法律・税務・賃貸Q&A

賃借人による建物の改装

弁護士 江口 正夫
海谷・江口・池田法律事務所

質問

2階建の戸建ての建物を飲食店経営者に飲食店舗兼住宅として賃貸したところ、店舗の売上が好調で、2階の住居部分を飲食店に改装して店舗拡大を行ったことを、後になって知りました。無断改装を理由に賃貸借契約を解除できるでしょうか。

月刊不動産2019年04月号掲載
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回答

回答

 借家人は、賃貸借契約に基づき、建物の用法遵守義務を負っているため、住宅部分を店舗に変更することは改装であっても建物の用途の変更に該当し、用法違反となる可能性があります。また、店舗への変更は建物の改築を要する場合があり、無断で建物を改築することも用法違反となり得るため、信頼関係を破壊する場合は解除が可能です。

1. 賃貸借契約における賃借人の用法遵守義務

 賃貸借契約における賃借人の基本的な義務は、賃料の支払義務であることは当然ですが、それだけに限られるものではありません。
 賃借人は、建物の使用および収益をする権利を認められますが、一方で、その使用および収益は一定の範囲に限定されます。一定の範囲とは、当事者間にその旨の合意がある場合にはその合意に従い、合意がない場合は、慣習により用途が定まるときはその慣習に、慣習がない場合には建物本来の性質から定まる用法に従って使用収益すべきであるとされています。これを賃借人の「用法遵守義務」といいます。

2. 用法遵守義務に違反した場合の法的効果

 賃借人が「用法遵守義務」に違反したときは、賃借人の債務不履行となるため、賃貸人は、賃借人に対し、違反行為の是正や、それにより損害が発生した場合には損害賠償請求が可能となります。また、賃借人の用法遵守義務違反が、賃貸借の当事者間の信頼関係を破壊するときは、賃貸人は、賃貸借契約を解除することもできます。

 賃借人が、賃借している建物を改装したり、一部改築したりすることは、賃貸人が所有する建物に手を加えることになるのですから、あらかじめ賃貸人の承諾を得ることは必要なことです。
 これらの行為を賃貸人の承諾を得ることなく行えば、使用目的に違反することになりますし、同時に、無断改装または無断改築等を行った場合には、原則として、使用目的違反、用法遵守義務違反となります。ただし、裁判例では、住居用として賃貸した建物を店舗として使用しても、使用の態様等により賃貸人に損害を与えないような場合は使用目的違反にはならないと判断したものがあります( 東京地判昭和3 5 年1 1月2 6日)。しかし、用法遵守義務違反、使用目的違反が賃貸借契約の当事者間の信頼関係を破壊する場合には、賃貸人は賃貸借契約を解除することができるため、どのような場合に、信頼関係の破壊とみられるのかが
重要な問題です。

3. 用法遵守義務違反と信頼関係の破壊

 住宅部分を飲食店舗に変更した場合、それが、いわゆる模様替えの範囲にとどまる場合と、建物の改築に至る場合とがあり得ます。
(1)模様替えとして店舗の改装  が行われた場合
 用途の変更が模様替えの範囲にとどまる場合は、信頼関係の破壊には至らないと判断するものが比較的多いように思われます。例えば、畳店から美容院に変更するために土間を板張りとし、ガラス戸の変更、壁の塗り替え等を行った場合(東京地判昭和31年12月14日)や、バーの内装を取壊して婦人物洋装店としての内装に改装した場合(東京地判昭和56年3月26日)など、信頼関係を破壊するものではないと判断された裁判例があります。もっとも、改装の際に、柱を切除するなど建物保存上の危険が増加し、原状回復も容易ではなくなる場合には、信頼関係の破壊が認められることになります。
(2)賃借建物への改築が行われた場合
 改築の場合も、すべてが信頼関係を破壊するというわけではありません。改築の場合でも建物への損傷が軽く原状回復が容易である場合には、信頼関係の破壊は認められません。改築の結果、建物に損傷を与え、原状回復が容易ではない場合には信頼関係の破壊が認定され、賃貸借契約の解除が認められます。

※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

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