売買仲介営業

月刊不動産2019年11月号掲載

売上規模ごとの業績アップ手法

小寺 伸幸(株式会社船井総合研究所 不動産グループマネージャー シニア経営コンサルタント)


Q

ここ数年ずっと売上が横ばいで、会社を成長させることができずに困っています。社内の課題はたくさんあり、どこから手を付けていけばいいのかわかりません。売上を継続的に伸ばしていくためにはどうすればいいでしょうか?

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 回答

     不動産売買店舗の業績アップ手法は、店舗売上に応じて、実践すべき内容と浮上する課題は異なっていきます。当然ながら地域差はもちろんありますが、売上規模ごとの業績手法についてお伝えします。

  • 1. 業績アップの3つのステップ

     売買業務を行う各店舗における業績アップの段階は、次の3つのステップに分けることができます。
     STEP1は、毎月の業績を安定させるために買い仲介の強化を図る必要があります。そのためには、集客、営業の強化を図ることが何より重要です。月間60件の反響、契約数10件は必達したいところです。集客数がある程度あり、営業社員の育成が進んでいる会社は、人を採用すれば概ね比例して売上が上がるため、採用への投資を意識したいです。また並行して人材育成の仕組み化を進めていただきたいです。
     STEP2は、媒介強化を図らないと集客数が伸びなくなってくる段階だと思います。理由としては、取扱い物件が伸びないため、ポータル反響を伸ばせない、他社も同様の物件を取り扱っているため、集客する上でこれ以上工夫できないなどです。新築仲介をメインにしている会社も売上が頭打ちになる段階だと思います。さらに、1拠点当たりの業績アップを図るためには不動産仕入れを強化する必要があるため、売却の専任化を行い、媒介強化をしてください(『月刊不動産』7月号P.12~13参照)。
     STEP3は、多角化(業態付加)を進めてもう一段階業績アップを図ってください(新規事業の種まきは、経営が順調な時期に行う。図表1)。具体的な1つの取り組みとしては中古仲介+リフォームの業態を立ち上げます(9月号P.12~13参照)

  • 2. 売上規模ごとに浮上する経営課題と改善に向けた取り組み内容

     手数料売上1億円までは社長のマンパワーで持っていける段階です。中小企業の売上は99%社長で決まるといわれています。この段階は社長自ら現場に入って数字作りを行い、営業管理をしたいところです。
     次に手数料売上1.5億円は社長のマンパワーだけでは調達できない段階です。理由としては、年間契約数が100件を超えるため、社長が管理できる数字ではクリアできなくなってきますので、数字を作れる営業社員を3名程度採用して育成する必要があります。
     手数料売上2~3億円の段階では、集客、営業の仕組み化および幹部の育成をしていく必要があります。ここに注力しなければ、人を入れても数字が全く伸びない状態に陥る可能性があります。人を辞めさせない環境づくりとして、育成が追いつかないと、営業社員が増えて人件費が膨らみますので、仕組み化、幹部育成、採用、集客、営業社員の育成の順番で取り組む必要があります。社員が退職する多くの理由は、個人の数字を作ることができないことがほとんどだと思います。このため育成・定着は重要です。このあたりから、人を増やすことで集客数が上がってくることが多いため、次は媒介の強化を図っていく必要があります。
     手数料売上3億円以上になると経営はある程度安定し、数字だけで経営できるようになってくると思います。ここからは、幹部の育成、採用、集客の3つが経営者の仕事になります。現場に出て営業する機会を控え、上記の3つに集中できる環境づくりをしましょう。
     持続的な成長戦略を描き、毎年2ケタ成長していけるよう、今年の年末までに振り返りと来年の取り組むべき重要事項を決めて社員と共有して実践していただきたいと思います。まずは、自社の次のステップ到達時に挙がっている経営課題と、具体的に取り組む実践内容を確認しましょう(図表2)。

今回のポイント

●売上規模ごとに共通の経営課題があるため、先回りして課題を解決しておく。
●業績が停滞する理由の多くの課題は人材に関する内容である。人材投資(採用・育成)に経営資源を集中させる。
●新規事業(新業態)の種まきは経営が順調な時期に行う。
●社長自ら自社の成長戦略を描き、社員と共有して実践していく必要がある。

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