不動産賃貸業とは|収益の仕組みと売買・仲介業との違い


2026年10月06日

不動産賃貸業は、土地や建物などの不動産を第三者に貸し出し、継続的に賃料収入を得る事業形態です。毎月一定の収入が見込める点が特徴なので、安定した収入に惹かれ、興味を持つ方も多いでしょう。

一方で、不動産賃貸業の経営には、物件選定と出口戦略の検討が欠かせません。本記事では、不動産賃貸業を営むうえで押さえておきたいポイントや、直面しやすい課題などを解説します。

不動産賃貸業とは

不動産賃貸業とは、不動産を第三者に貸し出し、家賃収入を得る事業のことです。貸し出しの対象となる不動産は、アパート・マンション・オフィス・駐車場・倉庫など多岐に渡ります。

不労所得への憧れで注目される不動産賃貸業ですが、実際には経営者としての視点が求められます。物件選定や管理体制の構築に加え、将来の売却や承継を見据えた判断を含め、中長期的な視点で取り組むことが重要です。管理物件の数が多かったり、人手が不足したりしている場合は、入居者募集や管理業務などを業者へ委託してもいいでしょう。

公益財団法人不動産流通推進センターが公開している「2025不動産業統計集」によると、民営の借家数は年々増加しています。これは単身世帯の増加や、ライフスタイルの多様化に伴う賃貸需要の高まりが背景にあると考えられます。エリアによっては、ニーズに合った提案で安定経営を実現させるチャンスであるとも言えるでしょう。

不動産業の主な種類と不動産賃貸業との違い

不動産業には、不動産賃貸業以外にもさまざまな種類があります。ここでは、不動産賃貸業と他の不動産業の違いを簡潔に整理します。

不動産仲介業

不動産仲介業は、不動産の売買や賃貸借に携わる事業です。貸主・売主と借主・買主の間に立って契約成立をサポートし、仲介手数料を得るビジネスモデルになっています。主な業務は次のとおりです。

  • 物件の募集・広告
  • 内見対応
  • 条件交渉
  • 契約書作成の補助

不動産仲介業の収益は契約の都度発生し、継続的な管理や運営は基本的に業務範囲外なのが特徴です。一方、不動産賃貸業は契約後も物件を保有・運用し続け、家賃収入を得るのが一般的です。

不動産管理業

不動産管理業は、賃貸物件の管理・運営を専門的に担う事業形態です。物件のオーナーに代わり、以下のような日常的な実務を行います。

  • 入居者対応
  • 家賃回収
  • 建物や設備の点検・修繕
  • 退去時の原状回復対応

主な収入源は管理委託料で、賃貸経営を円滑に進めるためのサポート役としての性格が強いのが、不動産管理業の特徴です。不動産賃貸業が経営判断やリスクを負う主体であるのに対し、不動産管理業はあくまで運営面を支える立場にあるのが、不動産賃貸業との大きな違いとして挙げられます。

不動産開発業

不動産開発業は、以下のような業務を一体的に行い、新しい不動産価値を創り出す事業形態です。

  • 土地の取得
  • 企画
  • 設計
  • 建設
  • 販売

市場ニーズを踏まえた事業計画を立案し、プロジェクト単位で投資をすることでリターンを見込めます。開発後は分譲販売によって利益を確定させるケースが多く、収益回収は比較的短期〜中期的になるのが特徴です。

一方、不動産賃貸業は完成した不動産を長期的に保有し、運用を通じて安定的な収益を積み重ねていく事業であり、不動産開発業とは時間軸の考え方が大きく異なります。

不動産賃貸業で扱われる賃貸不動産の種類と特徴

不動産賃貸業では、アパートのような住居系からオフィス等の事務所系まで、さまざまな不動産が事業の対象になります。ここでは、不動産賃貸業で扱われる賃貸不動産の種類と特徴を紹介します。

居住用不動産

居住用不動産とは、アパートやマンション、戸建て住宅など、居住を目的とした賃貸物件です。賃貸不動産のなかでも市場規模が大きく、入居ニーズが比較的安定しているのが特徴です。

「単身者向け」や「ファミリー向け」のようにターゲット層を決めやすく、立地・間取り・賃料設定が需要に直結する傾向にあります。

退去時の原状回復・設備更新・空室対策・入居者対応など幅広い業務に携わるため、包括的な運営体制の構築が求められます。

事業用不動産

事業用不動産とは、オフィスビルや小規模事務所など、事業活動を行うための賃貸物件です。住居系と比べて賃料が高く、長期契約が結ばれるケースも多いため、安定収益につながりやすいのが特徴です。

