賃貸仲介営業

月刊不動産2017年9月号掲載

電話・メール接客のポイントを押さえて来店率を上げる

宮下 一哉(株式会社船井総合研究所 不動産支援部 チーフ経営コンサルタント)


Q

 インターネットからの反響(物件問い合わせ)が来店につながりにくくなっています。反響来店率を上げるためには、どんなことをすればよいでしょうか?

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • Answer

    モデル指標を意識して、自社に足りない部分として、「3つのポイント」を押さえて実施していきましょう。

  • 反響来店率のモデル指標は60%

     船井総研では、賃貸仲介店舗の業績アップコンサルティングのなかで、反響来店率(呼込み来店数÷反響数)を「60%」に上げるお手伝いをしています。モデル指標としては、メール反響来店率40%、電話反響来店率80%が目安です。やるべきことをしっかり行っていれば、必ず到達できる数値です。皆さまの会社でこの数値に達していない場合、“必要な取り組みが何か足りていない”と考えていただければ対策がしやすいです。

     船井総研は主として中小企業を対象に、社内の各チーム・各グループが「業種特化」して経営コンサルティングをさせていただいており、それぞれに具体的な業績アップのノウハウを持っています。私の専門は「賃貸仲介・賃貸管理ビジネス」であるため、賃貸仲介店舗で反響来店率を60%にする具体的なノウハウを持っており、全国各地の不動産会社でそれを実行していただいています。要するに、「目指すべきモデル指標」「それを実現するために行うべきこと」が明確であり、“ゴールから入っていただくことができる”ため、モデル指標に至っていない会社で、どんな取り組みが足りていないのか、おおよそ推測ができます。

  • 電話反響来店率アップのポイントは3つ

     説明が長くなりましたが、反響来店率指標60%を達成できていない会社は、“必要な取り組みが何か足りていない”といえます。反響来店は「電話から」「メールから」の2通りがあります。まず簡単なところで「電話反響来店率の上げ方」からお伝えします。大事なポイントは全部で3つあり、「①新着物件の毎日確認」「②ちなみに~でのヒアリング」「③まずは当日来店を促す」といった内容です。

     「①新着物件の毎日確認」は、問い合わせ物件に近い条件の物件をその場で紹介できるようにするために行います。問い合わせのある物件というのは、得てして重なりやすく、すでに満室になってしまった…なんてことが起こりやすいものです。そんなときに、電話対応の上手でない営業スタッフは、「その物件は終わってしまいました!」と伝えるのみで電話を終えてしまうことがあります。しかし、来店率の高い営業スタッフは、例えば、「その物件は終わってしまったんですが、今日、もっといい物件が出てきましたよ!」と即座に伝えることができます。これでお客さまに電話を切られず、次の会話につなげやすくなりますね。

     続いて、「②ちなみに~でのヒアリング」に移ります。ここでは「電話接客」を意識します。電話対応ではなく、「電話接客」です。聴くべきことは3つ。引越し理由、通勤通学先、今の住まいです。いきなり引越し時期や探している条件を聴く方が多いですが、大きな間違いです。探している物件の「背景」を聴き、要望ではなく「ニーズ」を聴くことで、物件探しの幅を大きく広げることができます。そこまで聴くことができたら、「でしたら、ほかにもよい物件がいくつか出てきていますよ!」とお伝えし、最終段階に移ります。

     「③まずは当日来店を促す」ということで、ポイントは二者択一法(クローズドクエスチョン)です。当日来店できるお客さまは多くはないですが、そこで「平日と週末では?」「土曜と日曜では?」「午前と午後では?」と、お客さまに選んでいただく方式で来店アポにつなげていきます。1つ断ると、もう1つの提案に対しては断りにくくなるのが、心情ですよね。

  • メール反響来店率アップのポイントも3つ

     続いて、「メール反響来店率の上げ方」です。これは、「①スピード×②内容×③回数」で分解して取り組みを考えていただければ、わかりやすいです。この3つの要素を、この順番でもれなく実施することが重要です。まずは「①スピード」です。最初の設定としては「夜間の問い合わせは朝一番で返信」「午前中の問い合わせは午前中に返信」「午後の問い合わせはその日のうちに返信」を目指していただければと思います。お客さまは、インターネット上でいくつもの不動産会社の物件を確認し、その中から3社程度にメールの問い合わせをします。要するに、皆さんの会社にメールの問い合わせが入ったとき、同時に他の2社にも問い合わせをしているということです。ですから、なるべく早く返信をすると、他社よりも優位にお客さまとのやり取りを始めることができるようになり、1日放置してしまうと他社に先行されて、来店率は10%下がります。ちなみに、最近では問い合わせから30分以内の返信が多くなっており、10分以内に返信、5分以内に返信をしている会社も増えています。究極はAI(人口知能)による返信ですね。また、LINEを代表とするチャットでの返信対応を行う会社も増えています。実際、LINEでの問い合わせ対応を行っている会社の来店率は、メール対応よりも高くなる傾向があります。

  • 反響来店率アップはインターネット上の掲載情報から始まっている

     電話・メールからの反響来店率のアップ手法をお伝えしてきました。ぜひ実践して、1件でも多くの反響を来店につなげ、お客さまのチカラになっていただければ幸いです。ただし、そもそもの「確度の高い反響」を得るためのポイントは、インターネット上に、いかにわかりやすく・視覚的に物件情報を掲載するかにかかっています。電話対応・メール対応の基本を実施しつつも、その前提である物件情報の「量」「質」「鮮度」を充実することを最も重視することが大切です。

  • Point

    • 反響来店率のモデル指標を意識し、自社の実績と比較する。
    • モデルと実績とのギャップは、必要な取り組みが足りていない証拠。
    • 電話接客・メール接客ともに、3つのポイントをしっかり押さえる。
    • どれかが足りないと来店率が下がる。
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