法律相談

月刊不動産2009年11月号掲載

2項道路

弁護士 渡辺 晋(山下・渡辺法律事務所)


Q

2項道路とは何でしょうか。接道に関する調査説明にあたって、どのような点に注意しなければならないでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1. 2項道路とは、建築基準法42条2項に定められる道路を指し示します。2項道路に関する事項は、宅建業者として、購入希望者に対して提供すべき重要な情報ですので、重要事項説明及び広告の局面における情報提供のルールを遵守しなければなりません。

    2. 建物建築における接道条件の原則

     さて、建物は、原則として、その敷地が道路に2m以上接していなければ、建築をすることができません(建築基準法43条1項本文)。

     ここで、道路とは、①道路法による道路、②都市計画法、土地区画整理法等による道路、③建築基準法第3章の規定が適用されるに至つた際(昭和25年11月23日。この日以降に都市計画区域に指定された区域内の場合は指定日)、現に存在する道、④道路法 、都市計画法 、土地区画整理法等による新設又は変更の事業計画のある道路で、2年以内にその事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したもの、⑤位置指定道路、のいずれかに該当するものであって、幅員が4m以上のものをいいます(同法42条1項)。すなわち、建物建築のためには、原則として、その敷地が、法律で定められた4m以上の道路に、2m以上接していなければならないわけです。

    3. 2項道路の意義

     ところで、古くからの既存市街地では、現実的に、4m未満の道路が多数存在しています。建築基準法以前の旧市街地建築物法の適用時においては、敷地と接するべき道路幅員について原則として9尺(条件により6尺。1尺は約30.3cm)とされていたという経緯もありました。

     そこで、建築基準法は、現実的な規制市街地の状況や旧市街地建築物法との均衡に配慮し、「この章の規定が適用されるに至った際現に建築物が立ち並んでいる幅員4m未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項(42条1項を指す)の道路とみなし、その中心線からの水平距離2mの線をその道路の境界線とみなす」(同法42条2項本文)という規定を置きました。この条項によって道路とみなされるものが、2項道路(あるいは、みなし道路)といわれます。

     2項道路とされるためには、特定行政庁の指定が必要です。例えば、東京都では、告示によって、「①建築基準法第3章の規定が適用されるに至った際(基準時)現に存在する幅員4m未満2.7m以上の道で、一般交通の用に使用されており、道路の形が整い、道路敷地が明確であるもの、②旧市街地建築物法の規定により、昭和5年1月1日以降指定された建築線間の道の幅が4m未満1.8m以上のもの」(昭和30年7月30日都告示699号)などと、一括指定されています。

    4. セットバック

     2項道路に接する敷地に建物を建築する場合には、その中心線から水平距離2mの線が道路境界線とみなされ、そのみなされた境界線内に、建物を建築しなければなりません。元来、2項道路は、幅員が狭く、日常の交通、災害時の避難や緊急車両の通過などに問題があるので、将来的には、4mの幅員をもつ道を確保できるように、建物建築にあたって、セットバックすることが義務付けられているわけです。

     なお、道路境界線とみなされる線は、原則としてその中心線から水平距離2mの線ですが、特定行政庁が道路幅員6m区域を指定することがあります。この指定がなされた区域内では、中心線から水平距離3mの線となります。

    5. 不動産取引における留意事項

     2項道路に関する法的規制は、建築制限の原則を緩和するものであると同時に、建物を建築するにあたってセットバックを要するという意味で、土地の利用に関する厳しい制約となります。

     そのため、宅建業法上、宅建業者が購入希望者に説明すべき重要事項説明のひとつとされています(宅建業法35条1項2号、同法施行令3条1項2号)。

     また、不動産の広告に関しては、「建築基準法第42条第2項の規定により道路とみなされる部分(セットバックを要する部分)を含む土地については、その旨を表示し、セットバックを要する部分の面積がおおむね10%以上である場合は、併せてその面積を明示すること」と定められています(不動産の表示に関する公正競争規約施行規則9条(5))。

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