税務相談
月刊不動産2009年6月号掲載
平成21 年度税制改正・『住宅ローン控除』の拡充
情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
平成21 年度の税制改正で拡充された住宅ローン控除の概要について教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1.創設の趣旨
住宅投資の活性化による地域経済の発展を図るべく、平成21年度税制改正により、住宅ローン控除制度の拡充が行われました。
2.拡充された住宅ローン控除の内容
(1) 制度概要
住宅ローン控除とは、住宅ローン等を利用してマイホームを新築、購入又は増改築をした場合において、一定の要件に当てはまるときには、その新築、購入又は増改築等のための借入金等年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住年以後の各年分の所得税額から控除する制度です。
(2) 主な適用要件
改正前と同じく、次の要件を満たすことが必要です。
① 住宅ローンの償還期間が10年以上であること。
② 住宅ローン控除の新築や購入をしてから6か月以内に居住の用に供し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること。
③ 控除年の合計所得金額が3,000万円以下であること。
④ 居住年とその前後の2年ずつの5年の間に、居住用財産の譲渡に係る3,000万円特別控除その他居住用財産に係る譲渡所得の課税の特例の適用を受けていないこと。
⑤居住年に係る所得税について確定申告をすること。
(3) 控除期間
控除期間は最長10年です。
(4) 対象となる住宅ローン等の年末残高
①一般住宅に居住の場合
平成21年と22年に居住した場合、住宅ローン等の年末残高のうち5,000万円以下の部分が対象となります。以後、平成23年に居住の場合は住宅ローン等の年末残高のうち4,000万円以下の部分、平成24年に居住の場合は3,000万円以下の部分、平成25年に居住の場合は2,000万円以下の部分が対象となります。
②認定長期優良住宅に居住の場合
平成21年6月4日から23年末までに居住した場合、住宅ローン等の年末残高のうち5,000万円以下の部分が対象となります。平成24年に居住の場合は住宅ローン等の年末残高のうち4,000万円以下の部分、平成25年に居住の場合は3,000万円以下の部分が対象となります。
なお、「認定長期優良住宅」とは、長期優良住宅普及促進法により、建築に当たって長期優良住宅建築等計画が長期耐用で安全な一定基準を満たすものとして所管行政庁から認定された住宅をいいます。
(5) 住宅ローン等に乗じる控除率
一般住宅に居住の場合、控除率は1%です。認定長期優良住宅に居住の場合、控除率は1.2%です。
(6) 平成21年に居住した場合の控除額の最高額
平成21年中に一般住宅を取得して居住の用に供する場合、控除期間10年、控除期間中の住宅等残高が常に5,000万円超とすると、控除率が1%より、控除額の最高額は500万円となります。
平成21年中に認定長期優良住宅を取得して居住の用に供する場合、控除期間10年、控除期間中の住宅ローン等残高が常に5,000万円超とすると、控除率が1.2%より、控除額の最高額は総額600万円となります。
2.再居住した場合の住宅ローン控除の適用
平成21年度税制改正により、住宅を取得した年にいったん居住しながら、転勤等によりその年の年末に居住していない場合、住宅ローン控除の適用がなかった制度が緩和されました。過去に居住したことを証明する住民票を提出するなど、一定の要件を満たすことにより、再居住した年以後に住宅ローン控除の適用を受けることができます。
3.所有住宅を増改築後に居住の用に供した場合
住宅を取得後、増改築を行い、その後6か月以内に居住した場合にも、その増改築費用に係るローンについては住宅ローン控除の対象とされました。
4.個人住民税における住宅ローン控除の創設
平成21年から平成25年までに居住し、所得税の住宅ローン控除の適用をした個人について、所得税から控除しきれなかった控除額がある場合は、翌年度の個人住民税のうち一定額(前年分所得税の課税総所得金額等の5%(最高97,500円)が上限)が控除できます。