労務相談

月刊不動産2024年4月号掲載

年5日の年次有給休暇の取得が義務付けられています

代表社員 野田 好伸(特定社会保険労務士)(社会保険労務士法人 大野事務所)


Q

 年次有給休暇の付与年度(取得期間)の途中で育児休業を取得する社員がいますが、この社員にも年5日の年次有給休暇を取得させる必要があるのでしょうか。休業年度は勤務期間に応じた日数を付与すればよいなどの特例措置があれば教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 回答

     取得期間の途中で育児休業を取得する社員についても、年5日の年次有給休暇を取得してもらう必要があります。同様に、取得期間の途中で私傷病休職、介護休業、退職する人なども年5日の取得義務の対象となります。

  • 年5日の取得義務

     2019年4月より、年5日の年次有給休暇(以下「年休」)を労働者に取得させることが使用者の義務となっています。年10日以上の日数を付与される労働者が取得義務の対象となりますが、取得要件を満たしている場合は一般の正社員に限らず、管理監督者(管理職社員)やパート・アルバイト(非正規社員)等も取得義務の対象となります。

  • 会社の時季指定と意見聴取

     使用者は、年休を付与した日(以下「基準日」)から1年以内(以下「取得期間」)に5日の年休を取得させる必要がありますが、当該5日については時季を指定して取得させることができます。ただし、時季指定に際しては、労働者の意見を聴取する必要(義務)があり、またできる限り労働者の希望に沿えるよう、徴取した意見を尊重するよう努めること(努力義務)とされています。よって、繁忙期等の集中的な取得を避けたいのであれば、労使間で協議のうえ、計画的に取得日を決定しておくとよいでしょう。なお、すでに5日以上年休を指定・取得している労働者に対して時季を指定することはできません。

  • 就業規則への規定の記載

     休暇に関する事項は就業規則の絶対的記載事項であるため、使用者による時季指定を行う場合には、時季指定の対象となる労働者の範囲や時季指定の方法等について、就業規則に記載しなければなりません。

     

    【規定例(厚生労働省モデル)】

    第〇条(年次有給休暇)
    1項~2項(省略)
    3 第1項又は第2項の年次有給休暇は、労働者があらかじめ請求する時季に取得させる。ただし、労働者が請求した時季に年次有給休暇を取得させることが事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季に取得させることがある。
    4 前項の規定にかかわらず、労働者代表との書面による協定により、各労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日を超える部分について、あらかじめ時季を指定して取得させることがある。
    5 第1項又は第2項の年次有給休暇が10日以上与えられた労働者に対しては、第3項の規定にかかわらず、付与日から1年以内に、当該労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日について、会社が労働者の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。ただし、労働者が第3項又は第4項の規定による年次有給休暇を取得した場合においては、当該取得した日数分を5日から控除するものとする。

  • 年休管理簿の作成

     使用者は、労働者ごとに①取得時季、②取得日数および③基準日の3点を記録した年休管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません(図表1)。なお、年休管理簿を労働者名簿や賃金台帳と合わせて調製してもよく、また、必要な時にいつでも出力できる状況にあれば、システム上で管理してもよいとされています。

    図表1 年休管理簿サンプル

  • 一斉付与における取得日数

     全社的に基準日を合わせるため、入社2年目以降の社員への付与日を統一するなど、入社年と翌年以降とで年休付与日が異なる場合(取得期間が重複する場合)がありますが、その場合も原則として、それぞれの基準日から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させる必要があります。ただし、管理を簡便にするため、図表2のように2019/10/1(1年目の基準日)から2021/3/31(2年目の基準日から1年後)までの期間(18カ月間)に、7.5日(18カ月÷12カ月×5日)以上の年休を取得させること(比例按分)が認められています。
     なお、契約社員から正社員に転換することがありますが、雇用形態の変更により基準日が従来の基準日よりも前倒しになるような場合も取得期間が重複しますので、同様に比例按分などでの対応が求められます。

    図表2 年次有給休暇の付与および取得例

  • 本問への回答

     取得期間中の休職者、復職者および退職者についても、例外なく、年5日の年休を取得してもらう必要があります。取得期間中の実勤務期間が6カ月であることから、2.5日以上(5日の半分以上)を取得させればよいといった比例按分は認められていないのでご注意ください。なお、基準日以前から休職しており取得期間中に一度も勤務していない場合や、復職後の勤務期間が5日に満たない場合など、年休の5日取得が不可能な場合には取得できなくても問題ありません。

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