法律相談
月刊不動産2026年2月号掲載
LPガスの供給契約を解約する場合の違約金(無償配管の商慣行)
弁護士 渡辺 晋(山下・渡辺法律事務所)
Q
新築住宅を購入し、指定されたLPガス販売事業者と供給契約を締結しています。今般、別の事業者から供給を受けようと思って供給契約の解約を申し出たところ、供給契約上、契約期間内に解約をするには違約金を支払わなければならないといわれました。供給契約を解約するには、違約金の支払いが必要なのでしょうか。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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違約金を支払わなくても供給契約を解約することができます。期間内に解約するために違約金を支払わなければならないという契約条項は、消費者契約法に違反し、無効だからです。
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新築住宅を購入する際のLPガス事業者との供給契約
さて、新築住宅の販売に際しては、LPガスの設備設置と供給について、多くの場合に無償配管の商慣行といわれる取扱いがなされています。①LPガス販売事業者が無償で新築住宅に配管等の設備を設置する、②買主が配管等の設備の付けられた住宅を購入する、③買主が売主の指定に基づいてLPガス販売事業者とLPガス供給契約を締結する、④LPガス供給契約に、買主が供給契約期間満了前に供給契約を解約しようとする場合には、買主はLPガス販売事業者に違約金を支払うという条項を設ける商慣行です。
しかるに令和7年12月、最高裁により、供給契約を解約するときに違約金を支払うとする④の条項が、消費者契約法9条1号によって全部無効とされました※。売主T社が、買主Xに、LPガスの配管設備等(本件消費設備等)を付けて住宅(本件住宅)を販売し、Xが、LPガス販売業者であるY社との間で、LPガスの供給契約(本件供給契約)を締結していた事案です。本件供給契約には、『供給契約期間満了前に供給契約を終了させようとする場合には違約金を支払う』との条項(本件条項)が定められていました(図表)。※ 消費者契約法9条1号は、平均的な損害の額を超えるものを無効としているが、最高裁は、本件供給契約と同種の消費者契約の解除に伴い、Y社に生ずべき平均的な損害は存在しないと認定した。
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最判令和7.12.23 裁判所ウェブサイト
『Y社は、本件住宅に本件消費設備等を設置しながら、T社に対して本件設置費用を請求しておらず、Xは、本件住宅の購入に当たってT社よりY社からLPガスの供給を受ける必要がある旨の説明を受けていた。このことからすると、Y社は、T社の協力の下に、本件住宅を購入した者との間で、優先的にLPガスの供給契約の締結について交渉することができる事実上の地位を確保するため、自らの判断で本件設置費用をT社に請求しなかったということができる。また、Y社は、Xと本件供給契約を締結するに当たり、XがY社からLPガスの供給を受けている間は、Xに本件設置費用を請求しないこととするとともに、本件条項により、Xが供給開始日から10年経過前に本件供給契約を終了させる場合は、経過期間に応じて、本件設置費用に関して支払われるべき本件算定額を逓減させることとしていたが、これらは、本件供給契約を締結するようにXを誘引し、併せて本件供給契約が短期間で解約されることを防止し、本件供給契約を長期間維持するためのものであったといえる』。
『また、本件条項は、一見すると、本件消費設備等の設置の対価として本件算定額の支払い義務を定め、Xが10年間にわたってY社に支払うガス料金から本件設置費用を回収することを予定するものであったようにもみえる。しかしながら、本件供給契約上、本件算定額は供給開始日から10年が経過するまでの間において1か月ごとに一定額ずつ減少するとされているものの、10年経過後にはXがY社に支払うべきガス料金が減額されるという定めはなく、本件設置費用とガス料金との関係は明確にされておらず、本件設置費用がガス料金から回収されることになっていたのかも明らかではない』。
『以上からすると、本件条項は、本件消費設備等の設置の対価を定めたものではなく』、『実質的にみると、解除に伴う損害賠償の額の予定又は違約金の定めとして機能するものということができる。したがって、本件条項は、違約金等条項に当たるというべきである』。 -
まとめ
無償配管の商慣行については、液化石油ガスの保安の確保および取引の適正化に関する法律施行規則16条15号の7(令和7年4月2日施行)によって、LPガス販売事業者に対し、基本料金、従量料金および消費設備等に係る費用の3つに整理してガス料金等を請求する仕組み(いわゆる三部料金制)の採用を義務づけるなどによって、すでに是正策が講じられています。不動産業者に対しては、国土交通省から、LPガスの商慣行是正に向けた制度見直しの周知が求められています(令和6年5月17日事務連絡、国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課 など)。今般の最高裁判決では、これらの対策に加えて、さらに無償配管の商慣行のうちの解約の場合の違約金支払い条項を無効として、消費者の利益保護が図られました。
LPガス販売事業の健全化は、適正な不動産取引の実現に直結します。不動産業者においても、LPガス販売事業の悪しき商慣行の廃止に協力しなければなりません。(参考) LPガス料金問題については、2024年9月号「トラブル事例と対処法」でも解説しています。
