税務相談
月刊不動産2014年2月号掲載
被相続人の自宅を建築中に相続が開始した場合の相続税の小規模宅地特例の取扱い
情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
被相続人の自宅を建築工事中に相続が開始した場合の小規模宅地等に係る相続税の特例の適用について教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1.小規模宅地特例の概要
小規模宅地等に係る相続税の特例(「小規模宅地特例」)とは、被相続人等が居住用として使用していた自宅敷地(居住用宅地)、店舗の敷地(事業用宅地)、貸アパートの敷地(貸付事業用宅地)などを相続人等が相続または遺贈により取得する場合、一定の要件の下で、これら宅地の評価額を相続税の課税対象から減額できる制度をいいます。居住用宅地の場合、特例の適用対象となる宅地等の面積は上限240㎡(平成27年以後の相続または遺贈により取得した宅地は330㎡)、減額割合は評価額の80%とされています。
2.「被相続人の居住用として使用していた宅地」に該当するかどうか判定方法の原則
小規模宅地特例の対象となる「被相続人等が居住用として使用していた宅地等」に該当するかどうかの判定は、被相続人が相続開始の直前において、その宅地等の上に存する建物に生活の拠点を置いていたかどうかにより行います。具体的には、被相続人の日常生活の状況、その建物への入居目的、その建物の構造や設備の状況、生活の拠点となる他の建物の有無その他の事実を総合的に考えて、居住用に使用されていたかどうかが判定されます。
3.自宅の建築中に相続が開始した場合における「被相続人の居住用として使用していた宅地等」に該当するかどうかの判定方法
前述2.のとおり、小規模宅地特例の対象となる宅地等は、相続開始の直前において被相続人が現に居住用として使用していた宅地等をいいます。したがって、その居住用建物の建築工事中に被相続人の相続が開始した場合には、その建物の敷地として使用されている宅地等については、小規模宅地特例の適用がある居住用宅地等に該当しないこととなります。
しかし、居住の継続という観点では、建築工事中の建物の敷地として使用していた宅地等についても、現に居住用として使用していた建物の敷地である宅地等と同様の必要性が認められます。このため、被相続人の居住用宅地等であるかどうかの判定を、相続開始直前の一時点のみで行うのは、実情に即したものとはいえない場合もあります。
そこで国税庁は租税特別措置法通達69の4-8 により、建築工事中の居住用建物の敷地について、次の(1)と(2)の要件を満たす場合には小規模宅地特例の適用を認めることにしています。
(1)建築工事中の建物は、被相続人または被相続人の所有に係るもので、かつ、被相続人の居住用として使用されると認められるものであること。
この場合、相続開始の直前において、現に被相続人が居住用として使用していた建物(被相続人が居住用として使用するための建物の建築中だけの仮住まいである建物、その他一時的な目的で入居していたと認められる建物を除きます)を所有していたときには、その建物の敷地である宅地等が居住用宅地等に該当していることから、建築工事の建物の敷地となっている宅地等については、この通達の適用はありません。
(2)原則として、相続税の申告期限までに、被相続人または被相続人の親族の所有に係る建築工事中の建物を、その建物またはその建物の敷地を取得した被相続人の親族が居住用として使用していること。
具体的には、建築中の建物が被相続人の居住用として使用される予定であった場合において、次の①または②の者が相続税の申告期限までにその建物を居住用に使用すれば、その敷地は「被相続人の居住用として使用していた宅地等」に該当します。
①その建物またはその敷地を取得した被相続人の親族
②被相続人と生計をーにしてした親族
4.相続税の申告期限までに、被相続人の親族が建築中の建物を居住用として使用していない場合
相続税の申告期限までに、前述3. の要件に該当する被相続人の親族が建築中の建物を居住用として使用していない場合において、次に掲げるような事情によりやむを得ず建物の完成が遅延していることによるものであるときは、前述3.にかかわらず、その建物の完成後すみやかに居住用として使用することが周囲の状況からみて確実であると客観的に認められるときに限り、その建物の敷地として使用している宅地等は、居住用宅地等に該当するものとして取り扱われます。
(1)建築中の建物の規模からみて建築工事に相当の期間を要すること。
(2)法令の規制等により建築工事が遅延していること。
(3)(1)または(2)に準じる特別な事情があること。