法律相談

月刊不動産2022年6月号掲載

重要事項説明の電磁的方法による提供、およびIT重説

弁護士 渡辺 晋(山下・渡辺法律事務所)


Q

重要事項説明を電磁的方法によって提供し、ITを使って重要事項説明を行うことができるようになったとききました。実際に重要事項の説明内容を電磁的方法で提供し、またITによって重要事項説明を実施するには、どのようにすればよいのでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 回答

     国土交通省が、令和4(2022)年4月27日に、「重要事項説明書等の電磁的方法による提供およびITを活用した重要事項説明実施マニュアル」(書面電子化マニュアル)を公表しました。このマニュアルにしたがって、書面の電子化とIT重説を行っていただくことができます。

  • 1. 書面の作成交付と押印に関するルールの改正

     令和3(2021)年5月にデジタル社会形成整備法が制定され、宅建業法(以下「法」)も、デジタル社会に対応するべく、改正がなされました。改正内容は、①媒介契約の書面交付(法34条の2)について、相手方等の承諾があれば、書面交付に代えて電磁的方法による情報提供が認められた、②重要事項説明(法35条)および契約書面交付(法37条)について、宅建士の書面への押印が不要とされ、記名のみで足りるようになった、というものです。
     この法改正にともなって、宅建業法施行規則(以下「規則」)も改正され、1.書面を電磁的方法で提供する際に用いる方法、2.書面を電磁的方法で提供する際に適合すべき基準、3.相手方から承諾を得る際に示すべき内容、4.相手方から承諾を得る際に用いる方法について、それぞれ定めが設けられました(規則15条の14~15条の17、同16条の4の8~16条の4の15)。
     書面電子化に関する法と規則の定めは、令和4年5月18日に施行されています。これに先だって令和4年4月27日には、書面電子化マニュアルが公表されました。書面電子化マニュアルには、①重要事項説明書等の電磁的方法による提供(書面の電子化)※1、および②ITを活用した重要事項説明(IT重説)※2の実施に関して、遵守すべき事項や留意すべき事項がまとめられています。
     なお、書面を電子化する場合の重要事項説明は、必ずしもIT重説である必要はなく、IT重説を実施する場合の重要事項説明書は、必ずしも電子化されたものである必要はありません。
     また、相手方から書面の電子化やIT重説を求められた場合でも、宅建業者は必ずこれらを実施しなければいけないということはありません。宅建業者は、自らのIT環境や案件の特性を踏まえて、書面の電子化やIT重説の実施の可否について判断することができます。

    ※1 重要事項説明書等の電磁的方法による提供(書面の電子化)とは 、法第 34 条の2、第 35 条及び第 37 条に基づき交付する書面について、紙に代えて、電子的に作成した書面(電子書面)を電子メールや Web からのダウンロード形式等を活用して電磁的方法により提供することを指す。
    ※2 ITを活用した重要事項説明(IT重説)とは、テレビ会議等のITを活用して行う重要事項説明を指す。

  • 2. 重要事項説明書等の電磁的方法による提供( 書面の電子化)についての留意事項

    (1)書面を電磁的方法で提供する際に用いる方法
     宅建業者が書面を電磁的方法で提供する際に用いる方法は、電子メール、We b ページからのダウンロード形式による提供、USBメモリ等の交付などです。

    (2)書面を電磁的方法で提供する際に適合すべき基準
     宅建業者が書面を電磁的方法で提供する際に適合すべき基準としては、書面に出力できること、電子署名等により改変が行われていないかどうかを確認できることなどとされます。

    (3)相手方から承諾を得る際に示すべき内容
     宅建業者が、書面を電磁的方法で提供する場合に、あらかじめ相手方から承諾を得る際に示すべき内容は、電磁的方法で提供する際に用いる方法およびファイルへの記録形式です。

    (4)相手方から承諾を得る際に用いる方法
     宅建業者が書面の交付を受ける相手方から承諾を得る際に用いる方法は、電子メール、Webページ上の回答フォーム、USBメモリ等の交付などです。

  • 3. まとめ

     宅建業者のみなさまの多くは、すぐに書面の電子化とIT重説を始めるわけではないと思われます。しかし、現実の社会は確実にデジタル化しています。いずれはすべての宅建業者が、これらの方法と無関係ではいられなくなりますので、実際に利用するかどうかは別にして、今回明らかにされた書面の電子化などの仕組みについては、必ず理解しておく必要があります。

今回のポイント

●宅建業法が改正され、媒介契約の書面交付(法34 条の2)、重要事項説明(法35 条)、契約書面交付(法37 条)について、相手方等の承諾があれば、書面交付に代えて電磁的方法による情報提供を行うことができるようになった。
●書面の電子化とIT 重説とは、別の仕組みである。書面を電子化することによる重要事項説明書等の電磁的方法による提供とIT重説のいずれかだけを採用することも可能である。
●書面の電子化やIT 重説を求められた場合でも、必ず実施しなければいけないということはなく、自らのIT 環境や案件の特性を踏まえて、実施の可否について判断をすることができる。

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