税務相談
月刊不動産2002年7月号掲載
建物建設に際して、消費税等の還付がある場合について教えて下さい。
0 井出 真(井出真税理士事務所)
Q
建物建設に際して、消費税等の還付がある場合について教えて下さい。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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消費税及び地方消費税(以下:消費税等といいます)は、事業者が商品の販売や役務の提供を行ったり、資産の貸し付け等を行った場合に、その取引きに対して課税される間接税です。家賃を例にすれば、賃貸ビルのオーナーが消費税等を申告・納税しますが、家賃に対する消費税等を実際に負担しているのはテナントです。このように間接税とは、税金を納める者と実際に税金を負担する人が異なる税金をいいます。ただし、住宅家賃は非課税です。
事業者が、その年(法人は年度)に納めるべき消費税等の金額は、次式によります。A-B=消費税等の納付金額
A:課税期間の課税売上高×5%
B:課税期間の課税仕入高×5%(仕入れ税額控除)ここでAよりBの金額が大きいときはどうなるでしょうか。その場合は、次式により消費税等の還付が受けられます。
B-A=消費税の還付金額
事業者が、事業用または賃貸用(住宅を除く)の建物(付属設備、構築物を含む)を建設・取得した場合、取得に際して支払った消費税等は原則として仕入税額控除の対象となります。仕入れ税額控除の時期は、課税仕入れに係る資産を譲り受け、借り受け、または役務の提供を受けた日とされています。これは、原則として所得税(または法人税)における所得金額の計算上の資産の取得時期(または費用等の計上時期)と同じとなります。例えば、建物を建設し建築費に対して消費税等を支払った場合、建物の完成引き渡しを受けた年(法人は年度)において全額課税仕入れの対象となるということです。
ただし、納めた消費税等の還付は、課税事業者でなければ受けられません。したがって、免税事業者の場合には「消費税課税事業者選択届出書」を前年末(法人は前事業年度末)までに税務署に提出している必要があります。また、簡易課税を選択していると還付は受けられません。簡易課税は、仕入れ控除ができる税額を、課税売上高に対するみなし仕入れ率(50%~90%)により計算するので還付とはなりません。計算例
<N氏が建設した賃貸店舗兼事業所の概要>
・取得日および建築費
取得日…平成○○年3月15日
建築費…8,400万円(消費税等400万円を含む)・家賃収入および一時金(消費税等を含む)
家賃…73.5万円/月(平成○○年4月1日より賃貸)
敷金…588万円
礼金…294万円(注)N氏は、課税事業者を選択しており、他に課税売上げ・課税仕入れはない。
<N氏が建設した賃貸店舗兼事務所の概要>
(73.5万円×9か月+294万円)×5/105
-8,400万円×5/105=△354.5万円N氏は消費税等の申告をすることにより、354.5万円の還付が受けられる。
この様に、建物建設に際して還付される消費税等は、多額となることがあります。したがって、建物の建設や購入計画に際しては、税務署に対する消費税関係提出書類をもう一度確認した方がよいでしょう。