税務相談

月刊不動産2005年10月号掲載

借地権の更新・更改

代表社員 税理士 玉越 賢治(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

借地期限が到来した場合、一般には借地期間を更新します(定期借地契約を除く)。この場合に借地人は、一般に更新料を支払います、この更新料の授受についての税務上の取扱いを教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 借地権の更新とは、借地期限が到来した際に、借地の目的、範囲、期間、借地人の地位等借地内容の同一性を失わずに同一内容、同一条件で設定し直すことをいい、一般には更地時価の5~10%程度の金銭の授受が行われています。
     更新料の法的性格は、更新時の手数料、更新承諾料、地代の一部、権利金の補充、増改築制限特約を排除するためのもの等であるといわれています。
     一方、借地権の更改とは、従来の借地契約を破棄し、別個の内容の借地契約を締結することで、借地上の建物の建て替え等に際して金銭の授受が行われるものをいいます。

    (1) 借地人が更新料を支払った場合 

    A 個人借地人が更新料を支払った場合

     個人が、不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供する借地権又は地役権の存続期間を更新する場合において、更新料の支払をしたときは、次の算式で計算した金額は、その更新のあった日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入します。

     

     借地権の取得費とは、借地権等の取得に要した金額(借地権利金、仲介手数料等)、更新前に支出した改良費(土盛り、地ならし、埋立て等の整地費用)、更改料、更新料の額を含み、更新前に上記により必要経費に算入した金額があるときは、その金額を控除した金額です。

    B 法人借地人が更新料を支払った場合

    法人が借地権等の更新料を支払ったときは、次の算式で計算した金額を、その更新のあった日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入し、支払った更新料は、借地権等の帳簿価額に加算します。

     

    (2) 土地所有者が更新料を受領した場合

    A 個人地主が更新料を受領した場合

     個人が借地権等の存続期間の更新の対価として受領する更新料、借地権者等の変更に伴い受領する名義書換料は、原則として不動産所得の収入金額となります。
     ただし、受領の実質が借地契約の更改に係るもので、かつ、更新料の金額が土地の更地価額(時価)の10分の5を超える場合には譲渡所得とみなされます。なお、更新料が地代年額の20倍相当額以下の場合には、譲渡所得に該当しないものと推定されます。

    B 法人地主が更新料を受領した場合

     法人が借地権等の存続期間の更新の対価として更新料を受領した場合は、その更新料はその受領した日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入します。更改料についても、同様に、受領した日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入します。

    (3) 更新料の授受が行われなかった場合
     更新料又は更改料は、それを授受することが通常の取引慣行であると割り切れるほどには、その慣行が成熟していません。
     したがって、法人が借地権の設定等に係る契約の更新又は更改をする場合において、更新料又は更改料の授受をしなかったときであっても、それがその地域において通常更新料又は更改料を授受する取引上の慣行があることが明らかでなかったことによるものであるときは、これを正常な取引条件であると認め、更新料又は更改料の認定課税は行われません。

     一方、個人については、各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、その年において収入とすべき金額とされており、収入とすべき金額がない(更新料の収受がない)以上、認定課税されることはありません。

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