税務相談

月刊不動産2007年8月号掲載

贈与税の住宅取得資金贈与の特例

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

親から子どもに対して住宅取得資金の贈与を行った場合の贈与税の特例について教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.住宅取得資金贈与の特例の位置づけ

    親から子どもに住宅取得資金の贈与を行った場合、原則として子に贈与税(暦年課税)が課税されます。ただし、一定の要件に該当する場合は、相続時精算課税の特例の適用があります。なお、かつて広く利用されていた「5分5乗方式」による住宅取得資金贈与の特例については、平成17年末をもって廃止されていますので、注意が必要です。

    2.相続時精算課税制度のあらまし

    (1) 相続時精算課税とは

     相続時精算課税においては、親から贈与を受けた子は、贈与を受けた際に、その贈与財産に対する贈与税をいったん支払います。その後、相続が発生した場合には、その贈与財産と相続財産とを合計した価額を基に相続税額を計算します。この相続税額から、既に支払った贈与税額を控除することにより贈与税・相続税を通じた納税をすることができます。なお、ここで加算する贈与財産の金額は、贈与時の価額(相続税評価額)になります。

     このように、相続時精算課税に係る贈与を行った場合は、贈与時の時価で相続税の計算に合算されるため、相続財産を減らす効果はなく、基本的には相続税の節税にはなりません。

    (2) 適用を受けるための要件

     この制度の選択をしようとする受贈者(子)は、この制度の適用対象となる贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に税務署長に対し、この特例を選択する旨の届出書(「相続時精算課税選択届出書」)を贈与税の申告書に添付します。納付税額がなくとも、申告は行う必要があります。

    (3) 相続時精算課税の適用対象者

     相続時精算課税の適用対象者は、贈与者については、贈与をした年の1月1日現在65歳以上の親、そして、受贈者については、贈与を受けた年の1月1日現在20歳以上の子である推定相続人(代襲相続人を含む)であることとされています。養子についても、実子と同様に適用があります。

     また、適用の単位は、受贈者ごと、親ごとにそれぞれ選択することができます。子Aは、父及び母の両方からの贈与について、この制度を選択し、子Bは、父からの贈与についてのみこの制度を選択し、母からの贈与については暦年課税により申告することも可能です。

    (4) 相続時精算課税による税額計算

     (a) 税額計算の方法 受贈者(子)は、この制度を選択した場合には、贈与者(親)からの贈与財産について、他の贈与財産と区分して、その贈与者からの贈与財産の価額の合計額から2,500万円(特別控除額)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出した税額を納付します。

     (b) 2,500万円特別控除の取扱い 特別控除額は、複数年にわたる贈与財産の価額の合計額が2,500万円に達するまでは、1回きりではなく、何回でも利用できます。

    3.相続時精算課税の住宅取得等資金贈与の特例

    (1) 住宅取得等資金の贈与の特例とは

     この特例では、満65歳以上の親から受ける贈与について認められる相続時精算課税の選択を、満65歳未満の親から受ける贈与についても選択でき、しかも特別控除額が1,000万円上乗せされて3,500万円になります。

    (2) 特例の対象となる住宅取得等資金とは

     特例の対象となる住宅取得等資金とは、平成19年12月31日までの間に贈与を受けた、次の新築住宅若しくは中古住宅又は増改築に充てるための金銭をいいます。

     (a) 受贈者(子)による床面積50㎡以上その他一定の要件を満たす住宅用家屋の新築又は建売住宅の取得(新築又は取得に合わせて敷地を取得する場合には敷地を含む)

     (b) 受贈者(子)による床面積50㎡以上、築後20年(耐火建築物25年)以内その他一定の要件を満たす中古住宅の取得(住宅の敷地も合わせて取得する場合には敷地を含む)

     (c) 受贈者(子)が所有する家屋につき行う一定の増改築等(土地等の取得を伴う場合には、その土地等を含む)で工事費用が100万円以上であるもの

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