法律・税務・賃貸Q&A

繁忙期前の空室対策

今井 基次
オーナーズエージェント株式会社 コンサルティング事業部部長

質問

管理戸数が順調に増えているのですが、そのたびに空室戸数も増えてしまっています。空室対策のために大型のリノベーション提案などをしても、大家さんの予算が取れず断念してしまいます。高額な予算をかけずにできる空室対策などがあれば、教えてください。

月刊不動産2019年11月号掲載
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回答

回答

 入居希望者に物件を選んでもらうためには、「ここに住みたい!」と思わせることが必要です。そのためには条件面、見せ方、清潔感など、最低限のことを行いましょう。さらに、ただの「空室」を見せるよりも「モデルルーム」を作ることによって、生活イメージや興味づけがしやすくなります。ローコストの家具もあるため、積極的に活用してみましょう。

1. 契約条件の適正化と「見せる」部屋を意識する

 賃貸借契約数の38%が、繁忙期といわれる2月から4月の3カ月間に締結されている(図表)。この期間は需要が大幅に増加するため、1年を通じて、またとない入居月のチャンスが訪れる。しかし、入居が増える一方で退去も増えるため、空室対策の戦略を立てずにいると、決まりやすい物件が決まるだけで、長期空室などは結局繁忙期を過ぎても空室のままになってしまう。年々、市場の空室率が上昇していく中で、言ってみればライバル物件は市場に余るほど存在している。その中で、どのように差別化していけるかがカギとなる。ただ、特別なことをやる前にまずは当たり前のことを進めなければならない。
 はじめに物件の相場観。同程度のスペックのライバル物件より割高ということでは、インターネットで容易に価格を比べられる現在では、内見すら入らないということになる。諸条件を俯瞰して見たときに、家賃だけではなく契約条件が市場で適正になっているのかを判断すべきである。
 次に、写真の精度を高める必要がある。不動産ポータルサイトを見ていると、以前よりは良くなっているが、写真のクオリティが著しく低いものがある。せっかく物件が良くても、写真が暗かったり、斜めに写されたりしているものは、興味づけできないため、見てみようと思わせる機会を損失している可能性がある。
 そして、何よりも重要なことは、物件が清潔に保たれていることである。長期空室物件などを見ると、ほとんどの場合で室内だけでなく、共用部が汚れている。夏場は外部階段や廊下の共用灯に大量の虫が寄ってくる。そこに蜘蛛の巣がはりめぐらされて、虫の死骸がたまればあっという間に不潔な共用部になる。仮にその状態で内見が入ったとしても、入居希望者からしてみるとかなりのマイナスポイントになる。賃貸住宅の入居者にアンケート調査を各地で行ったところ、誰もが口をそろえて求めることは、物件が「清潔」に保たれていることだった。日本人は諸外国の人に比べて、清潔感の意識が高いため、当たり前のことであるが、かなり気を使ったほうがよい。

2. モデルルームによる空室対策でオーナーの意識改革へ

 頻繁に入退去が繰り返される賃貸住宅は、手間がかかるためあまり行われないが、「モデルルーム」を作ると容易にライバル物件と差別化しやすい。最近では製造から小売までを一貫して行う、スウェーデンのメーカー「IKEA」や、国内でも「ニトリ」などがある。これらの特徴はローコストで家具を調達できるため、近隣にあれば積極的に活用したい。特にIKEAには商品数もさることながら、店内やネット上でのモデルルームがあるので、それを参考にするとイメージも湧きやすい。モデルルームに関しては自分たちで家具を選定するのではなく、インテリアコーディネーターなどを活用してほしい。費用はいくらかかかってしまうが、全くの素人が部屋づくりをするよりもかなりデザイン性が高まる。家具の設置までの労力やコストを考えるとやり切れないという声も上がるが、それでも何もない空室より、「簡易モデルルーム」のように、ちょっとしたものを設置するだけでもよい。例えば、照明、小型のキャビネット、小さな植栽、ビーズクッション、ラグマットなどがあれば、それなりの見栄えになる。設置も容易で、仮に入居が決まればすぐに別の部屋に移し替えることができる。インターネットで調べると、簡易モデルルームレベルであれば、2万円くらいで購入が可能だ。仮に家賃が6万円であれば10日分の賃料である。何カ月も空かせてしまうよりは、数万円で投資をして早めの成約が可能になれば、オーナー提案がしやすい。オーナーの立場からしてみると「空室を放置されて、何も提案がない」と、管理会社への信頼を一気になくすことになる。まずは小さな空室対策の提案をしていけば、オーナーの意識を変えることにもつながるため、積極的に活用していきたい。繁忙期という絶好のチャンスを逃さないためにも、早めのオーナー提案で入居率を高めていきたい。

※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

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