賃貸仲介営業
月刊不動産2017年11月号掲載
繁忙期前、今、やるべきこと
宮下 一哉(株式会社船井総合研究所 不動産支援部 チーフ経営コンサルタント)
Q
いよいよ今年も終盤に差し掛かり、来年の繁忙期が近づいてきました。しっかり準備して「過去最高の繁忙期」にするために、この時期にやっておかなくてはならないことは、どんなことですか?
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
-
Answer
「チーム営業」の体制に変え、オーナー直物件の仕入れ、空室対策を強化できるようにしましょう。ただし、やるべきことは明確でも、それを実行できる「環境整備」ができていないと成果が出ません!
-
「事業戦略×人財戦略」の両輪が大事
今、賃貸仲介は「チーム営業」の時代です。個々の営業担当者が成約件数・成約金額を競い合って「歩合」を稼ぐのではなく、個々が「持ち場」でのやるべきことをしっかりやり、チームが連携して顧客を成約に導いていくことが求められています。顧客の大半は、インターネット上に掲載されている多くの物件情報を見て、空室状況をしっかりとつかんでいるため、アナログ時代にあった「顧客と営業担当者の知識の差」がなくなり、顧客が簡単に担当者の言うことを聴いてくれなくなってきました。このような時代に対応するために経営者としてやっていただきたいことは「営業店舗において営業スタッフが本来の営業活動をできる環境」を整備し、チームとして戦う意識づけをすることです。やるべきこと(事業戦略)を掲げて期限・目標数値を決めても、「誰が・いつ・どうやるのか」を現実的にしていく「人財戦略」が明確でなければ、実行されていかないため、そこの「人員体制」「役割分担」「連携の仕方」を決める必要があります。極端な表現でいうと「社員が何をやるかはトップが考えて、“どうやるのか”だけを社員に考えてもらう」ということです。リーダー的役割の人がいれば、その人にそういう指示を出す必要があり、いなければ経営者自ら、現場社員に「何をやるのか」の指示を出す必要があります。繰り返しになりますが、「やるべきこと(事業戦略)」と「誰が・いつ・どうやるのか(人財戦略)」の両輪のいずれが欠けても、成果にはつながりません。
-
成果を出すために「実行力」を高める!
事業全体の成果を見るとき、「売上=商品力×集客力×営業力×実行力」の掛け算で実績が決まります。「商品力×集客力×営業力」とは、何をやるかの部分であり、営業会議などでよく話し合われる内容です。話し合われた内容はタスクメモや「ToDoリスト」など、手帳やミーティング議事録に書いてあると思います。
「実行力」とは、「一体化力、組織力、マネジメント力」と言い換えても意味が通ります。ここを高めるためにリーダー(ときに経営者)が行うべきことは、次の【5ステップ】です。
公式※というのは、売上までの道のり(プロセス)がどんな要素で構成されているのかをわかりやすく因数分解したものであるため、その因数の1つ1つを高めていけば売上がアップします。売上が良いとき・悪いとき、この公式に当てはめて「現状」をつかみ、社員と共有(シェアリング)し、力を入れるべきポイントを“1つ”に絞って「一体化」を進めていただければ幸いです。
※ 賃貸仲介に特化した売上アップ公式
売上=(反響数×来店率+飛込数+紹介数)×(案内率×申込率×契約率)×(仲介手数料+広告料+付帯手数料)
-
競合他社と差をつけるために「鳴るユニーク物件」を増やす!
実行力を高めるための「環境整備」や日々の「マネジメント事項」を行いつつ、1月から始まる繁忙期を過去最高のものにするために最もチカラを入れるべき項目は「ユニーク物件の品揃え強化」です。過去の当連載でお伝え済みですが、そのなかでも特に「(反響の)鳴るユニーク物件」の品揃えをすることが大事。ユニーク物件とは、「その会社独自の品揃え物件」のことです。これを数多く品揃えしていることが差別化の要因となり、それはそのまま集客に直結します。インターネット上での競争がどんどん激しくなるなかでも、無益な競争に巻き込まれず、大きく集客・売上をアップしている仲介会社に共通する指標、それが「ユニーク物件数」です。
ただ、“単なるユニーク物件”よりも“顧客のニーズに合ったユニーク物件”であるほうが選ばれやすく、反響獲得につながりやすいですよね。だからこそ、オーナー直物件(できれば管理物件)の「空室対策提案」をしっかりと行い、「鳴るユニーク物件(=呼べる物件、決まる物件)」に変えていくことが不可欠です。年末に差し掛かるこの時期、最も強化しなくてはならないことは「仕入れ」「空室対策」の2つ! しかし、現場まかせ・個人まかせにしておくと最も実施されない項目です。しっかりと「マネジメント」し、その前提として「環境整備」をする必要があります。特に「環境整備」は、経営者の皆様にしかできない取り組みですから、その部門をまかせられる幹部が育つまでは、自ら中心となって進めてください。
-
Point
- 実行力を上げて成果を出すためには、「事業戦略×人財戦略」の両輪が大事。
- リーダーが実行力アップのために行うべきマネジメント事項は、「5ステップ」。
- 賃貸仲介関連の売上アップ公式を覚えて「現状」をつかみ、ポイントを1つに絞る。
- 競合他社と差をつける「鳴るユニーク物件」を増やすために、空室対策提案を強化する。