一方で、景気動向や企業活動の影響を受けやすく、空室が発生した場合の損失が大きくなりやすい点には注意が必要です。設備仕様・セキュリティ・共用部の管理品質が重視されるケースも多く、物件の維持管理に一定のコストと専門性が求められます。

商業用不動産

商業用不動産とは、店舗や商業施設など、来店型ビジネスを前提とした賃貸物件です。立地・人通り・周辺環境が収益に大きく影響し、条件が合えば高い賃料設定も目指せます。

一方で、テナントの業種や経営状況に左右されやすく、退去リスクや賃料変動の幅が大きいのが難点です。契約内容も個別性が高く、内装工事や原状回復の取り決めなど、十分に検討・調整することが求められます。

不動産賃貸業のビジネスモデルと収益構造

不動産賃貸業のビジネスモデルは、物件を保有・運用し、家賃収入を継続的に得る「ストック型」の収益構造が基本です。売買や仲介のように契約ごとに収益が発生する事業とは異なり、契約後も長期にわたって運営が続く点が特徴です。

ただし、家賃収入の全額が利益になるわけではありません。以下のようなコストが継続的に発生するため、空室期間が長引けば収益に大きな影響を与えます。

  • 管理委託費
  • 修繕費
  • 固定資産税
  • 保険料

築年数の経過に伴い、設備更新や大規模修繕の必要性が高まるため、中長期的な資金計画を前提とした運営が求められます。物件単体の収益性だけでなく、自社が保有する物件全体でのバランスや将来の売却・承継を考慮しながら、事業を営むことが大切です。

不動産賃貸業における物件選定

2025不動産業統計集|公益財団法人不動産流通推進センター

公益財団法人不動産流通推進センターの「2025不動産業統計集」によると、令和5年時点の住宅賃貸の民営借家は1,568万戸です。選択肢はとても豊富にあるように感じますが、すべての物件が不動産賃貸業に適しているとは限りません。

ここでは、不動産賃貸業における物件選定の考え方を解説します。

需要があるエリアの物件を選定

物件選定において重要なのが、賃貸需要が見込めるエリアを見極めることです。駅からの距離や物件周辺の生活インフラなどは、入居者の意思決定に大きく影響します。

競合物件の供給状況や賃料相場を把握することで、過度な価格競争に巻き込まれるリスクを避けることも可能に。人気エリアという要素だけでなく、自社が想定する運営方針や物件規模と合致しているかの確認が求められます。

将来的な人口動態や開発計画を確認

不動産賃貸業は、中長期的に物件を貸し出すことを前提とするケースが多いため、現在の状況だけでなく、将来の変化を見据えた判断が重要です。人口の増減や世帯構成の変化は、賃貸需要に大きな影響を与えます。

また、再開発計画やインフラ整備の有無によって、エリアの評価が大きく変わることもあります。人口動態や開発計画を確認することで、将来的に空室が発生したり、賃料が下落したりするリスク対策につながります。短期的な数字にとらわれず、時間軸を意識した物件選定を心掛けましょう。

入居者のニーズに合う物件を探す

物件を選ぶときは、想定する入居者を明確にすることも重要です。「単身者向け」「ファミリー向け」「事業利用」など、ターゲットによって求められる立地や間取り、設備は異なります。

入居者のニーズと物件の特性が一致していないと、賃料の再調整や空室期間の長期化につながる可能性があります。取り扱える物件の選択肢が多い不動産賃貸業だからこそ、自身の運営方針に合う物件を選び、無理のない形で継続的に運用できるかを見極めましょう。

不動産賃貸業における個人・法人それぞれのメリット・デメリット

不動産賃貸業は、個人として行うか、法人として行うかによって、経営判断やリスクの捉え方が異なります。それぞれの立場の特徴を理解したうえで、自身の状況に合った形を選択することが大切です。

個人として不動産賃貸業を行う場合

個人として不動産賃貸業を行う場合、比較的少ない手続きで始めやすく、柔軟な運営がしやすいのが特徴です。副業や兼業として取り組むケースも多く、保有する物件規模や収益に応じて段階的に拡大できます。

ただし、収益が増えるにつれて税金の負担や管理の手間が大きくなる可能性があり、将来的な承継や売却を見据えた整理が難しくなることもあります。短期的なメリットだけでなく、中長期的な運営や出口戦略まで含めて考える姿勢が求められます。

法人として不動産賃貸業を行う場合

法人として不動産賃貸業を行う場合、事業としての位置づけが明確になり、資金調達や対外的な信用面で有利に働くことがあります。また、役員報酬や経費処理など、運営の幅が広がるのも特徴です。

