税務相談

月刊不動産2006年4月号掲載

土地賃貸借の終了(借地権の返還)

代表社員 税理士 玉越 賢治(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

土地の賃貸借関係が終了し、借地権が返還された場合の課税関係を教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 土地の賃貸借関係が終了した場合の課税関係は、有償返還か無償返還か、貸主か借主か、個人か法人か、異なります。

    1. 有償返還

     有償返還の場合、借地人は立退料を受領し、貸主(地主)は立退料を支払います。

    (1) 個人借主(借地人)
     借地人が受領する立退料は、譲渡所得の収入金額となります。

    (2) 法人借主(借地人)
     個人と同様に、借地人が受領する立退料は、益金(借地権譲渡益)となります。

    (3) 個人貸主(地主)
     支払った立退料は、土地の取得費となります。

    (4) 法人貸主(地主)
     支払った立退料は、土地の取得費に加算されますが、立退料<借地権設定時の損金算入額
     の場合は、その損金算入額を取得費に加算します。

    2. 無償返還

    (1) 個人借主(借地人)貸主(地主)が個人の場合は、借地権者である個人に課税関係は生じません。

    貸主が法人の場合は、原則として借地権の時価で譲渡があったものとして、譲渡所得として所得税が課税されます。ただし、下記のような理由に基づくものである場合には、借地権価額がないものとして課税関係は生じません。

     A 借地権設定時に無償返還届出書が所轄税務署に届けられている場合

     B 土地の使用目的が、単に物品置場、駐車場等として土地を更地のまま使用し、又は仮営業所、仮店舗等の簡易建物の敷地として使用していたものである場合

     C 借地上の建物が著しく老朽化したことその他これに類する事由により、借地権が消滅し、又はこれを存続させることが困難であると認められる事情が生じた場合

     D 借地権設定時に相当の地代の支払を行い、その後その土地の価額上昇に応じて順次相当の地代を改定する旨の届出書が所轄税務署に届けられている場合

    (2) 法人借主(借地人)
     通常収受すべき借地権相当額を貸主に贈与したこととして借地権の認定課税(寄付金認定)があります。ただし、(1)と同様、下記の理由に基づく場合、借地権価額がないものとして課税関係は生じません。

     A 借地権設定時に無償返還届出書が所轄税務署に届けられている場合

     B 土地の使用目的が、単に物品置場、駐車場等として土地を更地のまま使用し、又は仮営業所、仮店舗等の簡易建物の敷地として使用していた場合

     C 借地上の建物が著しく老朽化したことその他これに類する事由で、借地権が消滅し、又はこれを存続させることが困難であると認められた場合

     D 借地権設定時に相当の地代の支払を行い、その後その土地の価額上昇に応じて順次相当の地代を改定する旨の届出書が所轄税務署に届けられている場合

     返還した借地権に帳簿価額が付されていた場合には、その借地権価額は損金の額に算入されます。

    (3) 個人貸主(地主)
     借地権の無償返還を受けた個人貸主は、原則として借地権相当額の受像益を受けたものとして贈与税(借地人が個人の場合)、一時所得又は給与所得(借地人が法人の場合)として課税されます。
     ただし、(1)又は(2)のただし書A~Dに該当する理由により借地権の無償返還を受けた場合、その課税は生じません。

    (4) 法人貸主(地主)
     借地権の返還を受けた法人は、借地権価額が生じている借地であっても、無償返還を受けたことによって、借地権相当額の受贈益課税を認定されることはありません。返還を受けた土地について、借地権設定時に土地の帳簿価額の損金算入又は土地の評価損の損金算入規定により損金の額に算入した金額がある場合には、その損金算入金額を土地の帳簿価額に加算します。

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