税務相談
月刊不動産2011年9月号掲載
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度について教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1.制度概要
平成23年1月1日から12月31日までに、直系尊属から住宅用家屋の新築、取得又は増改築(以下「取得等」といいます)に充てるために金銭の贈与を受けた場合には、その金銭のうち1,000万円まで贈与税が非課税とされます。
2.制度のポイント
(1)対象となる贈与者の範囲
この特例は直系尊属からの贈与が対象とされており、父母のほか祖父母からの贈与についても対象となります。
(2)対象となる受贈者の範囲
平成23年1月1日現在20歳以上の個人で、同年中の合計所得金額が2,000万円以下である人が対象となります。
(3)対象となる住宅用家屋
対象住宅の要件は、次のとおりに定められています。
①家屋の登記簿上の床面積(区分所有の場合は区分所有部分の床面積)が50㎡以上であること。
②中古住宅の場合は次の要件を満たすこと。イ.マンション等の耐火建築物は、その取得日以前25年以内に建築されたものであること。
ロ.耐火建築物以外の建物は、その取得日以前20年以内に建築されたものであること(一定の耐震基準を満たすものを除く)。
③床面積の2分の1以上に相当する部分が、居住専用であること。
(4)対象となる住宅用家屋の取得等
①自ら居住する上記(3)の住宅用家屋の取得等であること(その住宅用家屋の敷地の用に供される土地等の取得を含む)。
②増改築については、次の要件を満たすこと。
イ.工事費用の額が100万円以上であること。
ロ.居住用部分の工事費が全体の工事費の2分の1以上であること
ハ.増改築等後の家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が、居住専用であること。
ニ.増改築等後の家屋の床面積(区分所有の場合は区分所有部分の床面積)が50㎡以上であること。
(5)共有の住宅用家屋の床面積基準
上記(3)①または(4)②の床面積基準の判定に当たり、2人以上の者で共有の家屋については、その家屋全体の床面積により判定を行います。
(6)適用対象外となる住宅取得等資金
受贈者の一定の親族との契約に基づく住宅用家屋の取得等の対価に充てる金銭は、この特例の対象とはなりません。
(7)住宅用家屋の敷地を先行取得するための資金の贈与この特例の適用対象となる住宅取得等資金には、住宅の新築に先行して敷地の用に供される土地等を取得する場合における、その土地等の取得のための資金が含まれます。
(8)住宅用家屋の取得等・居住要件
原則として、住宅取得資金を取得した年の翌年(平成24年)3月15日までに前述(3)の住宅用家屋を取得等し、同日までに居住することが要件とされます。
(9)既存の基礎控除・特別控除との関係
この特例は、暦年課税制度の基礎控除や相続時精算課税制度の特別控除と併せて適用できます。
したがって、父母から住宅取得資金の贈与を受ける場合、暦年贈与課税制度では基礎控除110万円に1,000万円を加えた金額1,110万円まで、相続時精算課税制度を選択すると特別控除2,500万円に1,000万円を加えた3,500万円まで、贈与税の負担なしに住宅取得等資金の贈与を受けることができます。
3.贈与者死亡時の相続税の取扱い
(1)生前贈与と相続税
贈与者が死亡した場合において、贈与者より財産を相続する相続人が、生前に贈与者から贈与により取得した財産について、贈与者の相続税の課税対象とされるケースがあります。具体的には、暦年課税制度の贈与税については贈与者の相続開始前3年以内の贈与、相続時精算課税制度選択後は贈与者からの贈与を受けたすべての財産は、原則として相続税の課税対象とされます。
(2)住宅取得等資金の贈与の非課税の適用を受ける場合
住宅取得等資金の贈与の非課税の特例の適用を受ける住宅取得資金については、前述(1)にかかわらず贈与者の相続税の課税対象とはなりません。
4.申告要件
この特例の適用を受けるためには、贈与税の期限内申告書にこの特例を受ける旨を記載するとともに、明細書、住民票の写し、登記事項証明書など一定の書類を添付する必要があります。