法律・税務・賃貸Q&A

オーナーを説得させるプレゼンテーション

今井 基次
オーナーズエージェント株式会社 コンサルティング事業部部長

質問

 賃貸オーナーに向けて、新築のプロデュースやリノベーションの提案などを行うことがあるのですが、説得力に欠けるのか良いプレゼンテーションができません。どのような提案をすれば説得力が増すのかを教えてください。

月刊不動産2017年07月号掲載
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回答

Answer

 物件供給が過剰になればオーナーは積極的な投資を控えるはずです。周辺エリアの市場調査を行い、「本当に必要とされている物件の間取りや設備」を導き出し、「なぜその物件が必要なのか」という根拠とロジックをもとに提案をしましょう。

需要のある土地か建てるための根拠が必要

 人口減少に伴い、賃貸需要も年々減っていくといわれている一方で、ハウスメーカーが施工する賃貸住宅の建築が減ることはない。アパート建築というと、つい利回りやデザインなどに目を奪われがちだが、管理会社の立場からすると、建てることよりも、建てた後のことが気になる。長期的に安定稼働すればよいのだが、そもそも需要がないエリアに建物が増えれば、新しい物件に人は移り、やがて供給過剰になり賃料の下落が始まる。この負の連鎖を止めるには、建築(リノベーション)前に、しっかりとした根拠をもとに計画をしなければならない。そのために当社では、創業当時より「市場調査」というものを重視してきた。本来、市場調査のような「建てるための根拠」となるものは、オーナーに提案をする建設会社が行うべきであるが、実際、調査らしい調査は、これまでほとんど見たことがない。何千万~数億円もの投資をするのに、根拠のない提案では、人口が減っている状況において、オーナーもなかなか首を縦に振るはずもない。私たちは管理会社という立場であるため、建ててもらうことがゴールではなく、建ててもらった後のことを一番に考える。そのエリアに必要とされる建物を提案しなければ、築年数が浅い時はよくても、すぐに稼働率が落ちていくことを知っているからだ。何の根拠もなく無造作に建てられた物件が、空室だらけになっている現場を地方ではよく目にする。そこに建てるための根拠をしっかりと探らなければならない。

需要調査と供給調査

 市場調査というと、どことなく聞こえがよくカッコいいイメージもありそうだが、やっていることは実に地味で手間もかかる。調査は「需要調査」と「供給調査」に分けられる。需要調査については、家族類型別に不動産会社へのヒアリングを行う。①単身者、②カップル、③ファミリー(第一子が未就学児)、④ファミリー(第一子が小学生以上)、⑤その他(母子家庭、二世帯同居など)と、5つのカテゴリーに分け、来店者割合(または反響割合)をヒアリングする。このとき、聞いた人によって数字にブレが生じるため、できるだけ実際の来店者データなどを出してもらえるかどうかがカギとなる。

融資の追い風にもなる市場調査

 調査結果は、シングル・ファミリー物件のシェアと空室率、構造別のシェアと空室率、間取り別空室率、築年数別空室率、需給ギャップなど、多面的に分析されたデータをグラフ化している。その結果をもとに、当該エリアに最適な間取りや規模を導き出していく。調査結果によっては、建築やリノベーションを勧めないこともある。無理に勧めて将来苦戦することが想定される場合は、リスクがあることや、プロジェクトを勧めない理由をしっかりと伝える。建てさせることが目的ではないため、やめたほうがよいとハッキリと提案することは、営業面からするとネガティブに捉えられがちであるが、結果的にオーナーに信頼されるのである。

 このような市場調査は手間がかかり、調査を専門でやる企業が存在しないため、あまり目を向けられてはいないが、不動産経営の空室リスクが将来的に増すなかで、今後市場調査に対する需要が増えると想定される。また2017年度に入り、不動産事業への融資が厳しくなりつつあるなかで、明確な市場調査は、金融機関からの受けもよく、融資の追い風になる。建築・リノベーションなどの大型投資をするときには、このような市場調査を取り入れることで、結果として受注率が高まり、管理会社としても安心して管理を引き受けることができるのだ。

Point
  • 市場調査は「需要調査」と「供給調査」の両面から行う。
  • 需要調査は、家族類型別に来店者データを取得する。
  • 供給調査は、1,000~2,000室程度を目安に、当該エリアをくまなく調査。
  • 出てきたデータをグラフ化して、製本したのちオーナー提案に利用する。
  • 市場調査は、金融機関の融資担当者の心証もよくする。

※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

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