税務相談

月刊不動産2019年8月号掲載

個人が贈与を受けた金銭を全て住宅の敷地の取得対価に充てた場合の、住宅取得等資金にかかる贈与税の非課税

税理士 山崎 信義(税理士法人タクトコンサルティング 情報企画室室長)


Q

住宅取得等資金にかかる贈与税の非課税の特例(以下「本特例」)につき、個人が贈与を受けた金銭を全て住宅の敷地となる土地の取得の対価に充てた場合の取扱いについて教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 回答

     本特例の適用対象となる「自宅の新築」には、自宅の新築に先行してするその敷地として使用されることとなる土地の取得が含まれます。したがって、個人が贈与を受けた金銭の全部を土地の取得対価に充てた場合であっても、その贈与を受けた金銭は本特例の適用を受けることができます。ただし、その贈与のあった日を含む年の翌年の3月15日までに、金銭の贈与を受けた人が自宅の新築をしていない場合には、その贈与を受けた金銭は本特例の適用を受けることができません。

  • 1. 本特例の概要

     その年の1月1日において20歳以上である等の一定の要件を満たす個人(「特定受贈者」)が、父母等の直系尊属から贈与により取得した①自己の居住用の家屋(以下「自宅」)の新築もしくは取得( 以下「新築等」)、②これらの自宅の新築等とともにするその敷地として使用される土地等※の取得(その自宅を新築する場合に、それに先行してするその敷地として使用されることとなる土地等の取得を含む)、または③一定の増改築等の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」)の全額を、①、②または③の対価に充て、贈与を受けた年の翌年3月15日までに自己の居住用に供した等の場合には、贈与税の申告を要件に、住宅取得等資金のうち下記の限度額までは、贈与税が非課税とされます。
    ※ 土地および土地の上に存する権利(借地権・敷地利用権等)をいいます。

  • 2. 自宅を新築する前に、その敷地となる土地を先行して取得した場合の留意すべき要件

     留意すべき要件としては、次の(1)および(2)が挙げられます。
    (1)一定の土地等の取得であること
     上記1.の下線部のとおり、本特例の適用対象となる自宅の新築もしくは取得には、自宅の新築もしくは取得とともにするその敷地として使用されることとなる土地等の取得が含まれます。そして「土地等の取得」には、自宅の新築に先行してするその敷地として使用されることになる土地等の取得が含まれます。
     「自宅の新築に先行してするその敷地として使用されることになる土地等」の具体例としては、次のものがあります。

    (2)金銭の贈与を受けた人により、自宅の新築が行われること
    個人が贈与を受けた金銭の全額が土地等の取得に充てられ、自宅の新築の対価に充てられなかった場合でも、その贈与を受けた金銭は本特例の適用対象となる「住宅取得等資金」には該当します。
     ただし、贈与があった日を含む年の翌年の3月15日までに、その贈与を受けた人が自宅の新築をしていない場合には、その贈与を受けた金銭は本特例の適用を受けることができません(事例参照)。

  • ワンポイントアドバイス

    ●自宅の新築等にかかる契約の締結日の期間によって、贈与税の非課税限度額が変わりますので、注意が必要です。
    ●夫婦で資金を出し合って自宅を新築する場合において、妻が親から金銭の贈与を受けて夫と共有で土地を取得し、その土地上に夫が自宅を新築してその名義を夫のみとすると、妻は自宅を新築していない(新築したのは夫のほうです)ことから、妻は上記2. (2)のただし書きにより、本特例の適用を受けることができません。本特例の適用を受けるためには、妻が贈与を受けた金銭の一部または自己資金により自宅の建築代金を負担し、敷地だけではなく自宅にも相応の持分を有することが必要です。

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