法律相談

月刊不動産2008年7月号掲載

住宅瑕疵担保履行法施行に伴う供託・保険の準備について

弁護士 渡辺 晋(山下・渡辺法律事務所)


Q

新築住宅の売主に供託や保険を義務づける住宅瑕疵担保履行法は、いつ施行されるのでしょうか。また、供託や保険の準備は、いつから始めておかなければならないのでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1. 回答

    (1) 住宅瑕疵担保履行法は平成21年10月1日に施行されます。同日以降に引き渡す新築住宅が、供託又は保険の義務づけの対象です。

    (2) 供託については、最初の基準日が平成22年3月31日ですから、その日までに、供託所に保証金を預け入れるための準備をすれば足ります。

    (3) 一方、保険については、早期の準備が必要です。引渡しが平成21年10月1日以降になる新築住宅について、保険による資力確保を選択しようとする場合には、建築工事開始のときまでに、加入の申込みをしておく必要があるからです。

    2. 法律の制定と施行

     さて、平成19年5月、住宅瑕疵担保履行法(特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律)が可決・成立し、公布されました。この法律は、新築住宅について瑕疵担保責任が確実に履行されるように、新築住宅の売主などに対し、資力確保措置 (供託又は保険) を義務づける法律です。

     住宅瑕疵担保履行法 (以下、 「法」という) は、平成21年10月1日に施行されます。平成21年10月1日以降に引き渡す新築住宅につき、資力確保措置の義務が課されます。

    3. 資力確保措置

     法は、資力確保措置の義務につき、過去10年間の供給戸数に応じて基準額を定め、事業者に対し、基準日における基準額以上の保証金供託を義務づけて、資力確保措置として供託が原則であるとしつつ、保険に加入している住戸を、保証金を定めるに際しての供給戸数としてカウントせず、保険加入の住戸を資力確保措置の例外と扱うものとしています。

     資力確保措置として供託と保険は同価値であり、事業者は、どちらの措置を採用してもかまいません。

    4. 供託の準備

     基準日は、毎年3月31日と9月30日であり、法の施行後、最初の基準日は平成22年3月31日です。新築住宅の売主となる事業者が供託によって資力確保措置の義務を果たそうとする場合には、この日までに基準額以上の保証金を供託所に供託しておけば足ります。

    5. 保険加入の準備

     他方、資力確保措置として、保険を利用する場合には、新築住宅の売買契約に先立ち、保険法人に保険加入を申し込み、基準日までに保険契約を締結しておかなければなりません。

     ところで、新築住宅についての保険は、建築工事中に複数回の現場検査を受け、現場検査に合格した住宅でなければ、契約を締結できないために、建築工事の開始前に保険加入の申込みを済ませておく必要があります。

     資力確保措置の義務づけは、平成21年10月1日以降に引き渡す新築住宅から課されますが、保険を利用する場合には、工事開始前に保険加入を申し込んでおかなければなりませんから、法の施行当初に保険を利用する予定のある事業者は、工事期間を見込んで、保険加入を申し込んでおく必要があります。例えば、工事開始から引渡しまでを1年間と見込むならば、平成20年10月1日より前に保険加入を申し込んでおかなければなりません。

     また、法の適用があるのは、引渡しであって、工事の完成ではありません。工事の完成後、すぐには売れずに、完成から引渡しまで時間がかかる場合には、この期間も見込む必要があります。

     さらに、施行前に工事が完成して引渡しができるという見通しであったものの、工事の遅延によってスケジュールに変更が生じ、引渡しが法の施行後になるということも考えられます。このような不測の事態もまた、見込むべきです。

    6. まとめ

     法による資力確保の義務づけは、耐震強度偽装事件によって見直された法制度のなかで、締めくくりに位置づけられています。宅建業者は、安全な住宅を供給するために社会的な協力が不可欠であることを自覚し、確実に、法に基づく業務を履践しなければなりません。

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