法律・税務・賃貸Q&A

賃貸仲介ビジネスのこれから

賃貸支援部 シニア経営コンサルタント 宮下 一哉
株式会社船井総合研究所 住宅・不動産支援本部

質問

 いつも、こちらの連載を楽しみに読ませていただいています。今回が最終回と聞きました。最後に、専門家の方が考える「賃貸仲介ビジネスのこれから」について、ご意見をお聞かせください。

月刊不動産2019年03月号掲載
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回答

回答

 2020年以降は「賃貸仲介ビジネス3.0(第三形態)」の時代に入ります。「商品力アップ」に向け、仲介部門と管理部門の役割を見直し、ニーズに対応できる役割分担と連携が大切で、そういう仕組みを作れば勝てるでしょう!

日本の賃貸仲介ビジネスの変遷と転機

 日本での賃貸仲介ビジネスが始まるきっかけは、第二次世界大戦後1947年からの「農地改革」です。この制度改革によって大地主から小作農家の方々に農地が分け与えられ、小規模農地の所有者が倍増しました。その後の高度経済成長期に入ると、それらの農地には多くの「賃貸住宅」が建てられるようになり、都市部に進出してきた多くの労働者の住まいとなっていきました。賃貸住宅が多く建てば、それらの「仲介」が必要となります。1970年ごろには日本での賃貸仲介ビジネスが本格的に「成長期」に入りました。そして1990年代に入ると、ちょうどバブルの時期とも重なって宅建業者数がピークとなり、フランチャイズビジネスが本格化して「成熟期」となりました。しかし2001~2009年ごろに「転換点」が訪れます。物件の過剰供給による空室増加や事業者の相次ぐ参入による競争激化によって、「仲介手数料半額」をうたう事業者が出現して割引合戦が始まり、リーマンショック後の2010年代からは大幅な家賃下落や空室増加によって現
在も続く「衰退期」に入っています。

ライフサイクル理論が示す今後の流れ

 これらの変遷は、私の専門分野であるマーケティングの「ライフサイクル理論」と見事に一致します。ライフサイクル理論では、「ある商品やビジネスが誕生して成長期に入るまでの期間」は、その後の「成熟期」「衰退期」の期間と“イコール”になることが説明されています。改めて振り返ると、賃貸仲介ビジネスは、誕生のきっかけとなった1947年の農地の制度改革後、「およそ20年ごとのサイクル」で変異し、1950年代(黎明期)⇒1970年代(成長期)⇒ 1990年代(成熟期)⇒ 2010年代(衰退期)という流れをたどっているわけです。ただ、衰退期に入ったビジネスはなくなってしまうかというと必ずしもそうではなくて、時代のニーズに適応しながら「新しい形態(第二形態)」が生まれてきて、改めて「黎明期」「成長期」「成熟期」「衰退期」という流れをたどるようになります。
 そしてこの第二形態は「インターネットでの賃貸仲介」というビジネスモデルであり、このコラムで私がお伝えしてきた内容の主要な部分です。ただ、2000年ごろに生まれたこの第二形態は2010年ごろには成長期に入っていますから、その後の変異は「10年ごとのサイクル」であり、2020年までには成熟期、2030年までには衰退期に入ります(図表参照)。現状を見れば、おそらく2020年からの10年間は「AI(人工知能)」「VR(仮想現実)」などが中心となるため、“希望条件に合った物件を紹介する(=仲介)”という営業では、差がつけにくいビジネスに変わっていくでしょう。

2020年以降の賃貸仲介ビジネスで勝ち続けるためのポイント

 さて、WEBサイトという「集客」の段階や、物件の紹介という「営業」の段階で差がつかなくなってしまう賃貸仲介ビジネスにおいて、2020年以降も勝ち続けるためには、どんな物件を品ぞろえするかという「商品」の段階での差別化が本格的に求められるようになります。この傾向は既に現れてきていて、このコラムでは「ユニーク物件」という言葉でお伝えしてきました。要するに「当社にしかない物件」の仕入れ強化ということであり、本質的には「空室対策提案の強化」「管理物件の受託強化」「立地・間取り・設備がニーズに合う物件の新築強化」によってのみ実現することができます。当コラムの2018年11月号でお伝えしましたが、いま賃貸仲介ビジネスで業績を伸ばしている会社は2種類だけで、①「管理物件」が市内・区内などで最も多い会社、②「専任物件」が市内・区内などで最も多い会社です。仲介会社向け・エンドユーザー向けの物件ポータルサイトに掲載されている物件から情報を引っ張ってきて客付けをしている会社は、業績を落としているケースが多くなっていますが、その理由はライフサイクルという物差しを使って見てみると明確にわかります。これまでの成功体験ではセオリーであった「営業方法による差別化」「集客方法による差別化」が効かなくなっていて、その傾向はどんどん強くなっていくということです。

管理物件の獲得強化・客付け強化ができる体制をつくることが最も重要

 当コラムでは、大きく2つのことをお伝えしてきました。1つは「インターネット時代に賃貸仲介で勝てる方法」であり、もう1つはそれを実践するための「勝てる組織のつくり方」です。この2つが「両輪」となってはじめて「経営戦略」として機能し、成果を出すことができるとお伝えしてきました。そしてその「両輪づくり」は、経営者の方にしかできない仕事です。
 これからの賃貸仲介店舗には「空室対策提案担当者」「賃貸管理提案担当者」が配置されていなくてはいけません。常に新たな管理物件を獲得し、その物件に空室対策を提案し、そしてしっかり客付けする。それが1拠点でできる「空室対策&管理委託の提案センター」における今後の仲介店舗の役割となり、賃貸仲介ビジネスの「第三形態」です。
 では管理部門の営業担当者は何をするかというと、「満室になった物件のテナントリテンション」と「高収益賃貸経営のためのキャッシュフロー最大化提案」です。“増やして決める”のが賃貸仲介部門の役割となり、“維持して減らさない”のが管理部門の役割というわけです。そういう経営戦略を積極的に実践し、2020年以降の10年間を圧倒的に勝ち抜いていただけたら、本当にうれしく存じます。

今回のポイント

●過去の成功セオリーにとらわれず、時流を読み、ニーズに合った施策を徹底強化することが重要。
●どんな商品や商売にも「ライフサイクル」があり、その特性を知ることで将来の傾向が読めるようになる。
●賃貸仲介ビジネスでは、営業や集客による差別化はできなくなっており、「商品」での差別化が強化施策。
●「勝てるやり方・勝てる組織づくり」は、必ず一体で導入しなければ成果にはつながらない。
●どんな経営戦略を選ぶかで勝ち負けの8割が決まり、それは経営者にしかできない仕事。

※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

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