賃貸仲介営業

月刊不動産2017年7月号掲載

ユニーク物件の仕入れを強化して販促コストを下げる!

宮下 一哉(株式会社船井総合研究所 不動産支援部 チーフ経営コンサルタント)


Q

 夏の閑散期になり、仲介店舗の反響数・来店数が減っています。集客を挽回して売上をアップさせるために、この時期に営業店舗で実行すべきことには、どんな内容があるでしょうか?

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • Answer

     物件仕入れを徹底強化し、「ユニーク物件(=自社独自の物件)」の品揃えの充実を図りましょう。そのために、営業スタッフが「本来の営業活動」に注力できる環境づくりを進めてまいりましょう。

  • 「WEB戦略室」が仲介店舗の売上を大きく左右する!

     前回(5月号)にて、「インターネット時代に合わせた勝てる体制を整備いたしましょう」とお伝えいたしました。その「勝てる体制作り」に欠かせないのが「WEB戦略室」です。WEB戦略室では、主に、「流通物件(業者物件)の仕入れ・WEBサイト掲載・集客関連数値の効果分析」を専門的に行い、インターネットを活用した集客関連業務を一手に担います。それによって空いた時間の分、営業店舗では「営業スタッフが本来の営業活動に時間をまわすことができるようになる」ため、仲介力が上がり、業績が上向きになっていきます。では、仲介力が上がる「本来の営業活動」とは一体何でしょうか? 不動産業界で長年にわたって営業をされてきた皆さまであれば、最も重要な営業活動が何であるのか、実はおわかりかと思います。そう、「仕入れ」です。いつの時代も、最も成績がよいのは、一番物件に詳しい営業スタッフです。最も集客し売上を獲得できるのは、物件情報量を一番持っている店舗です。インターネット時代になって、インターネットに振り回されてしまい、この当たり前の黄金ルールが忘れられているケースが非常に多くなっています。皆さまの会社ではいかがでしょうか?

     ただ、ここで大事なのは「どんな種類の物件情報量を一番持っているか?」ということです。インターネット時代は、物件情報がデジタル化されていますから、机に座ってパソコンを叩けば、瞬時に大量の物件情報に誰でもアクセスすることができます。それどころか、スマホがあれば、どんな場所であっても手のひらの中で物件情報が手に入ります。こういう時代に、どんな種類の物件情報量を一番持っていることが大事なのでしょうか? それは、前回および今回の冒頭でお伝えしている「ユニーク物件(=自社独自の物件)」です。アナログ的にアプローチして、デジタル化されにくく、流通されにくい物件を取りにいくことが大事です。考えてみれば当たり前のことですが、皆さまの会社では、そのユニーク物件の品揃えを強化する活動に力を入れていらっしゃるでしょうか?

  • 当たり前のことが当たり前にできないのはなぜ?

     私のような「昭和世代」は、住宅地図を広げて、賃貸物件に目星をつけてから現地を回り、空室物件オーナーに直接アタックして媒介契約を交わすことを「当たり前」にやってきました。しかし、時代が平成になり、21世紀になり、ふと気づいてみれば「物件情報仕入れはインターネット上で行うもの」に変わっています。仲介店舗で業績アップの現場コンサルティングをしていると、「自分の足で取りにいく物件調達」を経験していない

    世代が大半を占めているばかりか、もはやアナログ的な仕入れの経験者が1人もいない会社も少なくありません。インターネットに掲載されていないものは、目の前に存在していても素通りされる時代です( ! )。インターネット上で大量に流通している物件情報を仕入れ、その掲載やメンテナンスに時間を追われ、ひどい場合には、手間暇・お金をかけて獲得したメール反響・電話反響への対応を後回しにしてまで、パソコンを叩いて物件を掲載することもあります。なんて本末転倒でしょうか。

     どうしてそんなことが起こるのでしょうか? 答えは1つです。インターネットを活用した集客関連業務を一手に担う「WEB戦略室」がないからです。物件を一番知っているのは営業スタッフだから。反響数・来店数が減って時間が空いているから。売上が落ちているのに、パート社員さんを採用して入力を任せるような余計なコストをかけられないから。そんな理由で、仲介店舗での「仕入れ」「集客」「接客」といったすべての業務が営業スタッフに集中しており、結果としてすべての業務が中途半端になり、十分な成果が得られない…という、負のスパイラル(図)に陥っているケースが多いのです。こういう状態の仲介店舗では、常に目の前の仕事・目の前の売上に追われて、スタッフは疲労困憊しており、広告宣伝費はウナギのぼりなのに、それに見合う売上が確保できず、社長は怒りまくっていて社内の雰囲気がよくないのです(苦笑)。

     その根本的な原因はどこにあるのか? インターネット掲載業務に追われ、「仕入れ活動」に十分な時間を使うことができないからです。「物件現地確認」さえも疎かになっているからです。朝、出社して必ず行うべき「新着物件の確認」までもできていないからです。他社と同じ品揃えしかなく、しかもその商品を見たことさえなく、最新の物件情報にも詳しくない。そんな仲介店舗が他社との競争でできることは、物件を押さえるための「キャンセル前提の申込み」と「割引前提の賃貸契約」です。もし、皆さまの店舗がそのような状態であれば、いち早くそこから抜け出さなくてはいけません!

  • 賃貸仲介をシンプルに。各店舗がやり切れる仕組みで売上を倍増させる

     インターネット時代に大きく業績を伸ばしている会社の仲介店舗には、「WEB戦略室」が設置されています。そして、営業スタッフは「本来の営業活動」に専念し、仕入れはもちろん、反響対応、来店対応、追客対応に集中して取り組んでいます。「WEB戦略室の業務」も「営業店舗の業務」も、1つひとつは決して難しくありません。しかし、それが重なっていくと急に難しくなります。それはちょうど「お手玉」のようなものです。私のように手先の不器用なタイプでも、1つ2つならお手玉をポンポンできますが、3つ4つとなると急に落とし始めます。要するに、すべてが中途半端になります。それと同じようなことが、多くの仲介店舗で起こっているのです。大事なことは、仕事をシンプルにすること。各自がやり切れる内容にすること、そういう環境を作ること。地域のなかで圧倒的に勝つために、ぜひ取り組んでいただければ幸いです。

  • Point

    • インターネット時代に合わせた勝てる体制を整備する。
    • アナログ的な仕入れ活動にどれだけチカラを割けるかが勝敗の分かれ目。
    • 総デジタル化の時代を受け入れつつ、他社とは「逆」のことをする。
    • やり切れる仕組みをつくり、売上を倍増させる。
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