税務相談

月刊不動産2015年2月号掲載

個人が土地を譲渡した場合の譲渡所得の取得費

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

個人が土地を譲渡した場合の譲渡所得の取得費について教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.土地に係る譲渡所得の金額の計算方法

    土地に係る譲渡所得の金額は、土地の譲渡代金(収入金額)から取得費と譲渡費用の合計額を控除して計算します。

    2.取得費の範囲

    (1)取得費とは

    譲渡所得の金額上控除する取得費は、資産の取得に要した金額と設備費及び改良費の合計額とされます。

    (2)資産の取得に要した金額の範囲

    資産の取得に要した金額とは、資産を取得したときの買入代金や、その資産を取得するために直接要した費用を加えた金額をいい、例えば次のようなものが該当します。

     ①土地の取得代金

     ②土地の取得の際に、宅地建物取引業者に宅地の媒介に関して支払った仲介手数料

     ③建物のある土地をその建物と共に取得した場合において、その取得後おおむね1年以内にその建物の取壊しに着手する等、その取得が当初からその建物を取壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときにおける、その建物の取得に要した金額及び取壊しに要した費用の額の合計額

     ④土地の取得に係る契約書に貼付した印紙

     ⑤業務の用に供されていない土地の取得に係る登録免許税(登録手数料を含む)及び不動産取得税

     ⑥土地の測量費(各種所得の金額の計算上、必要経費に算入されたものを除く)

     ⑦土地の取得のための借入金の利子のうち、その借入れの日からその土地建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子(各種所得の金額の計算上、必要経費に算入されたものを除く)

     ⑧土地の取得に当たって支払った立退料

    (3)改良費の額の範囲

    土地の取得に際して、埋立て、土盛り、地ならし、切土又は防壁工事等、その土地の改造又は改良のために要した費用は、原則として土地の改良費に該当し、その取得費に算入されます。ただし、土地についてした防壁、石垣積み等であっても、その規模、構造等からみて土地と区分して構築物とすることが適当と認められるものの費用の額は、構築物の取得費とすることができます。

    3.相続により取得した財産を譲渡した場合の譲渡所得の特例(相続税の取得費加算の特例)

    個人が相続又は遺贈(以下、「相続等」という)により取得し、相続税の課税対象となった土地その他の財産を相続税の申告期限から3年以内に譲渡した場合には、確定申告を要件に、譲渡所得の金額の計算上、その譲渡した人に係る相続税のうち一定額(以下、「取得費加算額」という)が、譲渡した資産の取得費に加算されます。

    相続等により取得した土地を譲渡した場合の取得費加算額は、その土地を相続等により取得した時期に応じ、次の①又は②の算式により計算します。

     ①平成26年12月31日以前に開始した相続等により取得した土地を譲渡した場合

     …譲渡した人が納付した相続税額×譲渡者が相続した土地等の相続税評価額÷譲渡者が相続した財産に係る相続税評価額の合計額=取得費加算額

     ②平成27年1月1日以後に開始した相続等により取得した土地を譲渡した場合

     …譲渡した人が納付した相続税額×譲渡者が相続した財産のうち譲渡資産に係る相続税評価額÷譲渡者が相続した財産に係る相続税評価額の合計額=取得費加算額

    4.概算取得費控除の特例

    前述2.により計算した金額よりも、土地の譲渡に係る収入金額の5%相当額の方が多い場合には、その譲渡に係る収入金額の5%相当額をもって、土地の取得費とすることができます。

    5.交換等の特例を受けて取得した土地を譲渡した場合

    固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例、特定の居住用財産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例、特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例等の特例の適用を受けて取得した土地を譲渡した場合、その取得費は、前述2.にかかわらず、その特例の適用を受けた際に譲渡した資産の取得費を基に、一定の方法により計算した額とされます。

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