税務相談

月刊不動産2010年5月号掲載

住宅取得資金等に係る贈与税の相続時精算課税制度の特例

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

住宅取得等資金に係る贈与税の相続時精算課税制度の特例について教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.相続時精算課税制度のあらまし

    (1)相続時精算課税とは

     相続時精算課税においては、親から贈与を受けた子は、贈与を受けた際に、その贈与財産に対する贈与税をいったん支払います。その後、相続が発生した場合には、その贈与財産の価額(贈与時の相続税評価額)と相続財産の価額との合計額を基に相続税額を計算します。この相続税額から、すでに支払った贈与税額を控除することにより贈与税と相続税を通じた納税をすることができます。

     相続時精算課税制度を選択した場合は、以後、贈与税の課税方法を暦年課税制度に変更することができません。

    (2)相続時精算課税の適用対象者

     相続時精算課税の適用対象となるのは、贈与者は、贈与をした年の1月1日時点で65歳以上の親、贈与を受けた者は贈与をした年の1月1日時点で20歳以上の子です。養子についても、実子と同様に適用があります。

     また適用の単位は、贈与を受けた者ごと、親ごとにそれぞれ選択できます。たとえば子Aは父と母の両方からの贈与について相続時精算課税制度を選択し、子Bは父からの贈与のみ相続時精算課税制度を選択し、母からの贈与については暦年課税により申告することも可能です。

    (3)相続時精算課税による税額計算

     贈与を受けた者(子)が相続時精算課税制度を選択した場合には、贈与者(親)からの受けた贈与財産について、他の贈与財産と区分して、その贈与者からの贈与財産の価額の合計額から2,500万円(特別控除額)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出した税額を納付します。

    2.住宅取得等資金贈与に係る相続時精算課税選択の特例

    (1)住宅取得等資金の贈与の特例とは

     平成23年12月31日までの間に、親から住宅取得等資金の贈与を受けた20歳以上の子が、贈与を受けた年の翌年の3月15日までにその住宅取得等資金の全額を自己の居住用家屋の新築、取得又は一定の増改築等の対価に充てて、その家屋を同日までに自己の居住の用に供したとき又は同日以後遅滞なく自己の居住の用に供することが確実であると見込まれるときは、住宅取得等資金の贈与者である親が65歳未満であっても相続時精算課税を選択することができます。

     なお特別控除額に1,000万円を加算する住宅取得等資金の特例については、平成21年12月末で廃止となりました。

    (2)特例の対象となる住宅取得等資金

     特例の対象となる住宅取得等資金は、次の住宅の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭をいいます。

     ①贈与を受けた者による床面積50㎡以上その他一定の要件を満たす住宅用家屋の新築又は建売住宅の取得

     ②贈与を受けた者による床面積50㎡以上、築後20年(耐火建築物25年)以内その他の要件を満たす中古住宅の取得

     ③贈与を受けた者が所有する家屋につき行う一定の増改築等で工事費用が100万円以上であるもの

     ④①~③をともにする家屋の敷地である士地等の取得

     ただし、新築、取得又は増改築等の請負契約等の相手先が、贈与を受けた者の一定の親族など特別の関係がある者の場合には、この特例を受けることはできません。

     なお、この特例は親から贈与を受けた金銭(住宅取得等資金)のみが対象になっています。したがって親から居住用不動産の贈与を受けた場合には、適用がありません。

    (3)相続時精算課税制度を選択するための手続

     相続時精算課税制度の選択をしようとする贈与を受けた者は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、相続時精算課税選択の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に、相続時精算課税選択届出書、住民票の写し、登記事項証明書など一定の書類を添付して納税地の所轄税務署に提出する必要があります。住宅取得等資金が特別控除以下で納める税額がない場合でも、贈与税の申告書と添付書類の提出が必要になります。

    (4)住宅取得等資金を贈与により取得した年分以降に財産の 贈与を受けた場合

     住宅取得等資金を贈与により取得した年以降に住宅取得等資金の贈与者から財産の贈与を受けた場合には、贈与者が贈与をした年の1月1日時点で65歳未満であっても、相続時精算課税が適用されます。

     住宅取得等資金以外の財産の贈与が住宅取得等資金の贈与前にあった場合でも、住宅取得等資金について相続時精算課税の適用を受けるときは、その住宅取得等資金以外の財産についても相続時精算課税が適用されます。

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