買契約書もその対象となるため、取引を円滑に進めるには正しい知識が欠かせません。
実務では、契約内容や作成通数によって判断が分かれるケースも多々あります。本記事では、印紙税の基礎知識から税負担を抑える「軽減措置」、さらに印紙代が不要となる「電子契約」の対応まで分かりやすく解説します。
印紙税とは

国税庁によると、印紙税とは「日常の経済取引に伴って作成する契約書や金銭の受取書(領収書)などに課税される税金」です。課税の対象になるかは、文書の名称ではなく、内容や性質をもとに判断されます。
不動産売買契約書は、売買代金や当事者間の権利義務の成立を証明する文書として、基本的には印紙税法上の課税文書に該当します。ただし実際は、金額の記載の有無や、契約の成立を証する内容かどうか等によって課税・非課税の判断が分かれる場合があります。
また、印紙税は契約行為そのものではなく、作成された文書ごとに課される点も重要なポイントです。取り扱いを誤ると、後日の確認や対応が必要になることもあるため、十分にご注意ください。
不動産売買契約書に必要な印紙税額
印紙税の金額は、不動産売買契約書に記載された金額に応じて変動します。ここでは、不動産売買契約書に必要な印紙税額に加え、不動産売買契約書以外で印紙税が必要になる可能性がある書類についても紹介します。
参考:印紙税額の一覧表
国税庁に定められた印紙税額は以下の表のとおりです。不動産売買契約書を例に挙げると契約金額が4,000万円の場合、印紙税額は2万円(軽減措置適用後は1万円)となります。

※2026年10月時点の情報です。詳細は国税庁公式サイトでご確認ください。
※引用:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
不動産売買契約書以外で印紙税が必要になる書類
不動産売買においては、契約書以外にも、印紙税の課税対象となる可能性がある書類が存在します。
- 請負契約書:住宅の建設を依頼するとき等に作成する契約書
- 領収書:売買代金・手付金・中間金など金銭の受領を証明するもの
- 覚書:契約条件の変更や補足を目的に作成される文書
- 変更契約書:既存の契約内容を変更・修正・補充するための契約書
- 合意書:当事者間で合意した内容を文書化したもの
- 念書:一定の義務や支払約束等を一方が表明する文書
- 解除合意書・解約合意書:売買契約の解除や解約に合意したことを示す文書
常に印紙税が課されるわけではありませんが、記載金額が一定額以上の場合や、文書の内容によっては印紙税が必要となります。
印紙税が課される不動産売買契約書を作成するときのポイント

不動産売買契約書を作成するときは、印紙税の取り扱いを事前に整理しておくことが大切です。
売主・買主のどちらが印紙代を負担するか
印紙税の納税義務は、基本的には課税対象になる文書を作成した人に生じます。ただし、実際に不動産の売買契約を締結する際には、売主と買主のどちらが負担するかを、当事者間の合意によって決めるのが一般的です。
多くの場合、契約書を1通ずつ作成し、売主・買主が保管する契約書に貼付する印紙代を、各自が負担する形が採られています。契約書内の特約で、「売主が全額負担する」のように負担割合を自由に決めることも可能です。
収入印紙を貼付する位置
「収入印紙」とは、印紙税を納付したことを証明するために使用される証票です。不動産売買契約書に印紙税が課される場合は、収入印紙を課税文書に貼付し、印章もしくは署名で消印をします。署名の場合は、消せないペン(油性ボールペン等)で記入する必要があります。
収入印紙を貼り付ける位置は、不動産売買契約書の原本の表紙や署名欄付近といった文書の余白部分です。貼付位置について明確な指定はありませんが、契約内容を隠さない場所への貼付が必須です。
不動産売買契約書を複数作成するときの対応
不動産売買契約書を売主用・買主用として複数作成する場合、それぞれの契約書が印紙税の課税対象になるかを個別に確認する必要があります。原則として、契約当事者がそれぞれ保管する原本には、各自が収入印紙を貼付します。
一方、写しや控えとして作成される文書は、課税文書に該当しない場合があります。原本と写しの区別を明確にし、どの文書が課税対象となるかを整理して対応しましょう。
消印の方法と実務上の注意点
収入印紙を契約書に貼り付けた後は、消印を行い、使用済みであるとわかるようにします。収入印紙の消印は、原則として課税文書の作成者である売主または買主が行います。
印章や署名は、収入印紙と契約書の両方にかかるように押印または記入する必要があります。
正しく消印が行われていない場合、印紙税の納付が適正に行われていないと判断される可能性があります。不動産会社の従業員も、適切に消印ができているか確認するようにしましょう。
不動産売買契約書にかかる印紙税の軽減措置
国税庁によると、以下の条件をすべて満たす場合、不動産売買契約にかかる印紙税の軽減措置を受けられます。
- 対象となる契約書は不動産の譲渡に関する契約書のうち、記載金額が10万円を超えるもの
- 作成期間は平成26年4月1日から令和9年3月31日
上記の条件を満たす場合、土地・建物の売買の当初に作成される契約書、売買金額の変更等の際に作成される変更契約書や補充契約書等も軽減措置の対象になります。
軽減前と軽減後の印紙税額の違いは、以下の表のとおりです。