ただし、維持コストや事務負担が増えるため、法人として不動産賃貸業を営むには一定の規模や収益が前提になります。法人化は目的ではなく手段であり、将来の展開を踏まえたうえで検討することが大切です。

不動産賃貸業の実務・経営で直面しやすい課題

不動産賃貸業は安定収益が期待できる一方、運営を続けるなかでさまざまな課題に直面します。実務と経営の両面から課題を把握し、事前に備えておきましょう。

空室や賃料の下落

不動産賃貸業において、空室や賃料下落は避けて通れない課題のひとつです。人口動態の変化や競合物件の増加、物件の築年数の経過などにより、従来と同じ条件での募集が難しくなるケースは少なくありません。

空室期間が長引けば収益に直接影響し、想定していた資金計画が崩れる可能性もあります。定期的に賃料相場の確認や物件の競争力を維持するための改善策を検討し、状況に応じ対応しましょう。

管理・運営の負担

日常的な管理・運営業務が、想像以上に負担になることがあります。不動産賃貸業では、以下のような細かい業務が途切れることなく発生します。

  • 入居者対応
  • 家賃管理
  • 設備の不具合への対応
  • 修繕計画の調整

物件数が増えるほど管理の手間も増加し、個人や少人数での対応に限界を感じるかもしれません。本来の業務や中核業務に十分な時間を割けなくなる可能性もあるため、必要に応じて運営体制の見直しや外部への委託を検討しましょう。

出口戦略の検討

不動産賃貸業を長く続けるには、出口戦略を早い段階から意識することが大切です。売却や事業承継、法人化の検討など、出口戦略の選択肢は一つではありません。事前準備がないまま判断を迫られると、不利な条件での対応を余儀なくされることもあります。

物件の価値や市場環境は時間とともに変化するため、現状の運営だけでなく、将来どのような形で賃貸業と向き合うのかを整理しておくことが、安定した経営につながります。

不動産賃貸業に関するQ&A

ここでは、不動産賃貸業に関するよくある質問にお答えします。

不動産賃貸業は副業や兼業でも問題ないですか?

不動産賃貸業は、副業や兼業として行うこと自体に大きな制限はありません。ただし、物件数が増えたり、トラブルが発生したりすると、物件管理や入居者対応が負担に感じやすくなるでしょう。

また、収益規模によっては税務や管理の面で対応が複雑になることもあります。副業として始める場合でも、将来的な負担を見据えたうえで判断することが大切です。

不動産賃貸業には宅地建物取引業免許・宅建士が必要ですか?

自らが所有する不動産を賃貸する場合、原則として宅地建物取引業免許や宅建士の設置は必要ありません。宅地建物取引業免許は、他人の不動産を反復継続して売買・賃貸の仲介を行う場合に求められるものであり、不動産賃貸業は該当しません。

ただし、賃貸借契約における重要事項の説明は、宅地建物取引士が行う必要があります。契約手続きに不安がある場合は、不動産会社や専門家にあらかじめ相談したうえで対応しましょう。

不動産賃貸業の範囲は?

不動産賃貸業の範囲は、土地や建物を第三者に貸し出し、その対価として賃料を得る行為全般を指します。住居用だけでなく、事務所や店舗、倉庫なども対象に含まれます。

規模や形態によって扱いが異なる場合もありますが、継続的に賃貸収入を得る活動であれば、不動産賃貸業と見なされるのが一般的です。

不動産賃貸業は中長期的な視点が大切

不動産賃貸業は、物件を貸して収益を得るというシンプルな構造でありながら、実務や経営の視点では多くの判断が求められます。物件の種類や立地、運営体制、将来の方向性などを整理して考えることで、不動産賃貸業の全体像がより明確になるでしょう。

物件選定のポイントを押さえ、中長期的な目線で判断することで、安定した経営を実現しやすくなります。物件の現状や、周辺環境の将来的な変化などを総合的に捉える視点が重要となります。

地域の情報収集には、人的ネットワークの活用も有効な手段です。宅建業の開業や不動産業界でのキャリアアップをお考えの方は、全国すべての都道府県に本部をおく全日本不動産協会へぜひご相談ください。

宅建業開業のご相談は「全日本不動産協会」へ

「全日本不動産協会」は、1952年10月に創立された公益社団法人です。

不動産に関するさまざまな事業を展開し、調査研究や政策の提言、会員を対象とした研修等を行っています。

全国すべての都道府県に本部をおき、2026年8月末の正会員数は38,606社と、年々増加しています。

宅建業の開業や不動産業界でのキャリアアップをお考えの方は、全日本不動産協会のサポートをぜひご活用ください。

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