法律相談

月刊不動産2015年4月号掲載

14条地図

弁護士 渡辺 晋(山下・渡辺法律事務所)


Q

不動産登記法では、どの土地についても、地図を整備することになっているとききました。公図は、不動産登記法で整備することになっている地図にあたるのでしょうか?

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 公図は14条地図ではありませんが、14条地図に準ずる図面として利用できます。公図を確認することは不動産取引では必須業務です。

    【回答】

    不動産登記法は「登記所には、地図及び建物所在図を備え付けるものとする」という定めを設けて(同法14条1項)、地図を整備することとしています。これが、14条地図です。他方、多くの登記所に備えられている公図は、旧土地台帳法よって保管されていた土地台帳附属地図を、そのまま登記所に設置し続けている図面であって、不動産登記法に基づく14条地図ではありません。一般に、14条地図と公図は違うものです。

    【土地の単位と14条地図】

    土地は元来、面としての広がりをもつだけで、物理的には、区分けされていません。しかし、土地に対する人の物的支配に整序をつけるには、人の権利と結びつけるための区分けが必要です。そこで、概念上人為的に土地を区分けし、単位を設けることになります。この区分けされた土地の単位が、筆です。筆は、不動産登記の表題部において、特定されます。

    さらに、不動産を取引の対象とするためには、特定された単位としての土地(筆)が、現地で実際に、どのような位置に、どのような形状や広がりをもって存在しているのかを明らかにする必要があります。そのために、不動産登記法は、14条地図を備え置くこととしました(平成16年の法改正前は、17条に定めがあったので、17条地図と呼ばれていた)。

    14条地図となるためには、自然の原因または人為的原因で土地の境界が明らかではなくなっても、地図から逆に現地での境界を復元することができること(現地復元性)が求められ、測量法による厳密な精度をもった測量に基づいて作成されなければなりません。そのために、現時点では、14条地図が備えられている土地と備えられていない土地があり、登記所における14条地図の備付率は、登記所にある図面のうち、約54%となっています。特に都市部の人口集中地区(DID)では、14条地図作成の基礎資料である地籍調査が約23%しか進捗しておらず、備付率が低くなっています(秦愼也「登記所備付地図の整備」登記研究794号3頁 平成26年4月)。

    【公図】

    14条地図の現状における不十分さを補うため、不動産登記法は「第1項(14条1項)の規定にかかわらず、登記所には、同項の規定により地図が備え付けられるまでの間、これに代えて、地図に準ずる図面を備え付けることができる」と定めています(同条4項)。地図に準ずる図面(準地図)として、多くの登記所で用いられているのが、旧土地台帳法によって保管されていた土地台帳附属地図です。

    土地台帳はかつて租税徴収の目的をもって制度化され、昭和35年に廃止されたものの、土地台帳附属地図は、それ以前から不動産取引で使われていたために、土地台帳制度が廃止された後も、現在まで、いわゆる公図として、利用されているわけです。

    ところで公図の多くは、明治初期の地租改正図に起源をもつ図面であり、古い時代に作成されたものです。そのため正確性に問題があり、精度が十分ではありません。国土交通省は、公図と現況のずれを公表しており、公表された数値によれば、ずれが30cm以上1m未満の地域が27.7%、ずれが1m以上10m未満の地域が49.8%などとなっています(http://gaikuchosa.mlit.go.jp/gaiku/html/info4.html)。

    もっとも、公図は、必ずしも正確ではないとはいえ、地番ごとに線引きされており、登記記録とともに公図を確認することによって、おおよその土地の位置、形状、面積、隣地との関係等を知ることができます。現地検分と相俟って、土地の状況を把握するために必要な資料として利用されています。

    裁判例でも、「各筆の土地のおおよその位置関係、境界線のおおよその形状については、その特徴をかなり忠実に表現しているのが通常である」(東京高裁昭和53年12月26日判決)、「境界が直線であるか否か、あるいはいかなる線でどの方向に画されるかというような地形的なものは比較的正確なものということができる」(東京地判昭和49年6月24日判決)などとされており、土地の位置、形状、面積、隣地との関係等を示すものとしては、公図を頼りにすることができると判断されています。宅建業者としては、不動産取引に際しては、登記を調べるだけではなく、公図を取り寄せたうえで、土地の位置、形状、面積、隣地との関係等を確かめることは、基本的であって必須の業務ということになります。

    【平成地籍整備】

    都心部では14条地図が少なく、現地での筆界の特定が困難であることが都市再生のための施策を阻害する要因となっているという考え方に基づき、平成15年6月、都市再生本部の会議において、14条地図の整備を推進するという指示がなされました。その後、基礎的調査がなされ、着実に14条地図整備の作業が進められています。

    不動産取引において、公図の不正確さが取引の安定を損ねるケースがあることは、つとに知られています。都心部でも14条地図の整備を充実させることが、期待されるところです。

    ポイント

    土地には物理的な区分けがありませんから、人為的に区分けする必要があります。その区分けされた土地の単位が筆です。筆の実際の位置、形状などを明らかにするのが14条地図です。

    ● 不動産登記法は、登記所に14条地図を備え付けることを定めています。ただし、14条地図の備付率は約54%にとどまっています。

    ● 多くの登記所では、14条地図に準ずる図面として、土地台帳附属地図、いわゆる公図を用いています。

    ● 公図は精度が十分とは言えませんが、裁判例では土地の位置、形状、面積、隣地の関係性を示すものとして頼りにできるとされています。不動産取引の現場では、登記だけでなく公図も取り寄せ、土地の位置や面積などを確認することは必須の業務です。

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