賃貸管理ビジネス

月刊不動産2024年3月号掲載

管理受託のセールスファネルと顧客関係管理(CRM)の真の価値〈後編〉

今井 基次(みらいずコンサルティング株式会社 代表取締役)


Q

 当社は創業5年で、賃貸仲介業を中心に事業を展開してきましたが、最近、オーナー様から管理の依頼をいただくようになりました。そこで、管理業を行うにあたり、効率的にオーナーを集客する方法について、アドバイスや戦略を教えてください。
※相談内容の詳細は〈前編〉をご覧ください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • はじめに

     前回は、セールスファネルの目的である「管理受託」を進めるためのフローと戦略について説明しました。管理受託までの集客の目的と、リードタイムの活用をどのように進めれば顧客をファネル(漏斗)に囲い込んでいけるのかを、ご理解いただけたと思います。
     セールスファネルを通じて顧客が効率よく流れるようになり、管理受託が進み始めたら、次の課題は、顧客関係管理(CRM)をどのように進めて、オーナーの資産管理を行っていくのかがポイントとなります。ただ管理受託を進めるだけでは「人員ばかり増えて頑張っている割に儲からない」という状態になってしまうのです。

  • 賃貸管理は「経営コンサルティング」という意識を持つ

     通常、不動産オーナーは「資産家」であり、いわゆる高属性の顧客であることが一般的です。全く資産を持たずに、不動産を購入することはできませんし、サラリーマンから不動産投資を始めるにしても、それなりの自己資金を必要とするためです。このような資産家と日常的に触れ合うことができるのは、異業種からすれば喉から手が出るくらい、大きなビジネスチャンスを保有していると捉えられるでしょう。しかし賃貸管理は業務の幅が広く、限られた人員で日常業務をこなすことに精一杯になるため、優先順位をうまくつけなければ、CRMがおろそかになりやすいのです。新規の管理受託拡大はもちろん重要ですが、そればかりに目を向けるばかりに、既存顧客の掘り起こしが後手になってしまうこともよくあります。その結果、派生する生産性の高い活動がおろそかになってしまい、いつの間にかオーナーとの関係が業務上の薄いつながりとなり「管理会社は管理することだけが仕事だ」と思われてしまうのです。「管理会社は下請けではない」という明確なポリシーをもち、オーナーにとって最適な経営コンサルティングを行うというミッションを常に持たなければ、いくらチャンスが目の前にあっても、ビジネスには発展しません。

  • オーナーとの接触時間を確保できているか

     先にも述べたように、既存オーナーと時間を共有し、提案の時間を取らなければ、高い生産性を確保することはできません。しかし、残念ながら管理業務の優先順位は全く逆のことをしなければなりません。入居者からのクレーム対応や緊急対応が最優先となり、期限が決まっていてミスが許されない出納業務に時間をとられ、日夜の現場対応や事務作業に追われてしまうのが現実でしょう(図表1)。まだ組織化まで至らない管理戸数で、人数が少ないほどその傾向が大きいのではないでしょうか。このような状況を打破するためには、先行投資にはなってしまうが、オーナーと接点を持ち案件を獲得する「提案専門スタッフ」の工数を確保する必要があります。つまり、ポイントゲッターを確保することです。
     オーナーからの大きな案件は、何気ない日常会話や、会食の場での「ちょっと相談なんだけどね…」とか、「前から話そうと思っていたんだけど、実はね…」という一言から発展します。このような対話は、日常業務からは発生しにくいのが現実であるため、余剰人員の確保か会社のトップが動く必要が出てくるのです。

  • 相続資産設計、売買仲介受託はファネルの終着点

     地主系のオーナーは特に、相続に関する問題を抱えています。先祖代々の土地を保有してきたところで、何も対策をしなければ国に資産を持っていかれてしまうことになってしまいます。不動産は、他の金融資産と違い、相続資産設計をしっかりやっていれば、節税もしやすいのが特徴です。しかし、相続に関する問題は、資産税に強い税理士でない限り、なかなか答えることが難しいため、オーナーは誰に相談していいのかわからないというのが現実です。
     このとき、ある程度の相続の知識があり、オーナーとの距離感がしっかりと埋まっていれば、最初の一歩である相談を管理会社で受けることができます。これにより、相続資産設計を起点に、建築プロデュースや土地の売買、物件の売買など派生的に管理会社がビジネス展開をできることになるのです。本来であれば管理業務と、当該物件の売買専任受託は、障子一枚を隔てる程度の近さにあります。しかし、管理会社が提案の姿勢を持っていないと、いつの間にか他社で専任媒介をとられ、挙句の果てに管理まで他社に移行することになってしまいます。
     これでは、これまで一体何のために、オーナーの物件を一生懸命満室にしてきたのかわかりません。そうならないためにも、最低でも月一(理想はそれ以上)で顔を合わせて、情報発信をする姿勢を持っていれば、このような事態はある程度未然に防ぐことができるはずです。相続や売買から管理へのサイクルを上手に作ることで、高収益モデルを維持しやすくなるでしょう。
     管理業務は、日常的にさまざまな業務でのやり取りが生じますが、これをチャンスと捉えるか業務と捉えるかが大きな分岐点となります。セールスファネルを意識して、既存オーナーを掘り起こし、さらなる高収益モデルを作っていきましょう(図表2)

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