税務相談
月刊不動産2014年12月号掲載
配偶者から自宅の贈与を受けた後、短期間で売却した場合の贈与税の配偶者控除の適用
情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)
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個人が配偶者から自宅の贈与を受けた後、短期間で売却した場合の贈与税の配偶者控除の適用について教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1.贈与税の配偶者控除の概要
贈与税の配偶者控除とは、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、専ら居住の用に供する家屋やその敷地等(以下、「居住用不動産」といいます)又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合において、一定の要件を満たすときは、暦年課税の贈与税の計算上、基礎控除額110万円のほかに最高2,000万円まで控除できる特例です。
夫婦間で居住用不動産の贈与を行った場合に、贈与税の配偶者控除の適用を受けるためには、次の要件を満たすことが必要です(相続税法21条の6第1項、2項)。
①婚姻期間が20年以上の夫婦間で贈与が行われたこと
②個人が配偶者から贈与された財産が、贈与を受けた個人が住むための国内の居住用不動産であること、又は居住用不動産を取得するための金銭であること
③贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること
④同じ配偶者からの贈与について、過去に贈与税の配偶者控除の適用を受けたことがないこと
⑤控除を受ける金額等の記載があり、かつ、婚姻期間が20年以上である旨を証する書類、その他所定の書類を添付した贈与税の申告書を提出すること
2.配偶者から自宅の贈与を受けた個人が、受贈後、短期間で居住用不動産を譲渡した場合
(1)贈与税の配偶者控除の「居住継続見込み要件」
前述1.③のとおり、贈与税の配偶者控除の適用を受けるための要件の一つに、配偶者から居住用不動産の贈与を受けた個人が、その贈与を受けた日の属する年の翌年の3月15日までにその不動産を現に居住の用に供し、かつ、「その後も引き続き居住の用に供する見込みであること」(以下、この要件を「居住継続見込み要件」といいます)があります。
この要件があることにより、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産の贈与があった場合でも、贈与による取得後にその居住用不動産を他へ譲渡することを予定していたときは、「引き続き居住の用に供する見込み」に該当しないため、贈与税の配偶者控除の適用が認められないことになります。
(2)「その後引き続き居住の用に供する見込み」の判定時期
前述(1)の「居住継続見込み要件」を満たすかどうかの判定上、「その後引き続き居住の用に供する見込みであること」を判定する時期がいつなのかが重要になります。この判定時期については、贈与税の配偶者控除について規定する相続税法21条の6やその関係法令・通達では、明確に定められていません。しかし、相続税法21条の6の文理や、贈与税が贈与の時点で納税義務が成立すること(国税通則法15条2項5号)や、前述1.①の婚姻期間が20年以上である配偶者に該当するか否かの判定が、財産の贈与の時の現況により判断すること(相続税法施行令4条の6第1項)から、配偶者が居住用不動産の贈与を受けた時点において判定することになると考えられます。
なお、上記の判定時期の考え方については、配偶者から居住用不動産を贈与により取得後、短期間で譲渡した場合の贈与税の配偶者控除の適用の可否について国税不服審判所で争われた事例があり、その裁決[大裁(諸)平24第68号平成25年5月8日]においても、居住用不動産の贈与を受けた時点において、その不動産を「引き続き居住の用に供する見込み」であるか否かの判定がされています。
(3)具体例による配偶者控除の適用の検討
例えば、婚姻期間20年以上の夫から妻が自宅の贈与を受け、妻はその贈与を受けた時点では自宅に「継続して居住するつもり」でしたが、贈与後、夫が病気により病院へ入院し、介護の都合から贈与を受けてから短期間で自宅を譲渡することとなった場合、妻は贈与税の配偶者控除の適用が認められるのでしょうか。
この場合については、妻が贈与を受けた時点では自宅に「継続して居住するつもり」であったことや、贈与を受けた後、夫の介護の都合から自宅を譲渡するに至ったことから判断して、妻の贈与税の配偶者控除の適用は認められるものと考えられます。