賃貸管理ビジネス

月刊不動産2020年7月号掲載

在宅ワークの利用と必要とされる管理会社への転換

代表取締役 今井 基次(株式会社ideaman)


Q

 新型コロナウイルスの影響で、管理会社も在宅ワークを強いられています。現場スタッフからすると、管理会社の仕事は在宅では難しいというのですが、本当にそうでしょうか。これまで行ってきた仕事のやり方自体を大きく転換させないといけないのですが、どのように考えたらよいのかがわかりません。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 回答

     業務によっては在宅でできることはたくさんあります。むしろ在宅ワークを強いられることで、「必要な仕事」と「そうでない仕事」の仕分けができるようになります。今のこのような時期をうまく利用して、問題点の発見とその解決策を見極め「土台固め」をしましょう。

  • 1. 根本的な業務の見直しを

     新型コロナウイルス騒動をきっかけに、賃貸管理会社においても業務上多くの問題が発生している。オーナーや入居者、会社のスタッフとできるだけ非対面で業務対応しなければいけない状況下で、根本的な業務の見直しを図る必要性が出てきている。
     ふだん、日常業務に追われていると、誰でもできるような「作業的業務」を惰性でやっていることになかなか気づくことができない。入居者募集、入居者対応、出納業務、オーナー対応、社内会議など、やるべき仕事は山ほどあるが、非対面で行うことで、自ずとそれらに付随する無駄な時間の使い方が見えてくる。
     例えば、移動の時間。社外に出て活動をすれば、移動にかなりの時間を割くことになる。車を利用する場合、電話をかけることはできるが、メールの送受信や事務作業を行うことはできず、できることがかなり限定される。これまでは「移動時間」が「仕事をしている」ことに含まれていたが、それを排除すると、実質的な労働生産性が低いことに気づかされる。もちろん移動のすべてが無駄というわけではない(実際、考えることに時間を使える)が、「仕事をやっているふり」はできなくなった。誰がどれくらいアウトプットを生むのかわかりにくい管理業務も、「労働生産性」が明確にわかるようになった。今まさに、「パラダイムシフトにおける転換期」ともいえるのではないか。

  • 2. 考察することに時間を注ぐ

     今のような外出もできず人とも会えない足踏み期は、次へのステップを踏むための「考察」する時間に多くを注いでもらいたい。制限のある中だからこそ、逆に工夫が生まれ、これまでの非生産的なやり方を思い切って変えることができる。ZOOMやハングアウトなどのテレビ電話機能を利用して、それぞれが離れた場所であってもグループワークで問題解決をすることも可能だ。ここでは5つのステップで現状分析をして、問題を解決する方法を説明する。

  • 3. 問題解決のための5つのステップ

     まず1つ目は、業務上の「問題点」と、オーナーや入居者からの「要望」という2つの面から考えてみよう。とにかく日常的に行っている業務上の問題点や要望を思いつくままに書いていく(図表)。次に、これらを引き起こす「原因」を、同じように箇条書きにしていく。原因は大きな業務カテゴリー別(リーシング、入居者対応など)に分けて書き出してみる。3つ目に、この原因を「改善」する方法を書き込む。この時に、「こういう事情があるから、無理だよね」というネガティブな発想があると、改善案も出なくなる。重要なことは、できる・できないは別として、理想に近づけるように改善案を出していく。また、原因に対応する改善は1つだけではなく、複数出せることにも注意したい。4つ目に、改善策からどのようになっていればよいのかという「理想」を掲げてもらいたい。理想なので、遠慮せずに思い切った理想を掲げたい。ここでもネガティブ意見が出やすいので、必ずプラスの意見を出すようにする。
     最後のステップでは、理想を達成するための「方法」について書き出してみる。ここでは、その場で意見を交わしてもよいが、宿題にしてじっくり考えてみるのもよい。実際にインターネットで調べてみると、理想を達成できそうなサービスやツール(アプリやクラウドサービス)が、不動産業界内外から提供されている。解決方法は、抜本的な「業務改善」か、またはクラウドサービスを利用した「ツール」で、ほとんどが網羅される。さらに、思い切って不必要な業務、または煩雑な業務を「捨てる」ことも重要だ。

  • 4. 今は将来のための土台固め

     問題点・要望という「悩み」「困りごと」から、新しいアイデア(改善策)が浮かび、理想をイメージすれば、必ず解決方法は見つかる。ある意味、在宅ワークの環境下は、今まであやふやにしていたような業務上のストレスを大幅に軽減できるチャンスでもある。大きな騒動があれば、経済の需要が下がり供給の競争が激化する。これにより企業も従業員もふるいにかけられていく。しかし、また必ず回復期は訪れる。この回復需要に対応するには、地域に必要とされる管理会社、そして会社に必要とされる働き方をしなければならない。今やるべきことは、明日に向かっての「土台固め」なのではないだろうか。

今回のポイント

●日常の作業的業務を非対面で行うことで、無駄な時間が見え、各従業員の労働生産性が明確にわかるようになる。
●ZOOM やハングアウトなどのテレビ電話機能を利用して、グループワークで考察し、問題解決に取り組む。
●業務上の問題点、オーナーや入居者からの要望、問題点の原因、改善方法、理想の改善策を実行するための方法について意見を出し合う。
●将来訪れる回復需要に対応するために地域に必要とされる管理会社、会社に必要とされる働き方を目指し、これまでの業務を見直す。

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