※2026年10月時点の情報です。詳しくは国税庁公式サイトをご確認ください。
電子契約における不動産売買契約書と印紙税
近年はDX化により、不動産売買契約書を電子契約で作成するケースが増加しつつあります。電子契約の場合、印紙税はどのように取り扱われるのでしょうか?ここでは、電子契約における不動産売買契約書と印紙税の関係について解説します。
電子契約は印紙税の課税対象外とされている理由
印紙税とは、印紙税法において「課税文書」とされる文書を作成したときに課される税金です。2026年9月30日時点では、電子契約によって作成される契約書は、紙の文書として作成・交付されるものではないため、印紙税法上の課税文書には該当しないとされています。
そのため、電子契約のみで締結された不動産売買契約書は、原則として印紙税の課税対象外です。ただし、この取り扱いは現行法令に基づきます。制度の変更や最新の法令・通達の動向を定期的に確認しましょう。
紙契約と電子契約が混在する場合の対応
不動産売買では、契約の一部を電子契約で行い、別途紙の契約書や関連書類を作成するなど、紙契約と電子契約が混在するケースも見られます。この場合、それぞれの文書について印紙税の課税対象になるかを個別に判断する必要があります。
基本的に電子契約は課税対象外とされていますが、紙で作成された契約書や覚書などは、内容に応じて印紙税が必要になることもあります。電子・紙の区別を明確にして、どの文書が課税文書に該当するのかを整理しながらご対応ください。
印紙税の未納・誤納が生じたときの対処法

不動産売買契約書を作成する際に、印紙税の取り扱いに誤りがあった場合は、状況に応じた適切な対応が求められます。ここでは、印紙税の未納・誤納が発生したときの対処法を解説します。
収入印紙を貼らなかった場合
不動産売買契約書に収入印紙を貼り忘れても、契約そのものの効力が失われるわけではありません。
しかし、印紙税を納めていない状態には変わりないため、後日、税務署から厳しく指摘される恐れがあります。もし貼り忘れに気づいたら、放置せず、速やかに所轄の税務署へ相談しましょう。
状況によっては、本来の印紙代に加え、ペナルティとして「過怠税」の納付が求められることもあるため、早めの対応が肝心です。
金額誤り・消印漏れが発覚した場合
収入印紙の金額間違いに気づいた際、まずは「消印」の有無を確認しましょう。
- 消印前の場合:印紙の再利用や、郵便局での交換(所定の手数料が必要)が可能です。
- 消印後の場合:すでに使用済みとみなされるため、郵便局での交換はできません。税務署で「還付手続き」を行いましょう。
また、見落としがちなのが「消印漏れ」です。印紙を貼っていても消印がなければ「再使用が可能」とみなされ、印紙税を納めていないと判断される恐れがあります。過怠税の対象にもなり得るため、気づいた時点で速やかに税務署へ相談することが大切です。
印紙税の納付が遅れた場合
印紙税の納付が遅れた場合は、過怠税が課されます。過怠税の金額は、「指摘を受けた場合」と「自主的に申告した場合」で異なり、それぞれ以下のとおりになります。
【過怠税の金額】
- 「税務調査などにより指摘を受けた場合」→ 通常の印紙税+2倍の額=「本来の3倍」
- 「自主的に未納税を申告した場合」→ 通常の印紙税×1.1倍
契約書作成時のチェック体制をきちんと整え、過怠税の発生を防げるようにしましょう。
不動産売買契約書と印紙税に関するQ&A
不動産売買契約書と印紙税に関するQ&Aを3つ紹介します。
契約内容を変更した時の覚書に印紙は必要ですか?
売買契約を締結した後に、売買代金や引渡時期などの契約内容を変更する場合、覚書を作成することがあります。覚書に印紙税が必要かどうかは、文書の名称ではなく、記載されている内容によって判断されます。
たとえば、金銭の授受や債務内容の変更など、契約上の重要な事項を証する内容であれば、課税文書に該当する可能性があります。一方、単なる事実確認や補足説明にとどまる内容の場合には、非課税と判断されるケースもあります。覚書の内容を個別に確認し、印紙税の要否を判断しましょう。
白紙解約・解除合意書の印紙税はどう扱いますか?
不動産売買契約を白紙解約とする場合や、契約解除について当事者間で合意した内容を書面にまとめる際には、解除合意書などが作成されます。解除合意書も、印紙税の要否は記載内容に基づいて判断されます。
解除したという事実のみを確認する内容であれば、課税文書に該当しないと整理されるのが一般的です。一方、違約金や解約金の支払いなど、金銭債務を証する記載がある場合には、課税対象となる可能性があります。
領収書を発行する場合、印紙税は必要ですか?
領収書は、金銭の受領を証明する文書であるため、記載された金額が一定額以上の場合、印紙税が課税されるのが一般的です。特に、売主が不動産会社の場合は、事業者による営業活動と見なされるため、印紙税が必要なケースが多く見られます。
領収書を発行するときは、記載金額や文書の位置づけを確認したうえで、適切に対応しましょう。
不動産売買契約書の印紙税を理解してトラブルを防ぐ!

不動産売買における印紙税は、契約内容や作成方法によって取り扱いが異なります。単に税額を知るだけでなく、「誰が負担するか」「正しい貼付・消印の方法は何か」まで含めて総合的に理解しておくことが重要です。
不動産実務を円滑に進めるためには、印紙税に関する以下の3点を網羅しておくことが重要です。
- 正確な判断:契約内容に応じた税額と負担区分の決定
- 確実な処理:正しい貼付と消印によるコンプライアンス遵守
- 迅速な対応:万が一の未納・誤納時における適切なリカバリー
こうした実務知識をアップデートし続けるには、信頼できる情報収集が欠かせません。全日本不動産協会発行の「月刊不動産」は、日々の業務に直結する専門知識を効率よく身につけることができるため、ぜひご活用ください。
宅建業開業のご相談は「全日本不動産協会」へ
「全日本不動産協会」は、1952年10月に創立された公益社団法人です。
不動産に関するさまざまな事業を展開し、調査研究や政策の提言、会員を対象とした研修等を行っています。
全国すべての都道府県に本部をおき、2026年8月末の正会員数は38,606社と、年々増加しています。
宅建業の開業や不動産業界でのキャリアアップをお考えの方は、全日本不動産協会のサポートをぜひご活用ください。
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